ハルトナツ   作:マスクドライダー

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今回はだいたいタイトルで察することのできる内容です。
でもメインキャラが絡むと主人公が主人公できるので有難い。
よって今回もいちかわ要素は……ナオキです。





以下、評価してくださった方々をご紹介!※順不同

松本ひろやす様 5837様 イージスブルー様 あい様 MASAKI-様 ヴェルガー様


評価していただいてありがとうございました!



第17話 ブリティッシュな彼女

「ん~……はぁ」 

 

 IS学園に入って初の授業が終わりを告げ、授業合間の十分休憩へと相成った。授業のしんどさと言うよりは、肩身の狭さに思わず大きな背伸びをひとつ。

 一時限目はIS学園を受験したなら問題なんかあるはずないよね? みたいな基礎中の基礎をおさらいするような内容だったらしい。

 俺からすれば超特急で頭に詰め込んだせいであやふやな部分も多かったが、ナツや母さんのおかげで着いて行けないと言うことはなさそうだ。

 ヘイムダルを動かす実技的なこと以外にも、参考書を基準にしてみっちりと座学もこなしてきた。その世話をしてくれたのが二人というわけ。

 

(二人と言えば、どうしたもんかな……)

 

 一時限目が終了すると同時に、ナツも箒ちゃんも多くの女子に引っ張り込まれて入る余地がない。つまり今の俺は完全にボッチ状態ということだ。

 ……困った。友達と胸を張って呼べる人物は少ないが、俺は別にボッチというほど寂しいやつではなかったはずなんだが。

 しかし、女子に群れの中で男子が一人取り残されるのは辛いものがある。かと言って、俺から話しかけるような勇気もない。

 ……明日からは画材一式を詰め込んだリュックサックを持ってきておくことにしよう。空き時間に絵でも描いてれば気もまぎれるだろうし、少なくともこうしてボーッとしてるよりはよほどいい。

 

「少しよろしくて?」

「あ、はい、全然よろしいですよ」

 

 またしても溜息を吐きそうになっていたところ、とても丁寧な、まるで漫画とかで見るお嬢様口調で話しかけられた。

 思わずこちらも不可思議な丁寧口調になりつつもきちんと返事をし、声のした方向へ回転しながら立ち上がった。

 すると俺の目に映ったのは、なんと言ったらいいのだろうか、こう、ザ・金髪青目の美人さんという風体の女子。

 金糸と表現するにふさわしいブロンドの髪を縦ロールにしていて、貴婦人のような優雅さも持ち合わせているように思える。

 しかし、それを除いてもどこかで見たことがあるような?

 

「無言で人の顔をマジマジと、不躾ですわよ」

「こ、これは失敬。えっと、テレビで見たことある人だなーと」

「あら? このセシリア・オルコットに見覚えがあるとは、多少は勉強なさっていらっしゃるのね」

 

 どこで見たことあるのかを思い出そうとしていると、金髪さんが徐々に整った表情を崩していくのがわかった。

 どうにも棘があるような感じがしないでもないが、普通に俺に非があると思うのでひとこと言っておく。が、別にやましい気がなかったのはわかってもらわねば。そう、確かテレビで見たことあるんだった。

 俺がそう発言すると、オルコットさんと言うらしい彼女は、見る見るうちに得意気な様子へと変わった。

 ……ああ、そうそう、セシリア・オルコットさんと言ったらイギリスの代表候補生じゃないか。海外選手を取り扱った情報番組で見たんだと思う。

 IS選手なんて、基本的にフユ姉さん以外に贔屓してる人がいなからなぁ。この場合、思い出せたことは幸運だったろう。

 

「ですが、それでも期待外れですわ」

「と、言うと」

「どうやら入試の際に試験官に勝ったのはわたくしだけのようで。所詮は男性なのに扱える、それだけの話のようですわね」

 

 これはどうやら確定というか、なんとなくの予感はあったが、オルコットさんは女尊男卑主義者のようだ。

 ISは本来女性にしか扱えない。つまり女性の方が偉いという謎理論が定着してしばらく経つが、俺みたいなのには住みにくい世の中だ。

 例えば反論しようものなら男のくせによく吠えると言われ、逆に媚びるようなことを言えばやっぱり男はダメだと言われてしまう。

 じゃあどうすればいいのって話ではあるが、まぁ余計ないざこざは最大限避けていく方向でいこうじゃないか。

 とりあえず、オルコットさんを褒めてみることにしようか。試験官に勝ったって、なんで騒がれないのか不思議なくらいだ。

 

「オルコットさん、勝っちゃったってすごいね。相手が訓練機とはいえ――――」

「フン。わたくしにして見れば、当然の結果ですわ! なぜならわたくしはイギリスの代表候補――――」

「織斑先生に勝っちゃうって」

「せい……? ……貴方、今なんと仰いました?」

「えっ? だから、訓練機に乗ってたとは言え、織斑先生に勝っちゃうってすごいって」

 

 そりゃあ一介の教師が訓練機に乗って、専用機を駆る未来の国家代表と戦えば勝機は薄いだろう。オルコットさんの言う当然の結果とはある意味正解なのかも。

 だがそれは一介の教師ならの話で、相手がフユ姉さんでもなお勝つっていうのは単にオルコットさん技量が優れているということで――――

 と思っていたのだけれど、なんだか様子がおかしいな。俺がフユ姉さんの名前を出した途端に顔つきが固くなったというか。

 あれ? てっきり候補生の相手はフユ姉さんがしたのだと思っていたが。だってナツが千冬姉が相手で驚いたって言ってたし。

 

「えっと、ナツ! ごめん、少し聞きたいことがあるんだけど」

「なになに、どうしたの?」

「入試の相手試験官、誰だった?」

「え? 前も言ったけど、千冬姉だったよ。千冬姉が訓練機に乗ってやっと惜しいとこまで追い詰められたんだけど、そのまま時間切れで終了……って感じ」

 

 クラスメイトとの親睦を深めていたナツには悪いのだが、こればかりは再確認せずにはいられなかった。

 それなりに大きい声を出しながら手を振ると、ナツは女子一同に断りを入れてから小走りで俺へと近づいてくる。

 オルコットさんとのやりとりで疑問に思ったことを聞いてみるも、なんで今更その話なのかと向こうも不思議そう。

 回答は得られたわけだが、やはり俺の記憶に間違いはなかったらしい。ただし、代表候補生は確定でフユ姉さん相手と決めつけたのは俺の独断と偏見によるもの。

 そうか、これはナツだけ特別だったらしい。あれだ、どれだけやれるようになったか私が直接相手してやろうみたいなやつに違いない。

 本人に言ったら鉄拳制裁間違いなしだが、フユ姉さんはナツに厳しいようで甘いからなぁ。と言いつつ、俺も他の人よりは甘えさせてもらっているんだろうけど。

 

「っ……貴方、よくもわたくしに恥をかかせてくれましたわね!」

「えぇ……? いや、確かに俺の勘違いが過失十割なのは認めるけど、別にそんなつもりは――――」

 

 オルコットさんは顔を真っ赤にしながら俺を指さし、教室を揺らすかのようなヒステリックな声を上げた。

 試験官を打倒したオルコットさん。訓練機使用とはいえフユ姉さんを追い詰めたナツ。どちらに軍配が上がるかと聞かれれば、ほぼ確実に後者だろう。

 となると、得意気にしていたオルコットさんはみじめなわけでして。と言いつつ、試験官に勝つことそのものは讃えられるべきものだと思っている。

 だがよほど屈辱的だったのか、オルコットさんは俺の弁明も聞かずにプリプリ怒りながら自分の席へと戻って行った。

 ……結局なんの用事だったんだろ。それにしても……。

 

「墓穴を掘ってしまった……」

「えーっと、よくわからないけど、ご愁傷様?」

「縁起でもないから拝まないでほしい」

「南~無~阿~弥~陀~仏~」

「お経もNGだよ! というか余計悪くなってるし!」

 

 墓穴も墓穴、俺がすっぽり収まってもまだ余りあるくらいの墓穴だ。絶対にこの後面倒なことになる未来しか見えない。

 俺がそうやって頭を抱えていると、ナツは両手を合わせてご愁傷様とひとこと。もうホント、縁起でもないと言うよりはシャレにならない。

 すかさずツッコミを入れるも、ナツは悪ノリでも始めたのか両手をすり合わせて経を唱え始めるじゃないか。

 その後もしばらくナツがボケて俺がツッコミを入れるやりとりを繰り返したわけだが、周囲にこう思われているのは知る由もなかった。

 

(((夫婦漫才だ……)))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ああ、そう言えばひとつ忘れていることがあった」

 

 二時限目の授業が始まってすぐのこと。フユ姉さんは本当にふと思い出したのか唐突にそう切り出した。なんでも、クラスの代表を決めなくてはならないらしい。

 クラス代表と言うのは普通の学校での委員長のようなもので、クラスのリーダー的役割を担うことになるのだとか。

 普通ならクラスの意見をまとめたり、委員会に出たりと雑務をこなすのが主となるのだろうが、ここは天下のIS学園である。そう一筋縄ではいかない。

 何かって、ISを用いた試合の代表も兼ねるみたい。ガイダンスとかなかったからわからないが、やっぱり年間行事で試合が組まれていたりするんだな。

 

「さて、自薦他薦は問わんぞ。我こそは、またはコイツに任せたいというのがあるなら名乗り出よ」

「はい、日向くんがいいと思います!」

 

 フユ姉さんが意見を求めると、威勢のいい声で俺の名が挙がった。まぁ、他薦も可と聞いた時点で予測はできたから騒ぎはしないが。

 物珍しい、ないし面白いことになりそう、ないし興味本位ということならば、唯一の男子生徒である俺の名が出るのも違和感のある話ではない。

 俺は間違いなくクラスを引っ張るリーダーの器ではないが、みながそれを望むのならそれもまた一興だ。

 そうやって、半ば諦めたような思考を巡らせていると――――

 

「はい! 私、クラス代表やります!」

「ナツ……!?」

「えへっ……」

「ならば自薦のほうが効力は上だ。何もないなら織斑ということになるぞ」

 

 ナツが勢いよく手を挙げたかと思えば、あろうことかクラス代表に名乗り出るではないか。そんなの率先してやりたがる性格ではないと言うのに。

 するとフユ姉さんが告げたのは、遠回しながら俺のクラス代表落選とも取れる言葉だった。もしやこれを見越して……?

 そう思って目を向けてみると、目の覚めるようなウィンクで返された。やはりと認識するよりも前に、心臓が跳ねてそれどころではなくなってしまう。

 なんだアレは、天使だろうか。可愛らしさもそうだが、俺を争いごとから遠ざけるためにわざわざ注意をそらすようなことをするなんて。

 ……今度何かしらのお礼をさせてもらうことにしよう。

 

「お待ちください、そんな選出認められませんわ!」

「オルコット、不満があるなら手短に発言せよ」

「不満と言うなら、そちらの方にです! 貴方、少なからず選ばれたという認識はお持ちでして!?」

 

 今にもナツのクラス代表が決定されようとしたその瞬間、どこかで聞いたようなヒステリックな声が響く。オルコットさんだ。

 オルコットさんは手を挙げるどころか立ち上がったかと思えば、ズビシと俺を指差して他薦されたという自覚はあるのかと問うてきた。

 ……確かにオルコットさんの言葉にも一理あるのかも。理由としては不十分かもしれないが、彼女らが俺を推薦したという事実は変わらない。

 だというのに代表から落選して安心するというのは、うん、ちょっとは失礼なことなのかも知れないな……。

 

「ちなみにですが、わたくしも織斑さんと同じく代表候補生ということで立候補させていただきます」

「じゃあ、この三人で再投票でもする?」

「いいえ、その方法では彼に票が割れるのは実証されましたわ。織斑先生、わたくしからひとつ提案が」

「もったいぶらずにさっさと言え」

「ここはIS学園らしく、総当たりの模擬戦を要求しますわ」

 

 オルコットさんの提案は全てを丸く収めているようで、思いきり自身の願望が見え隠れしていると思う。無論、性格からしてクラス代表になりたいのは間違いないんだろうけどさ。

 総当たりを提案してしまえば、さっき恥をかかされた相手である俺。及び実力を白黒ハッキリさせるためにナツとも戦えるという寸法なのだろう。

 一度怒ったら周りが見えないタイプと思ったが、どうやらそういうことでもないらしい。そのぶん厄介とも取れるけど。それにしても――――

 

「模擬戦かぁ」

「あらあら、随分と不安そうな顔をされるのですね。まぁ? わたくしは優しいですから。どうしてもと仰るのならハンデを付けてさしあげますわよ」

 

 む、しまったな、心の声が漏れてしまったらしい。まぁ、つい先日まで気弱な一般人だった俺にはハードルの高い話ではある。

 しかし、オルコットさんの要求を呑む呑まないはまた別の話だと思う。

 俺はオルコットさんに今すぐにでも掴みかかりそうな勢いのナツを抑えつつ、とりあえず提案に関しては取り下げてもらう旨を話した。

 

「いや、別にハンデはいらないかな。むしろ全力でやってもらえるとありがたいんだけど」

 

 むしろ全力でと伝えると同時に、教室内からは静かに俺をあざ笑うかのような声が各所でチラホラ。

 この反応は別に予想通りだからいいのだが、予想外にナツの機嫌が悪くなっているからそちらの方を勘弁してほしいものである。

 周囲は俺に対して今からでもハンデを付けてもらえとか、男の方が強かったのは一昔前だとか言っているみたい。

 なんというか、どうしてそういう話になるんだろう? 論点がズレまくって、なんの話をしていたのやらわからなくなってしまいそうだ。

 ナツを落ち着かせるという目的を最たるものとし、一応俺の想いはわかってもらうことにしよう。

 

「えーっと、オルコットさんに聞きたいんだけど。例えば憧れとか目標にしてる選手が居るとするじゃない? そんな人にハンデ有りとか、手加減されて勝って嬉しいかな」

「何を世迷言を仰いますの。嬉しいどころか、むしろ屈辱的ですわ」

「だよね。まぁ俺みたいなのに全力を出す価値はないって言われちゃったらそれまでなんだけど、つまりそういうことだよ」

 

 昔の俺だったら、多分ハンデの申し入れを有難く受け入れていたことだろう。だけど今は違う。そういうのは、違うんだ。

 ぶっちゃけ、オルコットさんにはハンデをもらったって勝てはしないだろう。経験がものを言う世界で、たった数日しかISを動かしていない俺との差は歴然だ。

 けど、だからってハンデをもらっちゃ意味ないんだ。勝てないからってハンデをもらう? そんなのもったいないじゃないか、せっかくこうして強者と戦うチャンスができたんだから。

 本音で言うなら模擬でもなんでも戦闘なんてないほうがいいに決まってる。けど、もう逃げたくないんだ。情けない俺のままでいたくはないんだ。俺は変わりたい。だから――――

 

「仰りたいことはわかりましたが、自ら惨めに負けに行く姿勢は理解しがたいですわね」

「……惨めだっていいんだ」

「……どういう意味です?」

「俺だってわかってるよ、全然歯が立たないことくらいはさ。けど、どんなに惨めな負け方したって、どんなにボロボロにされたって、それは大事なひとつの経験だって、俺はそう思う。けどそれは、オルコットさんが全力で向かってきてくれないと意味がないんだ」

 

 ISに関する知識も経験もほとんど持ち合わせない俺にとって、ここで経験する全ては糧になってくれるはずだ。

 例えばオルコットさんに惨敗を喫するとしよう。それは全く歯が立たない、ということがわかる。それだけでも有意義じゃないか。

 きっと俺が専用機を所持しているという身の上である以上、オルコットさんと交戦する機会はまだまだあるはず。

 次戦った時、そのまた次戦った時、初めの惨敗とどう違うかを割り出し、いつしか手の届くところへ――――というのはあくまで理想だが、とりあえずスタートラインに立つにはオルコットさんの全力が必要なのだ。

 

「だからどうか、全力全開でよろしくお願いします」

「……いいでしょう。そこまで仰るのなら仕方ありません。せいぜい後悔することね」

「話はまとまったか? それでは、一週間後に第二アリーナにて総当たり戦の初戦を行う。クラス代表決定ごときに日数を使うのは遺憾だが、その翌日、翌々日に第二、第三試合という形をとるぞ」

 

 俺が立ち上がって頭を下げながら全力を願うと、オルコットさんは心底から理解できないというような声色で俺の要求を呑んでくれた。

 男女の差だろうか。それとも、女尊男卑の風潮がそうさせるのだろうか。どっちにしたって、彼女の中にある常識では図りきれないらしい。

 そこらでフユ姉さんは締めに入り、こちらは心底から遺憾というのが声に表れている。流れでこっちが勝手に日程を作っちゃったもんだしね……。

 ここは触らぬ神に祟りなしというやつを信じて大人しく座っておこう。オルコットさんもいつの間にかそうしてるし。

 胸をなでおろしながら座る時に印象的だったのは、心配そうにこちらを見つめるナツの視線だった。

 

「晴人、先ほどの発言を撤回させてもらう」

「え、いきなりどうしたの?」

「背丈以外に変わらんなと言ったことだ。どうやら私の見当違いだったらしい。まさか晴人が代表候補生相手に啖呵を切るとは」

「いや、喧嘩を売ったつもりはまったく――――あれ、喧嘩売ったのと同じなのかな」

 

 二時限目が終わるとすぐに箒ちゃんに話しかけられたかと思えば、いきなり謝罪とも取れる発言から始まり目をパチクリとさせてしまう。

 再会を果たした直後の発言に関してらしく、なんだかしみじみとした様子で、言いたいことを言えるようになったじゃないかと感心しているように見える。

 しかし、啖呵を切ったという表現は少しばかり大げさで、俺としてもそういうつもりはまったくない。けど、箒ちゃんに言われてみて似たようなものだということに気が付いた。

 まぁでも、全力でやってほしいという考えは変わらない。それに覆水盆に返らずとも言う。なので今から騒いだりすることはしない。

 

「とにかく、俺が変わったって感じるならそれはナツのおかげで――――ってナツ?」

もー! もー! やっぱり普通にかっこいいよぉ……!

「なんだ、少しそっとしておいてやれ」

 

 昔の俺なら今頃なんと情けない奴だと箒ちゃんに怒鳴られていたところだろう。むしろ怒鳴られるだけではすまなかったかも。

 俺がそうならなかったのは全面的にナツのおかげだ。だから褒めるのならナツをと視線を向けてみると、よくわからない光景が広がっていた。

 ナツは机に突っ伏してブツブツと何かを呟いている。それに、熱を帯びていることが一見してわかるくらいに耳が赤い。

 何を言っているのか接近して聞いてもよかったのだが、同性である箒ちゃんがそっとしておけと言うのなら、まぁ、特に気にしないでおこうかな。

 そうしてしばらく箒ちゃんと談笑していると、ナツはいきなりスイッチでも入ったかのように、ガバッと机から起き上がった。

 

「ハル、力になるからね!」

「代表候補生にそう言ってもらえるのはありがたいな。うん、頼りにしてる」

「私にも手が貸せることがあるなら言ってくれ。微力ながら協力するぞ」

「ありがとう、箒ちゃん」

 

 改めて思ってみると、代表候補生と模擬戦するのに一週間の猶予しか存在しないんだった。お世辞にも十分な期間とは言えない。

 やっぱり俺がどれだけ努力したって、勝てないには勝てないんだろう。けど、だからと言って何もしない理由にはならない。

 それに勝てないとはわかっているが、勝つ気がないわけではない。むしろやるからには勝ちたいさ。

 だから一週間を大切に使う必要があり、そう考えればナツと箒ちゃんの申し出は心からありがたいものだった。

 ……そうだ、後で簪さんにも声をかけてみることにしよう。あまりにも早く困ったことが発生してしまったが、彼女なら惜しみなく協力してくれるはずだ。

 まぁとりあえず、やれることからコツコツと……と言ったところか。しばらく絵のことは封印しないとダメかもね。

 なんて思いながら、迫りくる一週間後へと想いを馳せる俺であった。

 

 

 

 

 




なんか……なんかセシリアのコレジャナイ感……。
母親に媚びる父親に嫌悪を抱いた。みたいな描写があったはずなので、一見女性に媚びているように感じられる晴人は一夏よりも相性最悪……なはずなんですけど。
悪口言わせようと思ったらいくらでもやれるんですけどねぇ。でもエレガントじゃなくなってもセシリアではないような?
……ウチのセシリアはマイルドセシリーということでいきましょう。





ハルナツメモ その10【漫才】
 一夏が悪ノリした場合に限るが、やりとりが自然に漫才風になる。無論、一夏がボケで晴人がツッコミ。二人とも語彙が妙に達者になるのが特徴。
 しかし、晴人は時折だが天然で盛大なボケをやらかすので、その場合は一夏がツッコミに回る。晴人にボケた自覚はない。
 一夏が男性時には単なる幼馴染ないし兄弟が繰り広げる漫才だが、女性になってからは夫婦漫才と感じる者の方が多いようだ。
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