実は年度末で色々と忙しく全く手をつけてませんでした。すみません…
UA2300突破、お気に入り18突破!まことにありがとうございます!これからも頑張って書いていきますのでよろしくお願い申し上げます!
では、早速どうぞ。
突然だが、今俺は目の前の建物に驚愕している。
何故か…それはまぁ、ハリーのセンスが常人に比べて奇抜すぎるからに他ならない。
横浜中華街を彷彿とさせる入り口。映画『ハムナプトラ』の二作目に出てきそうな金の像。
そして趣味の悪い鯉の絨毯にトラの顔面のクッションが置いてあるソファー。
うん。驚愕を通り越して軽く引くレベル。どうしてこうなった…
「と言う訳で!もうすぐお店オープン何だけど…何かが違うと思うんだ!力を貸して~!」
薬師寺と野乃は顔の前で手を合わせ、祈るようにして輝木に懇願する。
どうでもいいけどあざとい。て言うか何かじゃなくて全てが違うだろ…
「うーん…どんなお店にしたいの?」
そう言われて困惑し、店のテーマを問う輝木。
確かに重要だな。方向性が違うものばかり置いてある店なんて見るに堪えない。
しかし、二人は目を見開くと固まった。
えぇ…。決めてないのかよ…
俺が呆れていると、この店のオーナーであるハリーが服を持ちながら語り始めた。
「そらぁ、ぎょうさんお客さんが来る店にしたいがなぁ~。お子様から、マダ~ムまで!ビューティーハリーが…お洒落にまとめまっせ!!」
「だったらお店のイメージズレてると思う」
輝木は間髪いれずに意見を言った。
うわぁ…辛辣だなぁ…。しかしまぁ、適切な意見ではある。
すると、ハリーは驚愕して驚きの表情を浮かべた。
「なんやて!?」
寧ろお前は今のままで客が来ると思ってたのかよ…。どう考えてもセレブまがいのアホしか来なさそうだぞ…
「めっちゃセレブ感出してんのに~!なんでや!?」
「変にアピールしすぎなんだよ。統一性を出せ統一性を」
今度は俺が意見を言う。
いやだって仕方ないじゃん?このままじゃあ埒が明かないだろうし。
「えぇ…」
眉をハノ字にしてハリーは困った表情をした。
するといきなり輝木が口を開く。
「う~ん…例えば」
そう言うと、パッパと手際よく店の物を変えていく。
そしてあっという間に新しい内装と外装が完成した。
「こんな感じはどうかな?」
「わぁ~可愛い~!親しみやすいに、気軽に入れそう!」
その言葉の通り、カフェスペース等も存在するので軽い気持ちで入れそうだ。
俺は周囲を見渡す。すると、赤くて四角いソファーでくつろぐ野乃を見つけた。
て言うかあのソファーってこんな感じだったのね。
「はぁ~くつろぐ~」
「お前はなんでくつろいでんだよ……」
俺がそうツッコむ。
まぁ平和で良い事なんだろうけどね。うん。
するといきなり、輝木がスマホを取り出してこう言った。
「ねぇ、お店の写真キュアスタに上げてもいい?」
キュアスタ…最近流行ってるSNSか。
うーん…スマホは持ってるけど入れてねぇな。あ、そもそもアプリYouTubeとニコニコとバンドリしか入ってなかったわ。友達いないからツイッターとかLINE使わないんだよなぁ…
しかし、最近キュアスタは問題になってなかったか?なんかクレープ屋だかなんだかでスイーツと自分の写真をとってはゴミ箱に食べ物を捨てる輩が多いとかで。なんで捨てちゃうんだよ…金持ちアピール?
「是非~!」
二人の声が一気に俺を現実に引き戻す。
「それじゃあっと…」
そんでまぁ、輝木はパシャパシャっと写真を撮っていく。
マジで最近のスマホって何でも出来るな…いや、俺のスマホも写真位は撮れるよ?
「わぁ~!良い感じ。キュアスタ流行ってるよね」
薬師寺が口を開いた。
え?お前もやってたりするの?
「お~おしゃれ~」
「これ宣伝になるね!」
「お客さん、沢山来るといいなぁ~」
野乃と薬師寺が交互に話す。
いやぁ、世の中そう簡単にはいかねぇんじゃねぇの…?
……と、思っていた時期が僕にもありました。
あれから十数分。今、ハリーの店は大盛況だ。
先程輝木がキュアスタに写真をアップロードしてからお客がどんどん来始めた。
輝木凄すぎだろ…。偉大なり。
「すっごい宣伝力!」
「キュアスタ…すっごーい!」
薬師寺と野乃が感想を言う。
野乃…お前は何処ぞのサーバルちゃんかよ…
「うっはっはっは!!!大繁盛や!!」
ハリーは嬉しそうにレジを叩き、そんな事を言う。
いやよかったな。楽に金儲けできて。将来は俺も雇って下さいお願いします。
しかし、良い事ばかりではない。
「けど大混雑や~!!」
野乃が困り果てた表情で、人混みに揉まれながらそう言ったのだった。
いやちょっとマジでこれは洒落にならないレベル。人多すぎて一カ月くらい人に会いたくなくなるレベル。
するとはぐたんが泣き始めた。無理もなかろう。こんなに人が多ければ赤ん坊はパニックに陥るに違いない。
「はな~?そんな時はこれや!タンバリンや!」
そう言ってタンバリンを野乃に渡したのはハリー。そして野乃はノリノリにタンバリンを叩く。
すると、店に居る客達もリズムにノリはじめる。
…おいおいMAHARAJAみたいになってるぞコレ…
ま、そんなこんなあり時刻はあっという間に閉店時間になっていた。
「ダッハッハハハ!!!!こない人が来るんやったら…価格、倍にしといたらよかったわ~」
「お前はなにアホな事ぬかしてんだよ…」
間髪いれずにツッコむ。
いや、だって三千円の物を六千円で売りつけるのはねぇ…?
気が引けるっつーか、罪悪感に押しつぶされそう。
「こらこら~」
野乃もツッコんでくる。
そして、次に言葉を発したのは薬師寺だった。
「でも楽しかった!」
「ありがとう!ほまれちゃん!!」
そしてそれを紡ぐように野乃は輝木に感謝の言葉を送る。
しかし輝木はそれに返事をせず、はぐたんの名を呼んだ。
まぁはぐたんさっきからご機嫌でなんか鼻歌みたいなの歌ってたしね。
「はぐたんも楽しかったって!」
はぐたんの心情を代弁するのは野乃。
そして輝木も返事を返す。
「私こそ…」
微笑んではぐたんを見つめながらそう言った。
すると、野乃は身を乗り出して、
「ねぇ、ほまれちゃん!写真撮って!」
と、言った。
最近の若い子は写真が好きじゃのう…。いや、昔の若い子も好きだっただろうけどさ。
しかし、輝木は驚きの声をあげる。
「ビューティーハリーオープン大成功記念に!お願いお願い~」
そう言いながら輝木の腕を引っ張り薬師寺の隣へと押し込む。
そして野乃は反対側に座った。
「分かった分かった」
輝木は仕方なさそうだが楽しそうに言った。
まぁ本気で嫌がってはいないだろう。
「ハリーと希無君もおいでよ!」
するといきなり俺達を誘う声が聞こえた。
だが、
「パス」
俺は早急に返答する。そしてハリーも、
「遠慮しとくわぁ。オレが入るとお前らが霞んでまうやろ」
と、なんたらかんたら喋っている。だがしかし、その言葉を遮る声と音が聞こえた。
「じゃあ行くよー?せーの」
「ま、どうしても言うんやったら…」
「おー!良い写真が撮れた!」
可哀想にハリー…これからは僕達ハブられ仲間だね!
と、俺が心の中でスモーキー永田のモノマネをしていると、
「ほんまにハブにすんなや~!」
ハリーは思わずハムスターモドキの姿へと変身し、そう叫んだのだった。
…!?お前!まだ輝木に正体言ってないんじゃあ…
すると、輝木だけではなく皆驚いてその場で固まる。
………空気が死んだ。
輝木は驚いてハリーの方を見るが、そこにはいつも通りのハリーが居た。
「全く、しゃあないな」
「なにやってんだよ…」
ハリーが額に冷や汗をかいている正面で俺はそう小声で言う。
マジでアホかよ…
「今…何か変な生き物が…」
「アッハハハ…んなアホな」
ハリーは輝木にそう返す。
「アホはおめーだよ」
そして俺は小声でまたハリーにツッコむ。
「うるさいわボケ」
ハリーも小声で返してくる。
いや、俺正論言ったのになんで罵倒されてんの…
「ほら!もうキュアスタに!」
「本当だ~!キュアスタ映えする良い写真!!」
話を急に変えたのは薬師寺だった。そして野乃もその話に便乗する。二人ともナイスすぎるぜ…
すると、輝木も画面を見つめる。
「…なんか、自分のこういう顔…久しぶりに見た」
驚愕の声をあげながら言う。
俺も確認すべく、ポケットからスマホを取り出してsafariからキュアスタの写真を見る。
そこには笑顔で自撮りをしている輝木が居た。
えぇ誰コレ…。輝木ってこんな表情するキャラだっけ…?
俺がそんな下らない事を考えていると、輝木は心の疑問を言った。
「ねえ、何で今日…私の事誘ってくれたの?私…プリキュアになれなかったんだよ?」
それは遠回しに一般人で此処に居る俺をディスってるんですかねぇ…?
しかし、野乃は笑顔でこう答えた。
「プリキュアとかプリキュアじゃないとか、関係ないよ!私、ほまれちゃんが好きだし、仲良くなりたいんだ!」
すると輝木は目を見開いてから俯き、少し間を開けると立ち上がる。
そして優しい声音でこう言った。
「ごめん。ちょっとはぐたんと散歩してくる」
野乃と薬師寺は驚いて思わず声を漏らしてしまう。
すぐに後を追おうとする野乃。
「待って!ほまれちゃん!」
だが、
「やめとけ」
俺が制止する。しかし野乃は
「でも…」
と、戸惑いの声をあげた。
そして俺が何故野乃を制止したのか、ハリーが代わりに答える。
「十分頑張っとるヤツに頑張れ言うんは酷やで」
前にも言ったかもしれないが、鬱の患者と一緒だ。
患者達は立ち直ろうと頑張っているのに、
「がんばれ」
なんて言葉を掛けたら、「十分頑張ってんだろうが口はさむんじゃねぇよクソ野郎!」と一蹴されて終わりであろう。極論であるかもしれないが、それと同じだ。
「ハリー達の言う事分かるけど…」
「なら尚更だ。今はそっとしといてやれ」
俺にそう言われ、シュンとする野乃。
すると、薬師寺がそばに近づきこう言った。
「人を応援するって、凄く難しい事だと思う。でも、このままじゃ…………。行こう!はなちゃん!」
薬師寺は野乃の手を強く握るとそう言った。
「さあやちゃん…。うん!あんなほまれちゃん、やっぱりほっとけない!」
そうして手をつなぎ合い、二人はビューティーハリーを後にしたのだった。
そして二人が出ていった後、ハリーが微笑む。
「なにニヤニヤしてんだよ気持ち悪い」
俺はコーヒーを飲みながら率直な疑問と意見をハリーにぶつける。
するとこいつはイケメン特有のさわやか笑顔でこちらを見る。
なに?俺ソッチ系の趣味はないんだけど…
「わかっとるくせに」
「うっせ」
うぜぇ…分かってるからって言わないのが希無スタイルなんだよ…
「お前は行かなくてええんか?」
「別に。それに俺はあいつらとは違うしな」
「どういう事や?」
首を傾げるハリー。
「簡単だよ。俺はあいつらみたいに夢も希望も持っていない」
「なにアホなことぬかしとるんや」
「ほっとけ」
するとハリーは真剣な表情になり、シリアスな声音でこう言った。
「いいか希無。自分でそんな事いっちゃアカン。絶対や」
「…はぁ。ま、昔は持ってたんだがな。どこかに置いてきちまったよ…としか言いようがねぇよ」
今の俺にはこうとしか言えない。事実であるからだ。俺がこれから夢や希望を持つことができるのだろうか。そんな事は誰にも分からない。正に神のみぞ知るってやつであろう。
「今はそれで十分や」
そう言って笑うハリー。こいつ笑顔もイケメンとかマジで死ねよ…
「ほな、そろそろ行くか」
「おう」
俺は返事をする。そして立ち上がり、野乃達の後を追った。
輝木達が居たのはビューティーハリーからそう遠くない公園だった。
どうやらブランコの辺りで何かを話しているようだ。
「だけど私…なりたい野乃はながあるの。だから頑張るの!」
公園に到着して初めて聞いたのは、そんな野乃の言葉だった。
そしてそれに便乗するかのように、薬師寺も輝木に歩み寄って喋る。
「私、ほまれさんの事好き。前よりずっと好きになった。私やはなちゃんに出来ない事が、ほまれさんには出来る」
「ビューティーハリーもええ感じにオープンできたしな」
そこでいきなりハリーが口を開く。
うおっ、吃驚したぁ…。お前急に喋んなよ……
「ほまれさんには出来ない事が、私達には出来る。私達、きっと凄く仲良くなれる」
「ほまれちゃんは、どんな自分になりたいの?」
野乃がそう問うと、輝木はいきなりブランコから降りて走り出した。
そしてハリーにだっこ紐を渡す。
「やめてよね!そのほまれちゃんって言うの…なんか恥ずかしい…やめて」
皆が驚きの声を漏らす。そっちかよ…
て言うか何そのツンデレ要素…。顔真っ赤になってますけど…
「やっぱりほまれさんじゃない?」
「いっそほまりんとか?」
「ばっかお前。そこはほまれたんとかだろ」
俺達は互いに意見を交わし合う。しっかし薬師寺以外の意見クソだな…
「輝木ほまれちゃんだよね?」
するといきなり、聞き覚えがあるがあまり聞きたくない声が聞こえた。
それはナンパ師とかではなく、俺達が戦っているあの男だった。
相変わらず下品な顔したイケメンだ…。俺に言われたくないだろうけど。
そんなことはさて置き。俺らが驚愕して固まっていると、輝木は腹に何か縄の様な物を巻きつかれていた。
そして男の手と連動して宙へと浮く。
「ナンパしに来ました~」
ナンパなのかよ…しかもあれだろ?楽しくお喋りとかじゃなくてパンパンする方だろ?
っと、今はふざけてる場合じゃない。
そして輝木はあっという間に彼方へと飛んでいく。男も消えてしまった。
「ほまれちゃん!?」
「急げ!いくぞ!」
「あいつら!何する気や!」
俺達もすぐに駆けだす。
急いで輝木を救出せねば。俺達はそれを一心に街を駆ける。
すると突然、オシマイダーが登場した。
「あっ!」
「あれは!」
「ほまれちゃん!!」
「ほまれさん!!」
「輝木!!」
「それじゃああの怪物はほまれちゃんの…」
十中八九、それは正解であろう。
クソッ、あいつのトラウマに付け入るとは…
そして野乃と薬師寺はすぐに変身し、プリキュアとなる。
すると男がオシマイダーの前に突然現れ、
「行け!!」
そう叫んだ。
「来るぞ!」
俺も叫ぶ。
そして俺が言った数秒後、怪物のパンチが飛んでくる。
二人はそれを後ろへとジャンプする事で躱す。
だが、パンチはもう一個飛んできた。しかしそれをも躱す。
「ナイスだ!もう一個来るぞ!薬師寺!例の砲撃を!」
「分かった!」
そう答えると、薬師寺は自身の両手からハート型の砲撃を放つ。
そしてそれはオシマイダーへと向かうが、なんとオシマイダーはそれを手でキャッチすると粉砕してしまった。
それと同時に俺とハリーは走って輝木のいる元へと向かう。
そしてオシマイダーはそのまま手を前へとやり、野乃にパンチを炸裂させる。
だが、野乃は手を掴みなんとかダメージを負わずにいた。
そしてそのままオシマイダーを持ち上げ、地面へと叩きつける。
俺達はそれとほぼ同時に輝木の元へと着いた。
「ほまれ!なんちゅうこっちゃ…」
ハリーが驚いて立ちつくしている。
そしてはぐたんが泣き始める。恐らくはアスパワワとは正反対の性質を持つ力に輝木が囚われているからであろう。
「はぐたん…泣かないで…」
輝木は瞼を重そうに上げると、はぐたんに向かってそう言った。
どうやら意識はあるようだ。
そうしている間にも戦闘は続く。
オシマイダーは足の裏から刃を出すと、急に回転しはじめる。
てっきりその刃で薬師寺と野乃を切り刻んでミンチにすると思ったのだが…意外と紳士なのか?
「ダメー!」
「やめて!」
二人はそう言うと、オシマイダーの刃の一部を掴んで回転に巻き込まれてしまった。
どうやら回転をやめさせるようだ。
だがしかし、オシマイダーが更に回転速度を速くすると、二人とも吹き飛ばされてしまう。
野乃と薬師寺は吹っ飛ばされた勢いでそこらへんのビルへと叩きつけられる。
「モウ、トベナインダー…モウ、カガヤケナインダー」
いきなり、オシマイダーから声がした。
どうやら輝木の心の黒い部分の叫びのようだ。
「モウ、ミライハナインダー!」
そう言った後に、
「もう…未来は無い…。もう…飛べない…」
クソったれ…。さっきより暗くなって…。と、俺はそこでとある事に気付く。
そしてすぐに野乃達の方へと視線をやるが…
そこには吹っ飛ばされている野乃達が居た。やはりだ。利用された人間の希望が無くなっていく程オシマイダーは力を増す。
俺はダメ元で輝木を説得しようと試みる。
「こわい…でも…」
しかし、いきなりそう呟いてはぐたんを見つめる。
今は邪魔するべきではないだろう。
「私は…私は…もう一度…飛びたい…!!!もう一度…輝きたい!!」
「ならばどうすべきかは…分かってるよな?」
俺がそう言う。
すると輝木は無言で頷く。そして輝木が光にあふれる。
「心が…あふれる」
いつものセリフ、頂きました。
もう確定だろう。輝木ほまれはプリキュアになる。
俺の言葉の通り、輝木はミライクリスタルを掴み、プリキュアへと変身した。
「よっしゃああああ!!!!」
ハリーが歓喜の雄叫びをあげる。
ふぅ…プリキュアが増えた…と言う事は更に戦力が増すと言う事だ。
つまりは、この逆境に抗える。
輝木が視線を後ろにやると、それに呼応してはぐたんも声をあげた。
そして、輝木は地面を蹴って空高く舞い上がったのだった。
「いったれ!キュアエトワール!!」
どうやらそれが輝木のプリキュアの名前らしい。
エトワール…たしかどっかのオペラの最高位に位置する踊り手の俗称だったか。
まぁ、輝木にはふさわしいであろう。
そして、輝木が戦場に登場すると敵だけではなく野乃と薬師寺も驚愕した。
「お待たせ!」
輝木はクールにそう言うと、星型の砲撃を放った。
そういやエトワールって星の意味も持っていたか。
そしてその砲撃はぐるりと伸び、回っていたオシマイダーに巻きつき奴の回転を止めた。
余程強力な力なのか、オシマイダーはそれに掴まれると空中に制止する。
「この怪物は私が倒す!」
「私達仲間でしょ?」
「ここからは一緒に力を合わせて!」
「そのために三人も居るんだろうが」
俺達が独りでオシマイダーを倒そうとする輝木に仲間が居る事を教える。
仲間…言葉だけ聞けば馬鹿共が都合のいい時に使う台詞だと思われるが、こいつらは違う。
そんな薄っぺらい欺瞞ではないのだ。力を合わせ、互いの目標に向かって切磋琢磨し合える。それが仲間という概念の真意であろう。
「うん!」
そして輝木も俺達の言葉を受け入れて、そう返事をした。
短い言葉ではあったが彼女の声音からはその重みと決意、そして信頼が伝わってくる。
これが仲間と言わず何を仲間というのだろうか。
俺達がそうやりとりしていると、オシマイダーは翼を広げ空へと羽ばたく。
それに続いて、三人もジャンプした。
輝木が一番上へと飛ぶが、オシマイダーには届かない。
「野乃、薬師寺、輝木のジャンプ台になってやれ!」
「勿論!」
「うん!」
俺がそう指示すると、二人はそう答えて互いに向かいあわせで手をつなぐ。
「飛べ!キュアエトワール!!」
そして、手が重なり合った場所を踏み台に輝木が更に空高く舞い上がる。
もう地上からは確認できない位の高さだ。見えてはいるのだが、豆粒に満たない大きさだ。
すると、いきなりオシマイダーが地上に物凄い勢いで墜落してきた。
どうやら輝木が蹴りをかまして地面に叩きつけたようだ。
「今よ!」
薬師寺がそう野乃に言うと、野乃も頷く。
そしていつものお決まり技であるハート型砲撃をオシマイダーに放った。
「ヤメサセテモライマスゥ…」
と、やっぱり虫唾が走って背中が痒くなるような声をあげ、オシマイダーは昇天していった。
一件落着…とはまだいかない。はぐたんにアスパワワを与えると言う大事な仕事が残っているのだ。
だが心配ご無用。何事もなくアスパワワを与えれたのだった。
そして俺達は一度ハリーの家へと戻り、家路につく。
「それじゃまた明日ね!ほまれちゃん!じゃなくて……また明日ね!ほまれ!さあや!希無!」
いきなり野乃がそう言った。
すると思わず、俺達三人は硬直してしまう。
おいおい、女子に下の名前で呼ばれたとかいつぶりだよ…
「え、えぇっと…私も…これからもよろしくね。はな、ほまれ、希無…」
お前もかよ…一体どうなってやがる。俺はパラレルワールドとやらに来てしまったのか?そうなのか?
俺の脳内茶番はさておき、薬師寺も野乃に便乗してそう言うと、輝木は急に笑い始めた。
「呼び方なんて、なんでもいいのに」
「いや、大事じゃないっすか」
「でも嬉しい。一緒に居てくれてありがとう。さあや、希無」
そこまで言うと、いきなり言葉を止める。
そして野乃が自分を指さしながら輝木に近づく。
おいおい、バカっぽいからやめた方が良いぞ。
しかし、野乃が期待した返事は帰ってこなかったようだ。
「ありがとう、ののはな」
「えっ…?野の花?」
思わず笑いそうになるのを必死にこらえる。
輝木…お前は前の件と言い明らかに笑わせに来てるだろう。
「いいじゃん。野の花、イケてる」
「ほんとに?イケてる?」
えぇ…お前それは流石にないだろ…俺なんてギャグとして受け止めちまったんだぞ…?
「お前輝木の言う事なら何でもイケてるんじゃ…」
しかし、俺の声などはあいつの耳には入っておらず、「やったやった」と連呼しながら飛び跳ねている。
そして、ボシャン。
という水音と共に野乃が川へと落ちた。
あいつマジで何やってんの…もう中学生だろうが…
俺は思わずこめかみにへと手を当ててしまう。
だが、皆笑い声をあげる。無論、俺もだ。
勿論嘲笑ではない。
「イケてるよ、はな」
輝木がそう言い、俺達は野乃の元へと駆けよる。
すると、コイツは悪魔の一言を投下しやがった。
「そう言えばさ、希無君からはなにも言われてないよ?」
「確かに…」
「そう言えば…」
え?待て待て何で俺?俺言う必要無いよね?お前らで仲良くやって終了ー!って感じじゃないの?うん。そうでないと寧ろおかしいまである。勘弁してくれ…
「はぁ…分かったよ、言えばいいんだろ言えば。…………はな、さあや、ほまれ…ありがとう……」
恐らく俺は今、物凄く赤面しているであろう。仕方がない事なのだ。女子を下の名前で呼ぶなんて人生でも片手で数えられるくらいしかないのだから。ましてや礼を言うなんて
すると、皆が微笑む。
「それでいいの!」
言ったのは野乃であった。
はぁ…何が良いのかはさておき、俺にも感情を共有しあえる仲間が出来た。…と言う事だろう。いや、仲間というのは適切ではないな。友達…この場合はこの単語がピタリ、と当てはまるのではなかろうか。
友達…過去の俺では信じがたいような言葉だが、今俺の目の前にはそれが三人も居る。
俺は何と幸せなのだろうか。時間を感情を、そして思い出を共有できる人物が居ると言う事は、此処まで人の事を幸せに出来るものだとは。
ありがとう、世界。
ありがとう、友人。
誤字脱字ありましたらよろしくお願いします!!!!