俺には夢も希望もないというのに   作:COOPER

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おはようございます。COOPERです。
一時くらいから四千文字から書き始めて、気づいたら朝になっていました。ビックリビックリ。
やばい…こっちの方が更新頻度高い…!!
まぁ、そんなことは放っておいて第二話、どうぞ。


第二話 彼女は、『委員長』である前に一人の少女だった。

『平和とは、次の戦争までの準備期間である』と、言う言葉がある。

これはアンブローズ・ビアズ著の『悪魔の辞典』に出てくる言葉だ。

この言葉は皮肉でもなんでもなく、真実だと俺は思う。

何故ならば、今の俺がまさにその状況に陥ってるからだ。

小学校の頃はいじめられていて、中学に入って少しは落ち着いて、文句を言いながらも楽しい生活を送っていた。

しかしだ。

俺の後ろに座っているコイツによって、俺の平穏でつまらない日常は全て破壊されてしまったのだ。

『ふざけるな』

この言葉が今の俺の心情を見事に表している。

確かに厭世していたさ。投げ出したくなったさ。

だが俺は投げ出さなかった。つまりは、こんなつまらないものでも楽しい事の一つや二つはあったのだ。

「言いたくても言えない…あぁ~!ヒーローは辛いぜ!」

俺の日常を壊したモンスターである野乃はなは、「辛いぜ!」と言いながら全然辛そうじゃなくそう言った。

「お前…変なとこでボロだすなよ?」

「分かってるってー!」

「本当に分かってんのかよお前…」

心配でしょうがない。

仮に誰かに「私がプリキュアだよ!」と、いってみろ。

からかわれるのは目に見えてるし、下手すりゃ精神病院にぶち込まれかねない。

「あっ、そうだ。ねぇ、薬師寺さん。図書室ってどこかな?」

「案内しようか?」

「えっ、いいの?」

ハナからそれが目的で聞いたんじゃねぇのかよ。

と、自分でも捻くれてるなぁ…と言う事を心の中で毒づいてみる。

「もちろん!」

彼女らがそんな話をしていると、一人の男子生徒がプリントを持ちながら近づいてきたのだった。

「委員長、このプリントさ…」

あぁ、そう言う事か。

自分じゃ出しにくいからって薬師寺に預けて先生に出そうってことか。

別に俺もサボっちまう事があるからあんま人の事言えねぇけど、そういうのってあんまり印象良くないんじゃないのか?

いや、あくまで俺の持論だけどよ。

ま、恐らく何かしらの事情があるんだろうな。不真面目そうな見た目はしていないし。

勝手に色々いってごめんね…と、これまた心の中で謝罪をする。

「先生に提出するのね。あとでクラス日誌を持ってく時に一緒に渡すね」

「サンキュー!委員長!」

「どういたしまして」

薬師寺も薬師寺だな…。こいつは恐らく男を甘やかしてダメにしてしまうタイプの嫁になるだろう。薬師寺の将来の旦那が可哀想だぜ……

俺がそう感想を心の中で述べていると、野乃が口を開く。

「薬師寺さんって、本当に優しいね」

確かに間違っちゃあいないだろう。

しかし、優し過ぎても人生ダメだって事をいつか学ぶ時が来る。…俺は何でこんな偉そうなんだ?いけない、いけない。おい、そこ!だからいじめられてたんだよとか言わない!

「ひなせ君、吹奏楽部で全国大会が近くて、忙しそうだから」

あぁ、そう言う事か。

だが、部活やってる奴って本当に忙しそうだなー。

何が楽しくてあんな必死にやってるんだろう。

ま、誰にでも趣味があるように、溶け込める事があるのだろう。そこに俺がとやかく言う筋合いはない。

「皆から頼りにされてるんだね」

野乃は前のめりになり、自分の鞄に体重を乗せながらそう言った。

「気づいちゃいました~?」

なんだ、と思い薬師寺の方を見ると、この間謎の症状にかかっていた二人が元気そうにはしゃいでいた。

「委員長は誰にでも優しくて、学園の天使と呼ばれているので~す!」

メガネの短髪少女、ギャルっぽい女子がそう言った。

学園の天使って…。

厨二かな?可哀想に。あんまり人に広めずにしとけよ。自分の部屋とかでこっそりコスプレするとかまでにしとけ。

経験者はなんとやらってやつだ。お、俺じゃないよ!?

「おまけに、学年で成績一番!」

俺がいつも二位の理由が今、分かった。

こいつ…頭良くて見た目も良くて人として出来てるって…どこのチート人間ですか?

俺にもそうなれるコード教えてくれませんかね?

俺が心の中でふざけていても、彼女らの会話は進んでいく。いや、当たり前だけどさ。

「そのうえ、かっわいいー!」

二人は何故か自分の事のように盛り上がっている。

「薬師寺…お前凄いんだな…」

「私…そんな…」

顔が真っ赤で茹でダコみたいになる薬師寺。そんなに天使呼ばわりが嫌だったのか?

「じゃあ、行こうか!」

野乃は一気に立ち上がり、そう言った。

「うん」

薬師寺も返事をし、立ち上がる。

「ほら、希無君も!」

「……は?」

いやいや待て、何で俺が?

「え?こないの?」

「いや、そもそもどこで俺が行く事になった?」

「……ノリ?」

「いやノリで決まっちゃうのかよ」

「いいでしょ!行くのー!」

「はぁ、はいはい」

御覧の通りだ。俺の平穏な日常は何処へ行ったのやら。

そんなこんなで教室を出て、俺達は約束の地、図書館へと向かっていた。

おっと、厨二病がぶり返してって、あぶねぇ、あぶねぇ。うっかり認めちまうところだった。

「図書館で調べ物?私も用事があるから丁度良かった」

薬師寺は歩きながら、そう野乃に言った。

あの…俺調べる事もないんで帰りたいんですが…

「はぁ~…」

何故か野乃は薬師寺を見つめている。

「えっ、何?」

驚いた薬師寺は野乃に問う。

「確かに可愛い…でしょ?」

おいおい、そこで俺に振ってくんのかよ。

「いや、確かに顔は整ってるし、頭もいい。非の打ちどころが無いような完璧人間だな」

て言うかお前も顔は整ってる方だろうが。

この場で唯一顔が整っていない俺へ対する嫌みかな?

「褒めないで、私…そんな………あ、ここだよ」

タイミングが良すぎるくらいに図書館に着いた。

「ありがとう」

野乃は感謝の言葉を言う。

「どうも」

俺も一応言っておく。

いやぁ、さすがにここで礼を言わなかったらとんだクソ野郎だな。って思う訳じゃん?

そして、結局調べ物ってのも数十分で終り、俺達ははぐたんとハリーが居る公園へと向かったのだった。

「は~ぐ~た~ん!」

野乃は公園に着き、はぐたんを見つけるとそう叫びながら走っていった。

おいおい、恥ずかしいからやめろってマジで…。お前は周りの視線とかを気にしないのかよ。

「お待たせ!」

と、言い抱きつく。

「あいぁ!」

はぐたんもそれに応える。

「ていうかここは?」

疑問を口にしたのは野乃だった。

すると、ハリーは胸を張って、

「フッフ~ここはな、オレらの家や!」

そう言った。

は?これが家?え、てことはお前ら俗に言うホームレスってやつなの?

可哀想に。だがすまない。俺ん家は多分無理だぞ。いやほんとごめんマジごめん。

「家?」

さすがの野乃でも理解が追いついていないらしい。

あ、野乃はいつも理解が追いついてないか。遅過ぎて周回遅れにされてたね!

…今日の俺はどうしたんだ?毒づいてばっかりだぞ……

「はな、ミライクリスタル出し」

「うーん、ネズミなのに偉そう」

「同感だ」

すると、ハリーはプンスカと怒ってくる。

「ネズミちゃう言うてるやろ!ハリハム・ハリーや!」

今さらそんな事はどうでもいいと言いたかったが、そんな言葉が喉に引っかかる程、奇想天外な事が俺の目の前で起きた。

ハリーがバケットの中から何かを放り投げると、それは変形して大きな家となったのだ。

「ええ~!?」

「ハッハッハ!!ミライクリスタルがあったら、こんなこともできるんや!」

驚愕する野乃にドヤ顔をかますハリー。

「ご都合主義かよ…」

俺は小さく呟いた。

しかし便利そうだなコレ。ドラゴンボールのポイポイカプセル?だっけか。それと似たようなもんなのか。

「すごい…!」

「驚くのはまだ早いで?」

まだ何かあるの?ハリーは見世物小屋の主にでも転職したのかな?

俺がそう思っていると、ハリーはいきなり大声で、

「ハリー、イケメンチェーンジッ!」

と、言った。

すると、ハリーは煙に包まれた。

しばらくして煙が消えると、そこにはイケメンが立っていた。

なんだコイツ、死ねばいいのに。いや、率直に。控え目に言って爆ぜろ。

「どや?」

またドヤ顔をかますハリー。

「はぁ…なんか驚き疲れたよ」

野乃は少し呆れたように言った。

「死ね」

俺は心で思っている事を言う。

「二人ともひどないか!?」

俺達がそんな下らないやり取りをしていると、

「ひっ、ひっ、え~ん!」

はぐたんが泣き始めてしまった。

「これは…おむつやな。早よ、あの中へ」

ハリー言われた通り、小屋の中へと移動した俺ら。

そして野乃がおむつ交換をする。

「えっと…これをこうして、ここをとめると…?」

おむつ交換が終わると、はぐたんは嬉しそうに声を出した。

そして野乃は、

「よかった…」

安堵したのか、息と共にそんな言葉を漏らした。

「やっぱりおむつやったな」

ハリーは言う。

しかし赤ん坊の便って中々に独特な臭いだな…。

ある程度成長している人間のソレとは全く違う。

「「イェイ!!」」

俺がそんな感想を(勿論心の中で)述べていると、二人が親指を立ててそんな事をしていた。

すると、野乃とハリーはこう言った。

「あれ?希無君は?」

「そうや、オレ達でやったんやろが」

いや、俺完璧に何もしていないんですが…。

「俺何もしてねぇじゃねぇか」

「いいから!」

全く。なんでそうなる。

「イ、イェイ……」

俺は蚊が鳴くような声でそう言ったのだった。

そして場面は変わり、今俺達はあの小屋のリビングと思われる場所に居る。

「ねぇ、ハリー質問。あの怪物はなんなの?」

ナイス質問だ野乃。俺もそれについて聞こうと思っていた。

いや、実際マジで何なの?いくら検索かけても出て来なかったんだが。

「あれはオシマイダー。クライアス社が生み出した化けもんや」

クライアス社?なんだそりゃ。あれか、悪の企業的なやつか。そんなもんが実在するとは。まぁ、俺の中の悪の企業っつったら、定時で帰れない。休憩時間が一時間以内。有給が取れない。上司からの嫌みが絶えないetc…言いだしたらキリが無いが、そんなことはどうでもいい。俺が下らん事を考えている内にも会話は進んでいく。

「クライアス社?」

疑問を口にしたのは野乃だった。

「そうや。オレらの世界を目茶苦茶にした悪もんや。ヤツらはミライクリスタルをねろうてる」

「ミライクリスタル?結局それはなんなんだ」

今度は俺が疑問を口にする。

「ミライクリスタルちゅうのはな、皆の元気パワー…明日への希望のパワーがアスパワワ。その結晶がミライクリスタルなんや」

成る程。要するにアスパワワと言う生気の具現化したものみたいなやつの結晶と言う訳か。

たしかにそんなものが世界から消えたら、世界はおしまいってなるわな。

「それが奪われたら…世界から未来が無くなる」

「未来が無くなる…!?」

野乃は驚愕しながらそう言った。しかし、

「って、どういう事?」

はぁ、野乃って実は賢いんじゃねぇか?と、思った俺がアホすぎた。やっぱりこいつは天性のバカだ。

「簡単に言えば時間が止まっちまう…って解釈でいいのか?」

俺は自分の仮説に自信が無かったため、ハリーに確認をとる。

「その通りや」

「つまり…どういう事?」

こいつはコレでも理解できないのか…

もう呆れを通りこしてちょっとしたいらつきまで覚えるレベルだぞ。

それはハリーも同じだったようで、

「誕生日もクリスマスもお正月も来いひんちゅうこっちゃ!!」

声を荒げてそう言った。

別に俺からしたら痛くも痒くもないんですがねぇ…

もしかしてこんな性格だからアスパワワとやらを吸われなかったのかな?

それはそれで悲しいような…

「えっ!?めちょっく!!」

野乃は驚きながら、絶対広辞苑に乗っていない様な単語を言った。

いや、めちょっくってマジでなんだよ…

「そして、はぐたんも大きなられへんのや」

ちょっとお茶らけた雰囲気になっていたのが、ハリーの一言により一気にシリアスになった。

「プリキュアなら、皆の未来を守れる」

ハリーは野乃を見つめて言った。

だからこいつらは街を放浪していたのか?プリキュア候補を探すために。

一瞬『魔法少女まどか☆マギカ』を思い浮かべてしまった俺を誰が責めよう。

いや、仕方ないじゃん?あのヘンテコ生物しか頭に浮かんでこなかったんだもん。

「そっか…あたし、頑張る!」

野乃は決意を固めたようで、張り切りながらそう言った。

「プリハートはあと3つある。まずは一緒に戦ってくれる仲間探しやな」

やはりそうなるか。

多勢に無勢。仲間は多い方が絶対良い。数の暴力には敵わない。

しかし、野乃は唸っている。

「何や?」

ハリーは不思議そうに問う。

「プリキュアは私一人でやる!」

……はい?このお穣さん今なんて言った?

ワタシヒトリデヤル?いやいや、何を言っているんだお前は。

ハリーは驚きのあまり、ハムスターモドキの恰好に戻ってしまった。

「何やて!?」

いや、ほんとそうだよ。

「はぐたんは私が守る!それに、一人の方が恰好良いじゃん?目立つ!」

「ええ~!?!?!?」

もうどこにツッコんで良いのやら。

「プリキュアは負けない!安心して?」

「不安しか見えへん…」

「ハリーに一票だ。マジで不安しか見えねぇぞ……」

「大丈夫大丈夫!」

それが大丈夫じゃないんだよなぁ…

そんなこんなあり、決意を固めて一人でプリキュアをやろうとする野乃はなであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。

それは学生にとって唯一の自由時間であり、俺達を束縛するのは学校のうるさい校則だけだ。

なんとすばらしい時間なのだろう。しかし、自由と言うのにも必ず制限がある。放課後の場合なら校則、休み時間の場合は時間。結局のところ完璧な自由などこの世の中には無いのだろう。なんと嘆かわしい事か。

だが、完全に束縛されているよりは何百倍もマシだ。

…………おかしい。

何がおかしいって、俺は授業を全て終えて放課後を過ごしている筈だ。

しかし、ちっとも自由ではない。

現在場所は図書館。目の前には野乃と薬師寺。

あれー?おっかしいなー?なんで俺はまたコイツらと居るんだー?

答えは単純だ。

「また一緒に図書館行こう!」

野乃の悪魔の一言が全ての元凶だ。

はぁ…そんでまぁ、今は図書館で珍しくライトノベルではなくマンガを読んでいる。

ヤングマガジンで連載している『MF GHOST』というマンガだ。

うん。面白い。しっかし、しげの秀一さんのマンガだからか主人公やっぱり86なのね。

いや、別に俺86嫌いじゃないけどさぁ…ボクサーエンジンってのがねぇ…?

おっと、話が脱線した。クルマの事なんぞ今はどうでもいいか。

「う~ん…」

薬師寺がシャーペンを顎に当てて唸っている。何か考えているようだ。

それにしても様になっているな。メガネが似合う美人だからか。

「何書いてるの?」

野乃が聞く。

「ひゃあ!!」

驚いて思わず変な声をあげてしまう薬師寺。

えぇ…驚き過ぎじゃない?

「学級新聞を…」

「へぇ~」

どうやら学級新聞を執筆していたようだ。

学級委員長ってそんな事もしなくちゃいけないの!?可哀想に…

「毎月作ってるんだけど、中々興味を持ってもらえなくて」

そいつは辛いな…。頑張ってやっている事を評価されない。

死ぬほどストレスが溜まるだろうし、ネガティブになって鬱になりそうだ。

それでもめげずにやっているなんてすごいんだな。尊敬するわ。いや、マジでね。

「う~む」

野乃はその言葉を聞くと唸った。

「プリキュアの事でも書こうかな!」

どうやら案が降りてきたようだ。

しかし、薬師寺がそう言った瞬間、野乃の目の色が変わった。

「めっちゃ良いと思う!超イケてると思う!どんどん書こう!プリキュア!」

野乃は腕を振り回してそう言っている。

おい、図書館でそんなに騒いだら…

「そこ!静かに!」

それ見た事か。図書館担当の先生から怒号が飛んできた。

「すみません…」

いわんこっちゃない…骨は拾ってやる(二回目)

野乃が落ち込んでいると、薬師寺が急に口を開く。

「野乃さんって…マウンテンブルーバードに似てる…」

「はっ?」

何か分からない野乃。

マウンテンブルーバード…確か和名でムジルリツグミとか言ったか?

日本に生息してなくて、主に北アメリカ大陸に住んでいる鳥で、どっかの州の州鳥だった気がしたが…

俺も数年前になんかのテレビで見た事あるくらいだから詳しい事は分からんが。

それにしても、そんなマイナーな鳥よく知ってるな。

「マウンテンブルーバードは、スズメ目ツグミ科鳥で…」

言いながらノーパソでググる薬師寺。

「あった!これ!」

「あっ!!」

野乃はその場で驚いていた。

「ねっ?」

やばい、噴き出しそうだ。面白過ぎる…もしかして狙ってるのか?

「似てる…?」

イマイチピンと来ないようだ。

「可愛くて、そっくり!」

「あ、ありがとう!」

野乃は頭を掻きながらそう言った。

お前嫌なのか良いのかはっきりしろよ…

「土山君はね…ハシビロコウに似てる!」

それ絶対褒めてないよね?狙ってるよね?

「それは知ってる!『けものフレンズ』ってアニメで見た!」

どうやら野乃もご存じの様だ。

「お前ら鬼畜かよ…」

俺は呟く…

いや、マジでこいつ鬼畜だわ…恐ろしい。

「え?ハシビロコウって凛々しい顔してて恰好いいと思うけれど…」

薬師寺が言った。

えぇ…あれは単に目つき悪いだけだろ…

いや、確かに俺目つき悪いってよく言われるけどさ。

「パソコン、得意なんだね!」

野乃はいきなり話の方向を180度回転させる。

確かに。調べるスピードすげぇ速かったな。

「知らない事を調べて考えて、分かるのが楽しいから」

「そういうの、新聞に書いたら?」

ナイスアイデアだ、野乃。

委員長はもう少し誰かに評価されたって罰は当たらないと思うが。

しかし、

「えっ?ダメだよ。皆興味無いと思うし」

「えぇ~?私読みたい~?」

「……俺もだ」

うん。普通に読みたい。

て言うか今まで学級新聞の存在を知らなかったし…これからは毎月読んでみよう。

「えっ、そう?」

薬師寺は驚きと喜びの籠った声音でそう言った。

「書いて書いて!」

野乃はまたはしゃぎながら言った。

だからさ…と、思ったのだが、丁度図書館担当の教師は席を外していた。

「じゃあ、書いてみようかな」

「ねぇ、もしプリキュアの事を書くなら、イラスト書いていい?」

「うん。いいけど…」

「やったぁ!」

良かったな野乃。

働け働け。…おっと、いけない。いつの間にか負のオーラを醸し出していた。いつもは出して無いからね!?

「あのさ、土山君」

俺が脳内コントをやっていると、薬師寺に声を掛けられる。

「なんだ?」

「よかったらさ…コラムの欄…書いてくれない?」

え?なんで俺…?

「えぇ…俺大した文書けないぞ?」

うん。またクソ下らない反社会的文を書きあげてしまうまである。

いや、俺も狙って書いている訳ではないんだいよ?たださ、表現したい事を書いたらそうなってしまうだけで…べ、別に良いだろ!?現日本では表現の自由が認められている訳だし。…はぁ、俺は一体誰に話しかけているのだろう。

「でも確か国語得意だったよね…?」

おい待て、何故お前がそれを知っている。俺誰にもテストの結果見せてないはず…

「いや、なんで知ってるんだよ…」

「私国語はいっつも二位で。先生に誰が一位なのか聞いたの」

あんのクソ教師…プライバシーの侵害じゃねぇか…

俺訴えたら勝てるよね?勝てるよね!?

「…分かったよ。文句言わずにやるよ」

「ありがとう」

「おう」

君は…私を脅しているのかね?と、言いそうになってしまった。

そして特に何もなく数十分後…。俺達は互いの役割を全て終わらせていた。

「できた~!」

どうやら野乃のイラストが終わったようだ。

「すっごい!上手!」

薬師寺が褒める。

うん。凄いな、野乃。

「お疲れさん」

「ありがとう!新聞楽しみ~」

「うん、頑張る!」

そんなこんなあり、俺と野乃は薬師寺に別れを告げハリー達の元へと向かったのだった。

しかしこれもまた特に何もなく、ハリー達の家に着いたのだった。

そして野乃とハリー、はぐたんは疲労からか、壁によしかかって寝てしまった。

俺?俺は椅子に腰かけて本を読みながら缶コーヒーを飲んでいる。

ポケットの中に偶然小銭が入っていたので買う事が出来た。ラッキー。

そして本を机の上へと戻す。

その時だった。

野乃がいきなり目を覚ましたのだった。

「あっ…何?今の夢…」

「ん?どうした?」

俺はそう聞いた。

しかし、それははぐたんの大きな泣き声によって妨げられてしまった。

「はぎゅ~!!はぎゅ~!!」

「ごめんねはぐたん!寝ちゃってた!」

野乃は慌てて立ち上がる。

「よしよーし!」

「何泣かしとるんや!」

呆れたように言うハリー。いやいや、アンタだって爆睡してたじゃねぇか…

「お願い!泣きやんで!はぐたんは良い子でしょ~?」

いやいや、赤ん坊に言葉なんて分かる訳無いじゃねぇか…

参った。俺はどうすれば…

その瞬間、家のドアが開かれた。

俺は敵かと思い、ドアの方向を思い切り睨みつける。

しかし、俺の予想は見事に外れたようだった。

「野乃さん…と土山君?」

「ええ!?なんで!?」

俺が聞きてぇよ、そんな事!

「取り敢えず上がったらどうだ?」

俺は薬師寺に言う。

「え?ありがとう」

人の家なのに勝手に言っちまってごめんなハリー…

しかし、ハリーも事情を察したのか、特に責めてはこなかった。

「そうだ!よければ抱っこしてみる?」

「え?う、うん…」

いきなりだなぁ、おい。

野乃は早速薬師寺にはぐたんを渡した。

「こんにちは…えっと…」

「はぐたんって言うの」

「はぐたん!」

なん…だと…!?

はぐたんと言うキラキラネームを耳にしても一向に冷静だと…!?

薬師寺…恐ろしい娘…!!

「おお、すっごいニコニコだ」

どうやらはぐたんは薬師寺を気に入ったようだ。

良かったな。まぁ、厄介な事にならないように祈っといてやる。

「ええ感じの子やん。かわいいし」

うん。何がええ感じなのかさっぱりわからないけど一応肯定しておく。

可愛いのは事実だしね!!

俺今日キャラ崩壊ハンパ無いな…

「私だって!は~ぐた~ん!」

野乃は走ってはぐたんと薬師寺の方へといく。

そして薬師寺からはぐたんを渡されだっこするも…

「は~ぎゅ~!!!」

今までよりも大きく泣いてしまった。

えぇ…お前プリキュアじゃねぇのかよ……

「なんでぇ?」

当の本人も何でなのか分かっていないようだ。

すると、薬師寺が何かに気付いたのか、

「もしかしてミルク?」

と、言った。

すると、ハリーも反応し、

「あっ、あかん!なんとかせんと…よっと!」

と言った。

お前隠れてたんじゃなかったのかよ…

「えっ!?誰!?ミルク!?」

ほら気付かれちゃったじゃん…

しかし、薬師寺がハリーの方を見る時には既に隠れており、ミルクのみが彼女の視界に入る。

「ネズミグッジョブ」

野乃が小さく呟いた。いや、それおもいっきり聞こえてるでしょ…

「ネズミ!?」

「あぁ~いやいや、なんでもないよ。だけど作り方分からないね」

野乃がそう言うと、薬師寺は目の色を変え、ノーパソを準備した。

思わず接続詞の使い方間違ってるぞ…とツッコミそうになったが、今は状況が状況だ。

はぐたんにミルクをやることが最優先だろう。

「分からない時は、調べよう!」

うわー、いんたーねっとってべんりだなー。

薬師寺は一通り調べると、哺乳瓶を熱湯消毒させ、お湯でミルクを作りだした。

「あの…はぐたんの事、驚かないの?てか、何でここに?」

確かにそれが一番の疑問だろう。え、実は敵とかやめてよね?

「前に…不思議な事があってね。空から赤ちゃんの声が聞こえたの」

なっ!?……するとやはり、あの時屋上に居た三人はあの声が聞こえて集まった。と言う事なのだろうか。取り敢えず普段から屋上に居る輝木は今は置いておいて。

薬師寺はその後も話を続ける。

「信じてもらえないかもしれないけど」

そこからは突拍子もない話だった。

野乃が転校してきた日、どうやら薬師寺にもあの泣き声が聞こえたらしい。

しかし、ここからが俺とは違う。

聞こえた瞬間、時が止まったと言うのだ。

おいおい、まじかよ…DIO様かな?っと、ふざけてる場合じゃねぇ。

「時間が止まった…?」

普通に考えて、さっきハリーが言ってた「未来が無くなる」とやらの予兆かもしれんな。

しかし、真相は定かではないだろう。

「うん」

野乃は何か思い当たる事があったようで、驚いた表情を浮かべると同時に瞳孔が開いた。

…どうやらこいつも同じ経験をしたらしい。

しかし、俺はしていない。これには何の関係性があるのだろうか。

「良く分からないけど、赤ちゃんの泣き声の方へと向かうと、いつも野乃さんに会うの」

「そっか。あの時も」

するといきなり薬師寺は話の話題を変えた。

「よし、できた!」

どうやらミルクが完成したらしく、薬師寺は嬉しそうにそう言った。

そしてリビングに戻り、薬師寺ははぐたんにミルクを飲ませる。

「絵になる…さすが天使」

「天使?…俺からしたら今の薬師寺は聖母マリアに見えるが」

「…誰それ?」

「キリストの母ちゃんだよ」

「へぇ~」

俺たちが下らない会話をしていると、隅っこでハリーが呟く。

「この子や!こういう子がプリキュアにええんや!頭もいいし優しいし可愛いし…」

「ぐぬぬ…」

そこでそう言うのは薬師寺より劣っていると言う自覚がある証拠じゃないですかね…野乃さん…

「薬師寺さんは凄いよ。色々丁寧だし、賢いし…私には出来ないや」

すると、薬師寺はゆっくりとした声音でこう返した。

「私に出来ない事が、貴女には出来ます。貴女に出来ない事が、私には出来ます。力を合わせれば、素晴らしい事がきっと出来るでしょう」

マザー・テレサか。

One for all all for oneの精神の原点と言っても過言ではない思想だな。

「力を合わせれば…?」

野乃はそう復唱した。

「マザー・テレサの言葉だよ」

俺がそう教える。

すると、薬師寺は目を見開いて、

「よく知ってるね…?」

と、言った。

「まぁな。一般的な中学生よりは社会や歴史についての関心はある方だと思うし、何より有名な言葉だからな」

うん。超有名と言っても良いくらいの知名度だろう。

「私ね、マザー・テレサを尊敬しているの。そしてね…私、この言葉がとても好き。野乃さんは自由な発想があって、なりたい自分の未来があって…私よりずっと凄いよ」

「私には…なにもないから」

こいつは何を言ってんだ?立派なもんがあるじゃねぇか。

俺は本人に教えようとしたが、どうやら野乃がそれを教えるらしく、黙っている事にした。

「みんなに優しく出来るじゃない」

その通り。十分立派な事だと思うが。

「それくらいしか出来ないの…野乃さんみたいに勇気がない」

勇気…ねぇ。

「薬師寺さん…いや、うーん…」

「委員長でいいよ」

そう薬師寺が返すと、野乃は少し強い口調で

「委員長と話してるんじゃないもん!さあやちゃんと話してるの」

と、言った。よく言ったぞ、ナイスだ。

薬師寺は皆から委員長として認識され、接せられていた。

それ故に、一人の少女である『薬師寺さあや』として接する者はいなかった。

難しい話だ。現代社会はすべて役割で人間を認識してしまう悪しき風習がある。

だからこそ、人間は一人ひとり接していかなければならないのだろう。少なくとも俺はそう思う。

「さあやちゃん、勇気あるよ!」

「えっ?」

「だって、誰かに優しくするって、すっごく勇気がいる事だもん!」

その通りだ。優しくすると言う事は相手に隙や弱さを見せると言う事。

安易に出来る行為ではない。

「でも…私…」

まーだそんなこと言ってんのか。いいか?野乃は褒めてるんだぞ?

「褒められたら『ありがとう』だよ?」

「褒められたら『ありがとう』だろ?」

俺と野乃の発言が被った。

その通りだ。

褒められたら「ありがとう」

間違えたなら「ごめんなさい」

人に会ったら「こんにちは」

こいつは基本的な会話のキャッチボールをするためのボールだろ?

「未来は無限大!!なんでもできる!なんでもなれる!フレフレさあやちゃん!」

薬師寺も少しは野乃の明るさを見習ったらどうだろうか。

いや、ここまで明るかったらウザいのが増えるだけだな…

やっぱりならなくていいです。ごめんなさい。

そして互いに笑いあう。

「完璧や!」

ハリーが隅でそう言った。ならば話は決まりだろう。

薬師寺をプリキュアにスカウトする。

話を切り出したのは…

「さあやちゃん、お願いがあるんだ…」

野乃だった。

「あのね…私と…!!」

あと少し…と言う所だった。突然の地揺れが俺達を襲う。

「なんだ!?」

しかし、揺れはすぐに収まる。どうやら地震ではないようだ。

ならば…

俺らは急いで住宅街へと駆ける。

すると、やはりだ。オシマイダーが暴れていた。

俺達が呆気て見ていると、はぐたんが急に泣き始めた。

「ハリー!どういう事だ!?」

「あかん!アスパワワがどんどん無くなっとる!!」

「えっ!?喋って…」

薬師寺が驚いているのなどお構いなしに、ハリーは野乃と話す。

「はな!」

「うん!はぐたんは私が守る!」

野乃はそう言うと、駆けだす。

「ダメ!危ないよ!」

野乃を普通の一般人だと思っている薬師寺は、野乃を止めようとする。

それを俺が制止した。

「大丈夫だ」

俺はそういう。そして野乃は俺の後の言葉を紡ぐように言った。

「さあやちゃん!私…プリキュアなんだ!!」

そう言うと、またオシマイダーの方へ向きなおし、プリキュアに変身した野乃。

「戦闘の前にコイツをつけろ!!!」

俺は野乃に向かってBluetoothイヤホンを投げた。

「耳に付けてろ!会話が出来る!」

俺はそれだけを言った。

すると、野乃も理解したらしく、

「分かった!ありがとう!」

と言って耳にイヤホンをはめた。

これで俺が客観的に戦闘を観察し、相手の弱点を教える事が出来るだろう。

いやー、でも高かったな。まさか貯金の三割くらいが飛んでいくとは。

ま、今はそんなことはどうでもいい。

「来たな!!プリキュア!!ミライクリスタルを奪え!!オシマイダー!!」

例の男がまた現れ、怪物に指示を出す。

怪物は野乃めがけてパンチをかます。が、野乃はそれを華麗に避ける。

「あなた達に未来はわたさない!」

今度は野乃のターンだ。怪物にパンチを炸裂させる。

…筈だった。

「野乃!あいつは腕が伸びるぞ!!」

しかし、時すでに遅し。

野乃はバランスを崩し転びそうになった。危ない危ない。

「いくら強くてもあたらなきゃ意味ないじゃ~ん」

クソ、一撃離脱戦法か。小癪な。

そう思っている間にも戦闘は続く。

「オシマイダー!!」

「野乃!上だ!なんとか持ちこたえろ!!」

怪物の肘の部分が野乃の頭上めがけて落下してくる。

しかし、そんな攻撃でやられるほどプリキュアってのはヤワじゃあない。

「未来を……守る…ッ!!」

野乃は攻撃を両手で受け止め、怪物の腕をジリジリと押し上げていた。

すると突然。

「なんでもできる…なんでもなれる…!!」

薬師寺がそう呟くと、彼女の体から青色の光があふれだす。

これはまさか…!?

「心が、あふれる!!」

あの時の野乃と同じ台詞。

どうやら生まれるようだ。新しいプリキュアが。

すると、光が消え、代わりに宝石のような石が薬師寺の手の中にあった。

「ミライクリスタルが生まれたんや!!プリキュアになるんや!!」

ハリーが叫んだ。

「私がプリキュアに…!?私に…そんなことできるのかな…。ううん、できるよね。私の中にも、きっと勇気が…!!」

どうやら戦っている野乃の姿が薬師寺の心を動かしたらしい。

覚悟はできたようだ。

そして薬師寺は変身する。またしても光に包まれる。

光が消えると………水色の髪色をした、プリキュアになった薬師寺がいた。

「変身できた!?」

余程信じられないのか、驚きの声を漏らす薬師寺。

「プリキュアが増えた…?ふっざけんな!!!いけ!オシマイダー!!」

男は興奮気味にそう言った。オシマイダーは男の指示に答え、鉄骨を持った。

確かに興奮するのも分かる。前回倒せなかったプリキュアが二人になったんだからな!

しかし、男の指示も虚しく、前に野乃が放ったハート型の光線を今度は薬師寺が放つ。

それはオシマイダーが投げようとしていた鉄骨に当たり、なんとか攻撃は免れた。

「キュアエール!!」

薬師寺が野乃の元へと駆けよる。

「ありがとう!」

野乃が礼を言うと、薬師寺は冷静に状況を分析して作戦を提示する。

「クレーンは重心が重いから、足元を狙えばバランスを崩すわ」

「へぇ…」

流石学年一位。よく状況を分析している上に、弱点まで見抜くとは。

「距離を取ればお前らの攻撃は届かない!!」

男がそう吠える。

確かに正論だ。だがな、こいつらはもう世の中の法則や定理なんぞとっくの昔に消し飛んでるヤツらなんだよ!!

オシマイダーが距離を置き、腕を伸ばして攻撃してくる。

そういや薬師寺はイヤホンをしてねぇ!しょうがない!叫ぶか!

「薬師寺!!!!さっきの砲撃で防げ!!!」

「分かった!!」

薬師寺に俺の声が届いたらしく、先程の砲撃で攻撃を跳ね返す。

「今だ!!野乃!!鉄骨をオシマイダーの足元に喰らわしてやれ!!」

「うん!!」

野乃は答えると、鉄骨を持ち上げオシマイダーの足元めがけて投げる。

結果は見事命中。オシマイダーはバランスを崩して仰向けに地べたへと倒れ込んだ。

「いけ!!前回のハート型砲撃を喰らわしてやれええええええ!!!!」

「勿論!!!!」

野乃は返すと、俺の言った砲撃を放った。

するとこれまた前回同様、オシマイダーは「ヤメサセテモライマスゥ」と、やっぱり気持ち悪い事この上ない声を上げて昇天して行った。

これにて、一件落着。

オシマイダーが消え去り、現場には俺達三人が残る。

「一人じゃできない事も…二人、いや、三人ならできる!」

「うん!」

「ああ」

なんか俺まで入れられてる…いや、嬉しいけどさ?

「さっきのお願いの続き!さあやちゃん!私と一緒にプリキュアやろう?」

野乃は言った。

恐らく答えは決まっているだろう。

「うん!よろしくね、はなちゃん!!希無君!!!」

そうして心強い仲間が増えたとさ。

あと…友達も。




いや~長かったですねw
まさかの一万三千文字越え…自分でも驚いておりますw
次回からもお見苦しい点が多々あると思いますが、よろしくお願い致します。

誤字脱字ありましたらご報告よろしくお願いします。
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