まぁ本筋も進めていかないとならんので、背に腹はなんとやら。
以下、評価してくださった方をご紹介。
小鳥石和誠様
評価していただきありがとうございました。
楯無先輩の言っていた後日というのは、思っていたよりもアッサリ訪れた。
具体的には例の件から二日後、簪さんから生徒会室に顔を出してほしいという旨の連絡が。
前回のやりとりだけでは補完できていない個所がいくつかあった。今回で全ての疑問に決着がつけばいいのだけれど。
放課後、ナツと共に校内を闊歩することしばらく、無駄に豪華な様相の扉を発見。傍らのネームプレートには、間違いなく生徒会室と書かれていた。
「意外に気にして歩かないと気付かないもんだなぁ」
「だねぇ。このあたりはけっこう通りかかるはずなんだけど」
そもそもこの学園においての生徒会という組織の存在が希薄だったのはあるけど、場所を聞かされてから歩かないと気付けないなんて。人間は思ったよりもいい加減な生き物なのかも。
ナツも僕の言葉に同意なのか、うんうんと首を深く頷かせて見せる。以外にも楯無先輩ともここら一帯でニアミスしてたりして。
それはともかく、生徒会室に入ることにしよう。放課後になると同時に真っすぐ来たから、そう待たせていることはないんだろうけど。
でもいまだ謎の組織である生徒会の面子に待ち構えられることを考えれば、むしろ少し早いほうがいいくらいまである。
僕らは顔を見合せ、目で覚悟の是非を問い合ってから扉をくぐった。するとまず目に飛び込んできたのは二人の女生徒。うち片方は、よく見知った人物ではないか。
「ひむひむにおりむ~だ~。いらっしゃ~い、生徒会室へようこそ~」
「布仏、さん……? 布仏さぁん!?」
「だいたい何が言いたいかわかるリアクションだね~」
「……あっ! そういえば、簪とのほほんさんって、割と一緒に居るのをよく見かけたような……」
いかにも事務仕事用のデスクに身体を預け、リラックスムードであった彼女は、布仏 本音さん。同じ一年一組に所属するクラスメイトで、僕にとてもなじみ深い。
だけどそれだけに驚いてしまう。生徒会室にようこそと本音さんが言った以上、楯無さんが存在を示唆していたみんなに含まれるからだ。
のほとけ ほんねを縮めてのほほんさん。ナツが呼んだように大多数の一年が彼女をそう呼ぶ。
名は体を表すなんて言うが、本音さんはまさにのほほ~んとした人物像で、どこかマスコット的な存在として扱われていたり。
それがどうだ、何かしら裏で動く組織に属しているなんて驚くしかないだろう。が、その実ナツが思い出したようにヒントはあったのかも。
お世辞にも社交的とは言えない簪さんが、本音さんに半ば強引にじゃれつかれていた姿は僕も多々目撃している。
なんだかつながりの見えない二人だなと常々思ってはいたけれど、なるほどそういうわけが隠されていたわけだ。
ならばもう片方の、いかにも落ち着いた様子の眼鏡をかけた上級生さんはどなたなんだろう。僕が思わず目を向けると、上級生さんはとても丁寧な所作でお辞儀をしながら自己紹介を始めた。
「お初にお目にかかります。私は三年の布仏 虚と申す者です。妹の本音がお世話になってます」
「お姉さん? これはまた……。日向 晴人です。こちらこそ、本音さんにはいつも気さくに接してもらって助かってます」
「織斑 一夏です。えっと、お菓子貰ったりあげたり、そんな感じ、です!」
実際に上級生さん、もとい虚先輩が喋り始めたと思いきや、これは丁寧とかそんなので済ませることができない感じだぞ。
なんだか一周回って事務的というかなんというか、秘書さんとかそんな空気を纏っているな。まず年上なのに丁寧語で話されてるし。
失礼ながらあまりに似ても似つかない姉妹だが、なんとか動揺を面に出さずに即対応。我ながら世渡り上手な部分はあると思う。
まぁ実際のとこ、本音さんに世話になってるのは間違ってない。いつもゆるーい感じで話しかけてくれるから、こっちも緊張せずにいられるんだよなぁ。
ナツとか箒ちゃんとか、主に専用機持ちのみんなが捕まらないときとか、さり気なく僕が孤立しないようにしてくれてるみたいだし。
総合するなら、気配りのできる優しい女の子って感じかな。
ナツもナツでそれなりに交友はあるみたいだけど、僕らの丁寧なやりとりに対応しきれないのかなんだかしどろもどろだ。
虚さんは他人が話す妹の印象が高評価であることが嬉しいのか、なんだか少しだけ穏やかな様子になった気がする。別に険があったわけじゃないけどさ。
「申し訳ありませんが、お嬢様がたは少々出払っております。とりあえずこちらへかけてお待ちください。本音、お二人にお茶菓子を」
「は~い。いろいろあるけど、ど~する~? ま~もっぱらケーキなんだけど~」
「じゃあ、僕はモンブランで」
「ん~……なら、私はガトーショコラにしようかな」
お嬢様がたなんて引っかかる表現をされるが、楯無先輩と簪さんのことでいいんだろう。
そのあたりとか布仏姉妹との関係とか、帰ってきたら説明してくれるはずだしここは黙っていても大丈夫そうかな。
僕らは部屋の隅にある来賓用らしき豪華なソファに腰掛けるよう促されると、言われるがままそこへ着席。……普通なら遠慮するところなのかもだけど、虚先輩があまりにも丁寧だから断りづらい。
だからこそか、本音さんのブレない緩さがある種の安定剤と化している気が。そういうわけで、勧められたケーキも遠慮なくいただくことに。
……いや待て、どうして生徒会室に冷蔵庫やお茶を淹れる環境が整っているんだろう? 僕の部屋に勝手に入ることができることといい、やっぱり謎だらけな集団だなぁ。
なんて思いながら口に運んだケーキは絶品で、虚先輩の淹れた紅茶も信じられないくらい美味しかった。やはり淹れる人の技術が大きく影響するのだろうか。
だとすると、楯無先輩や簪さんは比較的に飲みたい時に淹れてもらえるってことかな。それは羨ましい限りである。
そうやって水色髪の姉妹に思いを馳せていると、絶妙なタイミングで件の二人が現れた。
「戻ったわ。二人はもう――――来てるわね。待たせちゃってごめんなさい」
「いえ、のほほんさんたちのおかげで退屈はしませんでしたよ。それより、二人はどこで何を」
「うん、少し下見を……。そのうち説明するから……」
「とりあえず、お嬢様がたもまずは落ち着かれるべきかと。すぐお茶をお淹れしますね」
「たっちゃんにかんちゃんもケーキ食べる~?」
「ええ、いただくことにするわ。二人とも、ありがと」
謝られるほど待ってはいないし、ナツの言うとおり布仏姉妹との会話等のおかげで時間が一瞬にして過ぎ去ったように思える。
それはさておきとナツが出払った理由尋ねるも、何かしらの下見をしていたという返事しか得られない。
やはり一にも二にも、楯無先輩から語られる言葉を待つしかなさそうだ。
そして僕らの時と同じくして、虚先輩がお茶を淹れ本音さんがケーキを運ぶ。簪さんと楯無先輩に恐縮するような様子が確認できないということは、慣れているってことでいいんだろう。
だとすると虚先輩のお嬢様という呼び方といい、なんだかこの生徒会という組織の全貌が見えてきた気がする。
それはそれとして、更識姉妹は落ち着くべきという虚先輩の言葉には一票だ。帰って来るなりじゃあ話してくださいなんて、そう急ぐことでもない。
更識姉妹は僕らの座っているソファの対面に座ると、リラックスした様子で紅茶をすすりホッと一息。何の下見かは知らないが、とりあえずお疲れ様です。
「それじゃ、そろそろ始めましょうか。まずは一夏ちゃんに質問です。これまでのやり取りからして、私たち生徒会はいったい何者でしょ~か」
「そうですね……。私たちに起こりそうな危険を察知できて、なおかつそれに対抗しようとしてる。……ってことは、順当にいけば対テロ組織とか、ですか?」
「う~ん、おおむねそれで合ってるけど少し違うわね」
「目には目を……。私たちはそこがミソってやつ……」
楯無先輩は畳んだ扇子でビシっとナツを指すと、暫定的に考えを聞かせてほしいと要求。ナツもこれまで得たパズルのピースから、それなりに予測はつけているようだ。
僕もその考えにはおおむね同意。思わず隣で深く首を頷かせてしまった。
しかし、当たらずとも遠からずではあるみたいだけど、本人たちからお墨付きをもらえるほどの正解とは言えないらしい。
簪さんは目には目をハンムラビ法典になぞらえ、鍵はそこにあると結論を仄めかす。
その際横目で楯無先輩を見ていたから、完全な正解はそちらの口からということでいいんだろう。
だから僕たちは楯無先輩に注目。と同時に、スパンと気持ちいい音を鳴らしながら、扇子が勢いよく開かれる。そこに書かれていたのは、暗部の二文字だった。
「私たち更識は代々受け継がれる暗部組織。つまり、対暗部用暗部ってところかしら。私はその十七代目にあたる楯無よ」
「暗部、しかも襲名制の十七代目って。代替わりの周期はわからないですけど、長いこと歴史の陰から秩序を守ってきた。……っていう認識でいいんですか?」
「アハハ! 日向くん、残念だけどそんなかっこいいものでもないのよ。なんたって暗部ってこと自体は変わらないものねぇ」
対暗部用暗部。まるでフィクションのようなその響きに、冗談ですよねなんて口走らなかった自分をほめてやりたい。
そのくらいあまりに突飛な話しだった。でも楯無さんが嘘をついているようにも思えない。おどけた様子であるけど、それが逆に僕らが警戒心を抱かないようあえてそうしてるふうに感じた。
……たぶん、秩序を守るっていう行動理念そのものに間違いはないんだろう。でもどこか自虐的な含みを垣間見させているところから、いわゆる汚れ仕事的な役割を持つことも予感させる。
なるほど、それならなるべく正体を明かしたくなかったのも納得がいった。例え冗談と取られようとも、暗部やってますなんて口が裂けても言えるはずがない。
僕らにこれを話したのは、ターゲットであるから致し方なくという理由がまずひとつ。もうひとつは、単に信頼されているんだろうと思う。
ならば僕らがうっかり口を滑らしちゃうわけにはいかないな。というか滑らしたが最後、口封じ的なことをされる可能性も視野に入れたほうがいいのかも。
「っていうことは、のほほんさんや虚先輩は、更識家の付き人か何か?」
「そのとおりでございます。私たち布仏は、それこそ先祖代々から更識の僕を務めさせていただいております。その他、諜報等でも少々お手伝いしてもいますが」
「あ~でもでも、私が二人を監視してたってことはないからね~。信じてもらうしかないんだけどさ~」
そっか、お嬢様って呼んでたのにはそういう理由が。僕の秘書っぽいっていう感想もなかなかいい線いってたみたい。
にしても、諜報か。穏やかではないんだけど、虚先輩みたくできる女って感じの人が、そういうことを口にすると少しかっこいいな。
……ってことは、本音さんも? なんて思ったりしたけど、本人曰くそういったことはしてないしする気もないらしい。
なんだか本音さんにしては困ったような表情をしていたけど、そっちも安心してほしい。本音さんが信じてというなら信じるとも。まぁ彼女自身の日ごろの行いからして、どう考えても疑う余地はないでしょ。
「それで、僕らを狙っているっていうのは、いったいどういう連中なんですか?」
「
「嫌なことに、かなーり長い付き合いなのよねぇ。私の代で決着をつけられたらいいんだけどー」
「やってることは更識と真逆、って感じなんですよね。……だとしたら、私たちを襲った無人機なんかも!?」
「申し訳ないけれど、そこの繋がりに関しては調査中よ。ま、今のところ可能性が大ってところかしら」
かなり長い付き合い、か。更識が十七代に渡り楯無の名を受け継いできたことから、その
そしてナツは僕らが
でも正確なところはまだ不明なようで、あくまでそういう可能性も考えられるという範囲までしか調査が進んでいないらしい。
もし関係があるのだとするなら、狙われているのはナツの方であると考えるのが自然だよな。
今まで起きた事件の全てにナツが関わっているなんて、偶然にしてはあまりにもでき過ぎている。だとしてその目的はいったい……?
……っとそうだ、結局僕らをどうしたいのかとか、目論見について知っている部分があるなら話してもらわないと。
「
「あ゛~……重ねて申し訳ない。そのあたりは情報が錯綜してるのよ」
「殺害、拉致、拉致したうえでの人体実験……。候補を挙げるだけ、どれもろくでもないから……」
「そのへんあんまり気にしちゃだ~めってこと~」
「た、確かに一理あるか。悪人の意図なんて考えるだけ無駄だよね」
狙われてると聞かされた身としては、やっぱり手っ取り早く殺害を目的としているであろうとどこか自己完結してしまった。
キリがないというか、どう転んだってろくでもない目的である。という簪さんの言葉には、嫌な説得力というものがある。
そうか、人体実験か……。もしそれが目的とするなら、僕が狙いって線も一気に大きくなってくるよな。なんの因果か、世界で唯一ISを扱える男性なわけだし。
「でも確かな情報はいくつかあるわ。まずひとつ、奴らは学園祭に仕掛けてきます」
「規模については調査中……。けど、そこまで攻勢に出ることはないと見てる……」
「学園祭……! よりによって、一般の人も訪れる時なんかに!」
「木を隠すなら森の中、ってことか。でも楯無先輩、それがわかってるってことは、迎え撃つつもりなんですよね」
「ええ、向こうも無警戒だとは思ってないでしょうけど、こちらが情報を掴んでいることは知らないはずよ」
IS学園での学園祭は、入場に条件はありつつも、多くの一般客が校内へと集まる。
正義感の強いナツからしては許しておけない行為なのか、きつい顔つきで
だからこそ僕が冷静でいるべきと、わざわざその日を選ぶ理由を淡々と告げた。逆にそのくらいしか思いつかないし。
だが来るとわかっていて学園祭を中止にしないということは、更識にとっての撒き餌に過ぎないんだろう。
こちらが知っていることを知らない。ということは、敵は迎撃の用意がある敷地に自分から足を運ぶことになる。飛んで火にいる夏の虫というやつだろうか。
けど一般客を巻き込んでしまうことが考えられるのは……。……いわゆるコラテラルダメージだっていうのはわかるけど、一概に首を縦に振りたくない気持ちもあるな。
「で、次の情報を得たから、例え付け焼刃だとしても日向くんを鍛えたいってわけなの」
「奴らの戦力について……」
「恐らくは幹部クラスが六名、その全員が専用機を所持しているわ。なおかつ、その六名の大半が――――国家代表クラスの実力者……らしいの」
「「!?」」
大……半……? 大半が国家代表クラス!? つまり、どう少なく見積もっても四人はそのレベルに到達してるということになる。
フユ姉さん……は頭ひとつ抜きん出ていて参考にはならないかも知れないが、それに届きうる実力を持つ人物が最低でも四人だ。僕は思わず気が遠くなってしまう。
普段僕の周りに居る専用機持ちの候補生たちらを相手にしたって、実力の差というものを思い知らされるというのに、それを上回る人を複数相手しなければならないなんて。
……いや、待て待て、そう悲観的になるな。簪さんは、そう大規模な攻勢には出てこない予測だと言っていた。
どうしても僕らに狙い通りのなにかをする気であるなら、ここで最大戦力をもってして叩き潰せばよいだけのこと。
そういう前提でものを考えれば、向こうもまだ様子見くらいのつもりであると推測することもできる。……というか、そう考えていたほうが気が楽だ。
「あの、どうして他の専用機持ちの手も借りないんですか? 特にラウラとか、軍人だからとても頼りになると思うんですけど」
「さっきも言ったけど、あなたたち二人を狙いつつ、あくまで向こうも様子見ていど。なら、知ってる人は極力少数のほうがいいの」
「こっちの目標、二人の防衛が最優先事項だけど……。できれば、攻めに来た構成員は確保したい……」
「油断につけ込むための少数精鋭、ってことですか」
ナツの指摘した部分に関しては、実は僕もずっと疑問に思っていた。
向こうが手加減してくれるのなら、こちらは本気も本気でかかればいいのでは。なんてのは甘く、要するに駆け引きの問題だったみたいだ。
情報戦とはよく言ったもので、こっちが向こうの動きを少しは把握しているとして、きっと向こうにも同じことがいえるはず。
だとすれば、どこから漏れるかわからない情報を、例え味方だとしてもおいそれと明かすわけにはいかない。ということみたいだ。
しかし、自分で言っておいて少数精鋭とは笑わせる。楯無さんも言っていたことだが、僕はとっとと頭数としてカウントできる実力を身につけねば。
「そういうわけだから、日向くんを鍛えるって話になるってこと」
「はい、有難く受けさせていただく所存であります……。けど、思ったよりも切羽詰まってるって感じですね」
「そう気負わないで……。日向くんは、あくまで自衛を考えてくれればいいから……」
「ええ、簪ちゃんの言うとおり。不手際があろうとなかろうと、あなたたちを守るのは私たちの責任です。足手まといだから強くなって、なんて誰も言わないわよ」
襲われるとわかって鍛えるのと、いち選手として強くなろうと鍛えるのじゃ全然わけが違うもんなぁ。
僕だって後者の理由でも必死こいてやってきたつもりだけど、襲撃決行が高確率で学園祭となれば幾許も時間がない。
それまでの間にできることをこなすしかないんだろうが、果たして僕のポテンシャルでどこまで伸びてくれるだろう。
うむむと唸ってそんなことを考えていると、更識姉妹からフォローが入るではないか。
気持ちそのものは大変に嬉しいのだけれど、女の子にそんなことを言われるのはと思いつつ、二人は僕より数段上の実力者という事実。めちゃくちゃ複雑な心境だ。
まぁ、そう言ってくれるのなら気楽にいこう。もちろん、楯無先輩の特訓とやらには真剣に取り組みつつね。
「とりあえず、今のところ話せるのはこのくらいかしら」
「また何かあったら、逐一報告する……」
「ま、訓練は明日からってことにして、今日はもうこれで――――」
「お嬢様、伝え忘れていることがもうひとつあるのでは?」
楯無先輩は指折りしながら思い出すようにひとつ、ふたつと話すべきことを話したかどうか数えているようだ。
先輩としては問題なく話し終えた感じのようだったが、虚先輩から待ったがかかる。
はて? とでも言いたそうな楯無先輩だったが、ああ! と手を叩いて何かを思い出したらしい。なんだか先ほどまでの雰囲気とは打って変わり、意地悪な顔つきになった気がする。
瞬間、隣に座る簪さんは溜息をつきつつ呆れ顔に。本音さんは必要以上に二パ二パし始めたし、いったいなんだというんだろうか。
「学園祭、とおおむねの見通しはしているけど、それ以前ないしそれ以降の可能性もあるわけね」
「まぁ確かに、一理どころか大いにあると思います」
「なんならプライベートなんかも危険だったりするかもですよね」
「そう、プライベート! なるべく多くの時間に身の安全の確定を割くべきなの」
「……あの、変にぼかさないで核心を話してほしいんですけど」
さっきも言ったが世の中情報戦。情報がモノを言う。
学園祭に襲撃に来るであろう。と言いつつ、更識が情報に踊らされているということも考えられる。
だとするなら、楯無先輩が無駄に強調したプライベートなんかにも十分に気を遣う必要があるのには賛成だ。
というか、むしろプライベートこそ最も気が抜けやすい時間帯であろう。そこを狙われたと考えるとゾッとしてしまう。
……っていうところまで考えて、それの対策ができているってことでいいのかな。どうにも核心を避けて物を語るから、むず痒くて仕方ない。
僕が要するにとっとと話してくださいと要約して口にすれば、楯無先輩はふっふっふとわざとらしく笑い、僕とナツを扇子で指してからとんでもない宣言をするではないか。
「ぶっちゃけ、織斑 一夏さん。あなたについては単独であってもそこまで心配はしていません」
「はぁ、まぁ、これでも代表候補生ですから。というかその言い方、ハルが心配ってことですよね」
「そう、そのとおり。でも二人は恋人同士なのに、私か簪ちゃんが四六時中警護ってわけにもいかないでしょう?」
「…………はぁっ!? そ、その言い方はまさか……! いやいやいや、それは絶対まずいですよね!」
「あなたたち二人、今日から同室で!」
どうやら僕には精神的な修行も課せられるようだ。けど楯無先輩、本気で潜り抜けられる気がしないんですがそれは。
地味に注目していただきたいのが「幹部勢が六人」ってところ。
あれれ~? おかしいぞ~。三人増えてる~。
ということでして、だいたいお察しではあると思われます。