本当に結ばれる、ただ一つの方法   作:らむだぜろ

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今回少しメタなことが入っています。
空母は本当に追い詰められると、装甲をしてないと戦えないのか? という疑問に自分なりの答えを出した結果です。



誰が戦えない言った?

 

 

 

 ……その愚行は提督であれば決してやらないことである。

「えっ!? いや、無茶苦茶ですよ!? 幾らなんでも、そんなの出来ません!!」

 それは、祥鳳と瑞鳳の姉妹が演習であげた実力の確認に、近海にいる軽巡や重巡を倒しに出撃するという哨戒任務。

 面子が全員空母になるのは分かる。然し、提督は無茶苦茶なことを言い出した。

「みんなは戦闘用の艦載機持ってかないから宜しく、二人とも」

 何と空母の命である艦載機を装備せずに近海とはいえ、出撃すると言い出した。

 祥鳳と瑞鳳は耳を疑った。死ねと言われたようなもの。一方的にやられろと言うのか。

 反論する二人に対して、随伴の四人はというと。

「良いわよ、別に。想定する相手に戦艦でもいない限りは問題ないわ」

「仮に居たとしても、訓練としては寧ろ好都合。一度試してみたかったので、丁度いい」

「……わたしも……ですよね? まあ、日々特訓はしてるので実戦に使えるか、やってみます……」

「了解。ボーキサイトの余裕がないなら、少し控えるわね」

 翔鶴以外は普通に受け入れた。加賀も飛鷹もけろっと。

 葛城は資材の備蓄を確認しながら、答える余裕っぷり。

 唖然とする二人。確かに葛城と飛鷹はケッコンカッコカリを済ませて上限を開放している。

 然し、空母にとっての命を捨てて何が出来るのか。

 祥鳳と瑞鳳は反論するも、翔鶴が宥めた。

「そう、思うでしょう? ……分かるわ。でも、この人たちは全くもって関係ないのよ。行けば分かるから、ね?」

 一応、訓練用の使いやすい艦載機を二人には装備している。

 今回はここに来て初めての実戦。大先輩達にアドバイスを貰いながら、強くなろうと言うことだが。

 近海にはそんなに強い深海棲艦はいない。

 常時ローテーションで警備艦隊が哨戒し、見つけ次第問答無用で攻撃するので、あまり派手な戦闘にはならない。

 今回のは訓練の色が大きい。彼の言葉に絶句するも、周囲は大丈夫と断言する。

「私達もこういう実戦しておかないと、いざってときに役に立たないから。心配しないで」

「正規空母は伊達じゃありません」

「平気だってば。二人して、心配性ね」

 ……おかしいのは祥鳳と瑞鳳なのか。

 教本には艦載機のない空母などただの案山子。

 大破して飛行甲板を失っても同義。空母は艦載機あっての物種。

 それを……捨てる? 意味がさっぱり分からない。

「兎に角、いってらっしゃい。無理しないでねー」

「最初から無理だと思う……」

 瑞鳳の呟きは聞こえていないだろう。

 彼は苦い顔で見ている鈴谷に見送られながら、近海の哨戒及び訓練へと出撃した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 近海に到着。ここから遊撃して深海棲艦の撃滅に入る。

 偵察機を飛ばす一行。あたふたする祥鳳と瑞鳳に、丁寧に皆で教えてくれる。

「一回に大量に飛ばすと、ちゃんと分散しないわ。無理しないで」

 飛鷹の言う通り、一度に大量に飛ばすと分散するまで時間がかかる。

 上手く扱うコツを教わりながら、皆で広域の索敵を開始。

 準備ももう少し手早く出来るようにと、加賀が二人に、そして翔鶴に言う。

 然し、と瑞鳳は思う。加賀が意外に親身に教えてくれるのが驚いた。

 もう少し高圧的で、プライドが高いものと思っていたが、彼女はとても優しい。

 仲が悪いと思っていた翔鶴にも区別なしに接している。

 不思議なもので、やはり所属する鎮守府によって艦娘の性格にも影響するらしい。

「瑞鳳、ぼさっとしない。偏り始めていますよ」

「わわ、ごめんなさい」

 加賀に指摘されて慌てて修正。流石は正規空母。

 放った偵察機の数が凄まじく多い。大体50はいるだろうか。

 しかもしっかりと分散して広域を担当している。

 高い練度は憧れる。たくさんいるのにその負荷を平然と緻密に操る技術も凄い。

「……飛鷹。イ級の群れいるわよ。どうするの?」

 加賀が南西にイ級の群れを発見。現場を指揮を担当する旗艦の飛鷹に問う。

 飛鷹は練習相手に選び、移動開始。戦うようだ。

 周囲を警戒しながら、進んでいくと邂逅。目視で敵を発見した。

「さて……。祥鳳、瑞鳳。やってみなさい」

 一番槍は加賀が譲ってくれた。

 相手は発見したようで、主砲を口から突きだし撃つ。

 適当に回避する三人、若干テンパる翔鶴にあわてふためく祥鳳と瑞鳳。

 何故か翔鶴も二人につられてあわあわとしている。

「翔鶴さん、大丈夫?」

 葛城に心配される始末に、彼女も深呼吸して落ち着いた。

 その間に飛来する主砲はと言うと。

「……ふんっ!」

「よっと」

 加賀が豪快に裏拳で吹っ飛ばし、お札を空中にばらまいて飛鷹が防いでいた。

 駆逐艦と言えどそこそこの火力はある。加賀は手袋をした手で弾くからか怪我はない。

 飛鷹のお札に阻まれて、着弾して爆発するもお札は焼けずに漂っている。

 ……何が起きているのか。唖然とする二人に、小声で翔鶴が言う。

「……あの二人は参考にしない方がいいわ。加賀さんは下手すると力が戦艦並みに強いし、飛鷹さんのお札は並大抵の攻撃じゃ突破できないの。葛城は……」

「ちょっと露払いするわね!」

 翔鶴が指差す方で、葛城は何と空母なのに両手に機銃を構えて掃射。

 イ級目掛けて吐き出される弾丸の雨。数秒浴びて何匹か爆発して轟沈。

 言葉を失う二人に、翔鶴は続ける。

「……葛城は機銃の使い方がうまいし、そもそも器用だから。艤装を改造して、空母でも使える機銃なんだけど……実際、喜んで使うのはあの子くらいだから、実質専用装備になっているわ」

 翔鶴いわく、弓が上手でクロスボウは主武装、いざとなれば飛鷹直伝のお札も使える万能ぶり。

 器用万能の彼女は今回は機銃を主武装に参上しているらしく。

「艦載機無くても、意外と空母も戦えるのよ。武器があって、それを使う腕前があれば、だけどね」

 テンションの下がる翔鶴は教本だけが全てじゃないと二人に語る。

 二人も納得した。確かにあれは凄い。

「……反撃しないの? 獲物、全部倒しちゃうわよ?」

 飛鷹に言われてすぐに発艦。反撃を開始する。

 祥鳳の艦載機も瑞鳳の艦載機も今回は旧式なので性能は微妙。

 瑞鳳お気に入りの艦載機なので、本人は喜んで使うが……。

 如何せん、使い方が下手なので撃ち漏らす。何匹か逃げ延びて反撃の雷撃を発射。

「回避するわよー。足元注意ねー」

 余裕綽々で、飛鷹に続いて艦隊は移動。

 魚雷は明後日の方角に流れていった。

 おっかなびっくりの初心者たちも、カルガモのように一緒に動くとあら不思議。

 思っていた以上にスムーズに回避できる。

「……飛鷹、少し近づいてもいいかしら?」

「接近するの? いいけど、まさか加賀……」

 加賀が接近を提案。飛鷹は予想がついたが了承。

 嫌な予感がする。飛鷹がここから少し見ていてと言うので黙ってついていく。

「ああ……始まった。亜流の加賀さんの戦闘スタイルが……」

 葛城も読めた。翔鶴は諦めた。好き勝手を割りと認めるこの鎮守府では型破りな方法も有効なら受け入れる。

 加賀が仲間を呼び集めて元通りのイ級の群れに単身で突撃。

 援護に、翔鶴が通常の矢を放つ。一匹の脳天に突き刺さり、なぜか爆散。

 驚く二人に葛城が説明。提督が考案した、艦載機抜きでも戦える方法。 

 ……持っている弓で戦えばいいじゃん? という本末転倒のやり方だった。

 弓は武器で、矢さえあれば戦える。

 飛行甲板を失っても、艦載機が無くても弓と矢があれば戦闘続行ぐらいは可能。

 非常時の武器なので、速度と射程は通常よりも遥かに劣る。

 射程は使い手によるが、翔鶴だと駆逐艦の主砲とほぼ同じぐらい。

 連射は慣れによって大きく差が生じるが、翔鶴はあまり早くない。

 葛城は混合のやり方でするのでマチマチだが、ある程度の妥協まではいく。

 ……例外はあの加賀だ。彼女の射程は何と重巡と同等。

 連射も一定間隔で可能という化け物じみた差がある。

 威力は皆、矢じりに高性能爆薬を仕込んであり、刺さったりぶつかったりすると爆裂するのだそうで。

 大体、これも重巡の主砲と威力が同等。普段から使っている武器を使いこなせない訳がない。

 なので、艦載機が失われても、飛行甲板が破壊されてもここの空母は逃げるぐらいの芸当はできるらしい。

 兎に角死なない為の物なので、非常時の武装ゆえ貧弱さはあるとしても。

 祥鳳も瑞鳳もそんな技術は知らなかった。これを覚えろと最終的に要求されるのだそうで。

「大丈夫。普段から使っているものだし、直ぐに覚えられるわ」

 翔鶴も始めて一ヶ月程度でここまで出来るようになった。

 それは、あそこでイ級相手に格闘を挑むという意味不明な事をする加賀がいたから。

 弓に関して加賀は一流だ。彼女が先生ならば短期間で覚えられる……。

「イ級を殴ってる!?」

 何と加賀、数メートルはあるイ級が海面から飛び上がって噛み殺そうとするのを掴んでいた。

 挙げ句、拳をしっかりと握り、力一杯に殴る。

 重たそうな巨体が面白いように宙に浮かぶイ級を、目にも止まらぬ早業で弓を構えて射撃。

 落ちてくる前にイ級が爆裂して死んだ。汚い花火だった。

「殺りました」

 ゆっくりと振り返り、無表情なのにどこか勝ち誇り、サムズアップ。

 ガタガタ震えて、互いに抱き合う祥鳳と瑞鳳。空母の概念が乱れている。

「言ったでしょ。パワーは戦艦と同じぐらいだって。あの人、長門さんと腕相撲して普通に勝てるのよ?」

 何て人だ。加賀というのは空母じゃない。よくわからない戦艦に似た何かだ。

 以前ピンチになったときに徒手空拳で戦うしかなくなり、最後の手段で殴りあいを決行。

 その際、戦艦の深海棲艦を接戦の上で倒したこともあるのだそうで。

 以後、拳も武器と認識したそこの青い空母は時々深海棲艦相手に殴りあいをして鈍らないようにしていると。

 ……んなバカな、と葛城も思うが長いこと生きていると必要に応じて様々な技術を取り入れるものらしく。

 型破りな戦法も当たり前になって久しいと葛城が語る。遠い目をしていた。

 騒ぎに気がついてウジャウジャ敵が寄ってきた。

 見れば戦艦はいなくても、軽巡は無数にいる。

 ゾッとする祥鳳と瑞鳳を尻目に。

「……悪くありません。翔鶴、援護を。立ちなさい二人とも。戦いはこれからですよ」

 ごきりごきりと首を回す最早空母じゃない艦娘が、弓を翔鶴に預けて殴りあいの特訓を始めていた。

「……程ほどに、お願いしますね加賀さん。手本になりませんから」

 ため息をつく翔鶴に頷いて、後方の敵に突撃する加賀と援護をする翔鶴。

 葛城が祥鳳と瑞鳳を守りながら雑魚を掃討すると飛鷹がいった。

 前方の最も数が多い場所は飛鷹が責任とって請け負うというのだ。

 無茶な、とも思うが……。

「艦載機がないと戦えないなんて、誰が言ったの?」

 自信満々の飛鷹は、無数のお札を空中に展開した。

 唯一、式神と呼ばれる特殊な方法を使う飛鷹。式神には色々な物がある。

 例えば、自動で敵を発見して追尾、爆発する式神とか。

 魚雷の形になってぶん投げるとこれまた自動追尾で追い回す式神とか。

 機銃の式神による弾幕とか。汎用性は一番高い。

 連続する爆発音。綺麗な炎が目の前を染め上げる。

 随分長い距離を駆け抜けていった。もう、言葉を失う祥鳳と瑞鳳。

 常識が通用しないのは見てわかった。 

 基礎の能力をあげるだけでここまで艦娘というのは強くなるようだ。

「はい。じゃあ、とっととやっつけるわよ。頑張って。フォローはするわ」

 黒煙をあげる眼前を見据えて飛鷹は朗らかに言った。

 無茶苦茶すぎる。何がどうすればこんな戦法が許されるのか。

 迎撃のために、二人は空母として正しいやり方で戦う。

 こんな色物際もの空母には決して染まらぬと、心の底で誓いながら。

 生きるために。今は、とりあえず全力を尽くすのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 追記として楽勝で勝った。

 然し新人のメンタルが死んだようで、彼女たちは空母として戦いたいので曲芸のような真似は嫌だと提督に直訴した。

 結果、二人は正統な、真っ当な空母として戦うことが決定した。

 ……何故か加賀が不満そうにしているのは、また違うお話である。

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