ハルトナツ   作:マスクドライダー

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VSラウラ&シャルロット、後半戦です。
とりあえず白式とヘイムダルの持ち味は出せたかなと。



第38話 認めてたまるか

(またしてもあの目……!)

 

 晴人と一夏の両名が秘匿通信(プライベート・チャンネル)での作戦会議を始める中、ラウラはそんなことよりもと言わんばかりに敬愛すべき教官の弟分を睨みつけた。

 戦況は間違いなくラウラ&シャルル組が有利。灰色の鱗殻(グレー・スケール)の一撃でヘイムダルのエネルギーはかなり削れた。更に晴人たちは、例の旋回包囲陣形になんの対策も取れてはいないのだから。

 にもかかわらず、ここにきてあの目だ。まだ希望を捨てていないあの目。心の奥底で、静かに燃ゆる炎が垣間見えるかのようなあの目。神格化しているとも表現できる憧れを抱いた人物と同じ目。

 気づけば歯をきしませているラウラがいた。許せないのとは少し違うが、普段はナヨナヨしがちな晴人がしていい目ではないという考えは確かにある。

 何より、相も変わらず晴人に千冬を感じている自分自身が許せないのだ。ラウラにとって千冬とは、唯一無二で絶対のものなのだから。

 

「ナツ、任せたよ」

「任された!」

(来るか。次で確実に仕留める!)

 

 もちろん話し合いを妨害することもできたが、ラウラとしては何をしようと無駄という考えが強く、あえて手を出さなかった。

 もっと言うのなら、あえて作戦を開始させ、それを真っ向から潰して精神的ダメージを与えてやろうという魂胆が主だろうか。

 シャルルの方もラウラの性格上による問題があるため静観を貫いたが、力強く鋼鉄の手でハイタッチを交わす二人を前に、猛烈な嫌な予感を覚えずにはいられない。

 

「それじゃ、よ~い……」

「「スタート!」」

(織斑さん一人で僕らの妨害? それじゃどうして晴人は急上昇なんかを……)

(確かに先の陣形は三次元移動には弱いが、それが目的での行動には見えんな)

 

 スタートの合図と同時に、晴人はとにかく上を上を目指して急上昇を始め、一夏は足止めのためか果敢にも斬りかかってくる。

 ここで不可解になるのが、どうして晴人がラウラ&シャルルを無視して上昇を続けるかだ。

 本来なら零落白夜か虹色の手甲(ガントレット)を確実に当てるため、二人が同時に二人の隙を作りにかかるのが一番に決まっている。

 それをただでさえ雪片一本しか持たない一夏を囮に使ってまで、晴人がそうする理由が全く読めない。

 ただ一つだけわかることがあるとするなら、何かしらの目的がある以上、晴人を無視するわけにはいかないということだ。

 

「チッ! シャルル・デュノア、特別に足止めを任せてやる」

「わかった。でも、削り切っちゃっても文句は受け付けないからね」

「……善処する」

 

 一夏との決戦に終始するつもりが、どうしてこうなったのだ。そんな意味を込め、ラウラは何度目かになる舌打ちを鳴らした。

 だが優先すべきはチームとしての勝利と一定の冷静さが働くのか、渋々ながらも一夏の足止めをシャルルに任せて晴人を追いかける。

 シュバルツェア・レーゲンの機動力は特筆するほどではないにしても、どう考えようがヘイムダルよりは高い。全力の急上昇を続けさえすれば、簡単に追いつくことができるだろう。

 しかし、いくらヘイムダルが鈍足にしても、ラウラたちが使った迷いと葛藤の時間のおかげか、アリーナの高度限界地点までたどり着く。

 そうまでしたというのに、晴人はなんと――――

 

「よいしょ……っと!」

「なんだと!? 本当に何が目的だと言うんだ……!」

 

 頂点までたどり着いたかと思いきや、すぐさま急降下を始めたのだ。もとから予測のつく行動ではなかったが、不可解にもほどがあるというもの。

 まず間違いなく、自分を引き付ける目的ではないとラウラは考える。そしてこの様子なら、シャルルを攻撃する気もないように思えた。

 どうせ追いつけるというわずかな驕りか、ラウラはAICを発動する間もなく晴人を抜かしてしまう。そして素通りときた。やはり目的は攻撃でも誘いでもない。

 

(まさか、もしや……? いやしかし、そんなことをしても無意味なことはわかっているだろうに)

 

 ここにきて、ある予測がラウラの頭に浮かぶ。そしてより困惑するばかり。予測が正しいとして、まったく無意味な行動であるからだ。

 しかし、先ほども言ったとおりに止めないわけにもいかない。今度こそすぐさま追いかけ始めたおかげか、もうすぐAICの有効射程圏内だ。

 晴人も迫るラウラに焦りを隠せない。それでもギリギリを狙う必要があるため、不安で高鳴る鼓動を抑えながらただひたすら地面をめがけて飛び続けた。

 そしてヘイムダルがAICの射程に引っかかるか否かの瞬間、同時にヘイムダルもアレが最も効果をなす距離へと地面を捉えた。

 

(流石の俺でも地面相手なら、全力の全力(、、、、、)でやれる!)

「捕まえ――――」

虹色の手甲(ガントレット)ォ!」

 

 ラウラが右腕を晴人へ差し向けた瞬間、ヘイムダルの右腕が美しい虹色の光を放ち、その巨体がグンっと加速した。まさにタッチの差。コンマ一秒でも発動が早ければ、晴人は捕まってしまっていたことだろう。

 事なきを得た晴人は、虹色の光に包まれたまま地面へ向けて一直線。ハイパーセンサーでそれを目撃したシャルルは、まるで虹色の隕石が如く姿だったと後に語る。

 そして件の虹色の隕石は、多くの観衆が見守る中、地面へとその拳を叩き込むのであった。

 

(こ、これが本気の……。凄いや、そこら中が土煙で何も見えない……)

 

 ヘイムダルが地面を殴りつけると、凄まじい轟音と揺れがアリーナを包む。空中に居るシャルルたちは感じることはできないが、もはやちょっとした地震であった。

 そして地面が超パワーで殴られたことにより、衝撃波のようなものに乗せてアリーナのほとんどを土煙が包む。

 これを見て、ラウラの脳にはやはりかという言葉が過る。そう、これは読めていた。だからこそ無意味であると考えたのだ。

 

(本気で目くらましのつもりだとでも言うのか……? だとすれば――――)

 

 いくら肉眼での視界を断とうと、ISにはハイパーセンサーがある。確かに思わず一瞬だけ目をふさいだものの、ラウラの視界には確かに晴人と一夏の位置や距離が表示されている。

 それでは本気で目くらましかどうか。それを考えたとき、ラウラの出す答えはノーだ。

 日向 晴人という人間を過大評価するつもりは一切ないが、そこまで単調な作戦を思いつくほどの無能ではないというのがラウラの評価だ。

 だがこれも先ほどまでと同じ。わかった上で、わかっているのなら止めないわけにもいかない。だからこそラウラは、背後へ振り返ってAICを発動させた。

 

「この土煙に乗じて零落白夜で仕留める。という作戦とすれば、失望を禁じえんぞ」

 

 ハイパーセンサーを見れば、背後から急接近する敵影が一つ。それは一夏と白式のものだった。

 土煙を目くらましとするならまずこう来る。だからこそ無意味という評価を下していた。事実、一夏は捕まっているのだからその評価は正しいのだろう。

 ただしAICで捕縛している対象が、本当に一夏ならばの話ではあるが。

 

「…………? っ!? 馬鹿な、これはいったいどういうことだ!?」

「かかってくれて、どうも……ありがとうね……」

(右腕の形状がまたもデータにない……。まさか、ジャミングの類か!?)

 

 時間とともに土煙が晴れていく。そして、捕らえた相手のシルエットが見え始めた瞬間、ラウラの思考は一気にパニックへと陥る。

 確かにハイパーセンサーに、目の前の機体は白式であると表示されている。だというのに、なぜか自分が捕まえているのは晴人とヘイムダルではないか。

 ラウラの目はすぐさまヘイムダルの右腕で止まった。またしてもデータにない変形をしている。右腕の装甲が甲虫類の羽のように開き、そこから藍色の光子が舞い散っていたからだ。

 ヘイムダルがラウラたちとの対戦までに解放した変形機構は緑色の電磁(マグネショッカー)だけでなく、藍色に対応するソレも解放されていたというわけだ。

 藍色の幻影(ファントム)。晴人がそう名付けた変形機構の用途を簡単に説明するのなら、ラウラの予測どおりジャミングで間違いない。

 腕からチャフのように粒子を撒き、範囲と濃度にもよるが、有効射程に入っているすべてのISを対象とし、ハイパーセンサーへ重度の障害を発生させるという機能。

 

(それだけ聞くと有能に感じるけど……)

 

 この作戦は晴人と一夏にとっても大きな賭けだった。なぜなら、藍色の幻影(ファントム)は根本からして、重大な欠点をいくつか抱えているからだ。

 一つはラウラが言い続けてきた無意味ともかかわりがある。というのも、あくまでハイパーセンサーのロック対象を誤認させる程度なため、先ほどのように肉眼での視界も遮らなくてはまるで意味がないということ。

 もう一つは、ヘイムダル自身も効果対象に含まれるうえ、完全にランダムに反応が入れ替わるという点である。

 言ってしまえば、晴人が立てた作戦は運しだいである。もしかすると、RRCⅡが白式の反応になる可能性もあったのだから。

 

(ということは、まさか!?)

「いっけええええええっ!」

 

 そう、そうのまさかだ。慌ててラウラがハイパーセンサーを確認しつつ振り返ると、ヘイムダルの反応を感知させながら、土煙を突破して一夏が現れる。

 確とその刃は青白い輝きを放ち、零落白夜が発動していることを示していた。

 ラウラの思考は更にパニックを加速させた。ランダムであることは知る由もないにして、作戦の全貌を理解したからだ。むしろランダムであることを知ったなら、ますますパニックになることだろう。

 早い話が理解できないのだ。自分が感づく可能性は十分あった。誤認させることに気付かれた時点で、作戦は破綻したも同然だろう。

 だというのに、この二人はなんの迷いもなく自分に突っ込んできている。ラウラはそれが心底から理解できない。いや、理解したくないのかも。

 信じられるのは己だけ。必要なのは己の持つ力のみ。弱者は虐げられ、強者は褒めたたえられる。それがラウラの持つ常識だ。

 強者、弱者の概念で例えるのならば。一夏は間違いなく強者だ。晴人は間違いなく弱者だ。だというのになぜ、なぜ    

 

(この女は、こんなにも弱者のことを信じられる!?)

 

 零落白夜を発動させることが前提だとするなら、作戦が破綻した場合は狙われるのは一夏だろう。

 なぜならそれは諸刃の剣。白式のエネルギーを限界まで使用することにより、一撃必殺の刃を形成する能力なのだから。

 ことによっては無事では済まない。むしろ、作戦に気付いたのなら、ラウラは無事で済ます気もなかったろう。そして、それは一夏も理解しているはず。

 それでも一夏は、こうして零落白夜を発動させて自身の間合いに入り込んできた。それはひとえに、晴人のことを信じているからだ。

 だから理解できない。理解したくない。もし仮に強弱関係なしに互いを信じぬくことが二人の強みだというのなら、千冬が持っていた強さもソレということになってしまうのだから。

 

「認めてたまるか! そんな、そんなことが――――」

「遅ぉぉぉぉい!」

「あってたまるかああああああああっ!」

 

 ラウラはすぐさまAICを解除してプラズマ手刀を構えるが、白式にここまでの接近を許した以上は無駄も同然。

 仮に間合いが足りなかったとして、AICから解放された晴人が何かしらの妨害を仕掛けていたことだろう。つまり、これは紛れもないチェックメイト。

 シュヴァルツェア・レーゲンを操作し腕を振り抜こうとした頃には、既に腹部へと鋭い横一線のひと太刀を浴びせられていた。

 瞬間、まるでバグかと思うほど、それくらいまでアッサリと、シュヴァルツェア・レーゲンのシールドエネルギーはゼロまで減少する。

 

 

「ぃよっし!」

「流石だよ、ナツ!」

「ボーデヴィッヒさん!? い、いったい何が……」

 

 間違いなくラウラを仕留めたことに、一夏は思わずガッツポーズが。自分たちの絆が彼女を打ち破ったことが、何より嬉しいのだろう。

 晴人は一夏に対して称賛を述べるも、まだシャルルが残っているのだと気持ちを切り替えた。零落白夜を使用したことにより、白式はもはや虫の息なのだから。

 自分が頑張らねばチームとしての価値はないと、ようやく土煙から脱したものの、藍色の幻影のこともあって状況がいまいち飲み込めていないシャルルを見やった。

 しかし、その時である。

 

「ああああああああああああああっ!」

「な、なんだ!? シュヴァルツェア・レーゲンが、溶けていく……?」

「ハル、なんだか様子が変だよ! ここはいったん離れて固まろう! シャルルも!」

「う、うん!」

 

 突如としてラウラが絶叫を上げたかと思えば、その身に纏われていたシュヴァルツェア・レーゲンの装甲が、見る見るうちに泥のように溶けていく。

 あまりの異様な光景に愕然とするばかりの晴人だったが、一夏の声により現実へと引き戻された。そして、シャルルと二人してその指示に従った。

 後は何がってもすぐさま対処が効くよう、青色の塔盾(タワーシールド)を構えて引き続きラウラの身に起こっている何かを見守る。

 溶けだした装甲はいつしかラウラを飲み込み、再び何かを形どりながらその姿を変えていく。

 変わり始めはただ警戒するばかりの晴人と一夏だったが、ソレが何を形成しているかを察すると同時に、様々な感情の入り乱れた表情を浮かばせずにはいられなかった。

 なぜならそれは、たった一人の血縁の。尊敬すべき姉貴分の。オンリーワンでナンバーワンの、言わば代名詞ともとれる存在の模倣だったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フユ姉さん……」

「織斑先生? ……そうか、どこかで見たことあると思ったけど、確かにあれは暮桜。それに―――― 」

「雪片……!」

 

 驚愕を抑えきれない俺の呟きに反応したシャルルは、合点がいったとボーデヴィッヒさんだったモノを頭の先からつま先まで眺めた。

 そう、暮桜。今ボーデヴィッヒさんを包んでいる何かは、完全にフユ姉さんの専用機である伝説的な機体、暮桜そのものだ。

 何よりその右手に握られている刀。それを正式に受け継いだナツは、かなり忌々しそうな声色でその銘を呼ぶ。

 ナツの雪片は正式に言うなら雪片弐型。その名のとおり雪片の後継だ。つまりただの雪片を握るアレは、やはりフユ姉さんに近い何かだと自己主張しているかのようだった。

 

「許せない!」

「お、織斑さん!? 落ち着いて、今の白式で無茶はだめだよ!」

「シャルル、口を出すなとは言わない。けどダメなの。アレは、アレだけは絶対に止めないと!」

 

 聞いただけでも怒り心頭とわかるナツの叫びが響く。

 今にも斬りかからんとしようとするのはなんとかシャルルが抑えてくれたが、どうしてここまで怒っているのかは理解できないんだろう。

 何もナツは自分が受け継いだはずの雪片を模倣されたから怒っているのではなく、雪片どころか千冬さんそのものになっている……いや、なろうとしたボーデヴィッヒさんに怒っているんだ。

 根拠も何もあった話ではないけど、うん、わからないでもない。だってあれは、多分だけど、ボーデヴィッヒさんが望んだ姿だと思うから。

 確かにフユ姉さんは強いさ。それこそ世界を獲っちゃうくらいには。けど、だからって、望んでボーデヴィッヒさんがフユ姉さんになったってなんの意味もない。

 憧れも、羨望も、心酔も、ボーデヴィッヒさんがフユ姉さんに抱く感情は何ひとつ否定する気なんてない。けどそれは、それだけはだめだ。

 だってそれはもはや、ボーデヴィッヒさんではないのだから。……多分ナツは、そういうところで怒っているんだと思う。

 

「ナツ、行くなら俺もだけど構わないよね」

「晴人、何言ってるの!? 織斑さんはもう一撃でも受けたら危ないんだよ!?」

「ナツが剣なら僕が盾だ」

「へ?」

「大丈夫、ナツには指一本触れさせない。僕が守ってみせるから」

「ハル……!」

 

 以前の無人機騒ぎのように退路がふさがれているわけではない。なら全員がそれなりに消耗している以上、シャルルの言葉に従って撤退するべきなのだろう。

 だけどそういうわけにはいかない。ナツがやる気満々みたいだし。それにこういう時のナツには何を言おうと初めから無駄だ。

 ならば俺が掲げたテーマである剣と盾に遵守し、俺がナツの隣を離れるわけにはいかない。むしろ断られようとも着いていくさ。

 シャルルはやがてどうこのわからず屋たちを説得してくれようかと悶々とし始めるが、諦めたように身体を脱力させながらため息をひとつ。

 

「はぁ……。僕のリヴァイヴ、コアバイパスでエネルギーを譲渡できる仕様なんだ。それで少しは足しになると思う」

「シャルル、ありがとう! 恩に着るよ!」

「ただし、本当に気休め程度だからね。それと晴人、さっきの言葉を忘れないで」

「もちろん、師匠に恥はかかせられないからね」

 

 RRCⅡには支援機としての役回りもあるのか、エネルギーの譲渡なんてこともできるらしい。

 だが、本当は使いたくなかったとその表情が語っている。無茶をさせることそのものに、シャルルの性格からして思うところがあるのだろう。

 あまり過信をしないよう念を押しつつ、シャルルはコンソールを操作して白式へとエネルギーを移し始めた。思ったより時間も手間もかからないようで、俺へ釘を刺している間に終わったようだ。

 ……にしても、何もしてこないな彼女は。むしろ俺たちを待ち構えているような気さえする。万全な状態でかかってこいとでも?

 ナツも同じことを考えていたのか、先ほどから彼女を眺めている。やがて俺たちの視線がぶつかり、二人してコクリと首を頷かせてから前に出た。

 

「ハル、怖くない?」

「うーん、まぁ、正直ちょっと。けど退かないさ。キミと一緒なら、なんだってできると思うから」

「……えへっ。私もだよ、ハル!」

 

 ナツは何も嫌味とか皮肉とかでそう聞いてきたのではなく、そもそも俺が緊張気味なのを感じ取ってのことなのだろう。

 うん、緊張というか少し怖くもある。目の前でよくわからない現象が起きてるは、それに巻き込まれたのが少なからずクラスメイトだとか。俺を緊張させるような要素は多々ある。

 けどやっぱり、取り乱すわけでも逃げ出すわけでもないんだな。オルコットさんの時だってそうだった。怖かったけど、ナツが応援してくれていると思えば不思議と頑張れた。

 だとするなら、隣にいてくれるのならその比ではない。頑張れるどころか、今の俺は負ける気さえしないように思える。

 そんな相反する心情を素直に述べると、ナツははにかむと表現するにふさわしい笑顔を見せた。とても、柔らかくて暖かい笑みだった。

 ……そんなものを見せられた日には、やはりキミを傷つけさせるわけにはいかなくなってしまったな。あぁ、守りたい。俺は、俺に力をくれるキミを、全力で守りたい!

 そんな沸きあがる熱い感情を胸に、俺は青色の塔盾(タワーシールド)を構え直す。そんな俺たちの様子を、彼女はやはりただただ不気味に見据えるばかり……。

 

 

 

 

 




一撃必殺級の必殺技を二つ使用して、一人を仕留めるという燃費の悪い作戦。
ぶっちゃけるなら地面への虹色の手甲(ガントレット)ヤリタカッタダケーみたいなところも。
ですけど、本気なら軽い地震くらい起こせますよという威力検証も兼ねてます。
さて、次回はVS暴走ラウラですね。
またちょっとかっこいい晴人をお見せできるかも。





藍色の幻影(ファントム)
ヘイムダルの右腕である虹色の手甲(ガントレット)に用意されている七つの変形機構の一つ。
簡単に説明するとすれば、ハイパーセンサーに障害を与えるジャミング装置である。
有効射程範囲は放出する粒子の濃度と量にもよるが、衝撃波等に乗せるとかなり広い範囲をカバーすることが可能。
ただし、効果範囲に入ればヘイムダル自身も問答無用に作用し、更にはあくまでハイパーセンサーに障害を起こすのみなので、肉眼での視界も封じなければほぼ意味をなさない。
なおかつ、作用の効果を晴人が任意に操れないという重度の欠陥を備えている。
恐らく、七つの変形機構中最も扱いに困る性能と言えよう。
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