ハルトナツ   作:マスクドライダー

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ゴーレムⅠ戦で特に何もしていないので、晴人の戦闘をしっかり書くのはやっと二度目ですね。
武装の特性やら忘れてしまった方は、セシリア戦にあたる20話、21話あたりを読んでいただければわかりやすいかも知れません。
それではVSラウラ、前半戦をどうぞ。





以下、評価していただいた方をご紹介。

ゆっくり龍神様 シア様

評価していただきありがとうございました。


第37話 因縁との闘い

「運がいいのやら悪いのやら」

「ハル、私はむしろ意図的にすら感じてる」

 

 本日より、急遽タッグ形式となった学年別トーナメントが開催された。

 俺とナツの出番はAブロックの第一試合。つまるところトップバッターということになる。いやね、それだけならまだいいんだ。問題は対戦相手だよ。

 誰かって、ボーデヴィッヒさんとシャルルのタッグである。このトーナメントは専用機持ちであるなしに関わらず、相当数が参加しているというのになぜこうなるのか。

 ナツの言葉どおり、誰かの思惑で因縁の対決が組まれたように思えてきた。

 しかもボーデヴィッヒさんのパートナーがシャルルってのもだよ。どうしてくじで決まったタッグが、学園内でも数少ない専用機持ち同士になるのか。

 俺の呟きはそのあたりを踏襲してるんだよね。トップバッターだから、わざわざ勝ち進む必要がないのはいいことだ。けど、かなり強力なタッグになってしまったのは問題だと思う。

 

「シャルルはどういうスタンスでくるんだか」

「手加減は期待しないほうがいいんじゃない? シャルル、何気に負けず嫌いみたいだし」

 

 くじだからしかたないことだが、シャルルの心情も複雑なものだろうと思う。いわゆる板挟みという状態だろうか。

 シャルルはどちらかというなら俺たち贔屓、というか味方? 仲間? とにかくそれらのどれかと表現すべきと思われる。

 ボーデヴィッヒさんに対して何をどう思っているか詳しく聞いてはいないけど、少なくともよくは思っていないというような印象だ。

 そんな相手とのタッグなうえに相手が俺たちだ。今頃非常に頭を悩ませているんだろうなと想像しつつも、ナツの言葉にも一理あると首を縦に振った。

 何も手加減してくれればなんて思惑があったわけじゃない。セシリアさんの時と同じで、どうせやるなら全力でやってほしいものだ。

 むしろ遠慮しなければいいんだけど、くらいのつもり。だけど、シャルルは最終的に全力でやってくれることだろう。なんたって彼女、ナツの言うとおり負けず嫌いっぽいから。

 

「よしっ、いこうかナツ」

「うん、必ず勝つよ」

 

 世間話はこのくらいにして、そろそろ出撃準備に入るとしよう。

 俺は隣にいるナツへそっと左手を伸ばすと、ナツも同じく俺へと右手を伸ばす。

 そして互いに痛みを感じない程度の力を籠め、拳を上下にぶつけあってからハイタッチを交わした。

 パチンと響いた音がピット内から消え次第、俺たちはそれぞれの専用機を展開しつつカタパルトへ

 大会の円滑な運営に勤しんでいる教師陣の許可を受け、一気にアリーナ内へと飛び込んだ。

 それと同時に沸く歓声。目に飛び込んでくるは多くの観客。セシリアさんの時とは比べるまでもなく、俺はこの状況に慣れというものを感じていた。

 肌がピリピリするような適度な緊張を心地よさへと変えていると、ハイパーセンサーが黒と橙の専用機をとらえる。

 ボーデヴィッヒさん有する【シュヴァルツェア・レーゲン】と、シャルル有する【ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ】だ。

 

「僥倖なことだ。まさかこんなにも早々に貴様らとまみえることができるとは」

「私も同じ気持ちだよ。ボーデヴィッヒさん、シャルル、いい試合にしようね」

「またそれか。まぁいい、その言葉の真意、この一戦で見極めさせてもらう。日向 晴人、貴様の言葉に関してもだ」

「うん、キミが必ず答えを見つけられるよう、俺も全力で頑張るよ」

「……本当に、よくわからんやつらだ」

 

 何やらものものしい雰囲気というか、ニヒルな表情をしたボーデヴィッヒさんがこちらへ声をかけてきた。

 対してナツの態度は気の抜けるようなもので、対戦相手である二人に笑顔を向けて健闘を祈る。

 するとボーデヴィッヒさんのニヒルな様子は一気に崩れ去り、眉をひそめて眉間に皺を寄せ、意味のわからんことをとナツを突き放す。

 だがフユ姉さんと話しているときに何かありでもしたのか、理解しようとしている姿勢は見て取れた。

 ならば俺も協力をと思ったことを述べたのに、ボーデヴィッヒさんは心底から呆れた様子で開始位置へと移動していく。

 それを見てかシャルルも気まずそうな笑顔のままこちらに手を振って、それから開始位置へと向かい離れていく。

 俺とナツもアイコンタクトをとってから、同時に首を頷かせ開始位置へ。後は試合開始のブザーを待つのみの状態となった。

 黙りこくってただ睨みあう俺たち。肌へ感じるピリピリとした感覚が、数倍にも増したように思える。そして俺が生唾を飲み込んだ瞬間、決戦の報せが鳴り響く。

 

『試合開始』

「たぁああああっ!」

「はぁああああっ!」

(やっぱりそうなるか! だとしたら――――)

 

 試合開始と同時にナツは雪片を、ボーデヴィッヒさんは専用機の腕部から延びるプラズマブレードを。互いの近接武装を構え、目もくれずに突っ込んでいく。

 特に作戦は話し合わなかったけど、この瞬間に俺がナツのフォローに回る戦法が確立されたと思っていい。そしてこの展開、シャルルにも見えていたことだろう。

 だから俺のとるべき行動は、右腕を青色の塔盾(タワーシールド)へ変形させることだ。

 

「させないよ」

「キミもね!」

 

 やはり俺の予想どおり、シャルルはボーデヴィッヒさんとの交戦で隙だらけのナツへと射撃を行う。

 アサルトライフル型の射撃武装【ヴェント】が火を噴くが、長い右腕を大きく前へ突き出し、ナツとの間隔を遮ることに成功。

 ヘイムダルの鈍足ゆえにギリギリではあったが、なんとか弾丸は青色の塔盾(タワーシールド)へ激突し事なきを得た。

 

「シャルル・デュノア、余計な茶々を入れるな! これらは私の獲物だ!」

「えぇ……?」

「シャルルの援護を無下にするなんて!」

「黙れ、私のやり方にまで口出しされる筋合いはないぞ!」

 

 さてこれからどう動くかと思考を働かせようとしていると、ボーデヴィッヒさんの怒号が響いて思わず身体をビクつかせてしまう。

 その内容は援護を仕掛けたシャルルを邪魔扱いするようなもので、これには本人も困惑した表情で銃口を下げた。

 シャルルが怒るべき場面であったものの、その代わりとでも言うようにナツが非難の声を上げる。

 二人はそのまま一進一退の攻防を繰り広げ始め、俺とシャルルは完全に置いて行かれてしまう。

 そして俺たちは、顔を見合わせてただ苦笑いを浮かべるばかり。

 

「えーっと、棒立ちってわけにもいかないから一応……」

「も、もちろん! 晴人、手加減はしないよ!」

 

 つい言っちゃったけど、一応ってなんだ一応って。俺たちも交戦しないわけにはいかないでしょうに。

 でも似たことでも考えていたのか、シャルルはまるで取り繕ったかのようなやる気を見せる。ああまで言われてモチベーションが落ちないとは、やはり優しいいい子だなぁ。

 それにしても、やっぱり優しいからこそ手加減はしてくれないらしい。さっきも言ったがもとより期待してはいない。むしろ師匠への成長を見せることが弟子の務めだろう。

 例のナツがボーデヴィッヒさんの攻撃を受けたあの日、実はヘイムダルを用いたバトルスタイルについていくつか指摘を受けていたのだ。

 俺は矢継ぎ早に浴びせられる弾雨を青色の塔盾(タワーシールド)で防ぎつつ、あの日のシャルルの言葉を思い出していた。

 

『正攻法な感じじゃなくて、もっとこう、トリッキーさを生かすべきだと思う』

『トリッキー? それは、いろいろ変わった武装が多いからかな』

『うん。例えば、青色の塔盾(タワーシールド)だけど――――』

(相手に思い切りプレッシャーをかけていくべし!)

「くっ、流石の突破力……。教えたのは僕ではあるけど、これは……!」

 

 セシリアさん戦の終盤でも同じような動きをしたが、シャルル曰くそういうのは序盤からどんどん仕掛けていくべきだとのこと。

 俺は青色の塔盾(タワーシールド)でしっかりと全面をガードしつつ、真正面からシャルルの追走を始める。

 以前の無人機の攻撃を防ぎ切った実績のある盾だ。確かに多種多様な射撃武装はRRCⅡにおいて脅威なのだろうけど、青色の塔盾(タワーシールド)を抜くほどの火力はない。

 そしてこれはどんな対戦相手にも共通することだが、相手へと多大な精神攻撃、揺さぶりを仕掛けることへとなるのだ。

 なぜなら青色の塔盾(タワーシールド)を攻撃するということは、ビフレストを溜めることを助長すること。それすなわち、虹色の手甲(ガントレット)を打ちやすくすることを意味しているのだから。

 事実、シャルルも攻撃を最小限に抑えつつ引き撃ちを続けている。攻撃せず逃げ続けてるだけでは勝てないからね。

 そして射撃のわずかな合間があれば、ヘイムダルはある程度ダメージを気にせず反撃することも可能だ!

 

(シャルルのアドバイスその二!)

黄色の弩砲(バリスタ)は、大ダメージ狙いで撃つ必要はないと思う』

黄色の弩砲(バリスタ)!」

(これも僕のアドバイス……!)

 

 シャルルの大ダメージ狙いで黄色の弩砲(バリスタ)を使用しているという見解は語弊がある。実際は狙いをつけている間に勝手にチャージが溜まっちゃってただけのことだ。

 だがシャルル曰く、あまり精密な狙いも火力も黄色の弩砲(バリスタ)に求める必要はないらしい。チャンスがあれば、くらいに思えばいいとか。

 大ダメージを与えるのは虹色の手甲(ガントレット)のみ意識し、黄色の弩砲(バリスタ)は主に牽制が目的くらいに思って運用するべし。なぜなら例え少ないチャージでも、それなりの威力はあるからだ。

 

「ふんぬっ! でやぁ!」

(狙いが甘いのが唯一の救い……だけど――――)

 

 約10%程度の威力で放たれるエネルギーの矢弾は、俺の射撃の腕により、シャルルに難なく躱されてしまう。

 しかし、避けることに集中している以上、いくらヘイムダルが鈍足だろうと徐々に距離を詰めることができる。

 今回において俺の狙いはこれ。このタイミングで、またしてもシャルルのアドバイスが生きてくるのだ。

 俺は右腕を赤色の丸鋸(サーキュラーソー)に変形させつつ、右腕を大きく延ばしながら掌をできるかぎり大きく広げる。そして

 

「捕まえたぁ!」

「くっ、しまった!」

(シャルルのアドバイスその三! 単純に掴むだけでも拘束が可能!)

 

 こちらもシャルルの反撃を受けつつにはなるけど、攻撃か離脱かの二択を迫られ、迷うシャルルを捕まえるには十分な代償だ。

 これもシャルルのアドバイス。ヘイムダルに掴まれるということは、ほぼ完璧な拘束が出来上がったのも同等!

 普通のISでも人間の胴体を掴むことは可能かもしれないが、ヘイムダルのソレは他と比較するまでもないほどに容易だ

 しかも、こちらは掴んだまま攻撃が可能といのも立派な利点。右腕が変形するという仕様が、まさか相手を掴むことで有利に使えるとは思いもしなかった。

 でも地味にえげつなくて好きではないんだけど、土俵に立った以上は勝負に徹するしかない。

 俺はシャルルを掴んだままの状態で、赤色の丸鋸(サーキュラーソー)の高速回転を始めた。

 物体を切削せんがためにある鋸状の刃は、掴んでいる状態のシャルルにも余裕で届き、これにより拘束しつつの攻撃という状態が完成というわけだ。

 

「わああああっ!? こ、このままじゃ……!」

「ええい、世話の焼けることだ!」

「っ、ハル!」

 

 意外にもと言っては失礼だが、ボーデヴィッヒさんがシャルルの援護に入る動きを見せた。ナツにとっても予想外の行動のようで、割とアッサリ抜かれてしまう。

 まぁ、確かに妥当な判断ではあるだろう。このまま傍観ししたとして、シャルルは冗談抜きでエネルギー切れを待つだけの状態だ。

 ボーデヴィッヒさん的にはナツが最たる標的だし、俺との二対一をつくられたくないがゆえの、というのが行動動機かな。

 こちらへ迫るボーデヴィッヒさんを尻目に、ナツは俺の名を叫ぶ。普通の人なら忠告や謝罪の意味を込めてと思うんだろうが、今の意図をしっかりと察した。

 うん、ツーカーのとれる幼馴染っていうのはいいものだ。名前を呼ぶだけで意図を察することができるレベルのなんてのは特に。

 

「ふんぬぅぅぅぅ……!」

「……え? ちょっと!? ま、まさか――――」

「どっせぇぇぇぇええええいっ!」

「そのまさかああああ?!」

「なんだと!?」

 

 ナツが叫んだ【ハル!】に詰まっていた意味は、シャルルをぶん投げれば全てが解決    だ。本当にそう言ったかって? うん、俺がそう感じるんだから絶対正解だよ。

 俺も言われた瞬間目から鱗だったね。確かにこれで万事解決だ。というわけなので、俺はシャルルをナツの方向へ大きく振りかぶって投げた。

 自分でも思ったよりも力が入ったのか、シャルルはRRCⅡごと乱回転しながらナツの方向へと飛んでいく。そして、援護に駆け付けたボーデヴィッヒさんの真横を通り過ぎて行った。

 これにより、シャルルは態勢を立て直せないまま敵の懐へ。ボーデヴィッヒさんは一瞬にして援護対象を見失ったというわけだ。

 

「ちっ! シャルル・デュノア、どうにか防げ!」

「りょ、りょうか――――いっ!」

「くっ、やるね!」

「それはどうも!」

(す、凄い攻防だ……!)

 

 ボーデヴィッヒさんらしいような、仕方がないからどうにかしろという指示が飛ぶ。どうにかできるものならね、と思いつつ動向を見守っていたが    シャルルはどうにかしてしまった。

 シャルルはなんと乱回転中に上手くRRCⅡの盾を構え、ナツの振りぬいた雪片が当たるように仕向けた。盾と刀がぶつかり合い火花が散ると同時に、シャルルの回転はピタリと止まる。

 ナツの白式が近接戦闘しか行えないのを利用したんだな! 雪片で盾へと衝撃を加えさせることで、俺が放り投げた勢いを殺したのか。

 

「貴様、随分と余裕だな!」

「ご、ごもっとも! えーと、えーっと、こういう時には……!」

 

 ハイレベルの攻防を前に心躍らせていると、ボーデヴィッヒさんが凄まじい行を打を見せる。それは確とハイパーセンサーで確認はしていたが、ありきとはいえ気が緩んでしまったようだ。

 それは気分を損ねさせても仕方がない。集中しなくては。

 ここでいきなりだが、実はこの戦闘以前の訓練にて、新たな変形機構がアンロックされたのだ。 

 対応する色は緑。使用感は相変わらず癖があるけれど、かなり有用かつ用途も広い。青色の塔盾(タワーシールド)を除けば、もしかすると一番有能である可能性も高い。

 それじゃ、レッツ変形!

 

緑色の電磁(マグネショッカー)!」

(データにはない変形機構……!)

 

 虹色の手甲に緑色のラインが走ると、変形が開始される。

 いつものように右腕装甲が半分パージされたくらいに浮き、浮いた部分が輪っかのような形状へと組み変わった。

 そして装甲がない部分に緑色の幕が張られる。と、同時に輪っかになった部分が高速回転を開始。グルグルと回転速度が徐々に増していくにつれ、緑色の幕が濃くなり電撃がほとばしり始めた。

 回転速度……最大! 発射準備オーケー! 急いで右腕をボーデヴィッヒさんのほうへ向け、発射トリガーを引く。

 

「当たれ!」

「ぐぅ!? ……っ! これは、EMP兵器の類か!?」

 

 波紋状になり発射された電撃は、しっかりとボーデヴィッヒさんを中心にして命中した。

 緑色の電磁(マグネショッカー)の効果が表れたことを示す、緑色のプラズマがシュヴァルツェア・レーゲンに走る。そして、動きが完全に停止した。

 ボーデヴィッヒさんは流石軍人なだけあって、緑色の電磁の効果がいわゆるEMPのようなものだとすぐに感づいたようだ。

 それはズバリ正解で、緑色の電磁(マグネショッカー)から放たれたプラズマエネルギーに命中すると、駆動系に干渉し2秒程度なら完全に動きを止めることができる。

 ただし、欠点としてこれは黄色の弩砲(バリスタ)と違い、100%チャージした状態でなければ発射することがそもそもできないこと。

 これに関して言うなら、黄色の弩砲(バリスタ)ほどチャージ時間が長くがないからあまり問題ない。もうひとつの欠点が問題であり    

 

(ちょっと痺れるぅ……!)

 

 そう、これ、撃ったほうも痺れるんです。しかもちょっと影響受けるんです。まぁ影響が出るのは駆動系でなく、ハイパーセンサーとかの映像が一瞬乱れるくらいだけど。

 と、とにかく痺れなんか気にしている場合じゃない。ボーデヴィッヒさんは近づいてくれたのだから、2秒あれば何かしらできるぞ。

 えー……黄色の弩砲(バリスタ)はチャージしてる時間はないし、掴んで赤色の丸鋸(サーキュラーソー)もちょっと無理がある間合い。……となれば、青色の塔盾(タワーシールド)でシンプルに殴る!

 

「でやぁ!」

「ぐはっ!」

 

 右腕を青色の塔盾(タワーシールド)へ変形させると、内側から外側に振り回すようにして、盾を形成するエネルギーでボーデヴィッヒさんを殴りつける。

 真横から叩き込んだ青色の塔盾(タワーシールド)に、俺は確かな手ごたえを感じた。そしてその感触を示すかのように、ボーデヴィッヒさんはかなり遠くへ吹き飛ばされていく。

 とはいえ盾による物理攻撃だ。ISに対しては、見かけほどダメージを与えられていないはず。さて、緑色の電磁(マグネショッカー)の効果も完全に切れているだろうし、ここからどうすべきか。

 

「……どうやら私は優先目標を見誤っていたようだ」

(ヒッ……!?)

「シャルル・デュノア、手を貸せ! 先にこちらのデカい虫を潰す!」

「了解!」

 

 ボーデヴィッヒさんのまぶたが数回ヒクヒクと動く様を、俺はこの目ではっきりと見た。

 大変ご立腹でいらっしゃる。俺ごときになんたる不覚、とでも思ってるのかなぁ……。

 そしてボーデヴィッヒさんは、シャルルとの二人がかりで先に俺を仕留めるとの宣言を堂々とし始めるではないか。

 なるほど、シャルルに共闘を求めるということは、単に頭に血が上っているというわけでもないらしい。かえって厄介でしかないわけだが。

 

「そうはさせな――――」

「ナツ!」

「っ!? っ~……わかった……!」

 

 二人のやり取りを見てか、ナツはシャルルの行く手を阻むべく追尾を始めようとした。せっかくだけれど、それは俺から却下させていただく。

 俺が名を呼ばれて何を言いたいかがわかるように、ナツも同じことができる。だから名を呼ぶことで、キミは攻撃の隙を狙うべきだと伝えておいた。

 ハイパーセンサーで見るナツの顔は苦々しく、あまり納得はいってない模様。それでも従ってくれるということは、俺を信じてくれているのだと勝手に解釈しておくことにしよう。

 

「私に合わせろ」

「これは……。そうか、なるほど。うん、いい作戦だと思う」

(挟撃か! しかもただの挟撃より何倍も厄介だ!)

 

 ボーデヴィッヒさんとシャルルが前後に陣取ったかと思いきや、二人は俺を中心にするようにして旋回運動を始めた。これはヘイムダルの弱所を完全に突かれる配置だ。

 青色の塔盾(タワーシールド)でカバーできるのは俺の前面。つまり挟み撃ちにされると背面ががら空きになってしまう。

 それに加えて旋回運動をすることにより、こちらに的を絞らせない算段なのだろう。まともな遠距離攻撃を持ち合わせないため、こうなると反撃は難しい。

 しかも同時にナツの零落白夜への警戒も行うことが可能とは、もしかするとこの布陣、対俺&ナツの最終形態なんじゃないか?

 

「そら、とにかく撃ちまくれ! 相手がやつならどこかしらに当たる!」

「さっきのお返し、ってことで、勘弁してよね!」

(これは、きっついぞ!)

 

 俺へと向けて集中砲火が開始された。シュヴァルツェア・レーゲンはリボルバーカノンを、RRCⅡは多岐に渡る重火器を次々に切り替えながら、とにかく弾を浴びせてくる。

 無論だが俺も移動して脱出を試みるも、二人はどうにも息の合った動きで俺を中心から逃してはくれない。

 セシリアさんのBT兵器とは違って二人は人間だ。自分で考えて動くぶん、以前BTに取り囲まれた状態よりも窮地と言えよう。

 どちらか一方の攻撃は青色の塔盾(タワーシールド)で防ぐことができても、その逆位からくる攻撃を防ぐことができないこの状況。なんとか打破しなくては、本気で削りきられるのを待つしかできなくなる。

 

「ハッ、形勢逆転といったところか!」

「それはどうかなっ!」

(上手い! 次弾装填のわずかな隙を!)

 

 本気でエネルギー切れも覚悟し始めたころ、期をうかがっていたナツがついにしかけた。

 その対象はボーデヴィッヒさん。ナツはリボリバーカノンのシリンダーが次弾を撃つために回転しきる前の、そんなわずかな隙を狙ったのだ。

 けどナツにとってはそんな隙で十分だ。まだエネルギーには余裕があるし、なんなら今から瞬時加速を使って、さらに隙を消すことだって    

 

「馬鹿め、そんなのはお見通しだ!」

「なっ!? こ、これは……動けな……い……!」

「無駄だ、AICにかかった者は、何人たりとも動くことはかなわん!」

(AIC!? 情報、引き出せるといいんだけど……)

 

 どうやらナツは泳がされていたらしく、ボーデヴィッヒさんはいったん攻撃の手を止めて、口元を歪ませながら右手をかざした。

 するとどうだ、まるでナツの動きが映像をポーズしたかのように完全に停止してしまう。AIC、とやらの影響であることはわかったが、いったい何が起きているのだろう。

 すかさずハイパーセンサーでシュバルツェア・レーゲンをピックアップしてみると、そこにはActive Inertial Cancellerという英語が並べられていた。

 アクティブ・イナーシャル・キャンセラー……? つまり、任意に慣性を完全に無効化するってことか!? 何さ、その物理法則に喧嘩を売るかのような反則特殊武装は!

 

「今だっ!」

 

 AICに関する情報を閲覧している俺も隙だらけだったろうが、シャルルは動けないナツの方をターゲットとして絞ったようだ。

 しかし、遠距離を想定した機体であるRRCⅡでどうして接近を試みるんだ? ベターなところなら至近距離からのショットガン連発なんだろうけど、あの顔はそれだけのように思えない。

 どうやら何か隠しだねがあるらしい。もしかすると、一撃で仕留めることができるような、いわゆるとっておきというやつなのかも。

 だったら、なおさらこうして傍観しているわけにはいかないな! この距離ならじゅうぶん間に合う。ボーデヴィッヒさんもシャルルのことを考え、AICはすんでのところで解除してくれることだろう。

 ……なんて、考えるよりも先に身体が動いちゃってるんだけど。さぁいこうかヘイムダル。その防御力の本領発揮だ!

 

灰色の(グレー・)――――」

「それだけはやらせない!」

「ハル!?」

「くっ……鱗殻(スケール)!」

 

 シャルルにも予測できたことではあろうが、間に割って入って青色の塔盾(タワーシールド)を構えると、割と苦い表情を見せたのが印象的だった。

 どちらにせよ、もう引っ込みがつかないからそのまま攻撃を繰り出したんだろうけど、一瞬何が起きたのかわからないほどの衝撃を感じる。

 防ぎはしたが本当に威力がすさまじい。ナツと一緒になって吹き飛ばされ、視界が安定したところで、ようやくどういった武装での攻撃だったか理解できた。

 RRCⅡの盾から杭のようなものが飛び出している。弾や数馬たちとやったロボットゲームで見たことあるけど、どうやらパイルバンカーと呼ばれるそれだったようだ。

 爆発などの衝撃により杭を高速で打ち出すことにより、相手に高威力の物理ダメージを与える兵器だったと思う。なるほど、隠しダネと呼ぶにはふさわしい代物だ。

 

「ハル、大丈夫!?」

「うん、平気だよ。一回アレを受けちゃってるしね」

「感覚が麻痺してるだけじゃない!」

 

 いや、ほんとにすごい威力だった。まるで右腕が爆発でもしたんじゃないかって思ったくらい。

 でもアリーナのシールドを破壊可能な攻撃を受け切った実績は大きく、俺本体にダメージさえなければ大したことないって思える。

 俺の返事をどうとらえたのかは知らないけど、ナツはずいぶんと困った様子で突っ込みを入れてきた。冗談か本気か取り違えているのかな。

 それはさておき、ようやく準備が整った。何かって、ビフレストの充填がフルになったというわけ。これで、こちらにはもうひとつ、一撃必殺級の威力を誇る手が増えたというわけだ。

 ところがどっこい、今回はそもそも相手に当てる用途で虹色の手甲(ガントレット)を使う気はなかった。いやね、ちょっとした作戦があるわけなんだけど――――

 

『ナツ、ひとつ考えがあるんだ』

 

 これはあくまでもタッグマッチなんだから、信頼できるパートナーの意見もいただくことにしよう。俺は秘匿通信(プライベート・チャンネル)を使い、ナツに声をかけるのだった。

 

 

 

 

 




この話を書いてて思い出したんですけど、ヘイムダルの武装のネーミングって灰色の鱗殻と丸被りでしたね。私が書いてた旧作品でも度々登場してたのになぜ忘れるのか。
でもドがつくほどオレンジの機体なのに、いきなり灰色が出てくるのもどうかと(ry
どのみち今更引っ込みもつかないので、今後も〇色の〇〇ってかたちでいきます。





緑色の電磁(マグネショッカー)
ヘイムダルの右腕である虹色の手甲(ガントレット)に用意されている七つの変形機構のうちの一つ。
特殊な電磁波のようなものを発射し、直撃した相手(ISに限らず多くの機械等)の駆動系に干渉を起こし、2秒ほど動きを停止させる。
黄色の弩砲(バリスタ)とは異なり最大までチャージを行わなければ発射そのものが不可能ではあるが、溜めの時間はさほど長くはない。
最大の欠点はヘイムダルも多少なりと影響を受けること。
ただし出る影響は駆動系でなく、ハイパーセンサーにノイズが走るといった障害が発生する。
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