本当に結ばれる、ただ一つの方法   作:らむだぜろ

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駆逐艦と出掛ける休日 陽炎姉妹の場合

 

 

 

 さて。二日酔いも抜けてきて、再開する交流の流れ。

 今回は数の多い陽炎の姉妹にすることにした。

 ……然し。

「問題は人数だ」

「だよね。……うちにいるのは何人だっけ?」

「10人だ。前回の朝潮と違って全員に目がいかない。それにどうにも、ヤンチャするのがいるから、心配でな。鈴谷、付き添いを頼んでいいか?」

「オッケー。鈴谷に任せて」

 鈴谷と前日の夜、執務室で仕事をしながら話していた。

 元々数の多い陽炎の姉妹。配属するのは半数程度とはいえ、個性がこいのが何人かいる。

 特に。

「問題は雪風と時津風か。……いや、雪風はいいけど、時津風がな」

「言うこと聞かないもんね時津風。遊び回ってるし」

 そう。陽炎の姉妹には彼の言うことを聞かないではしゃぐ時津風がいる。

 白露のヤンチャは言うことをしっかりと聞くがこっちはそうでもない。

 寧ろ遊んでほしい小型犬のごとくじゃれてくる悩みの種だった。

 これが以前から陽炎の姉妹を苦手とする最大の理由。

 ぶっちゃけ今でも彼女は苦手。何分子供ゆえに叱りにくい。

 悪意がないし団体行動が出来ないのは本人もある程度自覚している。 

 普段はいいがプライベートでもそれをさせると非常に困る。

 最悪スキンシップで警察沙汰になり得る。

「人数も多いし、午前と午後に分けようと思う。午前は時津風などの後半。姉たちは午前は鈴谷に任せる」

「任された。鈴谷も気合い入れていくよ」

 統率する二人は念入りに計画をたてた。

 今回は白露と同じゲーセン所望。地元にあるのは二階建ての割りと大きく広いゲーセン。

 様々なゲームがあり、遊ぶにはもってこいだ。

 比較的大人しくちゃんと接する姉達は午前鈴谷に頼み、問題の妹たちの面倒を見ることにした。

 そんなこんなで、陽炎姉妹と向かうゲーセンへのカウントダウンが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しれー! しれーってばー!」

「分かった、分かった!! 落ち着け時津風! 子供かお前は!!」

 翌朝。鎮守府前から出発した一行は早速彼とじゃれる。

 然し、暴走を始める時津風。しがみついて、彼の気を引こうとする。

 途端、背中に冷ややかな殺気を感じてゾクッと鳥肌が立った。

 慌てて振り返るも、皆は普通に話しているだけ。

 何事だろうか?

「そんなに怒ることないじゃん……。怖い、怖いなぁ」

 ビクビクする時津風。顔が怯えていた。

 ああ、やっぱり怒られていると勘違いした彼は気づかない。

 わざわざお出掛けするようの格好できた彼女たちの本音には。

 特に天津風は服に気を付けろと言われて、結構頑張った。

 尚、時津風や雪風は普段と同じだ。気にしてない。

「しれぇ、一体何して遊びますか?」

 隣を歩く雪風に聞かれる。

 なんのゲームか、と聞かれて逆に普段何しているかきく。

 すると見事にバラバラで、辛うじて共通がクレーンゲームで遊ぶのが好き、ぐらいだった。

 だが。そのクレーンという単語に、

「雪風……」

 突然、彼は不敵に笑って雪風に言うのだ。

 豹変っぷりに驚き、彼女は何かを期待されたと感じる。

 考えが思い付いたのだろうか。彼は珍しい自信に溢れた顔で、彼女に問う。

「……なにか、欲しいもんはあるか?」

 と。ああ、ゲーセン海域の戦いは勝った。

 彼女はその笑みにそんな意味不明な事を思い浮かんだと後で語った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゲーセンに到着。昼に一度集まり、交代する。

 各自、昼は好きに購入する予定で分散。

 午前中、浜風、磯風、天津風、雪風、時津風とともに行く。

 が、彼は既に豹変したままだった。何か、ヤバい感じになっていた。

「まさか、俺の意味のない特技が役にたつ日がこようとはな。安心しろ、皆。この戦、既に我が艦隊の勝利である」

「なに、意味わからないことを言っているのあなたは?」

 ドヤっとして腕を組ながら歩く彼に天津風は、そんな突っ込みをしながら進む。

 周囲はクレーンゲームだらけになった。獲物を狙う捕食者の目付きに、時津風は見上げた。

「し、しれーが……戦う男になってる!」

 感動するようにまた背中に飛び付くが、最早彼は気にしていなかった。

 周囲を注意深く探っている。

「浜風。彼はなにをしている?」

「さぁ……?」

 磯風と浜風彼の行動に意味がよくわからない。

 ふと、彼はこちらを向いた。

 目線は……天津風?

「な、なに?」

「ん、新品か。似合ってるじゃないか天津風。センスがいいと思うぞ」

 ……今更だが、ちゃんと服装が気合い入っている事に気付いた。

 完全にダメかと思っていたが、いきなりの誉め言葉に言い返す天津風。

 しまったと思うが、彼は大して気にしていない。何故なら。

「フッ……。これは良さそうだ。みんな、欲しいものあったら教えてくれ。……取るぞ」

 一つのクレーンに狙いを定めた。普通のぬいぐるみなどが置いてある。

 そのなかに、磯風が気に入りそうなものがあった。

「司令、それはいいのか?」

「皆までいうなとも、磯風。既にこの筐体は……攻略を終えた」

 彼は何でか凄く自信満々で、コインを入れて早速動かした。

 見ていて彼女たちは、悟る。彼の態度の意味を。

 数分経過。

「これでいいか?」

「……最大難易度のものだぞ。何で一度で取れるんだ……」

 彼は磯風の欲した大きなぬいぐるみを一発で確保。

 唖然とする彼女にキラキラした状態で手渡す。

「これは、緻密な計算の上で行う純粋な理屈だ。雪風の幸運とは違うぞ。……なんだ。悔しいのか?」

「……要するに、ごり押しの私には出来ないと言いたいのか。この磯風相手に」

 何と磯風に挑発をしているではないか。

 いつもいつもクレーン相手に大敗し、呻いている磯風の事を耳元で時津風がリークしていた。

「ふぅん。そう感じるのであれば。俺としても、磯風と一戦交えてみるのも吝かではない」

「よくぞ言い切った、司令。良いだろう、この磯風にその啖呵をきったこと後悔させてみせよう!」

 何か始まった。磯風VS提督のクレーンゲームの景品とりの合戦が。

 浜風が乗せられているというも、磯風は止めてくれるなという。

「司令に挑まれて戦わぬは駆逐艦の恥! 受けてたつ!」

「あーあ、始まった。磯風の悪い癖が……」

 天津風が肩を竦める。彼女は勝負から逃げるような性格ではない。

 挑まれれば如何に不利でも戦い抜く。そういう少女だ。

「ふはははは! 俺に勝てると思うなよ、磯風。クレーンは俺の海域。お前が抗ったところで勝てないことを教えてやろう。……みんな、欲しいものあったら教えてくれ。絶対に取るから」

 彼は不敵を通り越して無敵に笑う。強気だった。

 もしかして勝負するために磯風に最初にとったのか。

 司令だけありよく性格を熟知している。

 呆れた浜風と天津風は、慢心か何かかと思っていた。

 が、そうではなかった。次第に増えていく大量の荷物。

 彼が選び、戦うクレーンは確実にものが減っていた。

 片っ端から落とされる景品。呻く磯風。

 彼には難易度など関係なかった。立ち塞がるクレーンは撃破されていく。 

 小物から機械からぬいぐるみからおやつまで。狙った獲物は決して逃がさない。

 ごり押しで足掻く磯風は頭を抱えた。何故か簡単なものまでうまくいかない。

「しれぇ、スゴいです!」

「おぉー! しれーやるじゃんやるじゃん!」

 何でか他の姉妹のお土産まで聞き出して取りまくる。

 しかも大抵一回と来た。ここまで来ると笑えてくる。

「くっ……!」

「ふぅん。どうした、磯風。まさかお前あろうとも駆逐艦が油断した、なんて言い分けはしないよな?」

 二時間経過。ぐるっと一周した頃には、磯風はがっくりと項垂れていた。

 キラキラの戦意高揚の提督はドヤっと笑って勝ちを宣言。

 既に荷物は雪風と時津風も持っているほど大量にあった。

「そんな、バカなことが……」

「嘘でしょ……。意外すぎる特技だわ……」

 唖然とする二人と戦利品のお菓子を貪る二人。

 磯風は敗けを認めて、今度は共闘。したり顔の提督に続く。

「磯風、俺の支援に回ってくれ。最後は……派手に決めるぞっ!」

 彼が立ち向かう最後の筐体。それは、一番大きいサイズのデッカイ熊のぬいぐるみ。

 軽くメートルサイズであろう不細工顔の黒いものだった。

「こ、これは無理ではないか……?」

「怯むな、磯風。……お前ならば、持てる」

 流石にでかすぎる。こんなものを持ち歩くと言うから磯風でなければ体力が持たない。

 既に辟易している天津風。荷物が多すぎる。というか、調子のって取りすぎ。

「提督、その辺に」

「浜風。……お前には、あれだ。天津風にはあれ、雪風と時津風にはあっちのを贈ろう。侮るな、これでも俺は……一介の軍人だ」

 更にデカイ荷物が増えてしまう。制止を聞かない彼は、始めた。

 午後もあるからどうか失敗しますように、と願ったものの。

 ……結果は、言うまでも無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午後。お昼を軽く食べてから人数交代。

「……なにこれ?」

「鈴谷には、瑞雲な。空母になる前に世話になったろ」

 大量の戦利品に唖然とした姉たち。早速配る。

 鈴谷には航巡時代に世話になった瑞雲の模型。

 また、微妙なものをくれた。嫌いじゃないが。

「ありがと……え、スゴいこれラジコンだ!」

「あ、ラジコン? 模型じゃないのか?」

 訂正。彼は模型と思ったが違うらしい。

 非売品の限定ラジコンとはまた高そうな。

 しかも良くできている。

 お菓子をみんなで山分けして、姉たちにチェンジ。

 陽炎、不知火、初風、萩風、秋雲。末っ子だが姉扱いされている秋雲はいつものこと。

「へえ……いいねえ、今の提督。輝いてるねえ」

 秋雲はニヤニヤしながら彼を目で追っている。

 薄い本のネタになりそうだ。趣味とはいえ本場にも勝るので、後で送っておこう。

「よーし、司令! 私とも勝負しよ!」

 長女が彼に挑む。彼は内容によると言うが、彼女は笑って筐体を指差す。

 ……ゾンビを撃ち殺すシューティングだった。彼はまたも、ドヤっとし笑う。

 これもまた、得意なジャンルだ。

「フッ。長女のプライド、へし折ってくれるわ」

「おぅ? 言うじゃん。だったら負けたら……ご褒美、頂戴?」

「いいぞ、勝てればな」

 おっと、と秋雲に戦慄が走る。姉は言質をとった。

 ご褒美とは多分、指輪だ。姉はこれをダシに彼に指輪を要求する気だ。

 現に練度は最大の陽炎ならば可能であろう。

 ……提督を好いている酔狂な筆頭の一人だから。

「ねえ、わたしともやってよ。姉さんの後でいいわ」

 そして初風の参戦。恋の勝負は激化の一途をたどる。

 若干ムッとする陽炎であるが勝てばよいと改めて、彼に挑む。 

 のほほーんと萩風は応援していた。 

 彼女はあまり関係なく、不知火はずっと何かを観察して黙っていた。

 秋雲はこっそりとメモを取りながら思う。バトル……開始!

 

 

 

 

 

 スコアで勝負を決める協力プレイ。  

 流石に普段から艤装で戦う艦娘にシューティングで挑むのは無謀ではないか。

 そう考えていた秋雲。然し……。

「し、司令だけ何でクリティカルそんなに出るの!?」

「ふはははは!! 陽炎、お前の戦いのデータを知る俺に挑むとは愚行なり! 急所に当てる訓練をしていることを知らないとでも思ったか!?」

「くぅ!?」

 陽炎が普通に負けてる。まず、提督は点数稼ぎがうますぎる。

 的確にクリティカルのみを出して、弾数で稼ぐ陽炎と大差をつけてしまっている。

 普段から弾幕で圧倒する陽炎のやり方を知るから勝っている。

 ついでにゲームの経験値の差もある。

 提督は得意なゲームにはかなり補正が入る。そう、外野の秋雲は分析した。

 結果、陽炎大敗。本気で悔しそうに地団駄を踏んでいた。

「……次はわたしよ。姉さんと同じだと思わないで」

 続いて同じ条件で挑む初風。強気にリズムゲームで挑むが……。

「甘いな。お前は一体何人の相手を倒したか知らないが……俺に勝ちたければ修羅でこい。鬼で倒せると思うなよ!」

「か、怪物……!! オートプレイでもしてるの!?」

 タイミングバッチリのフルコンボでフルボッコ。

 見るも鮮やかなオートプレイさながらのフルコンボは見ていて壮大だった。

 初風も大敗し無様に倒れた。

「……司令。不知火とも一戦、お願いします」

 遂に、陽炎一番のゲーマーが名乗り出た。

 冷静な分析、途切れない集中で追随を許さない孤高の不知火の参戦だ。

「で、どれで?」

 黙って司令をつれる彼女は、シンプルなパズルゲームの前で座った。

「司令、こういう系統がお好きと言うか、お得意ですよね。……ですが、その程度で不知火を倒せるとでも?」

 戦艦艦娘の匹敵する眼光でにらみあげる彼女に、提督は傲慢に笑っていた。

「……面白い。不知火、お前は違うようだな。パーフェクトなパズルの真髄を見せてくれ」

 秋雲はひたすらペンを走らせる。白熱してきた。

 火花を散らしてにらみあう提督と艦娘。様になっている。

 萩風はのんびりとお茶をすすっている。朗らかなもんだ。

 それはいいとして。上から降ってくる図形を打ち消すシンプルなゲームだが……。

 数分もするともうデッドヒートしているではないか。

「不知火は……強いな。俺についてくるか」

「司令こそ。見事なお手際。然し、不知火は負けません」

 すごい勢いで落ちてくる図形を消している。ひたすら集中している。

 時折話をしながら、淡々と持久戦に持ち込んだ。

「不知火とやりあってる……」

「すごいわ……」

 負け組が眺めているなか、遂に。

「あ……ヤバい。詰んだわ」

 提督の画面で図形が崩壊。

 ミスったらしくゲームオーバーになった。

 不知火が接戦のうえ、辛くも勝利。クールに脂汗を流してサムズアップの不知火。

「悔しいなあ。不知火、今度リベンジさせてくれ」

「構いません。司令なら何時でもお受けいたします」

 最後にガシッと熱い握手をして終わった。秋雲のメモも終了。

 これは……良いものが出来そうだ。

 丁度、他の面子もそろそろ帰ると言うので、戻ることになった。

 一日楽しく騒いで、彼のフィールドであることを知った。ゲーセンは彼の庭だ。

 お土産物ゲットして、良い休日になった。

 皆が笑顔になるのを、彼はどこか嬉しそうに見つめていた……。

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