原作的イベントが進む回ではあるんですけど、本当に落としどころに困った困った。
ぶっちゃけ作中屈指のしょうもなさを誇りますが、次につながる回と思っていただければ。
あくる日の放課後、俺は自室にてシャルルの到着を待っていた。もちろん絵を描きながら――――ではなく、必要以上に頭を悩ませながらだ。
ずっと保留にしておいた例の件を解消するチャンスはここしかない。……いや、ここしかないわけでもないけど、なるべく早めに解決せねば。俺にも立場っていうものがある。
けどなぁ、気が重いよなぁ。だってわざわざそんな形で転校してきたのに、まず問い詰めることすら気が咎める。
でも心を鬼にしなくては。これは俺一人の問題じゃないんだから。場合によっては顔も知らない誰かを路頭に迷わす可能性すら――――
「晴人、居るかな」
「う、うん、今開けるよ」
頭を悩ませ続けることしばらく、扉越しに声が聞こえた。覚悟も決まってないうちにシャルルがついにやってきてしまったらしい。
こうなってはもう手遅れだ。やはり心を鬼にして、後はなんとか流れに身を任せて頑張るしかない。や、やってやるぞ!
「いらっしゃい、シャルル。って言うのも変か、ここはキミの部屋になるわけだし」
「アハハ、そうだね。じゃあ、ただいまかな。ただいま~」
(ぁぁぁぁ……。辛い。シャルル自体は絶対いい人だから辛い……!)
二度も心を鬼にしてと決心したのに、いざシャルルを招き入れてみると、人柄の良さが滲み出るその様子に早くも心が折れそうになる。
それにしても、なんだかあざといように聞こえるただいま~だったな……。これ天然でやってたら末恐ろしくないだろうか。
いや、というかむしろ演技であってほしい。そう、その可能性があったぞ。俺はまんまと騙されているという可能性も十分に考えられる!
……ないと思いつつも、どうかそうであってほしいと思う俺が居る。はぁ……。……シャルルが荷解きを終えたら仕掛けることにしよう。
俺はベッドに腰掛けシャルルの背中を見守る。その間向こうから振られる話題にはしっかり受け答えしたからそう違和感を与えたということはないはずだ。
そうしてシャルルはほんの短い時間で荷解きを終えた。……俺にとってはついにこの時が来てしまったかという感じだが、やるしかない。
「シャルル、少し話があるんだけど」
「うん、もちろんだよ。実は僕、キミとゆっくり話がしたかったんだよね。あっと、それより先にルールのこととか――――」
「確かにそれも重要だけど、絶対にひとつだけ聞いておかないとならないことがある」
ひと段落したその背に話があると語りかけると、シャルルはとてつもなく朗らかな様子でこちらへ振り返った。
てっきりこの部屋においての取り決めについてのことだと思ったようだが、そんなことじゃない。というより、まさか自分自身の話をされるとは思ってもないのだろう。
それと同時に、頭のどこか、もしくは心のどこかでこうも思っているはずだ。そう長いこと騙し続けることは不可能だって。
そんなシャルルに対し、俺はずっと聞くべきだったあるひとつの質問を投げかける。
「シャルルさ、女の子でしょ」
「え……? ハ、ハハ……。確かに小柄で中性的で女の子みたいってよく言われるけど、これでも立派な男で――――」
「じゃあ、今すぐここで服も脱げるよね?」
「っ…………!」
確かに、本人の談のとおりシャルルは中性的な顔立ちをしている。見方によっては男性でも女性でも通じる。
しかし、俺の中ではひと目見た時から確固たる正解があった。シャルル・デュノアは、間違いなく女性であるという正解が。
俺がストレートにそう指摘すると、シャルルは動揺を隠し切れないまま言い逃れを続けようとする。けど、悪いが逃す気はない。
相手が女の子だとわかっているとすればとんだ畜生発言だが、今すぐ裸になれるかどうかを聞けば、シャルルは途端に言葉を詰まらせた。そして、次に出てくる言葉も想定済み。
「む、無理だよ、絶対に無理。僕、隠してたけど身体に大きな火傷の跡が――――」
「それは身体の何割を占めてどの部分にあるの? こっちとしては局部を晒してもらえばそれで十分だよ。それともなにかな、そんな都合よく胸や股に火傷の跡が?」
シャルルの口から出たのは、やはりなんとしてでも服を脱がまいとするための言葉。それで見せたくない火傷や古傷があるとくるのは読んでいた。
だからあえて、初手に服を脱ぐよう迫ったのだ。後にこうして全体を脱がなくてもいいという一手に繋げられるから。
そしたら後は俺の言った通り。胸とか股とか、性別を象徴させる部分にそんな都合よく傷があるわけがない。むしろそんなピンポイントであるなら自己申告しない方がおかしな話だ。
あぁ、本当に畜生だ。理詰めとか苦手と思ってたけど、エンジンかかると意外とやれるもんだな。シャルルの今にも泣きそうな顔は見ていられないけど。
それはそれとして、次なる一手に進めさせてもらうことにしよう。それは、なぜ俺がシャルルが女性であることに気づいたかだ。
「シャルル、俺が絵を嗜むのは覚えてるかな」
「うん…………」
「俺もそれなりに研鑽を積んできた身でね。わかるんだ。服の上から見て、だいたいどういう肉付きをしているかとか」
俺はこれまで数えきれない人の絵を描いてきた。
それは人物画という意味ではなく、風景画等を描いた時、その風景に映り込む人物を描写してきたという意味だ。場合によっては、人だって風景の一部だと思ってるから。
そして画家に必要なこととして、観察する能力というものがある。
特に俺や爺ちゃんみたいな精密な描写をすることが旨な絵描きにとって、観察するという行為は重要不可欠のもの。これなくしては始まらないんだ。
来る日も来る日も自分の左手を描き続けるという練習をしたことがある。様々な角度、大きさ、視点、それら全てを描き切ったのではないかというくらいに。
そしてその目を他人に向けるようにしてみた。来る日も来る日も無作為に歩く人たちを描きに、駅前で何時間も居座ったことがある。
そしてやがて気づいたことがあったんだ。注意深く観察すれば、服の下の体つきをだいたい予測して描けるようになっていることに。
これができるようになった日は大層喜んだものだ。思わず爺ちゃんに報告すると、流石は儂の孫だと褒められたっけ。って、思い出に浸ってる場合じゃなかったな。
とにかく、その鍛え上げられた観察眼をもってすれば、シャルルが男性だなんてことは笑わせる話だ。どうやらコルセットか何かを巻いてるみたいだけど、むしろシャルルはかなり豊満な体つきをしていると予測される。
本人は俺の言葉に懐疑的な目を向けてくるが、本当にそうなのだからこれ以上の説明はできない。それが仕込んできた揺さぶりを弱めてしまう可能性もあるが、そろそろとどめに入るとしよう。
「じゃあ、話をいったんどうして俺がシャルルを疑うかって話にしようか」
「そ、そうだね。どうしてこうも人聞きの悪いように言われるのかは気になるかな」
「俺、一応だけど御曹司でさ。本当に名ばかりなんだけどね」
名ばかりどころか口にするのもはばかれる御曹司という単語だが、別に嘘は言ってないのだから問題はないはず。実際に父さんが社長なわけですし。
まぁ俺は継ぐ気もなければ、父さんも継がせる気はないって言ってたし気楽なものだ。
シャルルは日本に来るのにある程度の情報は得ているとして、俺の実父がFT&Iの代表取締役ということは知らないと読んだが当たりのようだ。
今のシャルルからは、そんなの聞いてない。みたいなのが見て取れる。実の息子がつい数か月前に知ったんだから、外野はなおのことだろう。
ここからはシャルルの優しさに漬け込むことになるから、今までの何倍も心苦しいぞ。覚悟してかかれ、俺。
「シャルルが男装してると仮定すると、目的はだいたい読めてるんだ。……キミの姓がデュノアってことも判断材料かな」
「…………」
デュノアという姓は、ISに関係する者の多くが耳にしたことがあるはずだ。
フランスに本社を構え、射撃型汎用量産機であるラファール・リヴァイヴを開発した企業であるデュノア社はあまりにも有名だから。
シャルルはどうやらそこの御曹司――――もとい、令嬢に当たる人物。とするなら、わざわざ男装までして学園に入学してきた目的は、いわゆる産業スパイという奴だろう。
男装=俺と容易に接触するための手段と考えてよいはず。現にこうして同室にまでなっているのだから。
後はデータ収集ないしを行うつもりだったのかな。個人的には、俺のデータをそう有用に扱うことはできなさそうな気がするが。けど――――
「さっきも言ったとおり、俺にも一応の立場っていうものがある。もし俺のデータがFT&Iの不都合になるなら、シャルルを手放しに見過ごすことはできないんだ」
俺がそこらのなんの変哲もないサラリーマンの息子だったんなら、別にシャルルを問い詰めるようなこともなかったろう。
しかし、俺は一社長の息子という立場だ。そしてヘイムダルの開発者である母さんの息子でもある。
もしかすると両親の託してくれたこのヘイムダルが、FT&Iの機密情報の塊だったりするかも知れない。ならばシャルルにデータを渡すことは不利益になりかねない。
それで俺たち一家が痛い目を見るだけならまだいい。けど、父さんの会社には、数えきれないような人たちが日夜汗水流して働いてくれているんだ。
その中では、多くの人が家族を養っていることだろう。それを想えば、ますますシャルルにデータを渡すわけにはいかないんだよね。
……あまり気負うつもりもないけど、俺の両肩にはそういう責任が乗りかかっていると思うんだ。
「……はぁ、まさかそんな方法で見抜かれちゃうなんてなぁ。けっこういい線いってると思ったんだけど」
「シャルル……」
「そうだよ、全部晴人の推理どおり。なかなかの名探偵だね」
それまで青い顔をして押し黙っていたシャルルは、俺に全てを見抜かれいっそ清々しいのか、開き直ったような態度を見せた。……諦めたとか、観念したの方が近いのかも知れない。
う~ん、別にデータ盗難は止めてねってことを周知させようと思っただけなんだけど、白状させるにしても少し脅しが過ぎたかな。
いや、過ぎたに決まってるだろうがバカタレ。女の子に向かって今すぐ裸になれるよねって言ったんだぞ。……まぁいい。そこらは後で謝るとして、もうひとつ肝心なことを確認しなくては。
「ごめん、もうひとつだけ聞かせてほしい」
「何? この際だからなんでも聞いてよ」
「シャルルがその命令をやりたかったかどうか」
まず間違いなく、シャルルは誰かの命を受けて今この場に居る。そこで肝心になるのが、シャルル自身に最悪感があったか否かだ。
もし仮に命令した誰かとノリノリで結託していたという話なら、悪いがすぐにでもフユ姉さんのところに突き出させてもらおう。
もし仮に無理矢理にでもやらされていたのなら。あるいはこんなことしたくはないと思っていたのなら、俺はそうしなくていいよう全力で手を貸そう。
既に答えは知れたことでもあるのだが。俺はシャルルの行いこそは咎めつつも、人格まで否定したつもりはない。むしろシャルルは、優しく穏やかな女の子なんだろうから。
「キミ、変な人だね。どうして今更、嘘をついてた僕の口からそんなことを聞こうとするの? 普通は信用できないと思うけど」
「確かに一理ある。けどね、俺は楽しそうにしてたキミまで嘘とは思ってないよ」
「…………。わかった、話すよ」
これまで見てきたシャルルの笑顔。俺にはそれが貼りつけたような、取ってつけたようなものには感じられなかった。直感の話なので根拠なんてないのだけれど。
俺のこの想いは願望に近いのだろう。単にシャルルの笑顔を嘘と断じたくない、それだけなんだ。
そんな俺の言葉をシャルルがどう受け取ったのかは未知だが、事の経緯を話してくれる気にはなったらしい。
シャルルがポツリと語りだしたのは、俺が想像していたより何倍も壮絶な内容だった。
「め、妾の子?」
「初めて知った時には僕も驚いたよ。泥棒猫の娘だーなんて罵られもしたっけ」
なんだか立ち入った話になってしまったな。それと同時に、シャルルが逆らえない状況であったことも察しが付く。
そりゃ詳細は本人たちの知るところでしかないんだけど、自分が不都合の結果できた子という可能性があれば、父親にもその本妻にも口答えなんかできたものではない。
しかもシャルルのお母さんは既に亡くなっているときた。つまり、父親に拾われる形で自らの出生を把握したというわけか。
酷い仕打ちはあったようだが、拾われたというのが間違いでない以上、シャルルの性格上からしてますます頭が上がらないんだろう。
「えーっと、ごめん、正体を暴いておいてなんなんだけど、もし失敗したことがお父さんとかに知れたら――――」
「う~ん、どうなるのかな。わかんないや。ただ、絶対にいいことにはならないだろうね」
話を聞く限り――――失敗しました。じゃあ仕方ない――――で済ましてもらえなさそうな空気を感じた。いや、むしろ知れたら命に関わる気さえ。
力になるつもりではいたけど、これは首を突っ込むことすらままならないのでは? しかし、さっき言ったとおりにデータを渡すことはできないし。
え~……ならば、そもそもシャルルがデータを盗むという行為をしないで済むようにすればいいのかな。
手っ取り早い方法はあるけれど、この件で頼るのはどうも。でも何もしないまま見過ごすわけにはいかないし。
…………う~ん、とりあえず相談するだけはしてみよう。無理なら無理で聞かなかったことにしてくれるだろうし。
俺は意気消沈のシャルルを尻目に、少し携帯での通話をしてよいかと問いかける。聞いているのだかいないのだかな曖昧な返事を受け取ると、父さんへ向けて発信した。
『どうかしたか?』
「うん、少し――――どころかかなりの厄介ごとなんだけど、父さんクラスの地位の人にしか頼めないような案件でさ」
『わかった。とにかく聞かせてくれ』
つい数日前に一方的に怒鳴っておいてと思いつつ相談を切り出すも、向こうは微塵も気にしたような態度は見せない。事実、俺の癇癪なんてなんとも思っていないんだろう。
それに重ねて相談する内容が内容なため、必要以上に恐縮としながら順を追ってシャルルの置かれている状況を説明していく。
父さんはその都度に適度な相槌を打ち、声色からして真剣に聞いているというのが伝わってくる。一人の親としては思うところがあるのかも知れない。
そして俺がどうにか力になってあげられないかと締めれば、電話口から聞こえて来たのは長い溜息のような音。
俺はその溜息で断られるのではないかと心臓の鼓動を早めるが、父さんの寄越した回答は意外にもアッサリとしたものだった。
『事情は了解した。だがデュノアくんと直接話がしたい』
「あ、そうだよね。了解、今変わるよ。シャルル、父さんが話がしたいって」
「え? ああ、うん、わ、わかった」
相変わらず投げやりな様子だったシャルルだが、父さんの要望に応えて携帯を差し出すとしっかり反応があった。
電話している間の俺を気にも留めなかったのか、あまり流れが読めていない感じでもあった。そのせいか、どんなことを父さんに言われているのか知らないが、リアクションの大きい会話になっている。
シャルルの携帯越しに独り相撲のような、そんなリアクションを取る姿を見守ることしばらく、用事は済んだのか携帯がこちらに戻ってくる。
そしてすぐさま、父さんとのやりとりはいかほどの実りがあったのかを尋ねた。
「で、どうなった?」
「……なんとかなるかも」
「そっか、それはよかった。これでシャルルも安心して日本に――――」
あまりにも事が上手く進み過ぎている。シャルルはそう思っているのか、先ほどまでとは違うような意味で茫然と立ち尽くしている。
父さんとの間にどのようなやり取りがあったかは知らないけど、今はとにかくどうにかなる道筋が見えてきたならそれでいい。
きっと、シャルルもそのうち頭も冴えてくれることだろう。そしたら、俺は非常に気持ち悪いことを言ったお詫びをしなくてはな。
シャルルに声をかけながらどう謝っていいものかと言葉を選んでいると、突然身体に衝撃を覚えた。不意打ち気味に入ったせいか、どぅっふといった感じに息を漏らしてしまう。
俺はいきなりの衝撃に耐えきることができず、そのままベッドに倒れこんでしまった。そして視界が安定したその時に全てを悟る。俺はシャルルに押し倒されているのだと。
「シャ、シャルル?」
「晴人、僕……僕……!」
「う、うん、今まで辛かったろうね。でもいったん落ち着こう」
その状況だけでシャルルが混乱している、ないし感情が制御できないというのはすぐにわかった。
理解はできるよ。誰にも助けを求められない。求めたところで追い詰められるのは自分。やりたくもない命令に従うしかない。シャルルはきっと、自分にそう言い聞かせてきたんだろうから。
そんな問題が一気に解決してしまった。だからシャルルは、抑圧された感情が爆発して今に至るんだと思う。
でも落ち着いてほしい。女子に押し倒されるなんていうこの状態、相手がナツでもなければそのうち気絶してしまうぞ。
いや、ナツなら平気って言ってもなんとも思わないから平気ってことでもなくてね。むしろあれも気絶どころか死にそうになるか、もしくは理性でもはちきれるとかそういうもっと次元の違うになって――――
……あれ? どうして俺は、シャルルに押し倒されているのにこうもナツのことを考えているんだろう。
「……晴人、あのね」
「へ……? ちょっ、ちょっ!? そ、それは本当に落ち着こう! お礼のつもりなら逆に迷惑だから!」
「でも僕、このくらいのことしかできないから……」
混乱するのはわかるが、それは話が飛躍し過ぎじゃないだろうか。それとも、やっぱりハニートラップみたいなものは仕込まれた?
何かって、おもむろにシャルルが制服を脱ぎ始めるからですよ。手を貸した対価にあんなことやこんなことを、的なことをしようとしているのが目に見える。
しかし、そういうわけにもいかない。別にこんなこと役得とも思わないし、俺がしたことといえば父さんに電話をしたことくらいだ。
そこまで混乱が大きいとは思いもよらず、俺は急いでシャルルの手首をつかんで脱衣を阻止する。そしてそんな自分の身体を安く扱うような真似はよくないと伝えてみるも、どうやら効果は薄いらしい。
無理矢理退けることは簡単だが、混乱している女性に対して力で訴えかけるのはどうも……。でも気が引けるなんて言っている場合ではないのも事実。
というか、脱ぎかけの制服が重力に従ってはだけ始めてる! コルセットの大部分見えちゃってるし、本当に四の五の言ってる場合じゃない! シャルル、重ね重ね申し訳ないけど、やはり無理矢理にでも――――
「ハルー! それにシャルルー! 一緒に晩ご飯――――」
「ふぉおおおおっ!? ナ、ナナナナナナ……ナツぅ!?」
強行突破を決意したその時、快活な声と共に扉が開閉する音が聞こえた。部屋に突撃してきたのはナツ。いったいどうしてこのタイミングなのだ。
……シャルルが半裸なことを考慮するに、やっぱり今でもラッキースケベ体質が継続中だってこと……? いや、そんなことよりまずいのは、こんな現場を見られてしまったということだ。
ナツの様子は体勢的に伺い知れないが、シャルルの表情が引きつっているのを見るに、相当に悪い状況だと見た。
俺は慌ててシャルルをどかし、急いでナツに弁明を――――図るつもりだったんだけど、その姿を視界に入れると同時に言葉に詰まる。それと同時に、俺は察した。
ああ、この間山田先生が逃げ出したのはこれが理由か。なるほど、ナツのこの表情を目撃したからだと。だってナツの表情は――――
「ハル、何これ」
まるで感情の一切が消え失せたかのような、無と表現するにふさわしいものだったから。
鬼畜系晴人降臨。畜生発言のオンパレードで草生えますよ。
そんなわけで、画家という独特な視点から正体看破に至る晴人でした。
いしかお話ししましたが、晴人が女の子の裸とかを偶然見たって美味しくもなんともないと思っているので、こういった流れになりました。
むしろ見るなら一夏ちゃんだけ見てろと。
とはいえ修羅場的イベントは面白いと思うので、最後のシーンに一夏ちゃんは乱入していただきましたけれども。
次回でシャルルの正体イベントに関しては、しっかり風呂敷を畳みたいと思います。