AKIBA'S TRIP ~キミを探してこの街へ~ 作:桐生 乱桐(アジフライ)
ていうか久しぶりにこれに感想きてびっくりしました
私です\\\\٩( 'ω' )و ////
#7 JKVを撃破せよ
公園へと真一はやってきた
最近だとここに逃げてきた鈴と瑠衣を追いかけて、そこで名前を教えたのが記憶に新しい
しかしヤタベさんは公園にいる、と言っていたのだが、どこにいるのだろう
しばらくきょろきょろとしていると、滑り台の近くで横になって寝っ転がっているホームレスのような男性がいた
…この人だろうか
「…あの?」
とりあえず声を一つかけてみたが視線を僅かにこっちに動かすだけで何かを言おうという雰囲気じゃない
じゃあもう回りくどい言い方はなしで、ストレートに尋ねてみよう
「すいません、〝シンディ〟って知ってます?」
「―――!! …なんですかそれ僕知りませんけど」
今一瞬何かに驚いたような雰囲気があった
っていうか反応からして多分知っているなこの人
ヤタベさんの言っていた人か、あるいは近しい人物か
何回かアタックしてみよう
「…すいません〝シンディ〟、ご存知じゃないんですか?」
「知りませんって」
「いえでもその反応は」
「しつこいなキミ、知らないって」
「どんなに些細でもいいんです、〝シンディ〟について何か教えてもらえませんか?」
「…なんなんだキミ警察呼びますよ」
「どうか! 俺には必要なんです! 〝シンディ〟が!」
傍から見たらどういう風に見えているだろう
「―――ふー」
やがて大きく息を吐きながらホームレスの男性はゆっくりと立ち上がると
「〝シンディ〟なんてものは―――知ってるに決まってるだろぉん!?」
こっちに向けてキレ始めた
「コードネーム〝シンディ〟! 某有名進学校の制服を僕の流通(企業秘)でアナタにお届けするっ! マニアが喉から手が出るほど欲しがるプレミア商品であるっ! そんな商品を今でも扱ってるのかって!? 答えはイエスだバカヤロォ!!」
怒涛の勢いでめちゃくちゃにまくし立ててくるホームレス
どうやら本人で間違いはなさそうだ
…やっぱりそういう服の売買かなんかで生計を立ててるのだろうか
「君の〝シンディ〟に対するしつこさには将来性を感じます。三万で手を打ちましょう」
「―――三万か」
財布の中身を空ける
いくらかかるかわからないから多めにお金を持ってきていたのが功を奏したようだ
少し節約とかしないといけなくなるが―――背に腹は代えられない
「買った!」
「君なら払うと信じていました。これが例のブツです」
お金を受け取ると徐に茂みの中から梱包されたそれを渡される
これが〝シンディ〟…
そう言ったことに特に詳しくない真一でも、この制服が高級品だと直感で…心で理解できるッ
「そいつを狙うものは多い…ちゃんと家に帰ってから空けるんだよ」
遠足かよ、と内心でツッコみつつ一礼をして真一はその場を後にする
服の入手はできた…問題は着せる人だ
御堂さん―――は多分十代じゃないからパス、サラさん…は引き受けてくれそうだけど今後会う時気まずくなりそうなのでこれもパス…と、考えていると携帯がなった
取り出して画面を見てみると、美咲の文字列―――妹だ
通話ボタンを押して耳に当ててみる
<もしもし? お兄ちゃん?>
「うん、どうしたの突然」
<いきなりで悪いんだけどさ、部活で使うテーピング切らしちゃってさ。買ってきてほしいんだよね。お兄ちゃん今アキバでしょ?>
「まぁそれくらいならいいよ―――あ、そうだ美咲」
唐突に閃いた
<どうしたの?>
「…いや、ちょっと頼みがあるんだよ俺からも」
<頼みぃ? どんな?>
「いやほら、俺アキバで何でも屋紛いなことしてるの知ってるだろ?」
<うん。お兄ちゃん戦う力中々あるからね。割と頑張ってるのは知ってるけど>
「いやね、ちょっと着てほしいものがあるんだ…」
冷静に考えるととてつもなくアホなことを言っている自覚は大いにある
だが迷ってもいられないのも事実なのだ
◇
同時刻
鏡祢アラタは誰もいない教室の外で一人待っていた
待っているのには理由がある
「…入ってもいいわよ」
教室の中から声が聞こえた
吹寄の声である
お許しが出たので教室の扉を開けてアラタは中へと入っていった
「…いきなり呼んでおいて、そしてこの制服を着てほしい、だなんて…お前そんな趣味があったの?」
「いや、趣味って訳じゃあないんだけど。…まぁ変なこと言ってる自覚はあるよ」
十代の女の子に着せて魅力を理解する
そんなことを馬鹿正直に言えるはずもなく、アラタは同級生である吹寄制理に協力を依頼した
めちゃくちゃ不審に思われたが、最後は折れてこうして協力してくれている彼女には感謝しかない
「…まぁ、結構いい感じなのは確かね。どこの有名進学校だかは知らないけど、悪くないんじゃない?」
そう言ってくるりと回る吹寄
その拍子にふわりとスカートが舞い、一瞬ではあるが綺麗な円を形作る
くるっと回った際に彼女の胸元が軽く弾み、僅かではあるがその存在を強調する
…どこのドイツだ、女っ気が感じられないって言ってたやつは
吹寄だって普通に可愛い美少女じゃないか
「…どうしたの? 急に黙り込んで」
「え? ああいや、吹寄もやっぱり普通に可愛い女の子なんだなって改めてばえるっ!?」
心からの賛辞なのだけど思いっきり顔面に近くのカバンを投げつけられた
その衝撃で仰向けに倒れてしまい体をぴくぴくとひくつかせる
なんか失言でもしたのだろうか
ゆっくりとカバンを取りながら吹寄の方を見てみると顔を赤くした状態で投げたポーズのまま大きく息をしていた
「はぁ…はぁ…ほんっと貴様はそうやって! そういう所よ鏡祢アラタ!!」
「どういう所!?」
凄まじく理不尽なキレ方をされた
「と、とにかく。この制服は洗って後で返すから! 他には何もないのよね!?」
「え? あ、あぁ。ありがとう。助かったよ吹寄」
「何の助けになったのかは想像つかないけど! それじゃあね! ―――ばか」
そのまま荷物を持ち直して吹寄は真っ直ぐ教室から出ていった
最後の方になんか言っていたような気がするが、よく聞こえなかったためアラタは首を傾げる
それはともかく、〝女子高生の魅力〟とやらは…多分マスターできたはず
ちょっと納得できない感じもするが、そう言うことにする
っていうかそういうことにしないと先に進めない気がしてきた
ひとまず再度秋葉原に戻って真一と合流しよう
◇◇◇
電車に揺られて数十分、須藤真一も秋葉原に戻ってきていた
妹である美咲に例の制服を着てもらい、彼なりに女子高生の魅力を理解した真一はその後師匠の元へと報告に舞い戻り、師匠の用意した下僕を相手に軽くトレーニングをした後で、ここに戻ってきたのだ
何だろう、色々と失った気がする
ちなみに服はそのまま美咲に上げた
自分が持ってるより妹が持ってた方が使い道あると思うだろうし
「真一」
声が聞こえてきた
ちらりとそちらを振り向くとアラタが手を挙げてこっちに歩いてきていた
真一もそれに応えながらアラタの方へと歩いていく
「お前も理解したみたいだな、魅力ってやつ」
「あぁ。アラタも? っていうかごめん、途中連絡を怠って…」
「気にすんな。一応こっちもこっちで俺なりに魅力を理解してきたからな」
そう言ってアラタは小さく微笑んだ
「あ、二人ともこっちこっち」
そうしていると、こちらに向かって声を掛けてくる人が二人
ノブくんとゴンちゃんの二人だ
こちらが歩み寄っていくと、ノブくんが申し訳なさそうに
「早速だが悪い、見失っちまった」
「あー…。まぁ駅前って人通り激しい仕方ないよ」
「そう言ってくれると助かるぜ真一。けど、こっからまた探すのもなぁ…」
うーん、と首を捻っていると、「そうだ」とゴンちゃんが思い出したように
「そういえば、JKVの人たちってお金持ってそうな人に声を掛けてたよね」
「言われてみりゃあそうだな。びしっとスーツ決めてる人にはすげぇかけてたな…」
「…スーツ、ねぇ」
真一は腕を組んで考える
もしかしなくても援助交際的なアレなのだろう
最も、頂かれるのは血液で、欲に釣られた代償は引きこもり化だが
「となると、金持ってそうな恰好すれば向こうから寄ってくる可能性がある、って訳か…」
アラタの言葉にその場の四人が押し黙る
そして真一以外の三人が一斉に真一の方に視線を向けてきた
「…? え?」
なんでだろう、嫌な予感がしてきた
◇
「お、戻ってきた」
その辺のスーツ専門店で一番安いスーツを購入し改めてそれらを着用して真一は駅前に戻ってきた
案の定嫌な予感が当たってしまった…安いとはいえ二万はしたぞ
「決まってんねぇ。安物とは思えないぞ」
「う、うん。十分格好いいよ。これならJKVも来てくれるかも」
ノブくんとゴンちゃんが口々に感想を呟く
嬉しいっちゃあ嬉しいんだが、なんだか複雑な気分である
「よし、そんじゃあ真一はその辺を歩いててくれ。ノブくんとゴンちゃんは巻き込まれないように離れてて。俺は動きがあったらすぐ駆け付けれるよう少し離れた位置にいるよ」
「わかった」
アラタの言葉に頷いて、三人が散っていく
今この場にはポツンと真一のみが取り残された状態だ
さて、ふらつくといってもどうするか、エウリアンに見つかりでもしたら面倒だから…とりあえず家電でも見に行こうかと考えて歩き出した―――その刹那
「―――ねぇ、そこのおにーさん?」
どきり、と心臓が跳ね上がる
声を掛けられた、後ろからだ
ゆっくり振り返ってみるとそこには女子高生と思われる女の子がこっちを見つめている
「ちょっと私と遊ばない? ―――いっぱいサービスしてあげるよ?」
マジで援助交際じゃねぇか、と内心でツッコみを入れる
それでいて結構中々かわいい部類に入る
もしあの女の子―――文月瑠衣と会ってなかったら揺らいでいたかもしれない
とりあえず返答しなくては
「え、えっとぉ…そ、そうだね。してもらおうかな?」
「やったっ。それじゃあ一緒に―――」
そう言って女の子は真一と腕を組もうとその手を伸ばしてきて―――何かに気づいたように距離を取った
「っこ、この低品質な質感は―――安物!! なによそれチョベリバー!」
古っ
女の子もそれを自覚していたのか言った直後ハッとした様子で
「しまった、これはもう死語だ! 年齢がバレる!」
いずれにしてもターゲットが向こうから寄ってきたようだ
それを判断したのか、ゆっくりとアラタも真一の隣に歩いてきてJKVを視界に収める
「…しかしチョベリバて」
「うっさい! …アンタたち、ナイロのエージェントね。…目立つところじゃあやりたくなかったけど、仕方ないわ。年齢を知られた以上、生かしてはおけない」
そこかよ
「全裸にして駅前に放置してやる! 社会的に殺されるがいいわ!」
そう言ってJKVリーダーが指を弾くと、どこからともなく同じ制服を着た女性が現れる
どうやら彼女の部下みたいだ
JKVリーダーはふふふ、と小さく笑って
「女子高生の制服は、乙女の柔肌を包み込む、神秘のヴェール…たかがエージェントごときには脱がせられないわよ!」
「真一、取り巻きは任せろ、お前はリーダー格を!」
「わかった!」
アラタの言葉に頷いて、真一は両の拳を身構える
他の四人の彼女の部下はアラタに任せて、自分はこのリーダー格を倒してしまおう
「さぁ、なるはやで片付けてあげるわ!」
そこら辺は知ってるんだ
なんて心でツッコみながら、真一は相手の攻撃をいなしていく
確かに彼女も十分魅力的である
だが今の真一は彼女以上に魅力的な女性を知ってしまっている
彼女―――瑠衣に比べればJKVなんて―――まだまだだ
◇
連携は取れているが、そこそこ経験を積んだアラタの前では彼女たちは相手にはならなかった
せっかくだから〝師匠〟に教わった脱衣の技も軽く試してみるとしよう
相手の攻撃をいなして、隙をかいくぐって―――針の穴のような突破口を貫く勢いで―――その衣服を奪う!
「―――おりゃあ!」
びゅん、と風が駆け抜ける
アラタの手には先ほどJKV部下たちが着ていたであろう制服が上下二枚ずつ
―――なんでこんな技覚えてしまったのだろう
カゲヤシとの戦闘以外で役立つことはあるのだろうか
「い、やぁ…! あつぃ…!」
「からだが、溶け―――」
日光に晒されたJKVの部下たちはそのまま下着ごと全身を炭のように灰化させて消滅していく
正直見ていて気持ちのいいものではない
…本当にこれで良かったのだろうか
「はぁぁぁっ!!」
それと同時に、リーダー格と戦っていた真一の方も戦いが終わったようだ
部下たちと同じように衣服を脱がされ、その身を日光に晒されたJKVリーダーは身体を焼かれ、灰のように消えていく
「いやだ…! しにたく―――…なぃ…」
消えゆく最中、呟いたリーダー格の言葉が耳に入ってくる
それを聞いた真一が沈痛な面持ちで顔を俯かせていた
仕事だと割り切ればいいのだが、人間はそう易々とは割り切れない
しかしこのまま暗い空気なのもいけない、と思ったアラタは真一に近寄って
「お疲れ様。かっこよかったぜ」
そう言葉をかけた
真一は言葉を聞くと小さく笑んで
「…ありがとう」
と短く呟く
多少はこれで落ち着いたかな、と判断したその時、離れた場所にいたノブくんとゴンちゃんの二人がこちらに向かって駆け寄ってきていた
「お疲れ様二人とも。ちょっと見ててひやひやしたけど…怪我がなくてよかったよ」
「うん。全くだ。まるで特撮の収録見てるみたいだったぜ」
ノブくんの言葉に少しだけ真一は微笑んで返した
特撮の撮影もあんな感じなんだろうか
「あ、そうそう。無事に二人がJKVを倒したこと、御堂さんにメールで報告しといたよ」
「ありがとうゴンちゃん。御堂さんはなんて?」
「短期間でここまで実力をつけるなんてすごいって、二人のこと褒めてたよ」
「お? それじゃあ昇級とかも近いのかな」
「…エージェントに昇級なんてあるの?」
ゴンちゃんに言われてノブくんはうーん、と短く考えた後で
「しらね」
そうあっけらかんと返すのだった
一瞬場はぽかんとなったが、ゴンちゃんが小さく笑いだすのと、ノブくんが合わせて笑うのはほぼ同時
『あっはははっ』
何はともあれ、である
JKV 撃破完了