俺には夢も希望もないというのに   作:COOPER

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新しいプリキュアが結構面白かったので、いつの間にか書いてました…w
(もう一個の作品はどうするんだっていう…)
とにかく、第一話…どうぞ!


本編
第一話 忌々しい。あぁ、忌々しい、忌々しい。


「希望を持って生きろ」「夢は大きく持て」

大人は皆そういう。

だがちょっと待ってほしい。

夢なんてものは無くても生きていけるし、鬱病でも無い限り希望を持たなければならないなんて事もないだろう。

ならば何故大人たちはそういうのだろうか。

それは大人というのはこの世で最も醜くて利己的な生き物だからだろう。

少なくとも俺、土山希無はそう思う。

「おい、土山」

大人、いや、世の中ってのは中々にクソだ。

以上の事から俺は絶対に希望なんてものは持たないし、夢なんてもってのほかだ。

「おい!!」

「あ、悪ぃ…で、なんだ?」

クラスメイトが俺を呼んでいたようだ。

「朝の会始まるぞ。たしか日直だったろ?」

「ああ、俺か」

自分はそんな事すら忘れてしまってたのか…と、ちょっと傷つきながら俺は黒板の前へと足を運ぶ。

「気をつけ、おはようございます」

皆もおはようございますと言い、一礼する。

はぁ、きっとこれが社会生活の役に立つと政府は思っているのだろう。

アホ臭い事この上ない。

こんなもので集団生活に関する関心が高まり、他人を尊重できるようになると言うのならば、今頃日本に犯罪者なんてものは存在しないだろう。

しかし実際は存在している。つまりは無駄なのだ。

そんなどうでもいい事を思いながら朝の会を進行していく。

「えー、次に先生からのお話です」

俺はそういうと自分の席へと戻り、頬杖をつく。

すると担任は黒板に誰かの名前を書き始めた。

“野乃はな”

黒板にはそう書かれてあった。

「皆さんに転校生を紹介します。……と、言いたいんですが…肝心の転校生が居ません」

「転校初日から遅刻~?」

「なんでだよ?」

クラス中から驚きの声が上がる。

いや、転校初日から遅刻ってマジでどういう事なの…

なに、アレなの?イカツイオラオラ系の人で学校サボるなんて当たり前な感じの人なの?

ふえぇ…おっかないよぉ…

「どうしたもんかなぁ…」

先生も困り果てている。

いや、家に連絡しろよ。家を出てるなら学校に来る途中で何かトラブルに巻き込まれたとか?まぁ、可能性はあるが。

俺が少し推測していると、教室の扉が勢いよく開かれた。

「ごめんなさい!!!!遅れましったあっとっとと!!!」

扉を開けた少女は中に勢いよく走り込んでくると躓いて教卓の前で盛大にすっ転んでしまった。

え、もしかして天然系?

どうでもいいがAnotherなら死んでたぞ。

「野乃さん大丈夫?」

先生がのんびりした声音でそういう。

いやいや、あんたもっと心配してやれよ…

謎の転校生さんがちょっと可哀想に見えてきちゃっただろうが。

しかし、転校生はそんな事は気にしていないようで、すぐに起き上がる。

「野乃はな!13歳!将来の夢は、超イケてる大人っぽいお姉さんになることです!!」

そう言い放った。

悪いがそいつは叶いっこないと思うぞ…身体的に…いや、どことは言わないけどね?

しかもなんか「ふふん!!」とかやっちゃってるし…こりゃ黒歴史確定だな。

マジでかわいそう…ま、中二なんてのは歩く黒歴史製造マシーンみたいなもんだし、あとから見れば笑える思い出になるのかもな。

そしてクラスは爆笑の渦に飲み込まれた。

「すっげぇ元気だな!」

「お茶目だねぇ」

様々な感想が飛び交う。

「めちょっく…」

野乃は野乃で落ち込んじまったし…

「野乃さん、自己紹介ありがとう。でも、遅刻はダメだよ?あとで職員室ね」

ふんだりけったりだなこりゃ…

かわいそうに、骨は拾ってやる…。

そんなこんなで、朝の会は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして転校生が来たから…と言っても何もなく、あっという間に昼休みになった。

普段通り俺はする事も無く、校庭で趣味の読書をしていた。

最近知った「妹さえいればいい。」というライトノベルを読んでいるのだが、中々に面白い。

しかし、お色気っつーかアレなシーンが多いので他人にはあまり見られたくない。

だからこその校庭だ。ここにはあまり人が来ない。

そういうちょっとヤバいラノベを読むにはもってこいの場所だった。

読んでいる場所がひと段落つき、俺は持ってきた飲み物を飲もうと手を伸ばした。

そのときだった。

「はぎゅ~ はぎゅ~……」

どこからか赤ん坊の泣き声が聞こえた。

いや、何で学校に赤ん坊がいるんだ?

しかも結構俺の居る位置から近い場所から聞こえたようだ。

うーん…どうしようか…面倒くさいのは目に見えているが…

しょうがねぇ、ちょっと行ってみるか。

俺は気が進まないが、声が聞こえた方へと向かう事にした。

まぁ、案外近かったのだが、面倒なことに屋上からの声だったらしい。

仕方ないから階段を登って屋上へと行く。

そして階段の奥にある扉をこっそり開けた。

すると、そこには三人の少女が居た。

そして上には流れ星のような物が地上へと落下していた。

えぇ…これどういう状況なの…

取り敢えず面倒くさい事はごめんなので、扉の陰へと俺は身を隠した。

俺の隠密スキル便利すぎる。

「はぎゅ~…はぎゅ~…」

どうやら泣き声の正体はあの流れ星モドキのようだ。

え、待て待て、流れ星から泣き声?これどこのアニメの世界?

「野乃さん、探してたんだよ?学校、案内したかったんだ」

三人の少女のうちの一人、学級委員長である薬師寺さあやは転校生の野乃はなに向かってそう言った。

「ほんと?ありがとう!」

野乃も嬉しそうに返答する。

うわ!百合百合しい!この娘たち百合百合しいわよ!!

こんな会話で百合百合しいと思ってしまう俺は相当重症だろう…。やべぇな…

「私、薬師寺さあや。よろしくね」

「よろしく。あっ、あの!」

「うん?」

屋上に居たもう一人の少女、輝木ほまれは不機嫌そうにそう返した。

おっかないなぁ…こわいなぁ…

野乃は輝木と二~三秒間見つめ合うと自分のデコを抑え、恥ずかしそうに唸った。

「その前髪、イケてる」

「えっ?」

野乃は輝木の返答が余程以外だったのだろう。呆気て間抜けな声を出した。

「よく似合ってんじゃん」

輝木は少し微笑むとそう言った。

ええ…なにこの人…素でこんなイケメンなの?なんで女なの?男の俺がちょっと嫉妬しちゃったじゃないか…

「ありがとう!」

野乃はすこしオーバーじゃねぇか?と思うくらい大げさに喜ぶ。

「ほまれさん!学校案内、一緒にどうかな?」

薬師寺が輝木に対してそう問う。

「うん!うん!」

野乃も賛成のようだ。

しかし、輝木はベンチに座って空を見上げると、黙り込んでしまった。

野乃と薬師寺は察したのか、二人で行ってしまった。

「あんたは行かなくて良いの?」

気付かれてたのか…。

自分で言うのも悲しくなるが、俺は影が薄いというのに。

「別に、俺は関係ないんでね」

「じゃあなんで此処に来た?」

そう冷たい声音で問う輝木。

しかし、そう言われても俺には理由なんて「赤ん坊の声が聞こえたから…」としかな。

「変な声が聞こえたんだよ。それだけだ」

「ふーん、そう」

輝木は興味なさげにそう答えると、また空を見上げてしまった。

聞いておいてその態度はどうなんですかね…流石の俺も傷ついちゃうよ?

傷つき過ぎてガラスのハートが壊れちゃうまである。

そんな感じで、俺は屋上を後にし、階段を下りる。

で、その日は特に何もなく俺は帰宅したのだった。

「うーす、ただいまー」

俺が帰りの挨拶をすると、

「おかえりー」

気の抜けた母親の声が聞こえた。

俺の母、土山朋美は専業主婦だ。故にこの時間帯に家に居る。

しっかしまぁ、学生と言ってもやる事が無い。

勉強しろ。とか言われるかもしれんが、別に成績が悪い訳でもないし、特にする必要が無いのだ。

「学校はどうだった?」

「別に、今日もなんもなかったぞ」

「そう、なら良かった」

そんな他愛もない会話をする。

いやぁ、今日もなんもなかったと言っても、謎の泣き声が聞こえて流れ星モドキを見たって…全然なんもなくないね。

だが、一体あれは何だったのだろうか。

流れ星…にしては色がカラフルすぎたし、第一あそこまで近いと隕石として扱われ国からの警報が発令されるだろう。

ならば違う。やはりオカルト系なのだろうか。

俺は自分の部屋へダッシュでいき、ノートパソコンを開く。

ブラウザを立ち上げ、「隕石 泣き声」と、調べる。

しかし、何も出て来ない。

うーん…これは一体何なのだろうか?

通りがかった時の皆の反応からするに、あの声と星は俺だけに聞こえ、見えていた。

そんなものが見えてしまう程疲れた記憶は無いし、精神が狂っちまった覚えもない。

…やっぱり聞き違いか?

しかしそれだとあの三人は何故あんなにタイミング良くあの場所に居た?

なにか上手く出来過ぎてる気がする…

ダメだ。詳しい事例もない、今日はもう寝てしまおう。

「母さん、悪いけど今日はもう寝る!」

俺は大声で母さんのいる一階へと叫ぶ。

「え?晩御飯どうすんの?」

「いらん!」

母に返答し、俺はまた部屋へともどる。一度リセットして整理しよう。

そんなこんなで、俺の意識は深い闇へと落ちて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝起きれば時計は7時05分を指していた。

中々に目覚めのいい朝だ。久しく感じる。

ここんところ悪夢続きで、魘されてばかりだった。

しっかし、確か昨日は今より12時間は前には寝たよな?

やっぱり睡眠時間と夢の内容は関係しているのだろうか。

俺はそんな小賢しい事を考えながら学校の支度をし、家を出る。

「行ってきます」

家の中に居る母と父にそう告げ、歩き始める。

そして何もなく学校に着いた。

勉強道具等を机にしまい、また頬杖をついてぼーっとする。

俺は朝のこの時間が嫌いじゃあない。

自分の考え事について深く考えれるし、何より何もしないというのが最高だ。

で、また特に問題も無く昼休みに。

俺はいつもの校庭へと向かい、飯を食っていた。

今日は珍しく弁当ではない。どうやら母が今日の朝寝坊したらしく、そのため市販のサンドウィッチを頬張っていた。

だが、このサンドもおいしい。

しかし母のモノと比べればやはり母のをとってしまう。

お母さんの手作り料理、最高です。

しかしまぁ、昨日のアレは一体何だったんだ。

結局分からず終いだった。

クソ、なんなんだ全く。

俺がそう心の中で愚痴っていると、近くを誰かが通りかかった。

やべ、出来るだけ気付かれないようにしねぇと…

俺は木の陰に隠れる。なんとかこれでやり過ごせそうだ。

そう思った時だった。

「あぁ……」

通りすがった奴はいきなり倒れてしまった。

「なっ、お、おい!大丈夫か!?」

俺が声を掛けるとそいつは話せるようで、俺に返事をしてくる。

「何もやる気が出ないんだ……」

そいつは眠そうな声でそう言った。

クソッタレ!どうなってやがる…?取り敢えず誰か教師を呼ばねぇと…。

俺は教師を連れて来るために校舎へ戻る。しかしそこはもはや惨状と化していた。

そこら中に倒れる生徒。ブツブツと何かを言う者や、なかには意識を失っている者まで。

「どうなってんだよ!全く…」

流石にちょっと普通じゃない。こいつはテロか何かなのか?

いや、考えられない。こんな学校を襲って何になる?

ならば何か…?まて…。

昨日の流れ星モドキが俺の脳裏を掠めた。オカルトチックな事…という点では同じだ。

しかし、他に共通点などない。

考えろ、考えろ……!!!!

ダメだ!何も浮かんでこねぇ!!

「あなた!!!」

どこからか声が聞こえる。

良かった、マトモに動ける人間が居たか。

「俺か!?」

少し大きめにそう叫ぶ。

すると、やはり俺だったようで、四人分の足音と共に声の正体が姿を現した。

「土山君!?」

現れた者達の一人、薬師寺さあやはそう言った。

「こいつぁ一体どういう事なんだ!?」

「分からない、兎に角逃げよう!」

「ああ、分かった!」

意見が一致し、俺たちは走りだす。

「他の奴らは!?」

走りながらそう問う。

「分からない!!」

「クソっ…」

俺は小さく吐き捨てるように言った。

「取り敢えず外に出るぞ!!」

「うん!」

「分かった!!」

薬師寺と野乃は答える。しかし、あとの二人は何も言わない。どうやらこいつらもあの変な症状になっているのだろう。

外に出た。しかし、俺達に安堵する時間等は用意されてなかったらしい。

そこには化け物が居た。

おいおい、マジでこいつはオカルトじゃねぇか!!

校舎が化けたような見た目、「涼宮ハルヒの憂鬱」出てきた“神人”のようなサイズ。

どれをとっても、この世の者とは思えない存在だった。

「オシマイダーッッッッ!!!!」

化け物はそう叫ぶと、大きくジャンプしグラウンドへと着地する。

土は抉れて吹き飛び、体育館等の施設は一部破損している。

畜生!自衛隊や警察はまだなのかよ!!

こんな事になっているなら近隣住民が通報してとっくに駆けつけている筈だろうが!!

「あっ」

野乃がいきなり走るのをやめる。

「逃げよう!」

薬師寺が野乃と二人にそう言い、症状を患っている二人の手を引っ張る。

野乃はグラウンドの方をまだ見つめていた。

「おい!!野乃!!」

俺は野乃を呼ぶ。

すると、はっとした表情を浮かべてまた走り出す。

だがしかし、

「はぎゅ~」

昨日のあの声が、俺の鼓膜を震わせた。

間違えない。昨日あの流れ星モドキが見えた時に聞こえた泣き声だ。

俺と野乃はグラウンドを見る。

すると、グラウンドには金髪の赤ん坊が居た。

「は~ぎゅ は~ぎゅ!」

化け物を睨みつけ、地面を叩いている。

まるであの化け物に対して何かを訴えているようだった。

「あぶないで!」

足元に居たハムスターのような生き物が、赤ん坊の足を引っ張りながらそう叫んでいる。

ハムスターのような小動物が喋っている…!?

いや、今はこんな状況だし、気にしたらダメなのだろう。

「ああん?なんか文句あんの?」

いきなり若い男性の声が響く。

今の発言からするに、あの化け物は今の言葉の主によって齎されたものなのだろうか。

そして化け物もその言葉に連動するように、大きく地面を踏んだ。

「危ない!!」

野乃が走り出す。

あのバカッ!!

人間があんなのに敵いっこねぇだろうが!!

「お前が危ねぇぞ!!」

俺の言った通り、化け物の足踏みによって抉れた地面の一部が、あいつのもとに向かって飛んでくる。

俺はジャンプしながら野乃に覆いかぶさる。

しかし、飛び石は俺達のほうへとは飛んで来なかった。

「おい、大丈夫か?おい、野乃!」

俺がそう言うが返事は無い。

野乃はただ地面を見つめて呆けている。

「あぁ…」

しかし、すぐに立ち上がる。

「ありがとう…」

野乃は俺に一言、そう言う。

しかし、今はそんな会話を交わしている状況ではない。

あの赤ん坊を助けねば。赤ん坊はとうとう泣き始めてしまった。

「はぐたん…!!」

どうやらあの赤ん坊の名前ははぐたんと言うようだ。

「フレフレ、わたし…」

野乃は小さくそう呟いた。

そして、操り主であろう男が降りてきた。

「オレちゃん、赤ん坊の泣き声って苦手なんだよね」

苦手?そんな理由で?そんな理由でその化け物に赤ん坊を襲わせたっつーのか?

ふざけんなよ、そんな利己的で自分勝手な行動が許される訳ねぇだろうが。

「苦手?だったらテメェの足りねぇオツムで自分がどうすべきかを判断すりゃあ良いだけだろ」

「ああん?なんだお前?」

「そんなことはどうでもいい。今すぐこの化け物と一緒に消え失せろ」

「はぁ?なんでお前そんな上からなの?状況分かってる?」

状況なんざ嫌って程分かってんだよ。

けど俺にはこうやって文句言うしか出来ねぇんだよ…。

「だんまりか?」

男は挑発するようにそう言う。

そして…

「いけ!」

そう叫んだ。

刹那、化け物が雄叫びを上げながら襲いかかってくる。

「ダメーッ!」

野乃が走りながら赤ん坊達の前に立つ。

すると、化け物は制止した。何故だ、何故襲わなかった?

そんなことなどお構いなしに野乃は庇うようなポーズをとっている。

「お前…」

ハムスターモドキが口を開く。

「どいてー」

男は軽い口調で言った。

「どかない!」

しかし、野乃は一向に動かない。

「どけ!」

口調が強くなる。仕方ねぇ……

俺も野乃の隣に立つ。

「っ!?…土山君…」

「どかねぇよ」

俺が冷たくそう言い放つ。野乃も俺の後に続いて、

「絶対にどかない!!」

と、叫ぶ。

こいつ見かけによらず根性あるのね…。俺なんか今にもチビりそうだって言うのに。

「ウッザ…。潰せ!オシマイダー!!」

また、あの化け物が雄叫びを上げながら襲いかかってくる。

「何してんねん!お前ら、潰されるぞ!!」

「んなことは知ってる」

俺は無機質に言った。

「お前じゃないもん!はなだもん!」

野乃はそう言った。

おいおい、恰好いい事言うなぁ…。まるでアニメの主人公みたいだぞ、野乃。

「ここで逃げたら…かっこ悪い!」

振り返りながらこいつは言う。決意と固い信念が込められた声音だった。

「そんなの…私が成りたい野乃はなじゃない!!」

瞬間、野乃と赤ん坊がピンク色の光に包まれた。

「っ!!まぶしっ!!」

俺は思わず目を塞いでしまう。それほど強力な光だった。

耳から入る音のみで状況を把握する。

ズルズルと巨大な物がズレる音、そして男の怯む声…。

「心があふれる!!」

野乃がそう叫んだ。そしてそのあとに続き赤ん坊は叫び声を上げた。

まるで赤ん坊とは思えないほど、心に響く叫びだった。

「ミライクリスタルが生まれた!!」

この声の主は恐らくハムスターモドキだろう。

ミライクリスタル?なんだかよくわからないが、どうやら何か凄いものをあいつは生み出したようだ。

「はな!お前の気持ち!かましたれーっ!!」

「いっくよー!」

ハムスターモドキの声に野乃は呼応し、そう掛け声を上げる。

そして、野乃と赤ん坊はさらに強力な光に包まれた。

しかし、すぐに光は収まる。

「………………」

俺は静かに、ゆっくりと瞼を開く。

するとそこには、野乃では無いがどこか野乃に似ている女性が立っていた。

「プリキュア…ほんまになりおった…」

どうやら「プリキュア」と言うものになったらしい。

しかし、プリキュアというのは何だ?

「メッチャイケてる!」

今の発言からするに、やはりこの女性は野乃はな本人で間違えないのだろう。

しっかしどういうことだこれ…いきなり「変身っ!」って…スーパーヒーローじゃねぇんだから…。

「新しいプリキュア!?まさか、クリスタルが増えたのか!!」

新しい…ということは他にも、「プリキュア」というのが存在するのか。

だが、野乃が変身しただけでこの怯みよう…もうこれはスーパーヒーローとして捉えて良いようだな。

こんなものが実在するとは。世の中ってのは捨てたもんじゃないのかもな。

「まぁいい、いけ!オシマイダー!!」

男がそう叫ぶ。

すると、化け物は野乃に向かって飛びかかってくる。

このままでは…!

「野乃!避けろ!!」

俺が叫ぶが、あいつはその場をピクリとも動かない。

ダメだ…

そう思った。

しかしなんと、野乃は腕一本で化け物のパンチを防いだのだった。

おいおい…マジかよ?「プリキュア」に変身したら物凄い身体強化までするのか。

俺が考察している間にも、あいつの力はどんどん増していく。

少しずつだが化け物を押している。

だが、化け物も馬鹿ではなかった。もう片方の手で野乃にパンチを放ってきたのだ。

でも野乃は潰されなかった。

それどころか、化け物の腕を掴んで地面へと叩きつけた。

うわぁ…結構痛そうだなぁ…あれ…

「いったれー!キュアエール!!」

ハムスターモドキが声援を送る。

「ぶちかませ!!!」

俺も声援を送る。

相手が怯んで隙を見せている今しかチャンスはない!!

野乃は俺達の声援にこたえるがの如く、手からハート型の砲撃を放った。

化け物はそれに当たると、

「ヤメサセテモライマスゥ」

と、控え目に言って物凄く気持ち悪い声を上げ、昇天していった。

「これは始末書もの…ッ!」

男もそう言い残し、消えてしまった。

一先ず一件落着。と、言う事でいいのか?

いつの間にか暗くなっていた空はまた光を取り戻した。

つまり、脅威は去ったのだろう。

「はぐたん!ハリー!」

野乃は赤ん坊とハムスターモドキの元へ駆け寄る。ハムスターモドキはハリーと言うのか。

だが、心配ご無用。

あいつらはピンピンしていた。

野乃が赤ん坊をだっこしていると、ハリーとやらは

「ミライクリスタルは、アスパワワの結晶。ミライクリスタルからはぐたんにパワーをあげるのはプリキュアにしかできへん、大事なお仕事や」

と言った。

て、ことはやはりこの赤ん坊はただの赤ん坊じゃねぇって事だな。

まぁ、金髪って時点で色々と突っ込みどころ満載だけどね。

そして、野乃は謎のピンクのステッキをはぐたんの口元へとやる。

すると、一瞬ステッキは光を発し、また元に戻った。

どうでもいいがはぐたんって言うだけでも恥ずかしいな…。いや、名前を馬鹿にしてる訳ではないんだよ?

「良かった…」

微笑みながら言う野乃。

「はぐたんにアスパワワを与えても、まだミライクリスタルが光っとる!?こいつの心にはどれだけのアスパワワがあるんや!?これなら…未来を…!」

驚きながらハリーは言う。

「そんなに希少性の高いものなのか?そのアスパワワというのは」

「いや、はぐたんにアスパワワを上げてもまだ残ってるってのが異常なんや…」

「…そうなのか」

それ結局言ってる事変わってませんよね?と、言いたいところだが、きっとコイツからしてもイレギュラーな事態なのだろう。ここは黙っておこう。

「はぐたん!よろしくね!」

「はぎゅ!」

微笑みながらはぐたんを更に強く抱きしめる野乃。

ふぅ…今日は疲れた。早く帰って寝たい。

「あのさ…土山君…」

野乃はいきなり俺に話しかけてくる。

「なんだ?」

「さっきはありがとうね…。土山君があそこで私の隣に立ってくれたから…私は戦えたの」

いや、そいつはきっと少し違う。

「そりゃあお前の思い込みだよ。きっと俺なんかが横に立たなくてもお前はプリキュアになって戦ってたさ」

そうだ。俺なんてなにもしていない。

あの男に生意気言って、敵を挑発して、一人で勝手に終わった気になっている自己完結野郎だ。

「そんなことない!土山君…いや、希無君のおかげだよ!」

「……まぁ、お前がそう思ってるなら、それでいいんじゃねぇか?」

「うん!」

はぁ、全く。こいつは底知れない馬鹿だな。

だが、一番の大馬鹿野郎はこの俺だ。

コイツみたいになんでも素直に受け止めて、希望を持って生きていくのも悪くは無いのだろう。少なくとも今よりはマシだ。

しかし、恐らくあの男はまた俺達の前に現れるだろう。

本当に忌々しい。厄介なことこの上ない。

俺の平穏な日常はどうなってしまうのだろうか。

そんなこんなあり、俺の普通であり普通ではない日常が始まってしまったのだった。




中々に無茶苦茶な所も御座いますが目を瞑っていただけますと幸いです。
誤字脱字ありましたら、ご報告お願い致します。
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