頑張って早く書きあげましたので見てやって下さい…!(誤字だらけかもしれませんが…)
兎に角、第八話をどうぞ。
「アンリ…ちょっと離れて」
不機嫌に、空気が凍るような声音でそう言い放ったのは輝木ほまれであった。
事の発端を説明しよう。と言っても、そこまで難しいものではないが。
俺達はビューティーハリーの前で新しいミライクリスタルについて話し合っていた。すると突然現れた謎の美少年が、輝木に抱きついたのだ。ほらね?簡単でしょ?いや、事自体は簡単なんだが意味はマジで分かんねぇな……
「ハグなんて子供の頃からよくしてるじゃない」
美少年はいきなり抱きついて輝木を不機嫌にしたにも関わらず、悪びれずにそう言った。
いや、いきなり女子に抱きつけるとかどこのリア充だよマジで…難易度高すぎだろLunaticってレベルじゃねーぞ。
「なんなのよ、急に来て」
まぁ、先程の会話からも推測出来るが、どうやら二人は顔見知りのようだ。
そして、輝木が理由を言うように言うと、美少年は衝撃的すぎる爆弾を投下したのであった。
「迎えに来たんだよ!ほまれ、ボクと一緒にモスクワに行こう」
うわーおモスクワ。ロシアかぁ……ダメだ、ロシアについての知識がほぼ無いに等しいからなにも分かんねぇ…。
取り敢えず、客人を玄関先で待たせておく訳にはいかないので店の中へと入るように促す。
そしたら中にあった色んな服に夢中になり、試着室へとすぐに入って行ったのだった。あ、勿論ハリーの許可を得て。
そして美少年が着替えている間に、俺達は情報を集める。
「若宮アンリ君。中学三年生…って凄い!フィギュアスケート、出場した大会は全部一位だ!」
「じゃあ世界チャンピオンって事か。すげぇな」
「アンリは子供の頃からスケートのレッスンを一緒にしてた仲間なの」
ていうかそれってコーチ凄すぎじゃね?世界チャンピオンや期待の新星である輝木を育て上げたって……
「スケート界の新星。未来を約束された王子様!クゥ~!通りでキラキラしてる筈やでぇ!」
ハリーが美少年こと若宮アンリを褒め称えていると、唐突に試着室のカーテンが開いた。
そこには、女物の衣服を纏った若宮が居た。
え、もしかしてそう言う趣味?ならば頑張ってくれ…今の社会は性同一性障害の人に対して風当たりが強いからなぁ…特に日本はね。少し前に流行った「ガチムチパンツレスリング」とかが良い例かもしれない。まぁ…強く生きてくれ…
「それレディースやで?」
ハリーも突然の事に驚きを隠せない様子だ。
「似合ってれば、問題ないでしょ?」
「うん。凄く素敵!女神さまみたい!」
「ウフフ、よく言われるよ」
え、それっていじめられてるんじゃあ…おっと、そんな事を思うのは野暮だな。
まぁ、確かに中性的な顔立ちではあるし。
「アンリ君の瞳…綺麗ー!」
野乃が若宮の瞳について言うと、今度は若宮自身がそれについて説明する。
「瞳は父親から受け継いだもの。母親は日本人で、父親はフランス人だから」
ん?ロシアとのハーフじゃないの?てかそれって大分大変なんじゃあ…日本語が母国語の母親と、フランス語が母国語の父親を持ってそのどちらともが公用語ではないロシアに住んでるって……
「じゃあアンリ君はハーフなんだね!」
野乃が自信満々に言う。しかし、若宮の答えはノー。
「半分じゃない。大和撫子とパリジャンのダブルだからね」
「そっか、そうだね。ごめん」
「アハハハ、素直だね」
「ふふ、よく言われるよ」
なんでコイツらはコントをやっているんだ……と思ったのだが、どうやら若宮はコントを早急に終わらせたかったようだ。
「じゃあ、ボクのお願いも素直に聞いて」
「ほえ?」
突然のガチトーンボイスに、野乃は驚いて一瞬身を引いてしまう。
おぉ、凄い気迫。ちょっとビビっちまったよ…
「ほまれを、ここに縛るのはやめてくれないか」
しかし、野乃はどうやらその言葉の意味が分からなかったようで、ポツンと呆けていた。
「縛る…?私たちがほまれを?」
「おいアンタ、その表現はちと不適切じゃないか?変な誤解を生むぞ」
「君は?ほまれのボーイフレンド?」
「いや、違う。俺はこいつらの友人だ。兎に角、その言い方は酷じゃないか?」
「ふーん…君は分かってるみたいだね」
「俺の考えている事が合ってるかどうかってのは分からねぇけどな」
危ねぇマジで怖ぇ……そこら辺のイキってるDQNよりよっぽど怖かったぞ…
と、そんな茶番はさておき。若宮は野乃が分かるように説明する。
「そこの君は分かってるみたいだけど、君たちとほまれは住んでる世界が違うって分かってる?」
「ちょっと!!」
あまりにも辛辣で棘のある言葉に、輝木が仲裁に入る。
言葉自体は酷いものだが、確かに芯を突いている言葉だ。俺達と輝木は住む世界が違う。恐らくそれは輝木自身が一番実感している事だろう。
「ジャンプ、まだ飛べてないんでしょ」
その言葉に、輝木は目を見開いて驚いてしまう。どうやら図星のようだ。
「ボクたちには時間がない。シニアデビュー。僕たちが大人と肩を並べて、本格的にスケートを始める大事な時期はもうすぐだ。よく考えて」
正直、その言い方は卑怯だと思う。そう言われれば、誰もがそちらを優先してしまうだろう。しかし、きっと若宮はそれ位本気なのだ。そして同時に、輝木の事を本気で考えている。言い方はアレだが、きっと悪い奴ではないのだろう。
兎に角、そんなこんなでいきなり来た嵐は去っていったのだった。解決はしてないけど。
× × ×
そして次の休日、俺らは公園へとピクニックに来ていたのだった。
いやマジでどういう事なのコレ……野乃からいきなり連絡があったと思ったらこれだよ…
助けて俺の休日返して。ま、本気で嫌だったらバックレてんだけどね。
「悩むよね。アンリ君、ちょっと強引だけど凄くほまれの事考えてるって分かるから」
どうやら薬師寺もその事実に気付いていたようだ。流石と言ったところだな。
「皆優しくて、困っちゃうよ」
「優しいのはほまれでしょ?」
そして輝木は薬師寺のその言葉に思わず驚いてしまう。しかし、薬師寺の言っている事は正しい。輝木は自分の優しさに気付いていない。一見ぶっきらぼうだが、輝木は誰よりも優しい。それは紛れもない事実だ。
「はなと希無とほまれといると、初めての思い出がキラキラ増えてく。きっと今、アスパワワいっぱいだよ!」
「ほんま、四人はよう似てるわ。誰かを思って、そのために動く。けど、人の事を優先しすぎとちゃうか?自分の心に素直になるんが、大事な時もあるで。イケメンアドバイス」
ハリーはいきなり、ドヤ顔でそんな事を宣った。
そしてその言葉に輝木がツッコミをいれる。
「よく言う…あんたが一番、素直じゃないじゃん」
「希無程じゃないわ」
「何故お前は俺を巻き込んだ……」
いや、マジで。少なくとも俺、こいつよりは素直だと思うんですがねぇ…え?違うって?うーん…ならしょうがないのかなぁ…
そんな茶番をしていると、野乃が重大な事に気がつく。
「はぐたんがつかまり立ちしそう!」
見てみると、野乃の太股にしがみついてなんとかバランスを保ち、立ち上がろうとしているはぐたんが居た。子供の成長って本当に早いな……
「がんばって!はぐたん!」
「フレフレ!」
「もう少し!」
「がんばれ!」
そして皆の思いが実ったのか、はぐたんはつかまり立ちに成功したのだった。
すぐに野乃はその様子を写真に収める。
そんなこんなあり十数分後、すっかり飯も食い終わり、俺はロッククライミングの練習場の隣にある坂で、休憩をとっていた。すると当然、若宮の声が耳に入る。
「此処には無い、一流のコーチとサポートが君を待っているんだ」
唐突なその台詞に、輝木は若宮の名を呼んだ。
「アンリ…」
輝木達は俺が寝そべってる坂の上にいるため、正直状況が把握しきれない。
「ボクはほまれがスケートをやめたのが凄くショックだった。やっと復帰したって聞いて本当にうれしかった。なのに…」
おいおいヤンデレかよ…怖いぞお前…
俺の感想はさておき、俺が話に集中していると野乃が近くに来ていた。どうやら輝木を探していたようだ。
「ほまれは?」
俺は人差し指を唇の前へと持ってきて、静かにするように促す。
そして野乃は状況を把握したようで、黙りこける。
しかし、次の瞬間野乃は思いもしない事をやり始める。
ロッククライミングを始めたのだ。
あいつ…気は確かか?仕方ないので、俺も野乃に続いて壁を登り始める。
そしてその最中にも会話は続く。
「星に選ばれた者、頂点を目指す人間にしか、見えない世界がある。ほまれと同じ世界を見られるのは、ボクしか居ない。あの子たちには無理だ。赤ちゃんの御世話をしたり、お店屋さんの真似をしたり、それって…今のボクたちに必要な事?一緒に行こう。友達と遊ぶのは、引退してからでも出来る」
「そんな…」
いきなり、俺の隣から声が聞こえた。
…ん?俺の隣!?見てみれば、野乃が言葉を発していたのであった。
「お前!何で喋っちまうんだよ…」
思わず顳顬に手を当ててしまう。なんだってコイツはこういつもドジを踏むんだ…
「立ち聞き?良い趣味してるね」
「ごめんなさい!思わず…」
野乃はすぐに両手を合わせ謝罪する。
「邪魔しないでって言ったよね」
「うん…邪魔…したくない。でも!ほまれ、凄く困った顔してるから…。そんな顔見たら…ほっとけない!」
「じゃあ君、ほまれの為に何が出来るの?」
難しい質問だ。何が出来る…きっと、それは個人個人で違う。なにが出来るかでは無い。恐らくは、何をするか、であろう。
「う~ん…。あっ!ある!出来る事ある!私、夢応援するよ!」
「え?」
どうやら若宮は思っていた返答が返ってこなかったようで、疑念の声をあげた。
「夢、応援する!フレフレ!ほまれ!」
「はな…」
すると突然、若宮は笑い声を上げた。しかし、恐らくその笑いは嘲笑だ。
確かに、傍から見れば馬鹿馬鹿しいかもしれない。だが、野乃は本気なのだ。それを笑うとは何事か。
「ごめん…。君って、無責任だね」
「ちょっとアンリ!いい加減に…」
「頑張れって言われなくても、ほまれは頑張るよ!応援なんて誰にでも出来る!その無責任ながんばれが、彼女の重荷になってるんだよ。さぁ、行こう。僕と一緒に」
確かに合っている。大分前に言った鬱の患者を応援してはいけないのと同じだ。
しかし、若宮のやり方は強引すぎる。輝木がどっちに行くにしろ、決めるのはこいつ自身だ。そこには野乃や俺、薬師寺やハリー、そして若宮の意見もいらない。輝木自身がよく考え、決めるべき事なのだ。
そして数秒後、輝木は若宮の手を握った。若宮は笑みを浮かべ、野乃の顔色が曇る。
しかし、輝木はすぐに野乃の手も掴む。
「ごめん!私…アンリとは一緒に行けない…」
どうやら、解は導き出されたようだ。決めてしまったものは、もう誰にもどうする事も出来ない。これで決まりだ。
「見てほしいものがあるんだ」
輝木のその発言が切っ掛けで、俺達と若宮はスケート場へとやってきた。
「何?見せたいものって」
少し不満げに、機嫌の悪い声色で若宮は俺達全員が疑問に思っている事を輝木に問う。
そして輝木も、その疑問に答える。
「アンリの言う事は間違ってないよ。ジャンプが飛べなくなったショックで、私…頑張れって言われる度に凄く辛かった。皆から応援される度にそんな資格ないって心がギュッとなって…。私は一度、逃げた」
「分かるよ…そんなほまれを救えるのはボクだけだ」
若宮のその発言に、野乃は俯いてしまう。
しかし、輝木の答えはきっと今野乃が思っている事とは違う。だから俺は、そっと野乃の肩に手を置いた。
「まだ早ぇよ」
そして小声でそう言う。そう、まだ早い。今の話はあくまでも今までの話だ。今の話ではない。
「確かにアンリと私は、同じ世界に生きてるのかもしれない。けど…私に新しい世界を見せてくれたのは…はなとさあやと希無なの」
そう言い残すと、輝木はスケートリンクの中心へと滑り始めた。
そして中心点で停まると、唐突に野乃を呼んだ。
「はな!フレフレして!」
その言葉を言われた野乃の顔には、笑顔が戻る。
野乃はすぐに返答し、輝木に応援を送る。そう、誰にでも出来る事ではない。この応援は。野乃にしか…野乃はなにしか出来ない唯一無二のものなのだ。
「私はもう一度…皆の頑張れを背負って…!飛びたい!」
そう言って、輝木は滑り出す。
そして、華麗に技を決める。残念ながら俺はフィギュアスケートに関しては超がつくほど無知なので、技名などは分からないのだが全てが、今の輝木の心境を表しているように伸び伸びと、そして清々しいものだ。
刹那、薬師寺の背中から生えた翼が輝木の背中からも見える。
「天使の羽!!あれはさあやの羽だよ!」
間違いない。野乃の言う通りだ。凄い…やっぱり、輝木は凄い。
そして、そのあとに回転ジャンプに挑戦するが…残念ながら着地と共に転んでしまう。
しかし、
「私は…諦めない!!」
「ほまれ…キラキラしてる!まるで…流れ星みたい!」
確かに、その表現は的を得ている。
恐らく今、あいつは今まで以上に輝いている。本当に星になったかのようだ。
エトワール…あいつのプリキュアの名前だが、正にその通りだ。あいつは星そのものなんだ。
輝木が一通り滑り終わり、俺達はあいつの元へと向かう。
しかし野乃はバランスを崩して転んでしまい、滑りながら輝木の元へとつく。
野乃は涙を流しているが、それは痛みによるものではない。
「良かった…良かったね~!」
「ほまれ!素敵だったよ!」
薬師寺はそう言いながら、輝木に抱きつく。
「ちょっとさあやまで!」
確かに薬師寺にしては意外な行動だ。
「一瞬…マジで見惚れちまったぞ…」
俺も一応感想を言っておく。
「希無…珍しいね」
「うっせ。俺も偶には素直になるんだよ」
無論、照れ隠しだ。いや、だって恥ずかしいじゃん…でも、本当に凄い。こう言っちゃあアレだが、テレビで観るスケートなんかより何百倍も感動したし、圧倒された。
そんなやりとりをしていると、外がやたら騒がしくなる。スケート場の窓から外を見ると、そこにはオシマイダーが居た。
お前いっつも良いタイミングで来るなぁ…
「さてと、行きますか」
俺がそう言い、三人が変身する。
そしていざ来てみれば、今回は前回のあの賢い分析野郎ではなく、パップルが齎したものであった。
「来たわね!プリキュア!」
パップルがそう言うと、すぐにオシマイダーが光線を放ってくる。
だが、野乃達はそれをジャンプすることで回避、その勢いのままオシマイダーへと攻撃をかます。しかし、あと一歩と言う所で奴の両腕にガードされてしまう。
跳ね返された野乃達は上手く地面へと着地、そして今度は野乃単体で攻撃を仕掛ける。
だが、奴の遠心力を利用したパンチに力負けし、殴り返されてビルへと叩きつけられる。
薬師寺も攻撃を仕掛けるが、同様に跳ね返されてしまった。
「待て…あいつの腕は遠心力を利用している。故に一度定めた場所以外には攻撃できない筈だ!」
そう、分かりやすく言えば機敏性がない。遠心力とは馬鹿に出来たものではなく、一度そこだと決めてしまえば、攻撃した本人でさえどうにもする事は出来ない。
輝木が走り出し、正面からオシマイダーを潰そうとする。しかし、奴はすぐに上から蝿叩きの要領で潰しにかかってきた。なので輝木はスピードを更に速くして、その攻撃を回避する。
結構今の危なかったな…。
そして足の間をすり抜け、奴の背中に強烈なキックを入れた。
それにより、オシマイダーは前のめりに倒れる。
だが、すぐに起き上がり、逆上したオシマイダーは輝木へと腕を伸ばして攻撃する。だが、三人の中で最も力が強い輝木には効かない。それを両腕で受け止め、跳ね返す。そしてそのエネルギーを利用して、自分も後ろへと下がる。
「私に無駄な時間は許されないのよ!」
オシマイダーが俺達に手古摺ってる事が余程不満なのか、少し焦りながらパップルはそういったのだった。
「無駄な時間…?」
「何なのよ?」
その言葉に反応した輝木に対して、挑発をするパップル。
「人生に…無駄な時間なんか無い!」
「はぁ?無駄話は時間の無駄よ!」
なんかそこまで無駄無駄言われるとDIO様思い浮かべてしまうんですがねぇ…それ以前にゲシュタルト崩壊を起こしてしまいそうだ…
「仲間と過ごす時間が…とても愛おしい!」
それと同時に、また光線が放たれる。
しかし、野乃がギリギリで輝木を助け、間一髪回避成功。
「薬師寺!ハート・フェザーをトランポリン代わりにしてやれ!」
「うん!」
俺の言葉の意図が分かったのか、輝木の着地地点にバリアを貼った薬師寺。そして輝木はそれに乗り、反動で更に高く飛んだ。
「友達と一緒に学校に行ける時間が好き。可愛い赤ちゃんのぬくもりを感じる時間が好き。三人と一緒に過ごす時間が…私の心を輝かすんだ!」
その言葉と同時に、輝木から光が発せられる。
二つ目のミライクリスタルの誕生だ。
そして輝木はそれをすぐに生かし、技を発動させる。
技は無事にオシマイダーに命中。
「野乃!弱ってる今がチャンスだ!」
俺が言うと、野乃はハート・フォー・ユーを放つ。
そして、いつもの気色悪くてしょうがない声をあげ、オシマイダーは昇天していったのだった。
いつの間にか、パップルも帰っていた。
取り敢えず、これにて一件落着だ。
そしていつの間にか時は経ち、夕方になっていた。俺らは歩道橋の上で若宮と話していた。
「アンリ…私…」
輝木がすこし言い辛そうに話を切りだす。
しかし、若宮は微笑みながら溜息を吐いた。
「負けたよ」
「えっ?」
「さっきのほまれのスケート、素晴らしかった。昔の無駄の無い、正確なスケートも好きだったけど、今のほまれはの気持ちあふれる演技も悪くない!」
「アンリ…」
「ボクも負けてられないね…」
その言葉と同時に、若宮は右手を前に差し出す。
そして輝木も若宮の手を握る。
「アンリ君!私、本当に頑張ってほまれを応援するから!」
「ああ」
若宮はウィンクをしながらそう言った。
クソ…イケメンってのはこんな事をしても許されるのか…。きっと俺がやったら「何カッコつけてんのキモいマジで。一回死んでみたら?」って言われるのは目に見えてるんだよなぁ…
俺が下らん脳内コントをしていると、野乃がいきなり何かを思いつく。
「そうだ!もぐもぐの散歩、練習大変な時は私やる!小さな事からコツコツと!」
そういってもぐもぐのリードを持つが、走りだしたもぐもぐに引っ張られてしまう野乃。
おいマジで大丈夫なのかよ…
「あの子、本当に素直だね」
「イケてるんだよ、はなは」
あれがイケてるってどういう事なんだ…?ちょっと希無君教えてほしいレベル。
「きっと将来、素敵なレディーになるよ」
そんな話をしているのだが、俺は唐突にある事に気がつく。そういや野乃が迷子になっちまったら元も子もない。
俺はすぐに野乃の後を追う。
「ちょっと追っかけてくる」
そして走る事三分。立ち止まった野乃にやっと追いついた。
「応援って誰でも出来る…か」
「なんだ、そんな事気にしてんのかよ」
「え!?う、うわぁ!!」
いきなりの登場に、野乃は驚いて尻もちをついた。
仕方無いので手を差し出して引っ張ってやる。
「いいか野乃。お前は世の中で一人しか居ない。つまりはな、絶対にお前しか…野乃はなにしか出来ない事って言うのがあるんだ。だから次、誰かにああいう事を言われたとしても、気にすんなよ。お前がそう思わなくなったら、本当にそうなっちまうからな」
少し偉そうだが、俺の思っている事は全て伝えれた。
「うん!ありがとう!」
野乃も元気を取り戻したようだ。良かった良かった。
そしてすぐ、もぐもぐがまた走り出す。だがどうやら、偶々通りがかった人物の元へと走っていったようだった。
そして、その人物である見知らぬ男は、もぐもぐの頭を撫でた。
すると、その男が持っていた本を落としてしまう。
野乃はそれをすぐに拾い、差し出す。
「ごめんなさい!うん?…綺麗な本…」
「グリモワールみたいな見た目だな」
俺達が本を見つめてから数秒後、男は突如立ち上がり、こう言った。
「元気だね。とてもとても、美しい物語なんだ。その世界では皆が、明日への希望に満ちていた。人はそこを楽園と呼んだ。しかし永遠に続く煌めきは存在しなかった。美しい物語…」
一体何の話だ…?海外の古書か何かなのか?
兎に角、今は家に帰るのが最優先事項だ。帰ろう。
そんなこんなあり、俺達は帰宅したのだった。
翌日、有り得ない事が起きた。
若宮が転校してきたのだ。
あいつマジでどういう事だよおいおい……
「今日からラヴェニール学園、スポーツ特進クラス三年の、若宮アンリです。よろしくね」
「なんで!?」
突然の事態に、輝木は思わず声を荒げる。
いや、仕方ないよね。俺ですら驚いてるんだもん。輝木からしたらもっと大きい衝撃だろう。
「ボクも、ほまれみたいに心の広がりを探したかったんだよねぇ」
するといきなり、若宮は輝木の頭を抱えて耳元で何かを囁いた。無論、俺と野乃、薬師寺には何を言ったかは聞こえない。しかし、輝木の表情や反応を見るからに何か更に衝撃的な事を言われたのであろう。例えば正体がバレたとか。ま、んな事無いと思うけどね。
「な~んてね!まぁ、人の為に頑張るなんて、ボクには向かないかな~」
…え?待ってマジでバレてないよね?今の発言は明らかにバレてると思うんですが…
ま、まぁそんな事はいい。これから更に五月蝿くなるぞ…
「なんか、また賑やかになりそうだね」
「うん!」
「勘弁してくれよ…」
「同感…」
全く、また厄介が増える。
そして案の定、厄介事が起きた。昼休み、若宮から屋上へとご招待されたのだ。行かなかったら余計にめんどくさい事になりそうなので、俺は嫌嫌ながらも屋上へと向かったのだった。
「やぁ、待ってたよ」
「んで、用ってのは?」
「いやいや、簡単な話さ…」
なんか物凄く嫌な予感がする。俺の中のヤバいレーダーが警報を鳴らしてるよ……
「ボクとさ、友達になってくれないかな?」
「……は?」
いやいや待て。トモダチニナッテクレナイカナ?
ワカンナイ。キナシワカンナイ。
「いやいや、意味が分からない。何故?」
「日本でも友人を作りたくてね。それに、君とは波長が合いそうだし」
やだよ、やめてくれよ同じにしないでくれよ…俺はヤンデレじゃないんで…
しかし、どうやら俺に友達になる以外の選択肢は用意されておらず、仕方なく返事を返すしかなかったのだ。
若宮が右手を差し出してきたので、俺はその手を握り握手をする。
「改めて、若宮アンリだよ。よろしくね」
「土山希無だ。…よろしく」
「希無だね、よろしく!」
「お、おう…」
こうしてまた、俺の面倒事と友人が増えたのであった。
誤字脱字ありましたらご報告お願い致します。