某レジェンド・オブ・いちかわいい作品リメイク版、完結おめでとうございます。
相変わらず化け物じみた更新速度と内容の濃さでしたね。
ちょうど連載時期が被って戦々恐々とはしましたが、勝手に切磋琢磨させていただいたような気分で励みになっておりました。
私は私で、とりあえず完結目指して頑張ってまいりましょう。なお内容。
「なるほど。ありがとう、タメになったよ」
「いえ、このくらいお安い御用ですわ」
放課後、セシリアさんを捕まえて少しばかりアドバイスを貰っていた。相談相手で察してもらえるかも知れないが、射撃のことに関してちょっと。
ヘイムダルの射撃武装といえば
セシリアさんとの模擬戦では初見という要因で当てさせてもらったという感じだが、速度さえわかってしまえば真っ直ぐ飛ぶだけなんで避けるのは易いみたいで。
候補生ならまだしもなんだけど、箒ちゃんにすら避けられたのは流石にショックだった。どんだけ下手なんだ俺と愕然としたのは記憶に新しい。
これはまずいとセシリアさんに相談したわけだが、やはり射撃型の機体に乗っているだけあって知識と経験は豊富で、とてもタメになる話を聞くことができた。
後は生かすも殺すも俺次第。懇切丁寧にアドバイスしてくれたんだから、キチンと有効活用しないとな。
「日向くん……まだ居る……?」
「あっ、簪さん。こんにちは」
「簪さん、御機嫌よう」
ではそろそろお暇をといったところで、簪さんが教室へ訪ねて来た。その手にヘイムダルの待機形態が握られていることから、頼んでおいたことの結果が出たのだろう。
何かって、例の変身みたいな展開方法をどうにかできないかと相談してみたのだ。
別に試合だけなら構わないが――――いや、構うけど、大いに構いはするんだけど……! とにかく、緊急時に展開が必要な時に、あんなことやってる隙があるわけないでしょうに。
それこそ、変身中は攻撃しないのがお約束な敵キャラよろしく待ってくれるはずもない。要するに俺の命に係わる問題だ。
「整備科の先生と協力した結果……」
「結果……?」
「無事外せた……。今後は手にとってさえいれば展開できるはず……」
「あ、あぁぁぁ……ありがとおぉぉぉぉ……! 簪さん、本当にありがとう!」
「晴人さん、お気持ちはわかりますが何事かと思われますわ」
特撮好きらしい簪さんとしては複雑な心境らしいが、どうやら例の機能はつつがなく解除することができたらしい。
あまりの嬉しさに崩れ落ちた俺は、膝をついたままの状態から簪さんの手を取り何度も上下に振った。
するとセシリアさんが大げさだとそっと耳打ち。確かに廊下からこちらを見た女子が、何事かと首を傾げていた。
これはよくない。俺はともかく簪さんにまで迷惑が掛かりそうだ。それを理解した俺は、すぐさま簪さんの手を離して立ち上がる。そして待機形態のヘイムダルをホルスターへしまった。
「でも……製作者の意地は感じた……。システムに厳重なロックがかかってたから……」
「何が製作者の方にそこまでさせたのでしょう?」
(どんどん実の母って言いにくくなっていくなぁ)
簪さんは顎に手を当てるような仕草を見せると、うむむと唸るようにかなり難しい案件だったと呟く。
セシリアさんもヘイムダルの諸々から製作者がアレな人だとは察していたようで、今の言葉を聞いて更に評価を変人にランクアップ? ダウン? させたようだ。
別に母さんそのものは当然家族として好きだけど、母さんが製作者と知れたら恥ずかしくてやれない。言う必要がないから教えなかったが、速やかに自白しておいた方がよかったかも。
それはいいとして、アドバイスやヘイムダルの件の他にもひとつ聞いておきたいことがあるんだった。聞き込みできる人数が増えたからちょうどいい。
「ところでだけど二人とも、ナツを知らないかな」
本当は声をかけようと思っていたんだが、こちらに一瞥もくれずに教室を出てしまうものだから気後れしてしまった。
いくら俺とナツが家族同然だからといって過干渉はよくない。そう考えてセシリアさんに手解きを受けていたわけだが、どうにもナツのことが頭にちらついてならなかった。
同室であるからいずれは会える。だが放置しておくにはあまりにも捨て置けない出来事が起きてしまっているのは事実。
いくらナツでも自棄になってヤケを起こしているということはないだろうが、様子くらいは確認して然るべきというやつだ。
「一夏……? ……そういえば見かけない……」
「わたくしも心当たりはありません」
「そっか」
しかし、残念ながら二人とも心当たりはないらしい。
俺の知らない所で放課後の予定でも聞いていればと思ったんだが、そう都合のいいことはないか。やはり自力で探すしかないらしい。
とはいえ、手掛かりがまったくないわけではない。ナツの行動パターンは把握しているつもりだし、脳内にある候補をいくつか当たれば正解を引けるだろう。
そうとわかれば早速行動に出るとしよう。おっと、その前に二人の時間をいただいたことにキチンと感謝をしなければ。
「二人ともごめん、俺の用事に時間を使わせてなんなんだけど――――」
「お気になさらず、一夏さんに御用とあらばお急ぎください」
「日向くん……また明日……」
「ありがとう。また明日!」
両手を合わせてまずは謝罪から入ろうとしたのだが、二人とも皆まで言うなみたいな様子で俺を見送ってくれた。
俺は本当に友達に恵まれているものだ。そう心中で噛みしめつつ、二人に感謝しながら教室を出てナツの捜索はスタートした。
どの候補から攻めたものか。ひとまず消去法として訓練という線は消える。アリーナの使用申請をしたという話は聞かない。
部活という線も……ないかな。ナツは剣道部所属で、部活がある日はいつも箒ちゃんと連れ立って教室を出ていく。箒ちゃんが追いかける様子もなかったから、休みって可能性が高そうだ。
だとするなら、やっぱりあそこだろうか。一人でいる時に見かけたことは一度じゃないし、やっぱり確率が高そうな場所から向かうべきだ。
方針が決まった俺は、教師に見つかっても注意を受けなさそうな速度で走り出した。俺の懸念が杞憂であることを祈りながら。
「一夏」
「あっ、鈴。どうかしたの?」
放課後、とある場所を目指して歩いていると、鈴に呼び止められた。待ち伏せでもしていたんだろう。
それにしても、どうかしたのかとは我ながら白々しい。どうかするに決まっているよね。結局話は平行線で終わっちゃってたんだし。
鈴も今朝のことを気にしているのか、話しかけたというのになかなか口を開かない。それどころか、ああでもないこうでもないと考えが錯綜しているようだ。
けど、そんな鈴に私もかける言葉が思いつかなかった。別に今朝のことに怒っていたりとかはないけど、こちらとしても気まずいのだ。
話しかけたのは自分という手前もあってか、最終的に話を切り出したのは鈴の方。少し身体を脱力させると、うなだれるように頭が下がった。
「ごめん。一夏が一番難しい状況なのに、アタシ、あんなこと」
「ううん、鈴の言葉そのものは間違ってないと思うから」
鈴は昔から自分の非を認めない方だ。そんな意地っ張りな性格だというのに、聞いたこともないトーンで謝られて逆に困惑してしまう。
でもそれだけ悪く思ってくれているということは伝わった。怒ってはいないが気にしていないということはなかったけど、謝ってくれたんだからこれ以上私から言うことは何もない。
それに、鈴の言葉も間違ってはいなかった。私は女だといくら自分に言い聞かせたところで、根底に眠る男という事実ばかりは覆せないのだから。
私の中に渦巻く靄はそれなりに濃いが、いたずらに関係を悪化させたくないから鈴は謝りに来たんだ。寛容な心で受け止めなくては。
しかし、鈴もただ謝りに来ただけということはないみたい。またもやとても言いづらいことなのか、引き続けて重々しく口を開いた。
「一夏、アタシと賭けをしてくれないかしら」
「賭け? 乗る乗らないは内容にもよると思うけど」
「今度のクラス対抗戦で、ちょっと思いついたことがあるの」
鈴が私に賭けを仕掛けてきた。かつて何度か聞いたようなことだが、今回は負けた方が奢りとかそういうのではないのだろう。
あまりにも不利な内容ならキッパリと断ることも視野に入れて話を進めると、勝ち負けに関してはクラス対抗戦にて決定するつもりらしい。
ジャンケンとかコイントスとか運の要素が強い内容は避け、私たちの実力によるところを影響させるためかな。後腐れのようなものも少ないはず。
私だって代表候補生だ。千冬姉のコネは大いにありながらも、後は己の実力を示してこの座に就いたと自負している。挑まれるぶんには問題はなく、受けて立つといったところか。
だが、それは何を賭けるかということを聞いてからだ。鈴の様子と、話の流れからしてだいたいの予想はつくけどね。
「アタシらが直接対決した場合はその勝敗。当たらなかったらよりコマを進めた方が勝ち。一夏が勝ったら、アタシはもうアンタの生き方にとやかく言わない。けど――――」
「私が負けたら、真面目に男に戻る方法を探す?」
「……わかってんじゃん。一夏の気持ちも本気っぽいし、こんなことホントはしたくないんだけどね。けど、それでもアタシは大人しく引き下がるわけにはいかないの」
私の予測は正しく、鈴の言う賭けとは私のこれからに関することだった。
私がハルに恋したことにどうして鈴が怒るのか、鈴が私が男に戻ることに拘るのか。初めはそれがどうしてもわからなかった。
だけどこの感じ、多分だけど鈴もかつての私を好いていてくれたのではないだろうか。それを今指摘して、素直じゃない鈴が認めてくれそうにはないけどね。
それは、なんというか、箒の件も重ねて大変申し訳なく思う。全く気付くことができなかったということは、さぞかし鈴を傷つけてしまったことだろう。
正直、受けたくのない賭けだ。勝負の世界に100%はない。自信はそれなりにあっても、私の生き方に関して賭けるようなことはそもそもしたくはなかった。
でも鈴の気持ちに気づけなかったこと、そして引き下がることのできないという台詞が私を突き動かす。
そのとおりだ。こっちだって引き下がってやるわけにはいかない。ハルへの想いを引き下げるわけなんかにはいかない。
「その賭け、乗った」
「アタシが仕掛けといてなんなんだけど、てっきり断られるもんだと思ってたわ」
「私のハルへの想いの証明にしてみせるから」
「あ、そ。はいはい、ごちそうさまでした。……決着、できれば直接対決でつけれたらいいわね」
「……うん」
堂々とそう宣言してやると、鈴はまさかの展開だと渋い表情を見せた。本当にいいのかという意味も込められていそう。
大丈夫ではないが、ハルのことを諦めなくちゃならなくなるのなら気合の入れようが違う。もし負けるようなことがあるのなら、それは私のハルへの想いが足りなかったのだと本気で思う。
そんな私の言葉に対し、鈴は演技がかったような呆れた態度を示す。でも背を向けた直後の言葉は、絞り出すかのような声色だった。
そのまま軽く片手を挙げて去って行く鈴の小さな背中に、私は曖昧な返事で答えることしかできなかった。その代わりということではないが、鈴の姿が見えなくなるまで注目を続ける。
「……アリーナの申請、しておけばよかったな」
鈴が見えなくなり次第、歩みを進め始めた私はそんなことを呟いた。絶対に負けられなくなってしまったのだから、せめて悔いのないように訓練を沢山しておきたい。
でもあまりに突発な出来事だ。今のを予期して申請なんてできるはずないんだから、今日は大人しく休養を取ることにしよう。
だが残念、当初の目的からして今日はただの休養にはなりえない。ちょっとだけ考えたいことがあって、一人になれる場所を目指していたんだから。
「ふぅ……」
たどり着いたのは学園の中庭だ。昼休みなんかはちらほら生徒を見かけるが、放課後ともなると用事がないのか人通りすら皆無になる。
この場所は好きだ。ここからボーッと沈みゆく夕日を眺めるのがなかなかに悪くない。いわゆる黄昏る、というやつだろうか。
あまりそういうのは柄でもないのはわかっているが、どうもこの身体になってからは考え事に費やす時間が増えたような気がする。
私は背伸びをしながら溜息ひとつ。そしていくつか設置してあるベンチに腰掛けると、夕日のある方角に頭のみを向けた。
「私はいったい何者ぞっと……」
私が織斑 一夏であるという事実は揺るがない。男だったという事実もだ。だからこそ、それらをひっくるめて今の私があると思っていたんだけどなぁ。まさか鈴の悪気のない言葉にああも動揺してしまうとは。
それを思えばハルには情けないところを見せた。……けど、あんなに優しく包み込んでくれるなんて思ってもみなかったな。
私のことを女の子だと言ってくれて、大丈夫だと慰めてくれた。あの時のハルには大いに男性というものを感じたものだ。
なんていうか、惚れ直した。あの温もりを独り占めしたい。私以外に向けてほしくないと思う程度には。
こんなにハルのことが好きなのに、今の私は絶対女の子に近いものなはずなのに、どうして最後の最後まで自信を持つことができないのだろう。
私は俺で俺は私。私は男で俺は女。そんなただひとつの矛盾が大いに私を苦しめる。どう足掻いたって完璧な女の子になれない私は、どうやって俺と向き合っていけばいいんだろう。
「ナツ! やっぱりここに居た」
「ハル!? ど、どうしてここが?」
「前に一度、校内からキミを見かけたことがあったから」
誰一人として会うことはないだろうと思っていた矢先、ハルの声が聞こえたものだから心底から驚いてしまう。
時折こうして黄昏ていることはハルにも話してはいない。校内を走り回ればいつか見つけられるかも知れないが、そう私を探し回った様子は見受けられなかった。
話を聞くと、絵になりそうな被写体を求めて校内を歩き回っていた際に私を見かけたんだとか。だからと思って来てみれば、ということらしい。
「あの、隣、座ってもいいかな」
「う、うん、勿論。でも、ハルは何しにここへ?」
「いや、特に何があるわけでもないんだけど」
またもや白々しい言葉が私の口から飛び出て、思わず自分でも笑ってしまいそうだ。何しにって、ハルは私を心配してくれているに決まっている。
それこそ情けないとこ見せたんだし、一応は慰めてもらったけど、それで済むようなことだと思ってはいないらしい。
自分のことは抱える癖して、他人のそういうのには敏感なんだから。そういうところもハル特有ではあるんだけどね。
こういう時のハルは、人が欲する言葉を的確に提供してくる。しかも普段の弱弱しい調子が嘘みたいにハッキリと。何度でも言うけど、ギャップが凶悪すぎる男だ。
「難しいことだとは思うんだけどさ、どうするのか、どうしたいのかはナツにしか決められないことだと思うんだ。……言われなくてもわかってるよな。えっと、俺が言いたいのはそういうのじゃなくて……」
「うん……」
「ナツには好きに生きてほしい。男としてだって女にしてだって、自信が持てないんなら俺が証明になってみせるよ」
ハルはベンチに腰掛けると、しっかりとこちらの目を見据えて思いの丈を述べ始めた。
内容としてはやはり今朝の件の続きのようなもので、私が先ほどから大いに頭を悩ませていること。
ハルも自分の中で考えがまとまっているわけでもないのか、言葉を選ぶ姿はまるでパズルでも解いているかのよう。
一度目は上手くピースがはまり切らなかったのか、少し乱暴に髪の毛を触ってから違うと眉間に皺を寄せる。何をナツが頑張るしかないなんて結論付けてるんだ俺は、とか思ってそうだ。
けど、次いで告げられた言葉はあまり意味がわからなかった。私の理解が及んでいないのを察知したのか、ハルは少し困った様子で切り出した。
「た、例えば、あくまで例えばの話なんだけど! ナツ、俺と、デッ、デデデ……デート、しようか」
「…………え?」
「いやほら! デートって概念は異性同士が二人きりで出かけることを指すわけで、そしたら俺とナツでデートが成立するならそれはナツが女の子ってことになるっていうか!」
「ハ、ハル、とりあえず落ち着こう? なんか論点ずれ始めてるから」
ハルに落ち着くよう促すも、それは私も自分に言い聞かせている節があった。だって、今私はハルに耳を疑うようなことを言われたっぽいのだから。
向こうも自分が取り乱していた自覚があるのか、私の言葉に顔を真っ赤にさせながらそうだねとひとこと。
しばらく咳払いしたり深呼吸したりして心頭滅却しているハルを眺めつつ、私も密かに心を落ち着かせるようつとめる。
そしてようやく本調子に戻ったのか、ハルは少し俯き加減ながらも先ほどの言葉の真意を語り始めた。
「……俺は、ナツが女の子として生きたいなら、俺もナツがそうあれるように生きたいって思うんだ。だからそういう意味。俺は、俺が、ナツが女の子である証明になりたい」
あまりにも突飛に感じられるデートの約束。蓋を開けてみれば、なんということだろうか。そのような真意が隠されていようとは。
今度は泣いてしまいたい衝動を必死に抑える。嬉しい時の涙って、なんだかネガティヴな感情で出る涙より抑えが聞かない気がするな。
だって、そんなの泣きたくなるに決まってるじゃん。この男は自分が何を言っているのかわかっているのだろうか。
ハルの言った自分が証明になるという言葉の真意。唐突に切り出されたデートの真意。それは、自分が女の子扱いしてるんだから女の子だっていう、今の私には心の奥底に強く響く言葉だったのだから。
「それ、いつまで証明でいてくれる?」
「前と同じだよ。ナツが望み続ける限りは、それに全力で答えてみせるとも」
「……そっか」
現在はまだ情熱的な意味が含まれていないことはわかっている。けど、こうしてまた言質が増えてしまったというわけだ。
……ハルがその気なら、こっちだって本気でいくもん。ずっと、ずっと、ずーっと、未来永劫に私が女の子である証明になってもらおう。
そしていつしか、必ず振り向かせてみせる。私が望むんじゃなくて、ハルが望んで私と共にありたいように思わせてみせる。
無論、それは男女の関係という意味でだ。もう私には親友でも姉弟でも相棒でも足りない。ハルに愛されるただ唯一の女になりたい。
「ハル」
「な、何?」
「その申し出、喜んで受けさせていただきます」
「あ、え? デ、デートのこと? そ、そう……か。うん、わかった。プランは考えておくから、対抗戦が落ち着いたら二人で出かけよう」
あくまで例え話と前置きしていたのは本気なのか、私がデートをOKしたのがかなり意外と見える。
ハルは喋り始めのあたりで声を裏返らせていたが、大きく取り乱すようなことはない。わかったと了解の意思を示した頃には、薄い笑みが出るくらいには完全に落ち着いたようだ。
それにしても、対抗戦が終わったら……かぁ。うん、これは鈴に負けられない理由が増えてしまった。賭けの内容的に、負けた後のうのうとデートってわけにもいかないだろうし。
よし、じゃあ合言葉は勝ってハルとデート! これで行こう。なおさら負けられなくはなったけど、俄然やる気は沸いてきた。
「ん」
「ん、って指切り? まぁ、うん、それじゃあ――――」
「「ゆーびきーりげーんまーん」」
「嘘ついたらフルパワーれいらくびゃ~くや!」
「怖っ!? というか死んじゃうでしょうに!」
私が小指だけ立てた手を差し出すと、意図を察したハルは同じく小指を立てて互いに絡ませ合った。そしてお約束の言葉のリズムに乗せて手を上下させる。
本来なら針千本飲ますが正しいが、私は盛大なアレンジを加えて約束を破った際の罰に最大出力の零落白夜を取り付けた。勿論冗談だが。
でもこういう場合にハルのツッコミ速度はすさまじいもので、まさに阿吽の呼吸といったふうにツッコミが返ってきた。
こうなると楽しいもので、ボケにボケを重ねたくなっちゃうんだよねぇ。ハルも律儀に延々ツッコんでくるし。というわけで、今回も例によってボケ倒し&ツッコミ倒しがスタート。
「さーて、どこまで本気でしょうねぇ」
「僅かでも本気である可能性を含ませないでいただきたい……!」
「じゃあ
「何も変わってないじゃないか! エネルギーシールドだから結局は俺ごとバッサリじゃないか!」
シレっとした様子でベンチから立ち上がって歩き出すと、ハルは慌てるようにしてその後ろを着いてきた。
そうしてボケとツッコミの応酬が過熱するのに合わせるかのように、私たちの足取りは自然と加速の一途をたどる。
最終的には鬼ごっこ同然のようになり、校内を走り回る形になってしまった。我ながら、さっきまで悩んでいたのが嘘みたい。
そして肝心のオチだけど、間の悪いことに千冬姉に見つかってしまったとさ。そのまま一時間強にもわたるお説教コースである。
やっと解放された頃には正座によって足腰は立たず、二人して肩を貸し合いながらゆっくりゆっくり自室へと戻る私たちであった。
やっとこさ……やっとこさデートの約束まできたぞぉ!
でもその間に挟まるのは対抗戦。ただで済むわけねぇよなぁ。
まぁなんです。この対抗戦も晴人にとって大きな意味を成すので多少はね?
というか、ようやく晴人と一夏で掲げるひとつのテーマに触れられそうです。
ハルナツメモ その16【デート】
二人の家庭事情の関係上、当然ながら二人きりでの外出等は描写していないだけで多々ある。しかし、決してデートではないというのが共通認識。
今回晴人がデートと発言したということは、一夏ちゃんのことをより女性として意識しているということの現れである。