本当に結ばれる、ただ一つの方法   作:らむだぜろ

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雪の降る日には

 

 

 

 

 その日は春一番が近い最近では珍しい、大雪だった。

 鎮守府に積もった雪を艦娘たちが雪掻きを始めている。

「雪か……」

 雪掻きを終えて遊んでいる駆逐艦たちの声を聞きながら仕事を続ける。

 彼は終わったら遊んでいいと言ったのでみんな楽しそうに遊んでいた。

「気になる?」

 飛鷹が書類を纏めながら彼に問う。

「そうさな。雪……嫌いじゃない」

 何て言いながら。

 彼は窓を眺めて呟いた。

「雪、駆逐艦……。何だろうな、このベストマッチな感じ。飛鷹とガトリングがベストマッチ並にしっくり来るぞ」

「鷹と機関銃はミスマッチだから。そんな組み合わせはあの特撮だけでいいわ。っていうか、鷹違いよ」

「飛鷹! 球磨! 多摩! このコンボは絶対強い。うん、違いない」

「ぶっ飛ばすわよ貴方。虎と飛蝗に謝りなさい」

 阿呆なことを抜かしている彼を殴りつつ、彼女も外を見る。

 外では、「こ、このビッグセブンが……ぐあああああーーー!」という戦艦の断末魔が聞こえた。

 何をやっているんだろうか。

 仕事を早めに切り上げて、彼も少し様子を見に行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 仕事を早めに終わらせて外に出る。

 すると、吹雪たちの姉妹が仲良く遊んでいる。

 吹雪、白雪、初雪、磯波の四人だった。初雪が外に出るのは珍しい。

 あの絶賛引きこもりでインドアの彼女が。

「あ、司令官!」

 吹雪が気付いて声をかけてきた。

 防寒具をきて、手袋をしている。遊んでいるようだ。

「おう。雪かきありがとうな。ほれ、差し入れ」

 缶のお汁粉を渡すと喜んで四人は寄ってきた。

 他の艦娘には内緒。一番率先してやっていたと他から聞いたのでご褒美だ。

「……流石ロリコン。駆逐艦に優しいね」

「おい待てそこの引きこもり。誰がロリコンだ。雪山に埋めんぞお前」

「きゃーこわーい」

 初雪がボソッと見上げて言うので脅すと、棒読みで逃げる。

 いわく、炬燵を吹雪がぶっ壊して温まるのが困難になったので出てきているらしい。

「吹雪、何した」

「すいません……。蹴躓いて壊しちゃいまして」

「よし、分かった。確か予備が倉庫にあるから持ってけ。動く保証はないが、一応試してみな」

 申し訳ない顔で言う吹雪に、彼は仕舞ってある予備を思い出す。

 確か、彼が昔使っていたもので、在庫処分の時に実費で購入したのだ。

 あまり使ってないが多分動く。倉庫の場所を教えて、帰りに持っていくとのこと。

 ここで、駆逐艦たちで雪合戦をしたりかまくらを作って遊んでいるらしい。

 暇をしていた長門相手に駆逐艦が群がり、袋叩きにしていた。

 現在ビッグセブンはビックリセブンになっていた。何で雪ダルマになっているのか。

 凍えて軽く死にそうだが。本人は満足しているので良いとして。

「司令官も一緒にしますか? 雪合戦。よい運動になりますよ?」

 白雪も雪合戦へと誘う。

 雪合戦するなら、皆で騒ぐのも良いだろう。

 彼は少し待っていてもらい、一度姿を消す。

 数分後、戻ってきた。何でも人手を集めたのと風呂の準備をしていたようだ。

 激しい運動の後は汗を流す必要がある。寒空の下なら尚更。

「んじゃ、少し皆で遊ぶとしますかね」

 暇な艦娘を集めて、対戦形式で雪合戦を始めることにした。

 但しバトルロワイヤル。個人戦、ギブアップか、戦闘不能になるまでやる。

 飛鷹が二階で呆れたようにこっちを見下ろしていたが、館内放送で外で遊んでるから参加自由と知らせてくれた。

 尚、提督参加と言うと一斉に増えたのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鎮守府の広場にて、ソルジャーは集まった。

 時間制限に生き残ったものが勝利。勝ったものには彼が自腹で買える範囲で好きなものを買ってくれる。

 但し、人数制限あり。残ったものは残ったもので戦って規定内に収まるまで繰り返す。

 特別ルールとして提督を打ち倒したものには、彼ができる範囲のお願いを聞いてくれる。

 ……これで、彼は袋叩きにされるであろう。飛鷹がお茶を飲みながら温かい室内でそう、外に放送をかける。

 何かの大会みたいになっていた。しかも、またも指輪狙いで目付きが変わる艦娘がちらほら。

「くっ……!! おのれ飛鷹め!」

 ターゲットにされる彼は一歩気圧され、下がる。

 狙われる。まず初手で狙われる。またこの展開だった。

『それじゃ、始めるわねー。よーい、スタート!』

 飛鷹の掛け声でバトル開始。一斉に雪玉を作って彼に投げる。

 彼はすでに逃げていた。迷うことなく、逃走を選ぶ。

「三十六計逃げるが勝ちってな! やれるもんならやってみやがれ! 俺を簡単に倒せると思うなよ!!」

 彼は雪の山に隠れてやり過ごし、挑発する。いらっとしたのか、川内や足柄が彼に猛攻をかける。

 金剛や榛名も参加して、ノリノリで投げまくるが彼は撤退している。

 一発も当たらない。

「待ちなさい!!」

「逃がすかー!」

 重巡、軽巡に戦艦が追いかける。

 然し建物の影に隠れたと思って追いかけると忽然と姿を消している。

 周囲を探すも、見当たらない。

 その時。

 ゴスッ!! と凄い音が。悲鳴をあげて川内が視界から吹っ飛んで消える。

「なっ……!?」

「忍者、討ち取ったり。……悪くありませんね」

 何と屋根の上から、オモチャの弓を構えて無表情で見下ろす加賀が、矢に雪玉くっつけて射出していた。

 直撃した川内は頭から雪に突っ込みもがいている。

 足柄はさらに気づく。

「悪いな、足柄。……地ビールを奢ってもらった手前、あいつをやらせる訳にはいかないんだ」

 背後には姉妹の那智が裏切って足柄を打ち取りに来ていた。

「ちょ、那智!?」

「遊びでもこの那智は容赦せんぞ。覚悟してもらおうか!!」

 那智の反逆にあう足柄も雪まみれになるのに、時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方。

「提督、待つネ!!」

「甘いわ金剛!! バーニングしたって俺には届かぬ!!」

「うー! いけずー!!」

 戦艦は彼に追い付くも、逃げ回っている彼を捕らえられない。

 駆逐艦も応援に入るが、

「俺を甘く見るなよ!! ……カモーーーーン、朝潮ーーー! 夕立ーーーー!」

 大声で朝潮と夕立を呼ぶ。すると、何処からかキラキラした目で登場する朝潮。

 そして、何故か雪山から顔を出して雪まみれの夕立が現れた!!

「何でしょう、司令官!」

「ぽい?」

 二人して、飛来する雪玉を叩き落として彼に問う。

「良い子だ、朝潮。……金剛を懲らしめてやりなさい。遠慮しないで……ね?」

「はいっ!! 朝潮、目標を駆逐します!」

「夕立、後でたっぷり遊んであげるぞ。……榛名を、狩れ。出来るな?」

「ぽいっ!!」

 幼女をたらしこんで、味方につけた。ギラッと此方を振り返る二人。

 ……目がマジだった。

「ろ、ロリコンが開き直ったネ!!」

「喧しいわ!! 率先して俺狙いやがって! 魂胆見え見えのお前らに倒されるのはゴメンだ!」

 忠犬改め恋する狼と、ご主人様大好きな狂犬が獲物目掛けて雪玉を持って突撃。

 最近、扱いが朝潮のおかげで慣れてきた。甘やかせば大体言うことを聞く。

 更に応援の駆逐艦には、吹雪たちを頼む。

「おこたのお礼……する。やっつける!」

「磯波、護衛任務開始します!」

「白雪、出ます」

「吹雪、司令官をお守りします!! みんな、やるよー!!」

 長女の掛け声でバトル開始。雪玉の応酬が始まっているなか、彼は離脱する。

 味方は着々と増えている。一人でも何とかなる、気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……鈴谷。瑞雲使うとは卑怯だろお前」

「ラジコンつかっちゃいけないとは聞いてないけど?」

 で、逃げた先で鈴谷の襲撃を寸前で回避。

 この間のお土産のラジコンに雪玉を乗っけて上から落としてきた。

 不意討ちを食らいそうになって危なかった。

「鈴谷、手加減しないよ? 買収は受け付けるけど、結構ハードなの要求するかも」

「受け付けるんかい……。じゃあなんだ、今晩一緒に飯でもどう? 二人きりならいいだろ?」

「買収されました。喜んで護衛お受けいたします!」

「チョロいなあお前も!!」

 彼女もなんだかんだ好き好きオーラ全開なので、言いくるめると割りとすぐに落ちる。

 無邪気に笑って、一緒についてくる鈴谷。……なんかかわいい生き物がいる。

 これがときめきというやつか。女性がかわいいと思うのがトキメキか。

 出来れば青春時代に知りたかった。

 だが。

「よし、長門艦隊出撃するぞ!! 目標、護衛及び提督!! 主砲、撃てー!!」

 何か駆逐艦を従えた長門が待ち構えていた。陽炎姉妹と白露姉妹の数が多いのを連れてきた。

 すげえ数の雪玉雨が降り注ぐ。

「ヴェアアアアーーー!?」

「ひぃぃぃーーーーー!?」

 甘い空気はどこへその。

 彼と鈴谷は血相を変えて逃げ出した。 

 ならば、此方の味方も呼ぶ。

「満潮、ヘルプー! 霞も来てくれー!!」

 友人の満潮、ついでに多分仲良しになっていると思う霞を呼ぶ。

「え、何事!?」

「どうしたの、敵襲!?」

 屋根の上から華麗に参上。ツンデレ姉妹のふたりも参戦した。

 後ろにはご褒美目当ての駆逐艦と長門が怒濤の勢いで追ってくる。

 見つけるや、事情を察して共に走る。

「長門さん、大人げないなぁもう!!」

 霞は呆れつつ、迎撃しながら一緒に逃げる。

「陽炎妹と、白露妹……。あれ、夕立がいないけどどうしたの?」

 満潮に榛名を狩るように命じたと言う。

「うわ、えげつな……」

 夕立にかかれば、戦艦だろうがぶっ飛ばす。

 伊達に異名が悪夢とか狂犬と言われてはいない。

「言うな友よ。後でホルマリンの新作貸すから今は助けて」

「太っ腹ね、了解よ。長門を潰せば勝ちかな。旗艦だと思うけど」

 長門が指揮する討伐艦隊。然し数の暴力には勝ち目は薄い。

 霞も満潮も、既に練度は最大値だが、相手も最大値が無数にいる。というか、長門が最大値。

「鈴谷も長門さん相手じゃ……」

 限界突破している軽空母の鈴谷でも、戦艦はキツイ。

 飛鷹は休んで一服しているし、加賀は……軽巡を潰すように手配している。

 那智は先んじて一本、万もする地ビールを奢っておいたから助けてくれる。

 策を考えていると、朝潮が金剛を気絶するまで追いたてて勝利し、合流してきた。

 一度、分かれ道を突っ切って、倉庫に侵入。

 息を整えつつ、一回休憩する。

 朝潮は依然元気であり、流石は覚醒した狼。戦艦でも普通に倒してきた。

「司令官、褒めてください!」

「ありがとうな、朝潮。よしよし」

 以前と違って性格が夕立化した朝潮は、頭を撫でられて表情が恍惚としている。

 とろけただらしない堕落しきった顔に、妹二人は引いていた。

「うわ……朝潮がキャラ崩壊起こしてる……」

「ロリコンじゃないのは知ってるけど、こりゃ誤解されるわ……」

 因みに、贔屓はダメな彼は二人も公平に頭を撫でた。

「……何で今するのかな……」

「き、嫌いじゃないけど釈然としないわね……」

 二人して、そっぽを向いて頬を赤くする。

 凄く照れていた。

「……鈴谷は?」

「お前もかい。もー……しょうがねえなあ……」

 仕方なく、ねだってきた鈴谷も撫でる。こっちも蕩けた表情で笑う。

 正直、ちょっと彼も顔がひきつった。

「それで、司令官。これからどうしましょうか?」

「いっそ、この際決戦でもするか。長門艦隊と俺艦隊。加賀と那智、後は……ああ、イムヤ呼ぶか。あいつ、潜伏と狙撃得意だし」

 本来参加していないイムヤまで巻き込む提督。取り敢えず決戦をするのは賛成だった。

 逃げ回るのはみんな、あきた。派手に戦って派手に楽しもう。

 彼らは参加する味方を集めに、倉庫を後にした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふはははははは! 何処を探している長門よ。俺はここだぁーー!!」

 

 広間に戻り、死屍累々の中、目立つ雪山に立って堂々と彼は叫ぶ。

 戻っていた長門艦隊は、その布陣に唖然とする。

「なん、と……!?」

 鎮守府最大の艦載数の空母、加賀による艦載機の雪玉搭載が見上げたいっぱいに待機して、鈴谷の艦載機も加わってすごい数で埋め尽くされている。

 更には重巡那智や朝潮姉妹、吹雪姉妹に夕立、唆された曙や翔鶴まで巻き込んで、凄まじい数で圧殺する気満々。

 本当の大人げない奴がここにいた。

「提督。協力したら新型の主砲、手配してくれるんだよね?」

「約束は守るぞ曙。高角砲は俺も気になってたし。お前がテスターしてくれ」

「はいはい。……じゃあ、悪いけど本気でいくわよ」

 曙は新型配備を報酬に手伝って。

「提督……。烈風の改良型は、他の方にお譲りする方が……」

「大丈夫。全員の手配するし、先駆けで翔鶴にやってもらうだけ」

「えぇ……。長門さん、ほんとにごめんなさい……」

 翔鶴は頼み込まれて渋々了解。

(……此方イムヤ。長門さんの背後に回りました。雪の中の移動は正直呼吸できなくて若干辛いです)

(イムヤ、本当ありがとう。後で飯おごるから、頑張って!)

(はーい。雪の中のスナイパーなんて経験、早々できないから楽しいし、気にしないで司令官)

 イムヤは雪の中を潜って移動すると言う潜水艦ならぬ潜雪艦で、死角に回った。

 暇をしていたので運動不足解消と興味で参加している。

「はーっはっはっはっ! 戦艦長門よ、俺は今から貴様に挑戦状を叩きつける。かのビッグセブンが、逃げ出すなんてことはしないよな?」

 堂々と彼は腕を組んで挑発する。

 ヤバイ数の艦載機に怯みながら長門は言い返した。

「くっ……!! あなたは、意外と大人げないな!」

「いや、わりと何かヤバそうなことをお願いする面子なんで俺も本気だした。悪いけど、お前らの色々な意味で憲兵のお友だちになりそうなお願いは怖いから嫌だぞ!! よし。皆の衆、絶滅タイムだ!! やっちまえーーー!!」

 彼が命じると、一斉に艦載機と彼女たちが動く。

 ここまで絶望的な戦力を用意したのは、こっちを脅威として判断したからか。

 長門は悟る。この人、遊びにも人脈と武器使うガチな人だった。 

 迎撃と叫ぶ前に、

「……その首、貰った!」

 ずぼっと後ろの雪山からイムヤが登場。

 魚雷の形に精製した雪の塊を投擲。長門の後頭部にぶつかって、長門はつんのめった。

(用心深いに程がある! ここまでするか!?)

 長門にたいして異様に警戒していた。倒れ混む長門に集中砲火。

 雪玉の嵐が吹き荒ぶ。彼女は呻き声をあげる前に雪に埋もれた。

 あとは烏合の衆。加賀と鈴谷と狼と狂犬が引っ掻き回し、提督はいつの間にか倒されていた。

 結局、時間制限に生き残ったのは提督の味方が大半。繰り返した結果、一部が美味しい思いをした。

 なお、提督の討伐に成功したのは……。

「私、やらないとは言ってないわよ?」

「お前って空母は!! 一服しながら俺を倒すな!!」

 ……一服しながら艦載機を紛れ込ませていた飛鷹だった。

 ちゃっかりしているが、彼女は彼に新しい洋服を一着、プレゼントしてもらうのだった。

 

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