なので早足で行きます。私としても早くIS学園編を始めたいので。
書き溜めも十分あるのでご安心を!
以下、評価してくださった方々をご紹介!※順不同
スナイパー23様 ちるのく様 地獄のメソポタミアシンドローム様 ラウラ党様 アオアルト様 銀赫様 monmon様 海の人様 宵闇の龍様 ロミボ様 フラグ建築したい男様
評価していただいてありがとうございました!
なんだかんだとあったが受験日当日の朝がやってきた。俺もナツも特に緊張するようなことはなく、まるでいつもと変わらない朝に感じてしまう。
ナツなんか受験内容はISでの模擬戦とか言っていたが、代表候補生ともなれば慣れたものなんだろうか。そんな考えが過り、ふとテレビを見ながらくつろぐナツへ視線をやった。
留め金の部分が雪の結晶を象ったヘアピン。あれがナツの専用機における待機形態というやつらしい。詳しいことは知らないが、身に着ける物品に変化しているんだとか。
それならヘアピンをプレゼントする必要はなかったか。なんて思ったりもしたのだが、件のヘアピンのすぐ下には俺のプレゼントしたヘアピンもしっかり装着されている。
ひまわりと雪の結晶、季節感的に例えるのならば夏と冬と真逆でアンバランスな印象を受ける。本人もそれはわかっているだろうが、それでも身に着けてくれるのは嬉しいものだ。
「えっと、ハル」
「どうかした?」
「どうかしたって、その、じっと見てくるから……」
「ああ、ごめん。気に障ったかな」
食事をするテーブルからナツを眺めていたというのに、どうやら俺がナツを観察していたのはバレていたらしい。
何もやましいことを考えていたつもりはないし、そう気にするようなことではない。……はずなんだけど、ここのところナツの様子は気になるところだ。
あまりジロジロ見るものではないと咎められているものだと思ったんだけど、謝ってみるとそうじゃなくてと呟いて俯くばかり。
ここ最近は俺が何かする度にこれだ。俺と違ってネガティヴなことを考えているのはないだろうが、その俯く様子は俺を彷彿とさせる。
「ところでだけど、藍越学園ってホントになんでもありなんだね」
「ん? まぁ、うん、そうだね。てっきり就職に有利な学校かと思ってたんだけど」
ナツは露骨に話題を変えてきたが、そこにツッコミを入れられると困るからこそなのだろう。特に追及する理由もなく、普通にナツの話題へ乗ることにした。
俺の受験する高校は私立藍越学園といって、学費も比較的に安く就職に強い学校という触れ込みで有名だ。
有名だからこそ進学に関してはあまり意識されていないものだと思えば、多岐に渡る学科コースが存在していた。
工業系や建築系のようなものから食品に関わるような学科もあり、その沢山の選択肢の中に当たり前のように美術科も存在していたという。
そんなマンモス校だったかなと思ったりもしたけど、実際下見に行ってあったんだからしょうがない。後は受験して合格するだけだ。
ちなみにだが、弾と数馬も藍越学園を受験するらしい。まぁ受けるのは普通科らしいし、科が違えば自然と会う機会も少なくなってしまうだろう。
「…………」
「きゅ、急に黙っちゃってどうしたの?」
「私たち、ようやくスタートラインに立とうとしてるんだなって思うと、なんだか不安に感じるよりワクワクしてきちゃった。これから無限の可能性が広がっていくんだなって」
てっきりテンポよく会話が続いていくんだろうなと思えば、ナツはなんだかいろいろなものを噛みしめているかのような表情に変わった。
けど、ようやくスタートラインへと立つ段階か。確かにそんなことを考えていたならさっきの表情も頷ける。
俺もナツもこれまでそれぞれが抱いた夢の実現を目指し、今日まで努力を重ねてきた。でもまだまだ、志望校に合格したところでようやく始まるんだ。
どんな人にとっても存在する道には、誰しもに大なり小なり困難が待ち受けていることだろう。何が待ち受けているかわからない。だかこそワクワクするんだ。ナツはそう言いたいのかも知れない。
かつての俺ならそんな道は不安だらけと吐き捨てていただろうが、それもまた可能性だと思えば確かにワクワクするような気がする。
きっと困難を乗り越えたその時こそ、俺たちはずっとずっと成長できるはずだから。その成長した自分自身に想いを馳せると、更にワクワクが加速するような気さえした。
「切り拓いていけるさ」
「え?」
「俺たちならきっと大丈夫。今なら、そう思えるんだ」
「ハル……」
自分で言っててどの口がとも思うけど、どうにも前向きな言葉が口を出て止まらない。まぁ俺も少しずつ前向きになれてるってことで。
とにかく、可能性っていうのは誰の目の前にもすでに用意されているものだ。後はそれをどう切り拓いて進んで行くかによって変わると思う。
俺みたいなのがこうして変わることもできるんだ。そしたら大抵のことは軽いもんだよ。転んだり躓いたりもするだろう。それでも、前に前に歩いて行けるはず。
俺にそういう考え方を抱かせてくれたのはナツで、そのことについては感謝してもしきれない。できることならもう少し見守っていてほしいものだったが、仕方のないことなのだろう。
いわゆる今生の別れというような大げさなものでもないんだし、どうせならたまの休みにでも会って驚かれるくらいの成長を見せつけたいものだ。
……まぁそれはいいとしてだ。ナツさん、どうしてそんなうっとりしたような表情なんです? そんな顔されるとまた直視できなくなるから勘弁してほしいのだけれど。
「わ……たし……も、もう行くね! ハル、出る時に鍵を閉め忘れないように!」
「え? ちょっといきなりどうしたの。そんなに急ぐとかえって――――」
「わーっ!? あぁっ、カバンの中身が……」
どうしていきなりそう思い立ったのかわからないが、ナツはもう受験会場に向かわねばとテーブルの上に放置しておいたカバンを慌てた様子でひっつかむ。
時間にはだいぶ余裕があるというのにこの慌てようだ。これはかえってよくないことが起きそうだと落ち着かせようとするも、どうやら手遅れだったらしい。
カバンの口が空きっぱなしだったというのに乱暴に扱ったせいで、そこらに中身の書類をぶちまけてしまった。
ほら言わんこっちゃない。……と直接伝えはしないけど、俺はナツの書類集めに手を貸した。終始恥ずかしそうにしていたのがとても印象的だ。
「……よし、大丈夫そう」
「本当に? ちゃんと確認した?」
「大丈夫だって。ハルは心配性なんだから。それじゃ、行って――――」
「ああ、待って待って。ナツ、忘れてる」
「あっ……。フフッ、うん!」
ナツはしっかりしてるようでそうでもない。というか、自分のことになると急に脇が甘くなるんだよ。本当に大丈夫なんだろうな。
もう少し隅々まで落とし物がないか確認しようとしていると、ナツは手早く玄関の方へと向かって行った。いったい何がそうさせるのかサッパリだ。
これはもはやナツを止めることは不可能と判断し、もうひとつの忘れ物について言及した。片腕を挙げながら忘れていると伝えれば、ナツも同じく片腕を上げ――――
まずは右手同士でハイタッチ。すぐさま左手同士でハイタッチ。今度は両手を揃えて上下反対に手を打ち合い、最後に両手でハイタッチ。
これはナツが考案したもので、大事なことがある時にのみ行う見送りの儀式のような感覚だろうか。大事なことと言いつつ、割と頻繁に行ってたりもするんだけど。
「落ち着いた?」
「……うん」
「それはよかった。じゃあナツ、お互い頑張ろう。応援してるから」
「うん、ありがとうハル! 行ってきまーす!」
最後にパチンと俺たちの両手が音を鳴らすと同時ほどに、ナツに気分はどうかと問いかけてみる。ナツは一瞬だけギクッとでも言いたげな表情を見せたが、数度深呼吸をした後に落ち着いたことを肯定した。
本当の本当に大事なことだというのに、ナツが出発の儀式を忘れるほど慌てていたのだろう。落ち着かせることに一役買えて本当に良かった。
残されたことと言えば、試験本番で結果を残すということのみ。しっかりとナツへエールを送ると、慌てるというよりは元気な様子で家を飛び出して行った。
(後はなるようになるでしょ。……多分だけど)
ナツが代表候補生であるというのは確かな事実だ。それに足りうる実力の持ち主という証明はされているのだから、よほどのことがない限りナツは合格するだろう。
というより、真面目に考えて候補生は受験をする必要性があまりないように思えるのだがどうだろうか。体裁、というやつならあまりにもお粗末に感じる。
……まぁ、男の俺がISに関するうんぬんを考えるだけ無駄というのもあるけど。さて、俺は出発までもう少し時間が残されているがどう過ごしたものか。
俺はこういう微妙な時間を有効活用する方法を知らない。携帯なんてほとんど連絡用にしか使わないし、ゲームとかもあまりしないしな。
それなら絵を描いているのがよほど有意義だと思う。俺にとってはそうなだけで、別にゲームそのものを否定する気はない。一応は付き合い程度に協力プレイもしたりするし。
(……無難にテレビかな)
弾や数馬あたりが居たのなら、なんとつまらんやつだと嘆くのだろう。俺だって世間のアレコレに特別関心があるわけでもないが、小時間を埋めるなにかと聞かれればそれしか思いつかない。
よって、ナツがつけっぱなしにしていたテレビに耳を傾ける。今は主婦の皆さん必見のお役立ち情報を紹介するコーナーのようだ。
それこそ俺が聞いてもあまり意味のなさそうなものだが、後でナツに教えるために覚えておくのも悪くはないのかも知れない。
勉強したことが吹き飛ばない程度にテレビから流れる情報を脳に詰め込んでいくと、思ったよりも早く時間は過ぎていった。
そしてコーナーが総合司会者の一声で締めに入ろうとするのと同時ほどに、俺の出発時刻にちょうどよい頃合いとなる。
したらばテレビを消して他に着けっぱなしのものがないかを確認。同じく玄関以外の戸締りがされているかを確認っと。
どれもかキッチリこなされていることを確認すると、俺はひとり頷く。そしてカバンの中から玄関の鍵を取り出し、いざ出発――――といったところで、手を滑らせて鍵を落としてしまった。
床を跳ねたり転がったりした鍵は、さきほどのナツが書類を落としたようにソファの下へ。まるで吸い込まれているようだ。なんて思いながら膝を折ってソファの下を覗き込む。
「……あれ?」
そこには鍵の他にも何かが入り込んでいる様子だった。とすれば、先ほどのナツのものとしか思えない。何を焦っていたのか知らないが、だからもう少し確認してほうがいいと言ったのに。
えーっと、どうやらクリアファイルみたいだな。とりあえず玄関の鍵を拾ってポケットに入れ、謎のクリアファイルを引っ張り出した。
さてさて、いったい何が閉じられているのやら。なんて軽い気持ちでクリアファイルの中を改めてみるとあらビックリ。それは受験において最も重要とも言えるであろう受験票ではないか。
「受験票ぉ!? よりによって!?」
自宅には完全に俺一人だと言うのに、思わず立ち上がりながら騒ぎ立ててしまう。だってそうでしょ、数ある書類の中でどうして受験票が隠れるようにソファの下に入るんだ。
だってこれがなければナツは受かるとか受からないの話ではなくなり、そもそも受験させてもらえないという事態もあり得る。
ナ、ナツが出発してからどのくらい経過した? 時計を確認してみると、だいたい三十分前後といったところだろうか。
えっと、俺の受験会場に着くであろう時間から逆算して、え~……間に合う! 今から全力で届ける努力をすれば、これを届けられるうえに俺も十分受験に間に合うぞ。
それを理解した瞬間、脱兎がごとく玄関へ。スリッパを乱暴に脱ぎ捨てて運動靴へ履き替えると、結局のところ鍵かけるのを忘れ全力で駅へと走った。
その途中、科は異なるものの同じく藍越学園を受験する弾に電話を入れておいた。多分予定よりも遅れる。もし間に合わないようなら容赦なく置いて行ってくれということだけ伝えた。
正確に言うなら話している余裕がないのだが、俺が息を荒げているせいか弾はなんとなくの事情を察してくれたらしい。
わかったという了解の言葉と、がんばれという励ましの言葉をもらうと通話は切れ、俺も今一度走ることへと集中した。
恐らく十五年生きて自宅から最寄り駅まで辿り着く最速タイムを易々と更新した俺は、すぐさま駅員さんを捕まえてIS学園の試験会場近くの駅を問いただす。
そして教わったとおりの駅への切符と、藍越学園近くの駅の切符を買い次第ホームへ直行。出発寸前の電車になんとか乗り込みやっと一息というところ。
時間が押しているということもあってか、電車に乗っている合間はソワソワしっぱなし。不審に思われるかもなんていう心配は微塵も浮かばなかった。
そして電車はIS学園試験会場の最寄り駅へ到着。ホームに降りて左右を見渡せば、どうにも女子の姿が目立つから間違いはなさそうだ。
(えっと、そしたら……)
急いで駅構内の出入り口をいくつか確認すると、女子の波がこぞってひとつの箇所へと集中している。ならばこの波をたどっていけばいつしか試験会場が見えてくるはず。
女子たちふくめ人とぶつからないよう細心の注意を払いつつ、笑い始めそうな膝に力を込めて再び全力で駆けていく。
そうすると、いつしかこんな看板が立てかけてあるのが目に入る。
IS操縦者育成特殊国立高等学校、受験会場はコチラ……。確かIS学園の正式名称だったはず。となるとやはり間違いはなかったということだ。
よし、もうひと踏ん張りだ俺。そうやって自分自身を激励し、最後の力を振り絞ってまた駆けだした。するとようやくそれらしい建造物が見えてきたので、突撃と表現するにふさわしい勢いでドアを開いた。
(案内板……案内板は……あれか!)
そこらの壁にかけられた案内板を覗いてみると、そこには施設内の見取り図が書かれていた。現在はそこがどういう場所なのかも同じく。
受験生控室……は、多分女子たちが着替えてるだろうからダメだ。直接渡すという線はまずこれでなくなる。だとすると残るのは教師に預けるという選択肢だな。
それなら目指すべきはこの教師詰め所という場所かな。複数あるみたいだけど近場から攻めよう。後は教師の人が露骨な女尊男卑主義者でないことを祈ろう。
下手すると今この場で通報されてもおかしくないような世の中だ。だがやはりいつものように気後れしている暇なんかない。
記憶した案内板どおりの道順を辿り、とても大きな扉が構えてある一室の前に到着。疲れ切った身体にムチ打ち、中に居るであろう教師に呼び掛けた。
「あ、あのー! ごめんくださーい!」
「はいはいなんのご用――――って男? どうして男がIS学園の受験会場に?」
「えっと、これ、ですね、知り合いの子が受験票を落として行きまして。その、つまり、届けに来たと言いますか」
大きな声で呼びかけてみれば教師らしき人が顔を出した。だがその様子はなんとも面倒くさそうというか、あからさまに気が立っているという風体だ。
あ~……なんかナツがIS学園は倍率がおかしいって言ってたな。対応する人数がアレでストレスがたまる一方なのだろう。
ただそれを抜きにして、まぁ、あれだね、どうにも女尊男卑主義っぽくもあるみたいだ。俺を見る眼差しがなんとも強烈というか、率直に言うならなるべく視界にとどめたくないと思っているのが丸わかりだ。
しかし俺の訪ねて来た事情を聞いたならば話は別だろう。代表候補生クラスの受験そのものを男子一人の対応でパーにしたなら、俺に真面目に取り合わなかったこの人にも責任の一端が向くはず。
手渡した受験票を見るなり、教師の顔つきもかなり変わった。ナツそのものに見覚えがあるのか、はたまた織斑という名字に引っ掛かりを覚えるのかは不明だ。
途中から俺のような普通そうなのと織斑家の接点がみえないのか、受験票と俺の顔を何度も見比べていた。
それを繰り返すことしばらくして、教師は大きく咳払い。
「事情は承知したわ。とりあえず少し入ってもらえるかしら」
「は、はい」
彼女にとっては面倒ごとが増えたことには変わらないのか、やはりどことなくそっけない対応を受けてしまう。まぁ、通報されないだけよしとしよう。
入るなりそこらにあった紙とペンを渡され、名前と読みを書くよう言われる。誰からの届け物かハッキリさせておくためだろう。
手早く漢字とフリガナを駆使して日向 晴人と書いてしまえば用事は即終了。ナツは責任もって受験させるという言葉を受け取った。
それと同時に俺の任務も終了を告げ、後は俺が受験に間に合うかどうかの瀬戸際といったところだろうか。ならば善は急げ。このまま駅へとトンボ返りだ。
「えっと、それじゃ自分はこれで。失礼しました」
「足とか必要なら出すわよ。後から間に合わなかったとか言われても面倒だし」
「い、いえ、今から走ればなんとか――――って、わっ、たっ、たっ……!」
「ちょっと気を付けてよ。そっちの方向は――――」
あくまで己の保身のおまけらしいが、教師の人は足を手配するという提案を挙げてくれた。その言葉を耳にするのと同時に、腕時計に目をやってみる。
思ったよりも駅から近かったしな……。体力の消耗を考慮しても、今から全力で走ればなんとか間に合うはずだ。……希望的観点である可能性も捨てきれはしないけど。
とにかく、それならなおのことこうして突っ立っている時間すら惜しい。提案のほうは適当に断り、俺は駆けだそうと両足に力を込めた。
しかし、自分でも思っていた以上に体力の消耗が激しかったらしい。もしくは火事場の馬鹿力的なもので気づきもしなかったのか。
どちらにせよ、初めの一歩目すらまともに踏み出すことすらできず、足をもつらせて前方に転倒しそうになってしまう。
なんとか片足でピョンピョン跳ねることにより転倒を回避。そのまま壁に手を着けることにも成功してひと段落と言ったところか。
……ん? なんだか壁にしてはゴツゴツしているというか、形が平坦ではないというか。妙に無機質で冷たいというか。
手の感触に違和感を覚えた俺は、まさぐるようにして壁らしき何か、もしくは壁でなかった何かを触ってみる。そして目を向けることで、ようやくその正体に気が付く。
「これは、IS……?」
「IS学園の受験会場なんだから訓練機くらいあるわよ」
俺がもたれかかっていたのはISで、どうやらそれは受験用に準備されているものらしい。へぇ、こんな近くで見るのは初めてだが、思っていたより大きいものなんだな。
俺も男の子ではあるし、ロボットとくればなんとなく心惹かれる部分はあるかも。今度ナツの専用機とかも生で見させてもらえないだろうか。
(まぁそれはさておいて……)
ISのようなものが勢いよく手をついただけで壊れるはずもないだろうし、余計なことを考えるのよりも前に急がなくては。そのせいで転びかけたのはあるけど。
そして俺がもう一度走り出そうとした次の瞬間のことだった。何か脳の奥の方でスパークでも起こったかのような衝撃が走る。
今の衝撃でまたしても足元がふらついてしまうが、ISにもたれかかったままの状態だっただけに事なきを得た。しかし、この脳がズキズキする感じはいったい……?
例えるのならば、そう、まるであらゆる情報を脳に直接叩き込まれているような……。ISに触れてから起きた現象だが、まさかそれが原因だとでも言うのか?
……まさかとは思うが、それならとっとと手を離してしまうことにしよう。ISにもたれかかるのを止めようとしたその時、俺の視界が白に包まれた。
頭痛が起きていただけに気絶の前触れかとも思ったが、意識そのものはあるようだ。件の頭痛も嘘のように引いている。そこで恐る恐る目を開いてみると――――
「……あれ、なんか目線が高い? というかこれ、あれ? ……あれぇ!?」
「な、な、な、な……なんで男がISを!?」
「お、俺が聞きたいくらいですよ!」
まず初めに急に背でも高くなったような視点に違和感を覚え、すぐさま足元を見る。すると俺の足は鋼鉄の鎧のようなものを纏っているではないか。
次に腕、肩を視界に入れたあたりでとある事実にようやく気が付くことができた。俺は、女性にしか扱えないはずのISを装着しているのだと。
教師の人は俺を指さしながらあんぐりとした表情をしながら騒いでいるが、なんでかなんて俺も知らない。知るはずがない。
平々凡々、常鱗凡介、 尋常一様とそのあたりの普通を示す四字熟語がピッタリ当てはまるのが俺。そんな特異的事例を持ち得るなんて考えもするはずないじゃないか。
「と、とにかく! そこで大人しくしてて!」
「大人しくって、これどうやって外せば――――行っちゃった」
とにかくこれは世紀の大発見であることに違いない。教師の人は現場の責任者等に報告でもするつもりなのか、大慌てで部屋を出て行ってしまう。
その前にISの外し方くらい教えてくれなくては、これじゃあ座ることもできない。勝手に弄るのもあれだろうし、武装なんか出しちゃったら大事だ。
まぁ、なんというか、今の俺が思うのはただひとつ。
「受験、間に合いそうもないかぁ……」
この哀れなまでのテンプレ展開である。
いくら晴人が普通な奴というコンセプトでも、流石に動かさないわけにはいかないというのもありますが……。
ちなみに、動かせる理由は練ってあるんですが……多分ですけど本編中で語る隙は無いと思われます。なるべくそういう話を持ち込みたくないというのもありますが。
さて、もうしばらくしょうもない話にお付き合いください。
ハルナツメモ その7【見送りの儀式】
一夏考案の大事な時に見送る際に用いられる儀式的何か。
受験などの大事の際にのみ使われるかと思いきや、案外その使用例は多岐に渡る。
基本的に、一夏が晴人に促すケースの方が多い。