AKIBA'S TRIP ~キミを探してこの街へ~ 作:桐生 乱桐(アジフライ)
まぁ僕からしたらですけど
翌日
アジトに顔を出したらすでに聡子がそこにいた
昨日の疲れもすっかり癒えて、そこにはごく普通な様子の聡子がいた
「先日の訓練、お疲れ様でした。これであなたたちも、私たちと同じくカゲヤシの奴らを倒すすべを手に入れました。今日は貴方に、実戦をしていただきます」
そう言って聡子は真一に向かってスマートフォンのような機械を手渡した
「これはカゲヤシ判別機。通称〝ミラースナップ〟と呼ばれるものです」
なんとこれにはそんな機能があるらしい
流石特殊な組織、装備も特殊だ
そんな似たようなものをアラタも受け取っており興味深そうにそれを眺めている
「我々の研究の成果が詰まったものですから。大切にしてくださいね」
そう言われとりあえずそれをポケットに仕舞う
改めて真一は聡子からの言葉を待った
「…では、これより命令を伝えます。貴方が実戦でも戦えるか…見極めさせていただきます」
アジト内に緊張感が走る
空気が変わったと肌ではっきりと感じ取った
「現在この裏通りで、カゲヤシがうろついているのを確認しました。…我々が自警団に協力するのを知ったとは思えませんが、念のため、先手を打ちます」
つまり、今回の任務は自警団の警備と、自分のテスト、二つを兼ねたものになっているのか
任務内容を簡単に纏めるならば…
この判別機を用いて、カゲヤシを殲滅せよ、と言ったところか
「ここからは本当の闘いです。それを忘れないでください」
戦いはケンカで多少慣れているから戦闘は多分問題ないだろう
しかし幹部(と言うかはわからないが)が相手となると分からない
自分自身を鍛えるために、この戦いは気を引き締めなくては
「真一」
意を決して出ようとする真一にアラタは声をかけた
「気を付けてな」
「―――あぁ。わかってる」
気さくな笑みを浮かべて真一はアジトを出て、外へ出る
じりじりと熱い太陽が裏通りを照らし、僅かばかりに汗が出る
今日この日、真一の戦いが始まったのだ
◇
まず裏通りへと出て辺りを見回す
そう言えばこのミラースナップ、貰ったはいいが使い方を聞いていない
まぁこれで写真を取るように使えばいいんだろうが、カゲヤシは写真に写るのだろうか
「…まぁ使えば分かるか」
とりあえずミラースナップを起動させて適当に焦点を合わせる
撮影対象はこの裏通りを行きかう何気ない人々
ピントを合わせて心の中でハイ、チーズだなどと言いながらかしゃり、とシャッターを切った
そして移った写真を見てうん? と思った
その写真には確かに人が写っていた
だが、何人か、確実にフレームに収めたのに映っていない人間がいたのだ
(なるほど…これがカゲヤシか)
存外、もっと派手な格好をしてると思っていたが実際は違ったようだ
格好もすごい普通で、それでいてどこにでもいそうな人間だった
真一はゆっくりとその人間へと近づいて声をかけた
「…お前、人間ではないな」
そう口にすると声をかけた人間の表情が変わる
素人でもはっきり分かる、明確な殺気だ
正体を知られた以上、向こうはこちらを消す気でいるだろう
無論、こっちもそいつを消す気で挑んだのだが
相手からの先制攻撃が飛んでくる
何の変哲もないただのパンチだ
見切るほどでもなく身体を右に動かしてそれを回避し、距離を取る
そしてその間合いを一気に詰めて腹部に拳を叩きこんだ
うずくまるその男にさらに間合いを詰めてさらに顔を蹴り上げ隙を作る
その一瞬の隙をつき―――一気に相手が来ている服を脱衣させた
肌に太陽の光が当たり、一気にその男が灰となっていく
悶え、身をよじりながら男は口にした
「判別機…、だ、と…!!」
それが男の最期の言葉だった
言い終わると同時、男は完全に灰になった
カゲヤシがどうなって消えていくのかは聞いていた
しかし実際に目の当たりにするとこう…来るものがある
…まだ二人、カゲヤシがいたハズだ
その二人を狩るべく、真一はまた歩き出した
◇◇◇
「それにしても、判別機だなんて、まるで漫画みたいだねぇ」
そう言って面白そうにその判別機に振れているのはヤタベである
ちょっと興味を持ったのか今はアラタがもらったミラースナップをいろいろな角度から眺めて、そんな事を呟いた
「いやぁ…私が子供の時にはこういった便利グッズを作ろうと、躍起になっていたものだよ」
そうほっこりしながらヤタベはアラタにミラースナップを返した
確かにこんなドラ〇もんのような道具には男子としては心惹かれるものがあるだろう
ちなみに他のメンバーと言えば
「そ、外にカゲヤシが…! ど、どどっどうしようっ!」
ゴンちゃんはテンパってるし
「ふーむ…やっぱりフォルムが良いよなぁ」
ノブくんは〝ITウィッチマリア〟のフィギュアを眺めているし
「アラタさん、紅茶のおかわりはいかがですか?」
サラさんはいつも通りである
ちなみに御堂聡子は真一の力量を確かめるという名目でいったん外に出ている
まぁそのうち帰ってくるだろう
事前に渡された資料によると、服をひきはがし、その肌を太陽の自然光にさらすとどうやら灰となってしまうらしい
どういう原理かは分からないが、要は師匠から学んだストリップで相手の服を脱衣させて地肌を日光に晒さないと倒せないようだ
しかし別にうまく脱がすことが出来なくともダメージを相手の身体に蓄積していけば服を着ていても身体が再生に追いつかないらしい
正直そっちの方が分かり易い
「…すいません、紅茶ください」
「畏まりました、ご主人様」
…恥ずかしいっ!
なんだ、この感覚は
秋葉原に通う人たちはどうしてこんなこそばゆい感覚に耐えられるのか不思議で仕方ない
メイド喫茶…自分は足しげく通うのは難しそうだ、というか無理だ
そんな感じで悶々としていると聡子が戻ってきた
どうやら彼女は僅かばかり微笑んでいる
予想以上に彼がやってくれると分かったのか
その数分遅れで真一が帰ってきた
僅かばかり、顔には疲れが見える
「無事、討伐できたようですね。お疲れ様です」
聡子はそう笑顔で応対する
「実は離れた場所であなたを見てましたが、お見事です。瀬嶋さんの見た通り、期待している以上の人です」
聡子が驚いている
それもそのはずである
少し前までは神学校に通うどこにでもいる普通の学生だったのだ
この短期間での成長は目覚ましいものがあるのだろう
「これで、安心して命令を言い渡すことが出来ます。…今、私たちが狙ってるのは、阿倍野優です」
阿倍野優―――
真一の友人を襲撃し、そして真一自身も怪我させた、いわば仇敵
「そのカゲヤシを探し出し…倒します。奴は数多くの仲間を倒した強敵です。…正直瀬嶋さんの判断と言えどいきなりこれに当たらせるのは酷だと思ってたんですが…先ほどの戦いぶりを見て大丈夫と思いました。彼の眼に狂いはありません」
そんな会話をアラタはサラから注いでもらった紅茶を飲みながら聞いていた
聡子の話を聞いているとどうも彼女は瀬嶋の事を強く信頼しているらしい
別にそれは不思議な事ではないが、相手があの怪しいおっさんだとするとどうもそれが不思議でならない
「奴をあぶりだすため、真一さんとアラタ三には、それぞれ駅前と、中央通り南西の二つの地域を担当していただきます」
そう言って聡子は悔い、と眼鏡を上げながら
「今回の任務は私たちとの共同ですが、我々は別行動を取りますので、援護は期待しないでください。と、言っても今回はアラタさんもいますから、言うほどでもないですけど…。ちなみにその二点は、我々が確認した最後の場所です。しっかり準備をいてから挑んでください」
どうやら本格的に戦いが始まるようだ
先ほどの戦いはあくまで真一の力量を図るためのもの
真一の額に、つう、と冷や汗が伝った
「それでは、よろしくお願いします」
◇
阿倍野優
彼はこの秋葉原内での活動において極めて好戦的なカゲヤシの一体のようだ
なんでもカゲヤシ内ですら危険視されているとかいないとか
そんな好戦的な一方で意外にも慎重に行動しているらしく、彼は人を捉え側近を利用し安全を確保したうえで吸血するとようだ
今まで何度も倒そうと試みているものの、その都度側近会を犠牲にし自分だけは生き延びているらしく手を焼いているらしい
今回真一とアラタに言い渡された任務はその阿倍野優の側近を退治すること
ナイロの見立てによればそうやって少しづつ側近を倒していけば阿倍野優も何らかの行動を起こすハズ…とのことだ
「じゃあ駅前には俺が行こうか」
「わかった。じゃあ俺は中央通りの南西な」
真一は中央通り、アラタは駅前とすんなりと役割が決まった
どうでもいいがその側近たちはバンドマンの恰好を好んでしているらしく見つける分には探しやすいだろう
「そいじゃ、健闘を祈るぜ真一」
「あぁ、お前もなアラタ」
お互いに手を叩いてそれぞれの場所へと赴く
出会ってあんまり経っていないが割とこの関係は悪くないかな、と思う真一だった
◇◇◇
駅前にて
紅葉ワタルは秋葉原の町並みを見て驚嘆していた
傍らにはキバットと呼ばれるコウモリがパタパタ飛んでおり、ワタルの周囲を回りながら口を開いた
「最近の街並みってすっげぇな。見移りしちまうぜ」
「そうだね、キバット。…意外にキバットの事もスルーしてるし」
秋葉原の人たち心寛容すぎだろ本当に
まぁそれはそれとしてワタルがこの秋葉原に来たのには理由がある
彼は普段バイオリン等を取り扱ってる楽器屋を学園都市で営んでいる
しかし時たま外に出て気に入ったバイオリンを購入しそれを自分好みにカスタマイズする趣味があるのだ
今回はそんなバイオリンを探しに秋葉原にやってきたのだ
「しっかし大丈夫かぁ? なんだか最近の秋葉原って物騒って言うじゃんか」
「そうだね。なんだか吸血鬼とかなんとかが現れて人を襲うとか」
甚だ嘘くさい話である
とはいえはっきり嘘とも言い切れないのがこの秋葉原の魅力なのかもしれない
「まぁでも多分大丈夫だよ。何とかなるって」
「…ったく。お前は楽天家だなぁ、いつもの事だけどよ」
そんな会話をコウモリと紅葉ワタルは繰り広げながら秋葉原の街を練り歩く
他の人たちはそれをなんかの撮影かと勘違いしたのかそれに対して疑問を抱くことなかったそうな
キャラ紹介その二
文月瑠依
Cv日笠陽子
この作品のヒロイン
今の所一話にしか出てないけど後半は出番が増えるはず
ヤタベさん
CV利根健太郎
真一の仲間
自警団のリーダーにして老舗のジャンク屋の店長でもあるおじさん