でもよそ様と比較すると、割と真面目に立ち振る舞う姿勢でいただく予定。
なぜかって、裏の顔の方が前面に出てる彼女の方が好みだからです。
「だぁああああっ! 鬱陶しいのよチマチマチマチマぁ!」
(イライラさせるのが目的とはいえ、鈴ちゃんってば迫力すっごいなぁ)
二学期が始まり最初の実技訓練、僕は鈴ちゃんとの模擬戦に興じていた。
というのも、フユ姉さんは授業が始まるなり、まずは長期休暇でダラけているであろう気持ちを引き締めにかかる。とか言い出して、そのデモンストレーションに僕らが選ばれたというわけ。
鈴ちゃんはともかく、僕は心当たりが大いにあるというか……。多分、ナツと恋人として過ごしてたから選ばれたんだろうなぁと。
しかし、何も僕だって夏休み中ずっと遊び惚けていたわけではない。それなりの時間を訓練に割き、少なくとも腕がなまっているということはないくらいのコンディションだ。
で、今はヘイムダルの扱い方、ないし立ち回りについて、僕の運用データをもとにして作られた新たな戦法を試している。
現在、右腕の変形機構は
チャージしては当てて、チャージしては当ててをとにかく繰り返す。そして、動きが止まってる間に特に僕は何もしてない。
鈴ちゃんが叫んでいるとおり、それで苛立ちを募らせ相手の精細を欠かせるのが目的になるわけだ。
言い方は悪いんだけど、鈴ちゃんのような短気な相手には効果覿面なのかも知れない。
だが鈴ちゃんは苛立ちを発散させるかのように、とにかく龍砲による連射を繰り返す。これではだめだ、まだ目的を達成したとは言えない。
というわけなので――――
「まだまだっ!」
(もうっ、当てるのも避けるのも上手くなってるし!)
(――――とか思ってそうな顔かな、あれ)
侮ることなかれ、鈴ちゃんだって決して頭が悪いわけじゃない。むしろ彼女は文句なしにいい方へと分類される。
何が問題かって、頭に血が上りやすい点。そして一度イライラしてしまうが最後、落ち着きを取り戻すためにかなりの時間を要する点だ。
そこに付け入らせてもらえれば、悪循環を生み出せるというわけ。
僕の射撃能力――――というかISを操作する技量全般に関してだが、やはりそこそこくらいの評価を抜け出すことはないだろう。
しかし、例の悪循環に陥った鈴ちゃんにならば当てられる。僕がそう確信を持って言えるくらいには簡単なことだ。
鈴ちゃんが通常の精神状態であればどうにか避けられたであろう電磁波動も、100%ではないがかなりの確率で当たってくれている。
そしてまた鈴ちゃんは苛立ちを募らせると……。こういう言い方は変なのかも知れないけど、綺麗な引っかかりかただなぁ。
「…………あああああああああああああああっ!」
(つ、ついにピークか! 落ち着いて、これが狙いだったんだから!)
最後に当たった
僕はそれを避けるようなことはなく
確かに猛攻と呼ぶべき攻撃ではあるが、やはり福音との戦いを潜り抜けた身としては、大したことがないように思えるから不思議なものだ。
よし、だからこそ落ち着いて対処。自分でやっておいてなんだけど、鈴ちゃんがものすごく怖いけどとにかく落ち着け。
一発勝負ではあるが、後はタイミングを合わせるだけ。鈴ちゃんの突っ込んでくるスピードも速いが、真っすぐ来てるからとてもわかり易い。
そして間合いを双天牙月の有効範囲内まで詰めた鈴ちゃんは、これでもかと言うほどに二本の青龍刀を振りかぶる。
それが
タイミングはバッチリ。虚を突いたということもあってか効果も覿面。鈴ちゃんは、身体ごとぐらつかせるようにして後方に反れた。
「よしっ、今だ!」
「へっ!? あ、ちょっ、ちょっとタ――――」
僕だって本来であれば遠慮したいところではあるけど、そのあたりはちょっとずつ是正していくと決めた。だから鈴ちゃんには悪いんだけど、少しだけ実験台になっていただきます!
「
僕が腹から声を出すと、右腕各所にブースター機構が飛び出してくる。
そして
僕は心底から湧き上がってしまいそうな罪悪感を振り払うかのように、接触している拳を前に押し出しそのまま鈴ちゃんを殴り飛ばす。
「キャアアアアっ!?」
「
「なっ!? 離しなさいよっ、このっ、変態変態変態!」
「ぐっ!? あっ! て、手痛い反撃だけど、ダメージレースならこっちが上手だ!」
鈴ちゃんが吹き飛んだと同時にギャラルホルンを装備し高速移動形態へ。制御できる範囲の速度を出し、右腕を伸ばしてそのまま鈴ちゃんを掴んだ。
すかさず右腕を
鋸は鈴ちゃんの絶対防御発動圏内へと触れ、みるみるうちにエネルギーを削っていく。
しかし、このまま黙ってやられる鈴ちゃんではないみたい。なぜならこの拘束は完璧ではなく、龍砲が非固定武装なため反撃を受けてしまう。
甲龍の肩付近に浮いたソレばかりは、ヘイムダルの右腕でも掴み切れない。鈴ちゃんも拘束を逃れようと、必死に龍砲を撃ってくるではないか。
この至近距離で衝撃砲を喰らうのはダメージ的にも痛ければ、バリア貫通の影響で物理的にも痛い。すごい勢いでエネルギーが減っていく。
だが鈴ちゃんは
歯を食いしばり痛みを耐えることしばらく、僕にとって歓喜の瞬間が訪れることとなった。
『甲龍、シールドエネルギー・エンプティ! 勝者、日向 晴人!』
通信機越しにフユ姉さんのそんな宣言が響き、それが聞こえたのと同時に急いで右手を開いて鈴ちゃんを解放した。
スラスターやPICが作動しないくらいにエネルギーを削ってしまったということは……なさそうだな。ん、ならば一安心。
僕としては鈴ちゃんの安全が確保されているかどうかの確認の意味を込めて視線を向けていたんだが、なんだか何か言いたそうな顔で睨み返されてしまう。
僕が更に愛想笑いで返すと、フンッと鼻を鳴らしてどんどん高度を落としていく。……まぁ、怒鳴られないだけいいか。
怒鳴られないと言えば、僕もフユ姉さんに怒鳴られる前にさっさと降りなくてはならないな。とはいえ慌てず騒がずゆっくりとー……っと。
「よっと。織斑先生、僕らはどうすれば――――」
「すごいよハルーっ!」
「おわっ!? ナ、ナツ!? ちょっと授業中授業中!」
「すごい、すごいよ! 代表候補生の鈴に勝っちゃった!」
「ん、うん……? ああ、うん。…………わああああっ!? ホントだ、勝ってる!」
地上に降りると同時にヘイムダルの展開を解除すると、とりあえず今後の動きを確認すべくフユ姉さんに声を――――かけようとしたのだけれど、授業中だというのにナツが飛びついてくるではないか。
どんな理由であろうとも、とにかく授業中なのが悪い。周りの目とかもそうだけど、何よりフユ姉さんが恐ろしくてたまらない!
だからすぐさま落ち着くように促そうとしたのだが、ナツが喜んでいる原因を聞き及び、僕まで思わず大声を上げてしまった。
本当だ! 本当の本当に、代表候補生を相手にして初勝利! 一学期中は追い込むことすら難しかったというのに、なんか勝っちゃってるじゃないか!
「はーん、あんなの勝ったうちに入りませんしー!」
「弟の術中にまんまとはまった癖してよくえばれるな」
「まったくですわ。パリィが決まった時点で勝敗も決まったも同然でしたと言うのに」
「というか、素直に晴人を褒めてあげなよ。そっちの方が大物っぽいよ?」
「うーむ、私もマシンスペックに胡坐をかいているばかりではいられなくなったな」
鈴ちゃんは僕の叫びに即座に反応するも、これは多分自分の過失を認めてるからこそツンケンしてるんだろうなぁ。
でも各専用機持ちは随分と辛口なことで、皆して鈴ちゃんに毒を吐くかのような評価を下す。逆に僕には健闘を称えるような言葉を投げかけてきた。
いや、褒めてくれるのはもちろん嬉しいことなんだけどね、流石にちょっと鈴ちゃんに厳し過ぎやしないだろうか。
今までの僕がダメダメだったぶん、ここぞと言わんばかりに称賛してくれているんだろう。そこに関しては本当に感謝してもしきれない。
けども、けどもね! 今はフユ姉さんの監督下なわけで――――
「一発ずつで許してやるからさっさと散れ」
相も変わらずを隠そうともしない苛立ちを含めた声色のまま、フユ姉さんは小気味よく僕らの頭を出席簿で思い切り叩く。
一発ずつという言葉を聞くに容赦してくれていると考えてもいいんだけど、やっぱりとんでもなく痛い。いつ喰らっても人が出していい威力ではない気が。
そのあたりは今更か、昔からフユ姉さんを見てると特に。まぁ、どちらにせよ今のは僕らが悪――――あれ? 今の僕悪くなくない?
……まぁあれだよね、連帯責任ってやつ。うん、それだな。よし、それじゃあとっとと列に戻ろう。じゃないと今度こそもう一発だぞ。
「よくやった」
「っ……!」
戻ろうと一歩踏み出そうとしたその時、僕の横を通り過ぎていったフユ姉さんが確かにそう呟いた。
思わずはいと返事をしてしまいそうになるが、声の音量からして他に察知されたくないということがわかる。
だとすれば返事をするのは悪手と判断し、ありがとうございますと目で訴えてみる。すると、僅かに見えるフユ姉さんの口元が吊り上がった――――ような気がした。
なんか、グッとくるな。基本的に厳しい人だし、反動というのがすさまじい。いわゆるギャップ、というやつなんだろう。
「ね、ハル。千冬姉のああいうとこ、可愛いでしょ」
「恐れ多いけど、同意……かな」
どうやら実の妹であるナツにはお見通しのようで、少し意地悪な印象を受ける顔をしながら小声でそう告げてくる。
いくらナツから同意を得てきたとはいえ、ナツ以外の女性を可愛いと断言するのはなんだかな。僕の拗らせまくったナツへの愛ゆえ、とりあえず肯定はしつつも明言は避ける方向で。
僕の言葉を聞いたナツは、だよねと小さな笑みを零しそれから歩く速度を上げて先へ行ってしまった。……やっぱりナツが最強に可愛いでファイナルアンサー。
さてと、ここらで僕も集中集中。せっかくフユ姉さんに褒めてもらったんだから、期待を裏切るような真似はできないぞ。
「ぃ~……よしっ、よし、よぉっし!」
授業も終わりロッカールームに入るなり、僕は抑えつつも力強いガッツポーズで己の勝利を噛みしめた。
鈴ちゃんが不機嫌な手前、大手を振って喜ぶのがアレだったから遠慮してたけど、やっぱり嬉しいものは嬉しい!
僕なんて一生かかっても代表候補生相手に勝つことなど、とか思ったりしたこともあるけど、意識を変えて頑張ってみるもんだ。
とはいえ次があれば鈴ちゃんは努めて冷静にかかって来るだろうし、あまり浮かれてばかりではいられない。
それにセシリアさんとか他の候補生や、第四世代機である紅椿を所有する箒ちゃんにも黒星をつけてやる! くらいの意気込みでいなくては。
だけど今はとにかく自分を褒めてやることにしよう。よくやったぞ僕、やればできるぞ僕!
「ふふっ、初勝利おめでとう。これからも頑張らないとね」
「もちろん、これからもより精進――――んんんんんんっ!?」
「ん~?」
「いや、ん~? じゃなくて、どこのどなたですか!?」
鼻歌交じりに着替えを始めると、あまりにもナチュラルに隣から声をかけられて一瞬だけ反応が遅れてしまう。
男子更衣室に僕以外の生徒が居る違和感に気づいたのは本当に数秒後で、僕はようやくその場から飛び退き謎の人物との距離を置いた。
僕の慌てっぷりと反比例するかのように、謎の人物――――もとい、リボンの色からして上級生らしい女生徒は何か問題でもと言いたげに首を傾げる。
いつ何が起こってもいいようにと待機形態のヘイムダルの柄を握りつつ、名前やら所属やらを問いかけてみた。が、自分で言っている途中で、謎の女生徒とある人物との印象が合致する。
(簪、さん?)
そう、簪さん。四組所属の日本代表候補生にして、間違いなく僕の友人である更識 簪さんによく似ているんだ。
水色の髪に赤い瞳、そしてどこか日本人的でない白めの肌。各所にわずかな差はみられるものの、まず何かしら縁者であることは外れてなさそう。
でも、実は簪さんのプライベートって全然知らないんだよな……。
簪さん自身が大人しめで、そういった話題を振りづらかったというのもあるけど、なんかそもそも本人が避けていたような気もする。
……もしかして、彼女がその避けていた理由そのものなのか? 初対面の人になんだけど、まがいなりにも男子更衣室に侵入してるわけだし……ねぇ?
「まぁまぁ、私が何者かなんてことは些細なことよ。それより、日向 晴人くん」
「は、はい」
「キミ、もっと強くなりたいって思わない?」
「……それは、あなたが僕を鍛えるという提案。って認識していいですか?」
「ええ、噛み砕いて話せば」
結局のところ彼女は自分が何者であるかの明言は避け、論点を急に僕の力量についての話にもってきた。
確かに、思えば始まりは僕が鈴ちゃんへの勝利に喜んでいたからだ。それを思えば、一応は自然な流れなのかも知れない。
つまり彼女が言いたいのは、自分に師事すればもっと格段にステップアップすることができる。という認識で構わないようだ。
僕は他人の強者のオーラなんて察知できるほど達人ではないが、この断言っぷりからして彼女が相当に腕の立つ人物であるということくらいわかる。
そのうえで僕が選ぶ答えは――――
「申し訳ないですけど、丁重にお断りさせていただきます。少なくとも今のままでは、という話でもありますが」
「ふぅん? 理由を聞いてもいいかしら」
「あなたのことが信用できないからです」
「あらら、随分とハッキリ言うのね。そういうタイプじゃないって聞いてたけど」
とりあえず、彼女に関して危険ということはないと判断。いつでもヘイムダルを展開できるようにと警戒していた非礼も含め、僕は深々と頭を下げて断りを入れた。
彼女は僕の断りに不快感を覚えている様子はなく、むしろ僕がそうくる意外な展開を喜々として受け入れているようにもみえる。
後は大体言葉どおり、目の前にいる彼女が信用できない。という単純な理由を言って聞かせると、まずますもって彼女はどこか楽しそう。
だが勘違いしないでほしい。何も完全に拒絶したいという意味ではない。だって僕の信条は、友達になろうとする気持ちを諦めない、だから。
「あなたは多分だけど、いい人だ。少なくとも悪い人には感じません。あなたが出した提案も、僕のことを思ってのため、ですよね」
「そこまでわかってて断られちゃうなんて、お姉さんますます悲しくなっちゃうなぁ」
「だからこそですよ。だからこそ、必要最低限の礼はわきまえましょう。僕らは、もっと違う出会い方もあったはずですから」
きっと、普段の僕を知ってる人なら棘のある言い方に聞こえることだろう。
でもやっぱり、怒っているわけではないつもりだ。僕自身怒った経験が少なすぎるせいか、ストレートな罵声を浴びせなければ気が済まないってどんな感じだろうと考えてしまう。
……この間の弾と数馬に対するアレは、流石に例外としてほしいところだけど。
けれど僕だって聖人でもないんだし、正直言うなら彼女の行動は少なからず気に障る部分はある。
確実に一人になる瞬間を狙って接近、それも気配を殺しながら。そして問いかけても何者なのか明かさない。
この二点でのみ判断するのは材料不足かも知れないが、僕の経験則からして彼女の行動のソレは悪戯が前に出てきている可能性が高いと読む。
それを察したうえで僕を強くするために鍛えます、なんて言われても何も響かない。彼女の本気度がどうであれ、だ。
言ったとおり、僕がここまで厳しい言葉を並べなくていい出会いなんてごまんとあったはず。本当に彼女が簪さんの親族なら、もっと簡単なことだったろう。
流石に図星なのか、彼女は少しばかりバツが悪そうに視線を逸らす。……自覚があってもこういう方向に走ったなら、根っからの悪戯好きなんだろうなぁ。
重ね重ねになるが、何も否定したいわけじゃない。むしろここからが大事なんだ。僕の並べた言葉は、仲良くなるための第一歩のつもりだから。
「そういうわけですので。初めまして、日向 晴人です。どうぞよろしく。あなたの名前を教えてくれませんか」
僕はもう一度深々と頭を下げてから、名前を名乗りつつ右手を差し出す。もっとも、向こうは僕の名前を知ってたみたいだけど……。
さて、ここから彼女はどう出てくるのだろう。まぁ、これでも名乗ってくれなければ、また別の方法を模索するまで。
友達になろうとする気持ちを諦めない。だからね。
「フフフ……! うん、ごめんなさいね、訂正するわ。聞いてたとおりの子ね。お姉さんの負け」
「それは、はぁ、どうも」
「そんな日向くんにご褒美! こちらこそ初めまして、私の名前は――――」
なんだかよくわからないが、これは説得に成功したという認識でいいのだろうか。まぁ、握手に応じようとしてくれているし、それ以外ないよな。
ひとまず未だ不詳な彼女の名前を聞いてからにしようとしたのだが、名乗りだす寸前にロッカーの中にある携帯が着信を報せた。
断りを入れてから画面を確認すると、相手はどうやらナツみたい。はて、何か急ぎの用事でもあるのだろうか。
「もしもし?」
『もしもし、じゃないでしょ。ハル、今どこで何してるの。次も千冬姉の授業だよ。遅れないようにしないと、もうあまり時間ないからね?』
「へ? ……うぇっ!? ほ、本当だヤバイ!」
至って普通に電話に出ると、何をそんなに呑気な返事をするのかと返されてしまう。
なぜそんなにもナツが心配をするのか。それは単純明快、次の授業開始まで幾許もなく、かつ担当教員がフユ姉さんだからである。
フユ姉さんが担当の授業で遅刻なんてした日には、どんな目に合うかなんてのは想像に易い。
いや、何をされるかわからないのも間違いではないが、どちらにしてもロクなものではないだろう。
いつもだったらパッと着替えてパッと更衣室を後にするから、わずかなやりとりにここまで時間を浪費してしまうのは計算外だ。
「教えてくれてありがとう。とにかく急ぐから!」
『どういたしまして。それじゃ、頑張ってね』
「……ということなので、自己紹介はまた次の機会――――っていないし!」
やはり持つべきものは恋人だ。もっとも、別に恋人じゃなくてもナツは報せてくれただろうけど。
ぶっちゃけ今から急いでも焼け石に水みたいな感じではあるが、ナツにキチンと感謝を伝えてから通話を終了。
どうにもこうにも遅刻するわけにはいかなくなったので、自己紹介はまた時間がたっぷりとれる時にでも。
そう告げようと思ったのに、目を向けてみると既に彼女の姿はない。僕の叫び声は、虚しく更衣室へと木霊するばかり。
ええい、そういうことなら仕方ない。構っている暇もないし、とっとと着替えを済ませて教室に帰らなければ。
ロッカーにしまってある制服をひっつかみ、ISスーツを脱ぐことなく袖を通していく。だが急いでいると、IS学園の制服は着辛いと思い知らされてしまうな。
絶妙に複雑な構造をした制服と格闘することしばらく、僕はようやく更衣室を飛び出て一組の教室へとかけていく。
途中教師に見つかるようなこともなく、順調に廊下を走って抜けることができた――――のだが、無情にも次の授業の開始を報せるチャイムが、学園中に響きわたるのであった。
謎の上級生……いったい何者なんだ……。
個人的趣味はとにかく、いろいろ振り回しがちなのも彼女の魅力なわけであります。
とりあえず初めの一回はらしく? していただきました。
まぁ、晴人のツッコミスキルを活かせばもっと上手くできた気もしますけれど。