やめたくなりますよ~仕事~。
起承転結の結ですね。我ながら上手く四話構成になと思いました(日記)
でもねぇ、自分でハードル上げたようなもんですよねぇ。
皆様の満足いく出来になっていれば幸いなのですが……。
まぁとにかくして、二人の初デートをとくとご覧あれ。
以下、評価してくださった方をご紹介!
miru20様
評価していただいてありがとうございました!
なんだかんだとありつつデート当日。天気は晴れ。どこまでも澄み切った青い空が広がっていた。絶好のデート日和と言ったところだろう。
俺とナツは同室であるがゆえに、待ち合わせなんていう面倒なことも必要ない。二人で同時に起きて、支度をして、それが終わったら学園を出て、今は外界と学園とを繋ぐモノレールを持っているところだ。
あれから俺たちの関係も自然に修復し、特に問題なくこの日を迎えることができた。しかし初デートの相手がナツになるとは、人生とは何があるかわからないものである。
それにしてもというか、なんというか。どうにも今朝からナツのいで立ちが気になってしかたいない。そこで思い切って、会話の最中ナツの姿を上から下まで眺めてみた。
トップスはシンプルなデザインのオフショルTシャツ。インナーとしてタンクトップを着、肩紐がみえるようなレイヤードスタイルっていうのかな。
そしてボトムはショートデニム。それに加えてサイハイソックスを履くことにより、絶対領域的な演出がなされている。
個人的な主観ではあるが、読者モデルのような見事な着こなしと評価して遜色ないのでは? もっと率直に表現するなら、めちゃくちゃ可愛いんだけど。
「ハル、どうかした?」
「コーデ、可愛いなと思って」
「へ!? う、うん、ありがとう。そういうハルもかっこいいよ」
「そうかな? 今回はちょっとシンプル過ぎたかなと思うんだけど」
流石に俺の視線に気づいたのか、ナツはキョトンとした表情を浮かべた。
かねてからナツに対して可愛いと素直に述べることが目標のうちであったためか、自分でも意外なくらいにサラッとそんな言葉が口をつく。
俺が意外なら言われたナツも意外みたいで、ボッとでも効果音が聞こえそうなくらい一気に顔を真っ赤にさせる。……可愛いなぁ。
で、ナツも照れ隠し含めてだろうけど俺を褒め返してくる。でもどうだろ、そりゃ初なうえナツとのデートだし気合入れたが、俺としては少々遊びが足りないところか。
上から五分袖のコーチジャケット、その下は無地のTシャツ。ボトムはジョガーパンツとまぁシンプルの極みだよね。
アクセサリとか着けてもいいけど、なんだかそのあたりまでいくと似合わないような気がするんだよな。俺のベーシックさはどこまで通じるのやら。
「ねぇハル。私、今日の予定聞いてないんだけど」
「う~ん、あえて言わなかったっていうか……。まぁ、とりあえず無難に映画かなって」
「あ、それって【リベンジャーズ】の最新作だよね」
時刻どおりにやってきたモノレールに乗り込むと、席に着くのと同時にナツがそんなことを聞いてきた。
サプライズ的な意味ではないけど、あえて予定は言わなかったのだが、当日聞かれたのならもう隠す必要もないかも知れない。そう判断した俺は、財布からとある映画の前売り券を取り出してナツに見せつけた。
それはアメコミヒーローの実写映画として、日本でも知名度の高い【リベンジャーズ】シリーズの最新作である【アンリミテッド・ウォー】のもの。
俺もナツもそれなりに関心があるもので、劇場に観に行ったりレンタルDVDが出たら借りて観たりまちまち。
今作は何本か前知識として必聴しておくべき映画があるみたいだが、突発的に手に入っっちゃったからどうしようもないんだよね。買ったんだから観に行かないともったいないっていうのもあるわけだ。
「そんなの買ってたなら言ってよ。えっと、お金お金……」
「ほら出た、だから言わなかったんだって。いいよ、気持ちだけで十分。今日の出費は俺に任せてくれればいいからさ」
前売り券を見せた途端、ナツはすぐさま財布を取り出そうとした。これこそが俺がナツに映画を観に行くことを話さなかった理由だ。
例えナツがどう思おうが、やっぱりデートって言うのはそれなりに男がお金を払ってなんぼというものがあると思う。そうやって渋るのが目に見えていたからこその行動だ。
そもそも割安で手に入ったから問題ない。
美術部の同級生の子が事情があって行けなくなってしまったからということで、かなり安くしてペアチケットを買わないかと提案してきたからだ。
それをナツに説明したところで納得はしないだろう。しかし、このデートにおいては譲れないものがあるから俺も折れるつもりはない。
……ナツにとっても初デートなんだ。そんな大役の相手を務めさせてもらっているんだから、むしろこのくらいするのは当然のことだと思う。
「なるべく払えるものは払うからね」
「うん、わかったわかった」
「わかってないでしょその感じ。もう、なんかホント最近のハルって意地悪だよね」
「嫌いになる?」
「……なるわけないじゃん」
とてつもなーく納得のいってない表情でそう返されたわけだが、適当に流すような返事で応えた。
ナツはどうにも俺の態度が不満らしく、ちょっとだけ拗ねたように座っていた席に大きく背中を預けてみせる。
そんなナツに対してもひとつ意地悪。俺は返ってくる答えがわかり切った質問を投げかけた。
するとナツは、わかってるくせに意地悪だ、とでも言いたそうな声色で嫌いになんかなるわけないと回答を示す。
意地悪だと思っていても一応は素直な回答をくれるナツがなんだか可笑しくて、小さく笑いをこぼしてその様を見守る。
だがいい加減に度が過ぎたのか、ナツは俺の脇腹あたりを忌々しそうにつねり始めた。確かに痛くはあるが、まぁ報復としては可愛いもんだ。かつての箒ちゃんや鈴ちゃんと過ごしていれば特に。察して。
そんな感じでやんややんやとやりとりを繰り広げていれば時間が経つのも早いもので、あっという間に駅前近くの繁華街へとたどり着いた。
中学時代にも弾たちとよく繰り出した場所なため、いわゆるホームグラウンドというやつにあたるのだろうか。
そのおかげか、俺たちの足取りは迷うことなく映画館の方へ。来るのは随分久しぶりだが、道順は身体が覚えているものだな。
さて、そうしたら前売り券を片手に座席指定のためにカウンターへ。意気揚々と受付の女性に開いている席を確認すると――――
「申し訳ございません。現在はこちらのカップルシートしか開いておりません」
「はい……?」
カップルシートとは、二人分の席がひとつに連なっており、その名のとおりカップルたちがより密着できたりするという、リア充のためにあるような席である。
……一番早い時間の上映を観に来て、開場まで余裕があるのにもかかわらず、もう席がそこしか開いてないのか……。
流石は【リベンジャーズ】シリーズの最新作であり集大成でもある作品だ。少しなめていたかも。
ナツとのデートという発言は覚悟してたり慣れたから堂々としていられるわけであり、流石にカップルシートは想定外だしハードルが高い。
そこしか開いてないということはカップルも避けているという暗示であり、まぁ、後は察してほしいところである。
瞬時に追い詰められた俺は、錆びたブリキの人形のように、ギギギと頭を回転させながらナツの助けを乞うことにした。
「ナ、ナツ、どうする……?」
「その席でお願いしまーす」
「なっ!?」
俺としては無難に次の上映を待つことを提案してくるだろう――――というか、くれることを願っていた。
しかし、あろうことかナツはほぼ独断でカップルシートにすることを決定するではないか。しかも俺の腕に抱き着きながら。
感じたこともないような柔らかさを腕一本に集中的に受けたことにより、俺の思考は一瞬にしてフリーズ。もはや魂が抜けるくらいの勢いだったかも知れない。
気づけば受付のカウンターから離れていて、目には心底からニヤニヤと悪戯っぽい笑みを浮かべたナツが映っているではないか。
その笑みの意味がわからないほど俺は鈍くはない。
「……お返し?」
「お返し」
「そう……。それは、その、ごめん。謝るから」
「さー? ど~しよっかな~」
さんざん意地悪したからそのお返しだ。間違いなく、ナツの目と表情がそう訴えかけてきていた。
お返しを思いつくくらいには恨めしかったのはわかったけど、そのためだけにカップルシートを肯定したり抱き着いたりするかな普通。
なんていうか、役得であることを否定はしない。けど、なんかモヤモヤするなぁ……。別にナツに対して苛立ちを覚えているわけではないが。
それよりも、これで返しきれないほど俺は罪深いことをしただろうか。むしろ人によってはこの状況に有罪判決を出すだろう。
何かって、どうしようかと言いつつナツはしばらく離れてくれないんです。むしろさっきより、腕に込められた力が強くなっている気さえ。
そのままジュースやポップコーンも買ったりしたし、なんなら劇場に入って席についてもまだ離れない。いや、そろそろいい加減にしてほしいんですが。ギリ失神するか否かの間だからね?
「ナ、ナツ、俺が悪かったから勘弁してよ」
「でも、この席ってこうするためにある席でしょ?」
「それは、ちゃんとお付き合いしてるカップルに限った話で――――」
「細かいことは気にしない。ハルも私で慣れるくらいの気でいなよ」
さっきも言ったが役得ではあることは認めよう。しかし、うら若き乙女が無遠慮に豊満なバストを押し付けてくるのはどうなんだろうか。
いくら仕返し含めて旧知の仲である俺に対してとは言え、あまりにも恥じらいというものがなさ過ぎるのでは? はたまた逆説的に俺相手だからできることなのか。
でも確かに、変に意識するからダメな部分はあるかも知れない。ここは無理にでも慣れるつもりでいなければ、映画の内容が頭に入ってこなさそうだ。
そしてナツは結局離れることなく上映がスタート。海外の映画らしく、派手な爆発音や壮大な音楽が響き渡り始めた。
(内容としては、王道展開って感じかな)
王道が王道たる所以というか、やっぱりヒーローものにはある程度のお約束とか流れっていうのが組まれているものだ。
それを退屈だなんて思わない。むしろ【リベンジャーズ】はシリーズをとおして沢山のヒーローが一堂に会する作品であり、そんな些細なことは気にする暇がない感じだ。
だがこれだけの人数が集まれば、悲しいことに死者もそれなりに出てしまう。戦友の死亡シーンも話を盛り上げる王道に含まれるんだろうが、なんだかやるせない気分になるのは俺だけかな。
『なぜだ、なぜ私を庇った!?』
『なぜ? 野暮なことを聞くな……。相棒……だからさ……』
こういうシーンが物語の後半にくるということは、そろそろクライマックスが近そうだ。
スクリーンの中では【コマンダー・アメリカン】が、自身を庇って瀕死の一撃を喰らった【サマー・ソルジャー】に死ぬなと呼び掛けていた。
この二人は一度袂を別った間柄だ。それゆえ最期に相棒としての役目を果たして逝くその姿は、よりドラマティックさを演出する。
それがお芝居であることを忘れそうな迫真の演技に、俺は本気で涙してしまいそうになってしまう。ため息交じりにその行く末を見守っていると――――ふと、右腕に込められている力が強くなった。
(ナツ……?)
「…………」
ナツが泣いていた。何もナツが薄情なやつと言いたいわけじゃないけど、映画を観て泣く姿なんて子供の頃くらいしか覚えがない。
女の子になって感受性でも高くなったんだろうか。……今思えば、昔より百面相したりと感情豊かになった感じはあるかも知れない。ナツって地味にドライなところがあったし。
ナツは必死に目元を拭って涙を止めようとしている様子だったが、効果は薄いらしく本人も少し忌々しそうだ。
俺はナツの腕を多少強引に取り払うと、指を絡めるようにしてその手を取った。そしてハンカチを取り出して、ナツの頬を伝う涙を拭う。
「ハル……」
「目、こすらない方がいいと思う。せっかく、綺麗な目をしてるんだからさ」
「……うん、ありがとう」
俺はどさくさに紛れて何を言っているんだろうか。
勿論お世辞なつもりはないが、ナツの涙を拭くのにかこつけてそんなクサい台詞を言わなくていいものを。
……まぁ、ナツも満足してるふうだしそれでいいか。しばらくは涙を拭くことに終始してみることにしよう。
映画の方にも集中しつつ、しばらくナツの涙を拭いていると、流石に止まってくれたらしく小さな声でもう大丈夫と聞こえた。
俺がハンカチをポケットにしまった頃には完全にクライマックスで、仲間の死を糧に奮起した一同がついにラスボスを撃破した。
そしてそのまま後日談からのスタッフロールへ。俺とナツは最後の最後まで見届ける派ゆえ席を立つことはない。
それにスタッフロール後におまけでいろいろあったりするじゃない? 特に【リベンジャーズ】シリーズはそういうのが多いし――――
『くっ、少し手に余る数だな』
『喋ってないで手を動かしたらどうだ?』
『お前もな!』
あ、やっぱりあった。どうやら後日談から更に後日談のようで、また新たな敵の襲撃でもあったのか、【リベンジャーズ】のメンバーが雑魚敵っぽい見た目の兵団と戦っている。
【リベンジャーズ】は少数精鋭であり、圧倒的物量の前に徐々に押され始めている様子だ。それを手に汗握りながら見守っていると、メンバーの一人を襲っていた敵目掛けて盾が飛んできた。
そのあたりでお察しながら、カメラは彼を中央で捉えず足を映す。数を前にして、物怖じすることなく前に進む足をだ。
そしてスローモーションの演出が入りつつ、仲間たちが一人一人待ってましたと言わんばかりの表情をアップで映され、最後のシメは当然のように援護に入った彼自身――――【コマンダー・アメリカン】だ。
『リベンジャーズ・アッセンブル!』
その一言を最後にカットは切れ、黒い画面に大きく【リベンジャーズ】のロゴが刻まれるのであった。
「ん~……最高のデキだったねぇ!」
「最後にコマンダーのアッセンブルでシメるのが最高だったかな」
「そう、わかる! あえてそれだけにするのが最高!」
「あの後は絶対勝ったよね。間違いない」
「わかるー! あのセリフだけで勝ちを確信させるコマンダーの説得力よ!」
基本的に劇場に来た場合はお約束と言うか、休めるスペースでしばらく映画の感想を言い合うのが常だ。
そのテンションは映画のできにより左右され、【アンリミテッド・ウォー】は間違いなく最高だったから話が絶えない。
私もハルも、例を挙げてはわかると同調するのを繰り返した。もうわかりみが深すぎて延々これを続けられそうだ。
だけど私も聞かれるだろうなと思っていたことがひとつ。むしろ、私が好きになったハルが聞いて来ないはずはなかった。
「ところで、さ。珍しいよね、映画観て泣くなんて」
「……うん、ちょっと、ね。重ねて見ちゃったせいで、少し」
ハルもこの雰囲気をぶち壊しにするのはわかっていたことだろう。それでも、私のために覚悟してそれを聞いてくれているんだと思う。
だから私も正直に話した。はぐらかすことはできたけど、あそこまで泣いてしまったからには言うべきだ。
重ねて見たという私の発言で意味を十分に察したのか、ハルはすさまじく気まずそうに視線をそらし始める。あ~……という声のおまけつき。
それは当然ながら例の件に関して。【サマー・ソルジャー】がコマンダーを庇って死んでしまうシーンを見て、私を庇ったハルを思い出してしまった。
あの一撃で同じことになっていたかも知れない。ハルが死んでしまっていたかも知れない。そう思うと涙があふれて止まらなかった。
「……いなくなったりはしないよ」
「え?」
「今の俺じゃコマンダーと違って説得力なんか皆無だけど、必ず強くなるって約束する。何があってもナツの隣からいなくなることだけはしない。後はその、信じてもらうしか、ないんだけど、でも……!」
最近は暗黙の了解になりつつある、新たに増えた私たちだけのルール。ハルが手を伸ばしてくるのが見えたから、私も手を伸ばした。
ギュッと指を絡めるようにして繋ぐのも当たり前。ハルの手はいつだって温かい。そして、放つ言葉も温かい。
正直、まだまだ頼りないというのは否定できない。それでもハルは、私の隣にあろうとしてくれる。私はそう思ってくれるだけで十分だ。
けど、ハルを信じていないわけでもない。ううん、ハルはきっとこれから強くなっていくことだろう。……私のために。
なんて幸せなんだろう。身勝手な感情なのかも知れないが、ハルのあらゆる努力が私のために向けられているのがとても幸せだ。
そして、とても愛しい。それが特別な感情を持ち合わせていなくたって、愛しくてたまらなくて、私は――――
「って、そういえば謝ってなかったな。ごめんナツ、心配かけて」
「ううん、もういいよ。私のほうこそ、ごめんね」
「……じゃあ、デートの続き、しようか」
「……うん。というか、この後ちゃんと考えてるんだ?」
「そりゃ考えるさ、ナツとのデートだよ? ありきたりにならないよう、練りに練ったからね」
ハルは思い出したかのように神妙な顔つきになり、私の説得に終始していたせいで謝るのを忘れていたと、畏まったように頭を下げた。
あの件は私も悪かったんだから言いっこなし。だから私も謝って、これでもう全部水に流すという体で。
ハルもそれを承知しているのか、無駄に勢いよく立ち上がりながら次へ行こうと提案する。私としてはそれがとても意外だった。
ってっきり後は私に合わせるとか言い始めるものだと思っていたけど、ちゃんとリードするつもりでいてくれたんだ……。
それは私とのデートを大切に考えてくれているという証拠。さっきは悪戯心の方が強かったけど、私は愛しさが振り切ってハルの腕へと抱き着いた。
「じゃ、どこへ連れて行ってくれるの?」
「う、うん。なんか少し変わったアミューズメント施設が近くにできてるみたいで、とりあえずそこかな」
ハルはまったく慣れないのか、一気に身体が強張ったのがわかる。どういうつもりなんだろ? とか思ってるんだろうなー。
それはいずれ思い知らせるとして、ハルは本当にいろいろ考えてデートプランを練ってくれたらしく、私たちの中で定番のようなことはまったく起きなかった。
ハルが言うアミューズメント施設もVR体験ができたりする最新の場所だったし、食事に連れて行ってもらったのも、あまり馴染みのない多国籍料理のお店だった。
昼食に関してはてっきりオムライスでも食べに行くつもりでいるんじゃないのかと思い、それを尋ねてみると――――
「ん? いやぁ、別にナツが思ってるほどこだわりがあるわけじゃないんだよ? ナツの作るオムライスが好きなだけで」
と、返された。
なんですか。なんなんですか。どうしてそういう時だけ、まったく躊躇いも見せずにそんな死ぬほど嬉しいことを言ってくれるんですか。
おかげで多国籍料理なんて珍しいものを食べたのにほとんど味を覚えてませんよ。仕方がないから今度自分で挑戦してみることにしよう。
それからは二人でお買い物。服を見に行ったり、ハル行きつけの画材屋へ行ってみたり。適当にぶらつくことで時間をつぶした。
私たちは学生の身で、しかも寮生ときた。まだまだ遊び足りないというのが正直なところだけど、門限というものがあるので早めに帰宅の途に就く。
ハルとあれこれ話しながら移動してれば苦にならないもので、いつの間にか学園も目と鼻の先だ。それと同時に、少しばかり虚しさも過る。
「ナツ、どうかした?」
「え? 別になんでもないけど」
虚しさを顔に出していたつもりはないし、実際に出てはいないはず。しかし、こういう時ばかりは長い付き合いゆえの察しのよさが弊害となる。
私の様子が変だと感知したらしいハルは、少しばかり心配そうな顔つきでそう問いかけてきた。咄嗟に誤魔化してしまう自分が憎い。
するとハルは足を止めた。腕を組んで悶々と何かを考え始めたようだ。そして妙案でも思いついたようにハッとなると、私に数歩近づいてこう告げた。
「ナツさえよければ、また二人で出かけよう。何度だって。数えきれないくらい」
「ハル……。……うん、また二人で」
目を合わせてくれなければ頬を掻いて恥ずかしそうだったけれど、やはり私の心中を見抜いたかのような発言だった。
後ろ暗い表情でも浮かびそうになっていたのに、自然と口角が上がっていくのがわかる。胸の奥が温かくなっていくのがわかる。
うん、私、やっぱり幸せだ。けどもっと幸せになれるのびしろがある。それは勿論、ハルに好きになってもらうこと。
愛されたい。ただ一人、私に温もりを与えてくれる陽だまりに。片恋で、一方的に想っているだけでこれだけ幸せなのに、ハルに愛された日にはどれだけの幸せが待ち受けているというんだろう。
ハルとの時を重ねるごとに、私の想いは強くなっていく。けど今はもう少し、半分だけの幸せを噛みしめておくことにしよう。そのうち、そんな時期もあったねって、そんな思い出話になるのだから。
学園に足を踏み入れるまでの短い間、私とハルは自然に手を取り合って歩いた。まるでお互いの存在を確かめ合うかのように……。
※劇中に登場しております【リベンジャーズ】なる作品は、【アベンジャーズ】と一切関係のない架空のものです。ネタバレ等一切しておりませんので、どうかご安心ください。
もっと二人ともアタフタさせてもよかったかなと反省中。
後の判断は皆様にお任せいたします。
どのみち次回から新章突入ですし、反省してばかりもいられないという。
銀髪ロリ系軍人のほうはともかく、金髪貴公子(仮)を取り巻く事情に関しての落としどころさんがですねぇ……。
そのあたりもちゃんと考えつつ、学年別トーナメント編、張り切っていきましょう。