「・・・なるほど。そういう意図があって始めるのですね。これを。」
「君の熱意だけじゃない、ってのは申し訳ないけどねー。」
「いえ。結果的に、これがここで始められるなら、それは喜ぶべき事です。」
「だが、今年の夏に結果を出さなければ、来年の今頃は・・・。」
「無茶で無理なことだけど、やらないといけないんだよ、私たちは。」
「やるしかないでしょう。可能性は0に等しい、周りはこの1年を大切に生きろ、と言うでしょうけど。」
「幸いなことに、これに詳しく経験のある人間が2人・・・いや、3人か。君と先日編入してきた彼女、そして4月から編入してくる彼女を合わせれば可能性は拡がるよね。」
「まあ、お前の場合はこれよりもあっち側の人間だがな。経験がある事には代わりはないだろう?」
「私達には経験も知識もないの。そのどちらかがある人間は貴重だし、目的の為には必要なことなの。」
「・・・可能性を飛躍的に上げるためにもう一人、無茶を承知で連れて来たい人材がいるのですが。」
「ん?可能性を少しでも上げれるなら無茶でも何でもするよ?誰を連れて来たいんだい?」
「男性を。僕の兄をここ『大洗女子学園』に所属させてほしい。」
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4月、全ては突然の出来事だった。
生徒会を名乗る学園の変人集団の、全校集会での戦車道復活による履修募集。その宣伝はある意味成功し、大洗女子学園生徒は戦車道に心引かれる者が現れ、その日はその話題で持ちきりだった。
そして先日編入した私にできた友人、武部沙織と五十鈴華は短い声明を私へ向けて発信する。
「私(わたくし)は戦車道履修する(します)よ。」
それは、戦車道のない地を選び編入してきた私への明確な宣戦だった・・・
いやだ、何言ってるんだろう、私。
突然の出来事に頭が混乱してしまったらしい。
私は西住みほ。
4月から大洗女子学園に編入してきた2年生。
元々は黒森峰女学院で戦車道をやっており、1年生ながら副隊長をやっていた。
けれど、去年の夏、10連覇のかかった大事な決勝戦で私は・・・
その後は、安全基準の大規模な改定や戦車道の友人が一人転校したり、色々あった。
そして私は黒森峰OB会の嫌がらせや母親に突き付けられた現状に、私の戦車道がわからなくなり戦車道のない(はずだった)ここ『大洗女子学園』に4月から転校してきたのだった。
しかし、宿命、とでも言うのだろうか、転校してきた大洗女子学園も文科省からの戦車道推進方針に乗り、今年度からなくなっていた戦車道を復活させ『西住の子』というのを知ったのであろう、私に戦車道の履修を強要してきた。
・・・だけど、私は・・・
「西住さんが、そんなに嫌がるなら私たちも履修しないよ。」
「わたくしたちがやってるのを見て、辛い思いをするのでしたら、そこまでして履修したいとは思いません。」
「私の事は気にしないで。2人はやりたいことをやればいいんだよ。」
「「西住さんと一緒にやるのは私(わたくし)のやりたいこと♪」」
「・・・ありがとう・・・ごめんね・・・」
本当は2人も戦車道やってみたいだろうに、私を気遣って、私と同じ『香道』を選択してくれた。
優しい二人の心遣いが、少しだけ辛かった。
必修選択科目の用紙を提出して数日、いつものように3人で食堂でお昼ご飯を食べていると、生徒会から呼び出しがあった。
多分、選択科目の事で呼び出されたのだろう。
不安な気持ちがしっかり顔に出ていたのであろう、武部さんと五十鈴さんは一緒に生徒会室に付いてきてくれるという。
私一人では行くことはできなかったであろう。
予想通り、必修選択科目の件だった。
どうやら私が戦車道をとらなかったことが、余程お気に召さなかったようだ。
私を脅迫するだけでは飽きたらず、私を気遣って付いてきてくれた2人に対しても『学校に居られなくする』と脅迫してきた。
「酷すぎるッ!!」
「横暴ですッ!!」
「横暴?酷い?結構。私達にはそれだけの権限がある。」
「ね?今なら、まだ取り返しがつくから。戦車道やるだけでいいんだよ?」
「選択の権利がある中で、やりたくないものをやらせるのに、義はありませんッ!!」
「そうだよッ!!選択の自由は誰にでもあるんだからッ!!それを権力でねじ曲げようなんてッ!!」
2人は必死に私を擁護してくれるけど・・・
このままだと、2人に迷惑がかかってしまう・・・
もう戦車道はやらないと思ってた
西住流の戦車道と自身の戦車道の隔たりが息苦しかった
戦車道は遠くから見るだけでいいと思ってた
だけど・・・
だけどッ!!
「・・・ます。」
「「え?」」
横にいる友人の困惑した声が聞こえたけど、気にしない。
目の前の生徒会長をまっすぐ見て、私の意思を伝えるんだッ!
「戦車道、やりますッ!!!!」
生徒会長は一瞬だけ、とても申し訳なさそうな悲しそうな顔を見せたように見えたが、すぐ先程と同じ不敵な笑みを浮かべて
「いいねぇ♪その言葉が聞きたかったよ」
「「え?西住さん、いいのッ!?」」
「うん。やるって決めた。戦車道、始めるよ。」
友人たちは困惑したような心配する顔を見せている。
前の生徒会のメンバーは、ほっとした顔や満足した顔を見せている。
私にとって戦車道は逃れられない宿命のようなものなのだろう。
けれど、前のように戦車が乗れるとは思わない。
私にとって戦車道は何なのだろう?
やると決めた想いの中でそんなことを考えていた。
用件も終わったため、部屋を出ようとするとドアの前が騒がしいことに気が付いた。
『今、会長は所用のため対応できませんッ!!』
『うるさいわねッ!?私だって用事があるわよッ!!』
『もうすぐ終わる予定ですから、待っていてくださいッ!!』
『私は今ッ!!ここに用事があるのよッ!!いいから離しなさいッ!!』
・・・誰かが無理矢理部屋に入ろうとしてるらしい。
聞いたことがある声だ。
そんなことを思っていると、目の前のドアが勢いよく開かれた。
開け放たれたドアの前には黒森峰で追いやってしまった過去がそこにいた。
「え?嘘・・・なんで『ここ』に・・・?」
「それは私のセリフよッ!!何で貴女がここにいるのッ!?みほッ!!」
鋭いキリっとした目、銀髪のセミロングの髪、かつてはワインレッドのシャツとスカート、黒のタンクジャケットを身に纏っていたが、今は白いセーラー服に緑色のスカートを着た少女『逸見エリカ』さんが目の前にいた。
「えり、か、さん・・・」
「説明してもらうわよ、みほッ!」
世界は様々な人の思惑が存在し、それが社会を世界を形成していく
彼女たちの想いとは別に、他者の想いから彼女たちは再び邂逅する
偶然ではなく、必然であり、それを彼女たちが知るのは、後の話である