本当に結ばれる、ただ一つの方法   作:らむだぜろ

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今回は短めです。
少々、ご意見が欲しいので良ければ活動報告の方もご覧ください。


探し出す未来に

 

 

 

 

 

 ……夢を、見た。

 誰かと幸せになる夢だ。

 それが、誰だったかまでは……覚えていない。

 でも、多分顔見知りだろう。知っている声だった。

 彼女は彼に言った。幸せにしてくれてありがとう、と。

 顔の表情は見えなかったが、恐らく満面の笑みだった。

 左手の指に、銀色の煌めきを見せて微笑んでいたのは覚えている。

 ……まさかとは思う。彼が、誰かを幸せにできた夢でも見たのか。

 そんな器量のない卑屈な臆病者が。

 恋も愛も知らないような男が。

 現状を変えることも方法も知らず、苦しみを強いている男が。

(……願望、だな)

 思ってしまったのだ。もしも、幸福にする方法があるなら。

 彼女たちに笑顔にできる方法があるなら。

 そして、自分にできるのなら。やりたい。

 そう、漠然と考えていたのだ。

 烏滸がましい男。浅ましい男。救いのない男。

 彼ができるわけないのに、と自分のなかで斜に構えて嘲笑う自分が言う。

 同時に。

 お前がするんだ。お前が答えるんだ。お前の意思で、お前の心で。

 自分しか答えは出せないと、叫んでいる自分もいた。

 ……出来るのかどうかなんてもうどうでもいいのかもしれない。

 やるんだ。やりたいんだ。彼女たちが本当の意味で幸せになれる方法で。

 ……いや、違うか。彼にできるのは複数じゃない。一人だけ。

(……俺は、一人しか幸せにできない。だって、それが……恋だろう?)

 彼女たち、ではなく。彼女を、であった。

 彼にだって分かる。恋愛は、戦争と同じ。勝てば結ばれる。負ければ失う。

 その二極化しか、終わりはない。選べない、なんて失礼な答えじゃ済ませない。

 選ばない、と言うのならまだ分かる。それも、一つの結末である。

 全員、なんて不誠実な事はしたくない。そんな甲斐性もない。

 自分のような小さな男には、一人だけで精一杯だろう。分かりきったことだった。

(……探すか)

 自分が選び、結ばれた彼女を幸福にできる方法を。

 この戦争を終わらせて幸せに。そんな理想はいらない。

 彼にその実力はないのだから。そんな言葉は英雄が言えばいい。

 彼は凡人。凡才。身の丈にあった方法で、たった一人を守ることが限界だ。

 戦争をしているこの世界で、彼にできる流儀で。

 彼が、選んだ相手を。この身が果てるまで守ろうと思う。

 だって、それが彼女に対する、最大の誠意の見せ方だと思うから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 改めて思う事がある。

(鎮守府って……実は俺の好みの子が多いな……)

 彼の好みの女の子がたくさんいた。部下に、だけれど。

 迂闊に手を出してはいけないし、っていうか出せない。

 ただ、引いてみると相手にはとても恵まれている。

 様々な艦娘がいる鎮守府において、惚れそうな子はいっぱいいる。

 彼は静かで、大人しく、賢い子が好みだ。

 その性格に一致する子はいるのだ。

 例えば。

「……」

「ん? なに、提督?」

「可愛いなあ、本当……」

「ふぇっ!?」

 その日の秘書とか。

「どうかしたの、貴方らしくないわね。ボーッとして」

「……うん。やっぱり美人だ」

「!?」

 廊下ですれ違う相棒とか。

「……何です、提督? 私の顔に、何かついてますか?」

「ううむ……なんと綺麗なクールビューティー……」

「……。流石に気分が高揚します」

 自分を慕ってくれる真面目な部下とか。

 冷静に考えればこれ程女性のバラエティに富んだ環境はないだろう。

 色恋沙汰を知らない彼にとって救いがある場所である。

 更に、今では余裕もできて苦手な艦娘も受け入れることができる。

「提督、ティータイムにご招待シマース!」

「サンキュー。悪いけど、急ぎの書類持ってくけどいいか?」

「オッケーです! 私も手伝います!」

 底抜けに明るい彼女とか。

「な、何よ……?」

「やっぱ優秀だわ。流石」

「と、当然でしょ。私は優秀なのよ!」

 気の強い駆逐艦とか。

「夕立、お座り」

「ぽい!」

「そのままそのまま……。よし、いけ!」

「ぽーいっ!!」

 妙に犬っぽい駆逐艦とか。

「司令官、そっちのターンです」

「よし来た!  俺のターン、ドロー!」

「……した瞬間にリバース、オープン!」

「ヘァ!?」

 真面目で明るく好意が真っ直ぐな駆逐艦とか。

「ヒャッハー!! まだまだいくぜえ!!」

「ほぅ、貴様も出来るようになったな。だが、これからよ!」

 頼れる姉貴の重巡とか。

「……この海域はどうする、提督」

「俺達は支援任務だ。背後から来る敵を撃滅するぞ。頼んだ」

「フッ……任された!」

 誇り高き戦艦とか。

 沢山の部下たちとともに、彼はここにいる。

 この中で、どれだけの人数が慕ってくれているかはまだ、自覚できない。

 もしかしたら一人相撲かもしれない。それならそれでいい。

 でも。答えを出すべき相手は、確実にいるわけで。

 逃げてはいけない。もう少し、相手を深く知りたい。

 知らないと選ぶ材料が少ない。今でも結構知ってきた。

 でも、肝心な所をまだ知らないのだ。

 仲良くなってから、聞くべきことだと思う。

 即ち、自分のことをどう思うのか、と言うことを。

 あるいは、自分がどう思っているのか、と言うことも。

 知ってきて、知ってほしい。自分などでいいのかどうか。

 何となく、求める方向性が見えてきた。

 互いによく知ること。それが重要なんだと。

 もっと、もっと。沢山のことを教えてほしい。

 もしかしたら。それで、好きになるかもしれない。

 好きだったことを自覚できるかもしれない。

 自分なんかで良ければ知ってほしい。それで、彼女たちが判断できるのならば。

 進もう。もっと心を開いて。たくさん知って。

 そして決めるのだ。あの夢のように。

 相手が望む方法を探して、正夢にできるよう、努力しよう。

 だって。選んだ彼女が微笑むことが、彼にとっても喜びだと、感じる事が出来たのだから……。


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