※前回のお話
『逸見エリカ』の独白
黒森峰戦車道の10連覇のかかった決勝での出来事
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「・・・本当に、いいのか?」
「はい。全ての責任は私にあると思っています。」
「エリカ・・・お前の行動は間違っていた、とは思えない・・・みほもあの時の行動は『西住流』からすれば間違っていた、と言えるかもしれないが、戦車道に携わる人として、人間として間違っていた、とは思えない・・・」
「間違っていなくても、責任は誰かがとらないといけないと思います。ならば、これからの黒森峰を支えるため、隊長・副隊長には『ここ』にいてもらわないといけません。」
「・・・すまない・・・決断をした隊長である私が責任をとるべきはずなのに、OG会は『私ではなくみほ』に全責任を押し付けたいらしい。私の声は一切届かない・・・」
「私は私が負うべき責任をとるだけです・・・お世話になりました。」
「・・・ここを辞めて、次はどうするつもりなんだ?」
「・・・決勝戦の出来事は全国的に知れ渡っています・・・高校の間は戦車道はできないでしょう。なので、戦車道のない遠く離れた地に行こうと思っています。」
「そうか・・・なら、この地に行くのはどうだろうか?」
「ここは?」
「戦車道は『今のところ』ないが、戦車戦『タンカスロン』がわりと旺盛な所だ。タンカスロンは知っているだろう?」
「はい・・・何年か前から始まった戦車の野良試合ですよね?戦車道連盟に加入できない高校や大学が1両からでもできる、ということで何処からか始まったやつですね?これが?」
「高校の間、戦車道ができなくても戦車には乗りたいだろう?償い、とは言わないが、エリカにはこれからも戦車道を続けてほしいんだ・・・戦車道はもう続けないか?」
「いいえ。たとえ隊長の下で戦車道ができなくても、西住流の門下ではなくなっても、私にとって戦車道は私の始まりです。何らかの形で続けられるなら続けたいです。」
「よかった・・・なら、親御さんに了承を貰ってくれ。転校と転入の手続きは私の方でさせてもらう。」
「それくらい私が「いいんだ。やらせてくれ・・・これは周りに見せるためにも必要なことなんだ。」・・・わかりました。何から何までありがとうございます。」
「そうだ、あとひとつ。この地にはひとつの出会いがある。」
「出会い、ですか?」
「この地にはエリカを救った『彼』がいるかもしれない。」
こうして、私『逸見エリカ』は黒森峰女学院を転校し、知り合いもまともにいない『大洗女子学園』へ転入したのだった。
黒森峰の学園艦よりはるかに小さく、戦車道はない、と言ってもかつては存在したのだろう、学園艦の各所に戦車や部品が転がっている、のんびりとした場所。
自分で言うのもあれだが、私はかなりキツい性格だと思う。
それでも声をかけてくれる人々も居り、途中からやって来た私の友人になってくれる人もできた。
特に私と関わるのが多いのが、1年ながら、学園艦内で既に『色んな意味で』有名人な2人『秋秋コンビ』である。
2人は戦車道のない大洗女子学園を活性化するために、学園艦で一番権力のある生徒会に、ほぼ毎日のように戦車道復活をプレゼンしている。
『秋秋コンビ』の一人『秋山優花里』は私の事を知っていた。
戦車、戦車道が小さい頃から大好きで、高校・大学・社会人と戦車道に関わる様々な学校の事を研究しており、黒森峰女学院も例外ではなく、他の高校では間違いなく1年でも隊長・副隊長になれる器、と思っていたらしい。
私を評価してくれるのはとても嬉しいが『黒森峰女学院』では隊長・副隊長にはなれない、と暗に言われている気がして複雑な思いだった。
「黒森峰女学院は西住流の色が濃いので、どうしても西住姉妹が表に出てしまうのです・・・エリカさんがけっしてその二人に負けている、と言うわけではないのです・・・」
隊長である『西住まほ』、副隊長『西住みほ』の実力は私が一番知っている。
あの二人に比べられると、私はまだまだ下の方だ。
今は無理でもいつかは越えてみせる。
そのために、戦車道復活に毎日奔走する『秋秋コンビ』に手を貸してしまう。
やっぱり、高校でも戦車道をやりたいのね、私は。
なかなか戦車道復活を了承しない生徒会へのプレゼンの合間に、2週に1度大洗に帰港するタイミングで『秋秋コンビ』の片割れ『四季波秋葉』に引っ張られ、本土で行われている戦車戦『タンカスロン』を開催する。
「戦車の操縦や砲手はできるでしょ?『あの人』の代わりに、横に乗せてあげるから、やるわよ。」
こいつ・・・『四季波秋葉』は私以上に高圧的な態度で、私を無理矢理CV33に乗せて、タンカスロンに出場している。
蒼い長い髪を靡かせてCV33を走らせる姿は、地元では『蒼い閃光』と呼ばれ、ほぼ負けなしの戦績を残している。
もう一人『雷帝』と呼ばれ、ここ大洗で開催したタンカスロンでは無敗の帝王とまで言われた人間がいるらしいが、春先から一切顔を出していないらしい。
年齢、性別一切不明、顔も隠している事から、何処かの学校に入学した、社会人で春から忙しくなった、と言われているが・・・
「単純に忙しくなっただけ。大学の卒論が忙しくて大洗に帰ってこないだけ。」
「もう卒論の時期なんですか?この間、大学入ったばかりじゃなかったです?」
「教授達に泣かれて必要単位は全部1年で取れたらしい。短大より早い。卒論で戦車作る、と言っていた。」
どうやら、2人の知っている人らしい。
天才、と言われるような人間みたいだ。
私には無縁の人だな。
そんな慌ただしく忙しい数ヵ月が経ち、私も2年に進級した。
『秋秋コンビ』の努力が実ったのか、今年度から戦車道が正式に復活し履修することができた。
高校では戦車道ができるとは思っていなかったけど・・・
母校である黒森峰女学院と相対する事が叶うかもしれない。
まあ、今年は無理でしょうけど。
うまくいけば、来年の夏に隊長になった『西住みほ』と戦うことができるかもしれない。
高校での楽しみはそれかな?と思っていた。
・・・思っていた、のだが。
いつものように教室でお弁当を食べている、その時、
『普通1科2年A組西住みほ、至急生徒会室に来ること。普通1科2年A組西住みほ、至急生徒会室に来ること、以上。』
西住・・・みほ・・・?
同姓同名かもしれない
私の聞き間違いかもしれない
『あの子』がここにいるわけがない
そう納得しようと思った矢先、秋山から信じられない言葉が出た。
「あ、そういえば最近、熊本の西住流のお子さんが転校してきたって、普通1課の子が言ってたような・・・って逸見どのッ!?」
いつも一緒にお昼を食べている秋山の言葉を聞いて私は走った。
いつも行っていた生徒会室だ、場所はわかっている。
着いた頃には、もう話が始まっているのだろう。
いつもは空いている奥の生徒会室の扉は厳重に閉まり、生徒会の委員たちがいつも通り、ご飯を食べたり、庶務をしていた。
「あれ?逸見さん、何か用・・・って待ってくださいッ!!今、会長は所用のため対応できませんッ!!」
「うるさいわねッ!?私だって用事があるわよッ!!」
「もうすぐ終わる予定ですから、待っていてくださいッ!!」
「私は今ッ!!ここに用事があるのよッ!!いいから離しなさいッ!!」
委員の生徒たちが私にしがみついて、先にある扉へ行かせないようにしている。
邪魔だッ!!
しがみついていた生徒を引き剥がし、目の前の扉を蹴破った。
開かれた扉の前にいたのは、両横が長いがボブカットに近い明るい茶色の髪、とても弱々しい姿をした、私がよく知る『西住みほ』がいた。
「え?嘘・・・なんで『ここ』に・・・?」
「それは私のセリフよッ!!何で貴女がここにいるのッ!?みほッ!!」
『彼女』は「彼女」の未来のために、自身を犠牲にする。
「彼女」は『彼女』の想いを受け止めきれず、想いは重荷となりのし掛かる。
ただ一声『私は大丈夫だから』
その言葉を聞いていたなら、未来は変わったかもしれない。
だが、未来は変わらない。
そして再び彼女達は邂逅する。
新たな地、新たな仲間と共に新たな戦車道を紡いでいく。