ハルトナツ   作:マスクドライダー

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多分ですけどご期待に添える出来ではないですねこれは……。
そもそも前提として激しいヤンデレ要素は入れるつもりがないんですよ。
でもライトってどのあたりまでがライトなんだっけ(錯乱)
みたいな状態になってしまいまして、はい。まぁそんな感じです。


第34話 最大の汚点

「――――と、いうわけでございまして」

「ふ~ん」

 

 とりあえずシャルルには頭を冷やしてもらう意味も込めてシャワーを浴びてもらい、俺はナツに経緯を事細かに説明していた。

 ナツは心底から不機嫌そうに椅子へ腰かけ、俺はその前に間を取りつつ正座。何も強要されたわけじゃないが、なんだか空気的にそうせざるを得なかったっていうか。

 弁明の余地がないのはわかっていたが、なんだかナツは取り付く島もないような態度だ。心なしか視線に軽蔑すら混ざっているような気がする。

 ……いや、そもそもこの弁明にあまり意味はなかったな。ナツは俺が簡単に女性と行為に至ることのできない根性なしなのはわかっているだろう。

 シャルルの置かれていた状況も説明した。ナツは他人を慈しむことのできる人物だ。なのにここまで興味がなさそうなのはおかしい。

 普段なら――――そっか、それはいろいろ辛かったろうね。……くらいのことを言いそうなものなのに。となると、ナツは何に対してここまで不機嫌になっているのだろう。

 

「あの~ナツさん、少しよろしいでしょうか」

「なに」

「えっと、何をそんなに苛ついてらっしゃるのかと思いまして」

 

 謝ろうにも何に謝らなければならないのかを理解せねば、それでは火に油を注ぐばかりだろう。

 だから恐る恐る手を挙げて質問を投げかけてみる。謝る内容を理解できたのならこっちのものだ。謝罪なんてものは慣れてるから。

 しかし、ナツはなんだかますますご立腹のご様子。なんでだ。これでは火に油どころか、火のついた油に水を注ぐに等しいではないか。

 

「ハルはこの間、私と何をしましたか」

「何って、そ、そ、そ、添い寝?」

「はい正解。じゃあその前」

「その前……となると、デート?」

「はい正解」

 

 ナツは唐突に何を切り出したかと思えば、この間俺たちが添い寝をしたことをわざわざ確認し始めた。……別に俺の口から言わせなくても。

 どうやら答えとしては正解のようで、ナツはそっけない拍手を送る。そして次はこの間のデートの件について。そちらも正解。またしてもやる気のない拍手が響く。

 ……いったいこれはなんの確認で? このままでは俺のメンタルが削られるばかりだが。

 

「私だけですか?」

「な、何が?」

「ハルとの関係が変わったなって、喜んでたのは私だけですか?」

 

 そう言うナツの表情は、とても辛そうなものに見えた。どころか、その瞳が潤んでしまっているのがわかる。

 違う。待ってくれ。俺がそんな表情をさせたなんて、本当に死にたくなるから待ってくれ。ちゃんと考えるから。

 関係? 喜ぶ? 俺たちの関係は互いに大事な半身だろう。それで既に最上位と思っていたのに、変わる必要なんてあったろうか。

 さもなくば、ナツは俺との関係に――――と仮定するのなら話は早い。でもそれは、あまりにも……。……恐れ多いにもほどがあるが、俺は声を震わせながら口を開いた。

 

「……やき、もち……ってこと?」

「…………」

 

 ナツは何も答えない。が、その様子が全てを物語っていた。顔を赤く染め顔を俯かせるその姿は、俺の言葉を肯定しているのに等しい。

 妬いていると結論付けたのは俺だ。だからこそ解せないこともある。ナツは、俺を一人の男として見ていたということなのだろうか。

 それはとても嬉しいことだが、それと同等に困ってしまう。度々女の子はわからないと口にしてきたが、色恋沙汰なんてのはその何倍も理解不能だ。多分だけど、今のままでは真剣にナツと向き合えない。

 

「……ごめん、困らせるようなこと言ったよね。ハル、お願いだから今のは忘れて――――」

「っ!? ま、待った!」

 

 ああ困るさ。確かに今の俺は盛大に困っているよ。けど、何も迷惑だなんて言いたいわけじゃない。むしろ傷つけているのは俺の方なのに、謝ってこの場を立ち去ろうとするナツを逃すわけにはいかなかった。

 先ほどから痺れ始めていた両足に鞭打ち、早急に立ち上がり少し強めに手首を掴んだ。なんとかナツの足はとまったものの――――

 

(なんて声をかければいいんだ……)

 

 傷つけたとはいえ単に謝るのは少し違う気がする。それに、ごめんという言葉がいらぬ誤解を生んでしまう可能性もあるのでは。

 俺の考えが自惚れでなければという前提にはなるけど、ナツの想いを今すぐ受け入れるのもまた同じ。さっきも言ったとおり、現段階では受け止めきれない。それもナツに失礼なことだ。

 ……なんとも思ってないはずはないさ。そりゃ、ナツみたいによくできた女性が恋人なら間違いなく幸せなんだろうと思う。

 だけど、いざナツ本人をそう当てはめると、まったく先を想像することができないんだ。それはきっと、今の関係が心地よすぎるから。

 

「……忘れないよ。必ず心に留めておくから。だからどうか、無理に笑うのだけは止めてほしい。……ごめん、俺がさせてるのに、どの口が言うんだって感じだよね」

「……ううん、今はそれでいいから。だからどうか、今だけは――――」

「…………!」

 

 こんな時だろうと口から出るのは保険と保身を含ませる言葉の羅列。ああ、今すぐに死んでしまいたい。俺はそんな衝動に駆られ始めた。

 俺にとってこの世で最も忌避すべくことをナツにさせてしまったんだ。無理した笑顔を俺がさせたという事実は、この先長く続くであろう人生においても一番の汚点となるだろう。

 唇を噛み切ってしまいそうなほどに顎へ力を込めていると、ナツが肩を掴んだ俺の手を背を向けたまま動かし始めた。

 腕の止まったその位置はナツの腰あたり。もしやと勘繰りながらもその意図を察した俺は、ゆっくりとナツの腰へと回す。

 

「…………」

 

 果たしてこの選択が正解であったかどうかはわからない。特に今は、俺はナツのことをわかっていたつもりだったのが判明したばかりだし。

 ナツも無言で俺の腕に手を沿えるばかり。背中越しだからどんな顔をしているのかもわからない。ただ俺は、黙りこくるナツを見守ることしかできなかった。

 やがてナツは自ら俺の腕の中から脱し、おどけるようにしながら今度こそ部屋から出て行った。無理している様子はもう見受けられないけど、俺が最低なことをした事実は絶対に覆らない。

 

「織斑さん、帰っちゃった?」

「シャルル……。うん、キミがシャワーに行ってる間にね」

「それは参ったな……。ちゃんと謝ろうと思ってたのに」

 

 自己嫌悪に苛まれてボーッとしていると、シャワーを浴び終えたらしいシャルルが声をかけてきた。ジャージ等、服はしっかり着込んでいるように見える。

 余計な配慮をさせまいと取り繕いながら回答を返すと、それを聞いたシャルルは先ほどの行為を悔いるかのような呟きを聞かせた。

 ……俺もナツのことをちゃんと考えなくては。だが、今は混乱と嫌悪でまともな思考が働いてくれるようには思えない。

 時間も遅いということも加味し、手早く食事を済ませて寝てしまうのが最良であろう。同室であるシャルルも俺の提案に賛成のようだ。

 しかし、俺はここでようやく気が付いた。そもそもナツが訪ねて来たのは俺らを食事に誘うため。そしてシャルルはシャワーを浴びてしまったから、とんでもなく二度手間だということに。

 で、俺が購買まで出向いて適当な食料を買うことに落ち着いた。その際何度かシャルルと一緒に行動してないのかと尋ねられたが、愛想と誤魔化しでなんとかやり過ごすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん、何気に珍しいものを見てる気がするわ」

「鈴……なんの話……」

「あれよあれ。っていうか晴人ね。アイツが誰かと関わって兄っぽくなるって珍しいのよ」

 

 例の件から数日が過ぎ、比較的に平和な日常が繰り広げられていた。

 今日はみんな揃って訓練ということなんだけど、少し遠くで何やら真剣に話し合っているハルとシャルルを指差し、鈴はしみじみとした様子でそう語る。

 シャルルの真実を知らない身からしたら、確かに最近の二人は兄弟のように思えるかもしれない。しかし、真実を知ったこちらからすれば気が気でない話だ。

 多分だけどハルはシャルルの正体が明るみにならないよう、自分もしっかりしないとって思いながら振る舞っている。

 そしてシャルルは、恩人であるハルに懐いているんじゃないかな。別に恋愛感情はないってハルのいないところでフォローは入れてくれたけど、む~……やっぱり少し面白くない。

 ちなみにシャルルの処遇だけど、おじさん曰く全てはデュノア社長の腹の中を暴いてからだって、適当に理由をつけフランス出張に旅立って行った。

 もし何かあればシャルルはウチで引き取るとか言ってたらしいけど、そしたら養子とかってことになるのかな。もしかして、ゆくゆくシャルルはハルの義妹? そしたら最終的に私の義妹ってこと?

 

「おい一夏。まさかとは思うが、男に対して嫉妬してるんじゃないだろうな」

「なっ!? そ、そんなことは――――」

「ないとも言い切れないんじゃない? 晴人の隣はアンタの定位置なはずだったのにね~」

「いや、別に、それは違うよ。流石の私も男子と女子の分別くらいついてるから!」

「そう恥ずかしがらずともよいではありませんか。貴女が晴人さんをそれほどに好いているということだと、わたくしは思いますわよ」

 

 確かに面白くないと思っていたことは事実だけれど、まさかそれが表に出ているなんて思いもよらなかった。

 ああ、弁明したくてもできないのがもどかしい。箒にみんな、違うの。私は普通に女の子に対して嫉妬してるんです。

 シャルルを女の子と知っていると先入観を持ってものを見てしまう。さっき言ったとおりシャルルはハルを好きではないらしい。でも、男子同士の体で仲良くしてる姿がどうも見ていられない。

 それこそシャルルが普通に男子だったらなんとも思わなかったはず……はず! 鈴みたく、ハルがお兄ちゃんしてるなーで終わったと思う……思う!

 でも女子であるという事実が私を焦らせる。いつかシャルルが本気でハルを好きになってしまうんじゃないかとか。ハルの責任感的な庇護欲が恋愛感情に昇華してしまうんじゃないかとか、そう考えてしまう。

 

(というか、う~……今の私には嫉妬って言葉がすごく耳に痛い!)

 

 この間からして、嫉妬から思いきり面倒くさい女を演じてしまったというのに。

 前提として私がハルの女なら、あんなシーン見せられたら怒ってもよかったろう。けど、付き合ってもないのにハルは私のモノなんだからみたいな釘を刺すようなこと言っちゃって……。

 そう思うとセシリアの微笑ましいものだみたいな感想が痛いなぁ。割と醜い女の嫉妬ですよ、ええ。話がこじれるから弁明はしないけれど、以後ああいうことがないように誓わねば。

 

「ねぇ、あれ……」

「うん、ドイツの第三世代の……」

 

 ひとり悶々と頭を悩ませていると、近くの子たちが声を潜めてドイツの機体がどうのと言っているのが耳に入った。

 今の私にとってドイツと聞かされ連想される人物はあの子のみ。少しばかり俯かせていた顔を上げてみると、私の目に映ったのは想像していたとおり――――ボーデヴィッヒさんだ。

 彼女は黒や赤で塗装されたいかにも攻撃的なISを纏い、迷うことなく私の方へ向けて一歩一歩進んでくる。

 恐らく事情を呑んでいる幼馴染二人が臨戦態勢に入りかけたものの、私はバッと掌を差し向けることによってそれを制す。

 二人が完全に大人しくなったのを確認してから私も前へ一歩踏み出し、ボーデヴィッヒさんに対して向き直った。

 

「貴様、私と戦え」

(ああ、やっぱりそういう話……)

 

 前置きもなしに自身との戦闘を望むあたり、相当私に対してお冠のようだ。

 彼女が私との優劣を決めようとするために戦おうとしていることを、かつての私――――男の時の俺なら確実に苛立ちを覚えていたことだろう。

 しかし今は何も感じない。それはボーデヴィッヒさんに興味が沸かないという意味ではなく、単に思ったよりも冷静でいられるということだ。

 

「ボーデヴィッヒさん、まずひとつ勘違いしてるみたいだから言っておきたいんだけど」

「ほぅ、聞かせてみろ」

「私は誰とも戦ったことはないし、これから先だって誰とも戦うつもりはないよ」

「……貴様は何を言っているんだ?」

 

 私はボーデヴィッヒさんが戦いを望む限り、それを受けて立つつもりはない。

 彼女が千冬姉をどのように見て、何を感じたかはわからない。けどあの人の肉親として発言させてもらうのだとすれば、千冬姉だって戦いをしたことは一度もないはずだ。

 ボーデヴィッヒさんは私の言葉に対し、心底から理解できないというふうに眉間へ皺を寄せた。……そうか、理解ができないか。

 抱えているもの。そして抱えているものに対する考え方。それらに千冬姉が関り、なおかつここまでの隔たりがあるのならば、きっとまた彼女を怒らせてしまうのだろう。

 けどいくら怒られようが、喚かれようが、牙をむかれようが、この想いだけは譲ってやるわけにはいかない。なぜなら私は、誰よりも長く千冬姉を見てきたのだから。

 

「試合と戦いは違う。そうじゃないかなって私は思う。だから貴女が戦いを強要する限り、私はそれを受け入れるわけにはいかない」

「力によって優劣を決める、その点において双方に差などないだろうが! それとも何か、貴様は自らの失態から逃げるのか!? 私がなぜ挑むかわからんほど無能ではなかろう!」

 

 私の失態――――か。それは誘拐されてしまったことであり、千冬姉の連覇をなかったことにしてしまったこと他ならない。

 逃げるつもりはない。逃げたくないから私はこの道を選んだんだ。……叶えたい夢ができたんだ。けど、そう弁明しても聞く耳はもってくれなさそう。

 だからそれでもいい。例え逃げることととられようとも、私には一人――――たった一人だろうと、絶対の味方でいてくれる人が居るのだから。

 

「私には夢がある」

「何……?」

「千冬姉ができなかった二連覇を達成すること。それを叶えるため、私はここに居るの。ボーデヴィッヒさんの言うとおり、逃げたくないから。私に戦いたい相手が居るとするのなら、それは――――私自身しかいないよ」

 

 ボーデヴィッヒさんの方へと手をかざした私は、ピースをするようにして二本の指を差し出した。

 義務感や使命感、そして贖罪の念は一切消え失せたから、きっと私の顔は活き活きとしていたことだろう。

 そう、この感じこの感じ。ハルが私の夢を本当のことにしてくれたから、自分に勝ってるこの感じがたまらなく心地よい。

 すべては私に、あの日ただ怯えるだけで何もできなかった私に打ち勝つための戦い。自分に勝つために、他人を傷つける必要なんて絶対にないしあってはならない。

 別にボーデヴィッヒさんを諭そうというつもりはなかったが、私の言葉が図星のように思えるのか、ギリギリと歯を食いしばるような仕草をみせた。

 これまでのやりとりで気が短いのはわかったが、嫌な予感というものがヒシヒシと伝わってくる。

 ボーデヴィッヒさんの殺気を感じて私が身構えたその時――――

 

「貴様がどうしたいかなど、私の知ったことかああああ!」

青色の塔盾(タワーシールド)!」

「っ……!? ハル!」

 

 ボーデヴィッヒさんの専用機、シュヴァルツェア・レーゲンの肩に備えられているレールカノンが火を噴いたと同時に、私たちの間へ滑り込むようにして青色の塔盾(タワーシールド)を構えたハルが割り込んだ。

 レールカノンの弾丸を受け止めたハルは、腕を大きく振るって軌道をそらした。そのまま弾丸はあらぬ方向へと飛んでいき着弾。小さな砂ぼこりが舞った。

 するとハルはしまったなんて言いたそうな顔して着弾方向を見やる。……ああ、流れ弾に関して計算してなかったのか。

 ハルらしいと言えばらしいというか、ボーデヴィッヒさんと着弾地点の両方へと視線が行ったり来たり。

 最終的にはボーデヴィッヒさんの方へ意識を向けることを選んだのか、青色の塔盾(タワーシールド)を解除して彼女へと声をかけた。

 

「えーと、ボーデヴィッヒさん、とりあえず落ち着いて。暴力に訴えたって何も生まれないよ」

「ハッ、甘っちょろくて反吐が出る発言だな。生まれるさ、あの方の失われた栄光を取り戻すという偉業が!」

 

 ハルの争いを好まない性格からくる言葉を、ボーデヴィッヒさんは綺麗ごとだとあざ笑った。

 ハルはそう返されて困った様子を見せる。それは、本人も綺麗ごとではある自覚はあるからだと思う。

 それでもハルはその綺麗ごとを本気で信じている。そして、何もかもがそういった言葉で解決しないことも。

 更には自分の考えを相手に押し付けるようなことを嫌ってか、どう返していいのかすぐに思いつかないんだろう。

 ハルが反論に困っていると、訓練場内に私たちを注意するアナウンスが響いた。先ほどの奇襲と、それを防いだ一連のやりとりを見てのことらしい。

 

「……興が冷めた。日向 晴人、貴様は標的ではないが、これ以上邪魔をするというのなら覚悟だけはしておくことだ」

 

 ボーデヴィッヒさんはそれだけ言うと立ち去って行ってしまう。それを見届けたハルは、ようやくといった感じに身体を脱力させた。

 ……やっぱりハルはかっこいいな。突発的に与えられたヘイムダルという力を、誰かのために使おうとする姿勢は本当に輝いてみえる。

 何よりその意志が、ほんのわずかな間でも私だけに向いた。自分勝手って思うけど、やっぱり惚れてる身からすれば嬉しいものだ。

 今だってその逞しい背中に抱き着きたい衝動に駆られているけど、流石にみんなの前でそこまでするのは恥ずかしいかな。

 どちらにせよお礼は言わなくちゃ。ハルが私を守ってくれたということに変わりはないのだから。

 

「ハル、ありがとう。助けてもらったね」

「いや、気にしないで。守るための盾だからさ」

 

 こちらへ振り返ったハルは少しだけ難しそうな顔をしていたが、すぐに朗らかな様子へと戻った。

 そして、ヘイムダルの大きな右腕を構えて攻撃を防いでこその盾だとひとこと。……前のこともあってか、少し自嘲気味ではあるけれど。

 なんとなく心配ではあったけれど、むしろ心配される側である立場なのは私の方のようだ。それまで見守ってくれていたみんなは、次々と私に声をかけてくる。

 箒と鈴に至っては、攻撃されたことに関してほら言わんこっちゃない、みたいな心配からくる非難を浴びせられた。

 そこはまぁまぁといつもの調子でハルが二人を落ち着かせ、話題はどうしてボーデヴィッヒさんが私を恨むのかという点について。

 う~ん、あまり人に話すようなことでもないんだけど、セシリアも簪もシャルも、それこそ心配してくれてるからこその興味なんだろうし、ここは話しておくべきなのかも知れない。

 私が男だったようなことを悟られないよう言葉を選びつつ、二年前の誘拐事件について語って聞かせた。

 

「それってつまり、織斑先生の不戦敗がキミのせいだって?」

「理不尽……。逆恨みも甚だしい……」

「盲目的にも程がある話ですわね。かなり織斑先生に心酔なさっているということなのでしょうが」

「んなもん、一回ぶっ飛ばしてこれで文句ないでしょって言ってやれば――――」

「それではボーデヴィッヒとやっていることが変わらんだろう」

 

 何やらあーでもないこーでもないと議論が始まってしまった。当事者である私が一番置いてけぼりを喰らっている。

 でも、私はとてもいい仲間を持ったんだと思い知らされるシーンだ。みんながみんな、本当に真剣にどうするべきかを考えてくれている。

 かつての私なら、みんなが気にすることじゃないって、一人で抱え込んでいたことだろう。みんなを巻き込まないようにって……。

 でもそれは、すごく愚かなことだったんだ。楽しいことも辛いことも分かち合える仲間が居るって、本当に最高のことじゃない。

 

「…………」

「ハル、どうしたの?」

「……僕、もう一度ボーデヴィッヒさんと話してみるよ。もし仮にあの子が僕の考えてる通りのことを抱えてるなら、気持ちはわかると思うんだ」

 

 素敵な仲間を見渡していると、妙に神妙な顔つきのハルが気になったので声をかけてみる。

 ハルは単独でボーデヴィッヒさんの説得を試みるつもりらしい。言葉からして、何か思うところがあるようだ。

 するとすぐさま周囲からは反対の意見が。みんな口を揃えて、ボーデヴィッヒさんが聞く耳を持つはずがないと言う。

 正直その意見には私も同意できないが、こういうときのハルは妙に頑固だから言うだけ無駄なのはある。

 本来は私の問題でもあるから無責任なような気はするけど、ここはハルの背中を押してあげたいところだ。

 

「ハル、ひとつ約束して」

「約束?」

「危ないって思ったら素直に引き下がって。……ハルが傷つくようなことだけは嫌だよ」

「ナツ……。うん、わかった。必ず約束するよ。……ほら」

 

 ハルがボーデヴィッヒさんの説得へ向かうことに関して賛成のような意見を述べると、一気に正気かこいつみたいな視線が刺さる。

 だからこその約束だ。私だって、本当はハルが傷つくような可能性があるのに背中なんて押したくないよ。

 私の想いは通じたのか、ハルは力強く頷きながら答える。ん、これは本当にわかってる感じだね。心配が伝わったならなにより。

 そうやって私が心中で感心していると、ヘイムダルの腕部装甲を解除して、私へ小指が差し出された。……あぁ、これは、どうやら私たちの間で、またしても私たちだけのやりとりが増えたようだ。

 私は頬に熱が溜まるのを感じながら、同じく差し出した小指をハルの小指へ絡め、互いにタイミングを合わせて上下へ振った。

 絡めた小指を解いて視線を合わすと、私たちは軽く微笑み合う。なんだか照れくさいような歯痒いようなだ。

 そしてハルはなんだかハッとなる様子を見せ、それから慌てるかのようにしてこの場を離れた。不思議に思って後ろへ振り返ってみると、そこには――――

 べらぼうにニヤニヤとした笑みを浮かべた仲間たちが。その後しばらくいじられ続けたのは言うまでもないだろう……。

 

 

 

 

 




その他原作ヒロインズの蚊帳の外感すごいっすね……。
原作でいう巻の主要キャラしか仕事をさせたくてもできないという。
中でも一夏ちゃんが関わるとなると、ラウラ周りばっかフォーカスされてしまいます。
次回も晴人&ラウラメイン回ですしこれもうわかんねぇな(グルグル目)






ハルナツメモ その19【人生最大の汚点】
比喩でもなんでもなく、晴人は本気でそう思っていた。
死にたくなるという言葉も同様、状況が状況なら自害する可能性すら大いにあったと言える。
実は半身と言いつつも、晴人が一夏を一部神格化していることの現れ。
このあたりが一夏に対する恋愛感情を邪魔している部分も大きい。
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