ハルトナツ   作:マスクドライダー

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第79話 限界を超えて

 ビフレスト・オーバードライヴ。それは僕の想いに応えてくれる能力。

 まず発動にビフレストが必要であることは正解。そして恐らく、貯蓄されている量によって制限時間が決まるのだろう。

 今回はフルチャージ状態だったので三分。つまり最大でも三分だと予測することができる。

 そしてビフレスト・オーバードライヴ発動中のヘイムダルは、その制限時間が終わるまで無限にビフレストを使い続けられるということ。

 ここらあたりの原理は、多分だけど箒ちゃんの紅椿と同じで、エネルギーを増幅させているってことだろう。

 なおかつ、それを虹色の手甲(ガントレット)と同じ勢いで、自在に放出できるということだ。

 つまり今のヘイムダルは、移動や攻撃の全てを虹色の手甲(ガントレット)と同様の勢いで行える。

 最初の爆発的ダッシュや、パンチを繰り出すために振る腕とか、どことなく覚えていた既視感というのはそれが原因だったらしい。

 ここまでがビフレスト・オーバードライヴの能力の大きな区分のひとつ。

 僕の想いに応えてくれるというのは、二つ目の能力についてのことだ。

 

「クソがぁ! いくら速いつったって、こう来られちゃどうしようもねぇだろ!」

(避けて、反撃!)

「エネルギーネットの隙間を……! ぐあああああっ!」

 

 アラクネの掌から飛び出してきた蜘蛛の巣状のエネルギーネットだが、僕は念じるようにして回避と反撃だと頭に思い浮かばせた。

 すると、僕はエネルギーネットのわずかな隙間をすりと抜け、オータムさんへと接近して回し蹴りを食らわせた。

 この動き、やはり普段の僕ができるような動きじゃない。これこそが、想いに応えるということなんだ。

 もっと機械技術的に解説を入れるであれば、ハイパーセンサーやイメージインターフェースに大きな感度の上昇補正が入っている。

 ハイパーセンサーで動体視力を疑似的に向上させ、超感度を誇るイメージインターフェースが僕の考えた理想の動きを感知。

 それを機体であるヘイムダルがほぼ完璧に再現することにより、まるで超人になったような動きも可能になるというわけだ。

 ……そして恐らく、もうひとつだけ用途がある。それは――――イメージインターフェースを利用することによって、使いたい放題のビフレストを自在に操ることができる!    

 

「バイキンなんかじゃない」

「あん!?」

「僕の放つこの輝き! この輝きをくれたナツが、バイキンなんかであるもんか!」

「……綺麗…………」

 

 僕は虹色の光を全身から放出させ、これでもかというほどの輝きを放つ。

 あまりの光量に目がくらんだのか、それとも僕の勢いに押されたのか、オータムさんは軽くたじろいだ。

 まるでオーラを纏っているようなこの姿、精神的にも追い詰められつつあるオータムさんをすごませるには十分だったようだ。

 しかし、この人の性格からして、自分でそういうことを感じたのを認めたくないタイプだろう。それでいて、逆上する可能性も高い。

 だからこそ、僕は真正面からオータムさんを叩き潰す腹積もりでいる。

 まぁなんというか――――僕の奥さんを散々いじめてくれた礼くらい、いくら僕でもきっちり落とし前をつけなければ気が済まないから!

 

「覚悟!」

(……ッソが。クソが、クソが、クソが、クソが! マジで単純に、速すぎて何もできねぇ!)

 

 ビフレスト・オーバードライヴの効果で、現在僕の動体視力や反射神経は常人を遥かに凌駕するが、とはいえ決して油断だけはしてならない。

 ただ単純に速さで翻弄するだけでは、いつしか慣れてエネルギーネットとやらに捕らわれてしまうのが関の山。

 だからこそ僕は一撃離脱を意識し、アラクネの各所を一発殴るまたは蹴るをして、即離脱してまた攻め直すを繰り返す。

 その間オータムさんは棒立ちの状態で、ただ僕の攻撃を受けるのみ。……というか、きっと僕がそうさせているんだろう。

 オータムさん視点で考えてみるに、何か反撃をしようと思った時には既に攻撃を喰らっていて、逃がさないよう試みても既に離脱した後で、そしてまたわけもわからないうちに攻撃を喰らっている。

 だいたいこんな感じだろうか。

 全身装甲(フルスキン)のISだからダメージが与え辛いのが、より彼女を苦しませている大きな原因のひとつだろう。

 僕だって許さないとは思ってるけど、いい気味だとかそういった感情は芽生えない。……なるべく早く終わりにしたいな。

 

「ざっけんな……。ざっけんじゃねええええええ! 私を誰だと思ってやがる!? 亡国機業(ファントム・タスク)の幹部だぞ! この私が、んなクソガキ風情に! 男風情にいいいいいいっ!」

(優先行動を回避に!)

 

 どうやらオータムさんは完全に逆上してしまったらしく、反撃や防御の姿勢をまったくとることなく、とにかく周囲にエネルギーネットをまき散らし始めた。

 これに捕まってしまっては、高確率で敗北が確定する。そこで理想とする動きを一撃離脱の状態から、とにかく回避する方針に思考を切り替えた。

 僕の思考を感じ取ったであろうヘイムダルは、半オートくらいの感覚でエネルギーネットを躱しつづける。

 だけどいつまでこれが続くかわからない以上、できるだけ早く反撃の手を見出さないとまずい。

 つまり一応は反撃する隙を与えてしまったということだから、完全に何もさせないにためにはもっと速さが必要だ。

 速さ、速さ、速さ……この現状で、より加速するためには――――そうだ、この作戦でどうだ!

 

(ヘイムダル、床だけじゃなくて天井も利用していこう!)

「ば、かな……! まだ速くなるってのか……!?」

 

 この状況下で対策をするのなら、やはり何もさせてやらないのが確実だと判断を下した。

 ならば速度に対応しきれていない。という点を利用させてもらうことに。

 これまでの速度で足りていないのなら、天井も足場だとカウントして、跳ねて加速できる場所として扱うのが吉なはず。

 それまで平面的にオータムさんへ攻撃を加えていたが、縦横無尽に飛び跳ねることにより、立体的にどんどん攻めていく。

 皮肉なことに、オータムさん自身がこの狭く閉鎖された空間を選んだことが仇となった。

 床はともかく、天井がなければここまでの加速は不可能だっただろうから。

 僕の速さを止めるべく行動だったというのに、更にそれを上回る速さで打ち破ったためか、オータムさんはどこか呆然とした状態になってしまった。

 ……同情の余地はないが、普通にアラクネのシールドエネルギーもちょうどいい具合に削れてきている。試してみたいこともあるし、そろそろとどめにすることにしよう。

 

「わっ、たたっ……!? 調子に乗ると上手く止まれないな、これ。要練習……っと」

「あぁ? なんのつもりだクソガキぃ! まさかとは思うが、同情のつもりじゃねぇだろうな!」

「いえ、それはないですから――――って、残り三十秒か。すみません、説明してる暇ないです」

 

 僕はオータムさんから少し離れた真正面に止まろうと思ったんだけど、勢いが付き過ぎてかなり右のほうにずれてしまった。後は普通に歩いて位置調整。

 突然攻撃の手を止めた僕に対し、オータムさんは交渉でも持ちかけてくると考えたのか、プライドを傷つけられたとでも言いたげに声を荒げた。

 残念だけど、絶対に逃がしてやる気はない。この人は今日この場で捕まえる。くらいのつもりだ。

 ただそれを説明している時間がないし、思えば別に説明してあげる義理もなかった。

 というわけで、僕はオータムさんとの会話を半ば強引に切り上げ、姿勢を低くしてクラウチングスタートのような体勢をとる。

 ただし、右手は浮かしたままで、なおかつ力強く拳を握ったような状態だ。そこから更に、右腕全体からビフレストを放出!

 

「……? いったいなんのつもり――――!?」

「流石に気づきますか。だったら僕の言わんとしてること――――わかりますよね」

「虹色の光が、いつものヘイムダルの虹色の手甲(ガントレット)みたいに……?」

 

 僕の行動の意図がだんだんと読めてきたらしいオータムさんは、もうすぐ自分の身に起きるであろうことを、嫌というほど想定してしまったことだろう。

 そう、実は前々から考えていたことだ。あれだけ爆発的な瞬発力を生むエネルギーを、相手を直接攻撃することに使えたらなんて。

 まさかこんなところで実現するなんて思いもよらなかったけど、とにかく想像するくらいはしておいて正解だったというわけだ。

 どうやらナツも気づいたらしいが、そのとおり。僕は放出したビフレストを圧縮し、普段のヘイムダルと同等の大きさの右腕を形どっている。

 これだけの密度のエネルギーで殴られればどうなるかなんて想像は易いし、なおかつ来るとわかっていても避けられないというのは大きい。

 僕は残りの三十秒を最大限に利用し、これでもかというほどの密度で虹色に輝く右腕を生成した。

 さて、後はこれでオータムさんをぶん殴るだけだ。

 

「お……おい、ほんの冗談だろうよ。ハッ、ハハハ! い、今すぐ消えっからよ、それだけは――――」

「オータムさん」

「!?」

「僕にとって、初めての敵があなたで本当に良かった。おかげで僕は――――」

 

 とどめの一撃がくるとわかっていて避けられないという絶望は、オータムさんの心を完全に折ったようだ。

 あれだけ優位に立っていたのが一変し、まさかの命乞いまでし始める始末。

 そこに高笑いしているオータムさんの面影はなかった。

 ……逃がしてあげたいと、心のどこかで僕がそう思っているのは認めよう。けど今回ばかりは――――ううん、これからはそういうわけにはいかない。

 亡国機業(ファントム・タスク)の目的は、ナツの誘拐であるということが判明した。だから、ナツを狙う敵だけは逃がせない。

 だってどこかで倒して捕まえなければ、いつまでもナツを狙って挑み続けてくることだろう。

 そういったものの繰り返しは、絶対にどこかで断ち切らなくてはならない。

 だから僕はこの敵を――――敵……か。思えば、初めてちゃんとした人間の敵ということになるわけだ。

 無人機に暴走したラウラちゃん、それに銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)。どれもが感情を持った人間――――敵であるとは言い難い。

 その点オータムさんは、僕の前に現れた初めての敵だ。だとしたら、こんなに都合のいいことはない。おかげで僕は――――

 

「おかげで僕はこれから先、なんの遠慮もしないであなたたちをぶん殴ることができそうだ」

「ち…………くしょうがああああああああああああああ!」

「うおおおおおおおおっ! 限界突破(エクシィィィィィィィィィド)虹色の手甲(ガントレット)オオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッ!」

 

 オータムさんと対峙して、こんな連中に遠慮なんていらないということが骨身にしみた。この考えが僕にとってプラスかどうかはわからない。

 ただそこにあるのは、脳内や心中で無意識にかけていたリミッターを完全に外した一撃を放てた。という過去形の事実のみだ。

 僕は小細工なしに思い切り真っすぐ一歩を踏み出し、大きく振りかぶった右腕をオータムさんへと叩きつけた。

 拳はの大きさはアラクネの上半身を丸々埋めてもまだ余りあり、心なしかメキメキと鉄が軋むような音が聞こえたような気がする。

 そのまま右腕を押しだすように振り切ると、それまで右腕に留まっていた高密度のビフレストを射出。

 ロケットパンチのような要領で前進を続ける虹色の手甲(ガントレット)を象ったビフレストは、勢いよくアラクネを後退させていく。

 そしてアラクネの尾部が壁に激突するか否かというところで、それまで原形をとどめていた高密度のビフレストが、美しい輝きを放ちながら盛大に炸裂。虹色の光がドーム状に広がった。

 

「うごぁあああああああああああああああっ!?」

「くっ……!」

 

 これでもかというほどのオータムさんの断末魔が響いたかと思えば、ビフレストの爆発の衝撃が迫って来た。

 ISを纏っているから事なきを得たものの、生身だったら確実に吹っ飛ばされているな。次があれば、もう少し考えて使わないと。

 そんなことより状況確認。……ハイパーセンサーからはアラクネの反応が消えている。あの状況から脱したということもないだろう。

 僕が警戒しながら煙が舞う向こう側へ目を凝らしていると、徐々にクリアとなった視界に横たわる人影が見えた。

 いつしか煙は晴れ、完全にその姿が露わになったが――――うん、疑いようもなく気絶したオータムさんで正解みたい。

 念のためハイパーセンサーでバイタル等の確認をするも、どれも正常値を示していて思わず安堵の溜息を零した。

 よし、ならばもういいかな。

 

「勝った……。勝ったぞ、勝てたんだ……!」

『3 2 1 リミットオーバー ヘイムダル 通常形態へ移行します』

 

 辛くもな勝利に緊張の糸が一気に緩んだのか、思わず膝をつきながら余韻に浸ってしまう。

 それとほぼ同時のタイミングで、ビフレスト・オーバードライヴの効果時間が終了。

 ヘイムダルは単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)発動時と逆の手順で、見慣れた異形の姿へと戻って行った。

 ……どうやら僕が膝をついているのは、単純に疲労がすさまじいという理由もありそうだ。

 冷静に考えてみて、どうやったて凡人レベルの動体視力等を強制的に引き上げたんだから、それは疲れるに決まってるよな。

 制限時間が最大でも三分ほどなのは、それ以上の時間使い続けたら危ないですよってことなんだろう。

 だけど流石にすぐ動けないほど疲れてるってことでもないし、いい加減に愛しのナツを解放しなければ。

 僕はゆっくり立ち上がると、右腕を紫色の大鎌(ヒュージサイズ)に変形させ、壁に貼り付けられているナツへと近づいた。

 

「ナツ。怖いかも知れないけど、少しジッとしてて。手元が狂うと危ないからさ」

「うん……」

 

 助けるためとはいえ、奥さんに鎌を向けるとはなんともシュールな光景だろう。でも絶対に鋸よりはいいと思うんだよね。

 一応ナツに注意を入れてから、鎌のほんの先端を絶妙にネットへと引っ掻け、手前に引いては切断するを地道に繰り返した。

 白式を装備中とはいえ、紫色の大鎌(ヒュージサイズ)の刃部分がナツに触れるのは僕の沽券というやつにかかわる。

 無駄なくらいに慎重だったせいか、かなり時間をかけてナツは完全に開放された。

 地に足を着けたナツにどう声をかけようかと思案していたら、間髪入れずに向こうの方から僕に提案を持ちかける。

 

「ハル。左腕と胸部装甲、部分解除して」

「へ? えっと、了解。これでいい――――」

 

 いきなりどういうことかと思ったが、言われた部分を解除した瞬間に、ナツは僕の胸へと飛び込んできた。

 ……なるほど、確かにヘイムダルは胸部にも装甲があるから、抱き着くという行為はしづらいよな。

 左腕に関しては、きっと鋼鉄を纏ったまま抱き込まれたくはなかったんだろう。

 だからこそ僕は、ナツをできるだけこちらに引き込めるよう、グググと絡めとるようにして細い腰へと腕を回した。

 

「大好き」

「僕も、大好きだよ」

「愛してる」

「ああ。ナツ、愛してる」

「……これから先もずっと一緒?」

「言ったろ、僕はもうナツなしじゃ生きていけない。嫌だって言っても離してやったりするもんか」

「……っ! 嫌だって言っても、離れたりなんかしないんだから もう、後悔したって遅いんだから! だから、だから……! 生きていくよ……。ハルの隣で、生きていたい……!」

 

 もしオータムさんの語ったことが真実だったとして、きっとナツの抱えている気持ちなんてわかってはあげられないだろう。

 だからこそ、ただ寄り添い続けることを誓うんだ。

 これからも狙われ続けられるであろうナツと共にあるのは、修羅の道だの茨の道だのと、そういった表現こそ似つかわしいのかもしれない。

 だが、僕には初めからそんなの関係ない話。だって、ナツさえ隣に居てくれさえすれば、例え地獄の底だろうとも苦ではない。

 逆を言うならナツが居なければそこは地獄そのもの。……結局のところそういうことなんだよ。

 腕の中で嗚咽を漏らしながらも肯定的な反応を示していてくれるが、僕への罪悪感が拭いきれてはいないはず。

 ナツ自身が僕をナツの隣に居させてくれた。だから本気の本気で感謝しかないんだけど、いったいどうやってそれを伝えるべきなんだろう。

 ……待てよ。だったら学園祭中にみせる予定だったアレは、テーマやモチーフからしてちょうどいいんじゃないか?

 今すぐにみせることができないのは心苦しいが、きっとナツを立ち直らせるのに役立ってくれるはず。

 そうと決まれば、さっそく次の行動に――――と言いたいところなんだけど、もう少しこのまま抱き合っていてもバチはあたらない。

 とりあえずナツを落ち着かせる目的も含まれているのだから、お互いに気が済むまではこのままでいることにした。

 

「……ハル、ありがとう。ひとまずは平気そうだから……」

「……わかった。ナツがそういうのなら」

 

 ナツは自ら僕から離れると、こちらにとても柔らかい笑みを向けて大丈夫だと言う。

 それが無理しているときの笑顔であることは察しが付くため、内心湧き上がってくるさまざまな感情を必死に押さえつけ返事をした。

 そこで話はこれからの動向についてになるのだが、そう言えば他のみんなは無事でいてくれるのだろうか。

 確認をとろうにもいつの間にか通信が妨害されているようだし、ここ周辺に存在するISの反応しか感知できない。

 ますますもって安否が気になるが、ここはいったん情報を整理することにしよう。

 オータムさんの目的は大きく見てナツの誘拐。その後ナツをどうするつもりか、までの部分は割れていない。

 そしてほどなくして亡国機業(ファントム・タスク)の増援が到着したのだが、これに関してはオータムさんも意外そうな反応を示していた。

 ……となると、増援の目的はいったいなんだというんだ?

 専用機持ち六人を相手にする実力があるのなら、多少強引に突破して、オータムさんを援護することだってできたはず。

 援護しなかったないし援護する気がなかったのだとすると、自然とナツを連れ去るつもりもないということになるが……。

 

「ままならないな。いったい何が最善なんだろう」

「とにかく地上に出て、みんなと合流するべきじゃないかな」

「……うん。白式もヘイムダルも、エネルギーの余力は十分だしね」

 

 狙われている本人を前線に出すのは反対したいところだが、潜入しているのがオータムさんだけという確証もない。

 なら、敵増援との交戦というリスクがあるにしても、やはり行動を共にするほうが多少はましか。

 強く同意できないせいで一瞬の間を空けてしまったが、怪しまれるほどでもなかったのかナツは無反応。

 それなら地上へつながる通路を探す――――前に、オータムさんをどうにかしないとな。

 都合よく縄みたいな拘束道具が落ちているわけでもなく、とりあえずはヘイムダルの右手で軽く掴んで、身動きを制限しつつ連れ回す方向で決定した。

 うっかり握りつぶしたりなんていうことがないように気を付けなければならないが、これでまず逃げ出すことは不可能のはず。

 そうとわかれば一安心だな。亡国機業(ファントム・タスク)の構成員を確保するという、サブターゲットも達成できたわけだし。

 よし、それなら今度こそ、地上へ向かうべく移動を開始することにしよう。

 僕らはハイパーセンサーに表示されるガイドビーコンを頼りに、薄暗く狭苦しい通路をひた進んでいくのだった。

 

 

 

 

 




【ビフレスト・オーバードライヴ】
ヘイムダルの二次形態。エクシード・ヘイムダルに目覚めた単一仕様能力。
能力の詳細については以下の通り。
1.発動時点までに蓄積されていたビフレストを糧とし、最大三分まで無限に増幅することが可能。
2.発動中はビフレストを自在に変質させること、また、虹色の手甲(ガントレット)と同様の勢いで放出することが可能。
3.発動中はハイパーセンサーとイメージインターフェースの感度が飛躍的に向上し、操縦者の理想とした動きを忠実に再現し、半自動で実行する。
総合的な見解として、最大三分間のみ常人を遥かに凌駕した超人になれる能力。といったところだろうか。


【エクシード・ヘイムダルBOD(ビフレスト・オーバードライヴ)発動形態】
エクシード・ヘイムダルの真の二次移行形態とも位置付けることのできる形態。
言い換えれば、単一仕様能力の発動により実現する超限定的な二次移行(セカンド・シフト)形態のようなもの。
BOD(ビフレスト・オーバードライヴ)の発動と同時に機体の各所がパージ、再構成されることにより完成する。
通常形態のヘイムダルとは異なり無駄を一切削ぎ落したかのような見た目となり、貧弱にはなるが圧倒的機動力を誇る。
また、BOD(ビフレスト・オーバードライヴ)の効果そのものにより、発動時のヘイムダルを捉えるのは至難の業。
余談だが、見た目はウルトラマンエクシードXを漫画【ULTRAMAN】に登場するウルトラマンスーツにしたようなディティールを想像していただきたい。
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