本当に結ばれる、ただ一つの方法   作:らむだぜろ

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エピローグ 幼き恋慕の行方

 

 

 

 

 

 最初は、提督の自滅から始まっていた。

 いつも通りの自分だけで溜め込む悪癖。それを突破したのは、幼い狼であった。

 一度はなにもできずに彼を守れなかった。彼が壊れるまで、わかりもしなかった。

 けれど、今回は違った。彼が苦手と言っていても、彼女は気にせず心のままに行動した。

 人はそれを暴走というのだが、この際置いておく。 

 何故ならこの暴走は、結果として提督を救った。彼の自滅を回避したのだ。

 周りが騒がしく、彼のメンタルに多大なダメージを出した以外は、特に問題は……あぁ、多少あったが気にしない。

 ともかくも、彼は彼女――朝潮に、確かに救われた。そして、覚醒した。

 天使朝潮を深く愛する変態という名前の提督……即ち、ロリコンに。

 これぞ、彼女の目論見通りだった。

 愛を謳う幼き少女の、見事なる大勝利。

 幼き恋慕の行方。それは、朝潮の暴走の果てに掴んだ、ロリコンとのラブラブデイズであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……なに? 勝手に進めるな? 若干一人納得していない? 鈴谷はロリコンを認めない?

「そうだよ!! 鈴谷、納得できないもん!! ロリコンが許される世界なんておかしいよ!!」

 バカな。ここは既にエピローグである。そんなワガママを通じる訳がない。

 天の声に歯向かうか女子高生。無駄なことを、諦めるのだ。

 たとえ鈴谷が認めずとも、戦果を出した世界が認める。つまりは、無駄な抵抗はやめるんだ。

 自分のルートになるまで大人しくしていなさい。

「やだ!! 絶対やだ!! せめて鈴谷の好きな提督を返せ!!」

 自分のルートでイチャイチャしていろ女子高生。そして、天の声に歯向かうな。

 ならばこうしてやる。鈴谷は認めた。いいや、諦めた。

 提督がロリコンでも、負けは負けだから。

「ひ、卑怯だ!! 天の声だからって、鈴谷の行動に口出……し……」

 大人しく帰る。そう、鈴谷は大人なので、わがままは言わない。

「…………あれ、鈴谷ってば誰と揉めてたんだろ?」

 そうして鈴谷は鎮守府の執務室の片隅で、謎に響いた虚空の声との戦いを忘れ、首を傾げて部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 ……戻った? よし、ならば朝潮とロリコンのラブラブデイズを続けよう。

 ……なに? メタを言うな? 鈴谷と戦うな? 何をしているんだって?

 細かいことは気にしないで欲しい。鈴谷が某ルートと同じく諦めが悪いので天の声で止めさせたのみ。

 済まないが朝潮ルートは、徹頭徹尾コメディを優先しているのだ。

 ここまで読んでくれた読者の皆様には深く感謝しているが、最後までお付き合いしていただきたい。

 シリアスに考えてもみてほしい。朝潮が工具を振り回しているのだ。

 天使朝潮は可愛いから許されるが、B級スプラッタを毎日しているのですが?

 それってどうです? 血塗れの朝潮が、毎回深海棲艦牽引して帰ってくるのですよ?

 そうしないと合法で結ばれなかったとはいえ、朝潮の戦いは最早ハンターでは……。

 いや、話がずれた。

 再開しよう。これは、朝潮が勝ち取った幸せな日々の一ページ。

 ロリコンと一緒になって、日々戦う。そんなある一日の出来事である……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令官! 見てください!! 今回は大物ですよ!!」

 ……鈴谷の無駄な抵抗を知らない提督と朝潮は、平穏に暮らしていた。

 今回の獲物は、生きた戦艦棲姫を引きずって帰ってきた朝潮。

 鎮守府で待っていた愛しの司令官に、誇るように見せつけた。

「すげえ、生きてる……」

 最早慣れた光景であるそれに皆、大して気にせず、一緒になって牽引を手伝っていた。

 提督は初めて生きている戦艦棲姫を見た。結構美人だが、般若みたいな顔をして、皆に捕縛されている。

「お帰り、朝潮。……さて、じゃあ実験しましょうか」

 飛鷹も一緒に迎えて、倒れる戦艦棲姫にお札を貼った。

 途端に短く悲鳴をあげて大人しくなる戦艦棲姫。キツい痺れのお札を食らったようだ。

 最近、朝潮のやり方は一種の模範となったらしく、他の鎮守府でも捕獲を実行するべく、カリキュラムを組まれると聞いた。

 つまり、朝潮は時代の先駆者となったのだ。工具による深海棲艦の捕獲。

 それによる研究が実を結び、ついこの間上位の深海棲艦の言葉がわかるという装置を受け取った。

 今までは片言にしか聞こえなかった言葉が、これを相手につけることで翻訳してくれるという新開発。

 なので、顔をあげて睨み付ける戦艦棲姫の首に装置を装着。

 嫌そうに抵抗するが、無理矢理取り付けて、話しかける。

「……あー。なんというか、初めまして?」

 キッと睨む戦艦棲姫。強気の瞳は戦意を失っていない。

 周囲は艦娘だらけなので、抵抗は諦めたのか大人しい。

 提督はしゃがみこんで、彼女に話しかける。

「一応、その装置はお前さんの言葉を翻訳するのな? 俺の言っていること、分かるか?」

「黙れこの誘拐犯!! 貴様のような変態に語る舌などないわ!!」

 開口一番酷い罵倒が飛んでいた。滅茶苦茶怒っていた。

 本当に翻訳していると感動しつつ、殺気だつ飛鷹と朝潮を周囲が宥めて、話を聞く。

「お前らにも変態とかあるのか……。それは新発見だな」

「貴様……私を捕らえて何をする気だ!? 身体か、身体が目的か!?」

 なんでそうなる。言葉が通じると分かった彼女は必死に嫌がる。

 戦艦棲姫は己を強く見せようと何やら虚勢を張っていた。

「いいか、私に指一本でも触れてみろ……。私の艦隊が、必ずや貴様たちを討ち取るぞ!! 嘘じゃないぞ!? 本当だぞ!?」

「いや、俺彼女いるから、他の女性にはなんもせんよ? 兎も角、話をしたい。折角だしさ。敵意を収めてくれるなら、まあ……なんだ。捕虜扱いになるけど、ゆっくりしてってもいいし? ほら、戦いはもう終わってるじゃん? 言葉も通じるし、取り敢えず議論しようや」

 まあまあと宥める提督に、唖然とする戦艦棲姫。てっきり生きたまま解剖とかを予想していたのだが。

 思っていた以上に、この人間は穏やかだった。

「貴様は……私を殺さないのか?」

「俺の一存じゃそれも無理なのな。そこまで偉くないし、俺はあんまり戦い好きじゃないし。お前が暴れないって約束してくれるなら、色々聞きたいからさ。一切お前には触れないことを約束する。破ったら俺は周囲に血祭りにされるから、出来ない。お前は……ちょっと深海棲艦に関して、知ってることを教えてくれ。無論、只とは言わない。ここにいる最中は、たらふく旨いものを提供しよう。毒入りとかもしないぞ。どうだ?」

 一種の取引だった。食い物でつるなど、上位の深海棲艦を甘く見ている、とムッとするが。

「手始めに、まあこれを食え。話はそれからだ」

 自分を捕まえた艦娘に目配せして、一度居なくなり、数秒で戻ってきた。

 なんだか微妙な顔で。

「私の間宮羊羮……」

「朝潮、あとで一緒に羊羮食べよう。お茶も入れて、休憩かねて」

「はいっ!! 分かりました!!」

 どうやらそこの艦娘の取り分だったらしい。

 渡すのは嫌そうだが、提督が一緒というと飛び付いて喜ぶ。

 背中に乗っかったが、彼は気にせず羊羮を差し出す。自分も食べた。

「毒はないぞ。見ての通りな。取り敢えず食えよ。甘味はないだろ、深海棲艦には」

 毒味はしている。差し出されたそれを暫し見つめて、軈て。

 恐る恐る、差し出された羊羮をかじった。すると。

「……!? なんだこれは!? ウマイぞ!?」

 咀嚼して飲み込む。驚いていた。

 そして、全部かじって食べてしまった。

 物足りないように、彼らを見上げる戦艦棲姫。

 欲しいと言うのが、顔に出ていた。

「交換条件だ。大人しくしていれば、捕虜としてこれをもっと提供するが。お前は知っていることを教える。どうだ?」

 もう一度取引の内容を繰り返す。

 戦艦棲姫は、今食べた味が恋しくなり、渋々頷いた。

「……よかろう。大したことは知らんが、これを食わせてくれるなら、質問にも答える。だからもっとくれ!」

「成立だな。じゃ、行こうか」

 相手が素直で良かった。甘いものは世界を救う。

 提督は笑顔で了解した。

 動けない彼女を数人で持ち上げて移動開始。監視を踏まえて、飛鷹も同席する予定だ。

 後日、これが世界的にも稀な、深海棲艦との話し合いの席という前代未聞のことになるとは、その時誰も思わなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへへっ」

「ぐへへ」

 で。数時間経過した頃。

 取り調べを終えて、調書に記して大本営に送り、話し合いとかお前はバカかと怒られたが、貴重なデータを取るのでしばらくそいつを捕まえておけと命じられた。

 そして、約束通り朝潮と一緒にお茶をする夜である。

 執務室の机に向いた椅子に座って膝の上に朝潮を乗っける提督。

 顔が変態のにやけ面になっていて怖い。無邪気に喜ぶ朝潮も大概だ。

「朝潮、あーん」

「あーん」

 小さく切った羊羮を朝潮に運んで食べさせる。幸せそうに笑う朝潮に、癒される変態。

 この空気、まさしくバカなカップルその物だが、相手は子供と大人。

 一応、互いに好きあっているので恋人同士。許されるのか? 結果だしたので許される。

「司令官、あーん」

「あーん」

 今度は朝潮が彼の口に運ぶ。嬉しそうに頬張る提督。顔は怖い。

 二人きりの夜の執務室。健全なはずなのに、どうしてこんな倒錯的な光景に見えるのだろうか?

 大丈夫。一切違反行為はない、健全なカップルの行動である。問題はない。

「美味しいですか?」

「朝潮が食べさせてくれるから旨さ倍増してるよ」

「そんな、私はなにもしてませんよ? 間宮さんの羊羮はいつだって美味しいです」

「朝潮の愛で更にウマイって事だよ」

「……そうですか? なら良かったです」

 むず痒くなるような甘ったるい会話に、誰かが聞いてなくて良かっただろう。

 イチャイチャしているのに、羊羮の甘さも相まって甘ったるい空間の出来上がり。

 そんなことは気にしないカップルたちは、にこやかに幸せな時間を送っている。

「司令官」

「なんだ?」

 不意に、朝潮は彼の顔を見上げてこう、言い出した。

「私は、司令官が大好きです。ですので、これからも戦い続けます。司令官と一緒に」

 新たな決意と言うように、彼女は微笑んで彼にいった。

 彼は黙って、朝潮の頭を撫でる。擽ったいように、彼女は笑う。

「俺も、朝潮とこの海を守り続けるよ。これからも、ずっと」

 彼も言った。彼女に誓う、新しい目標を。

 朝潮と海を守る。それが、彼の今の戦う理由。

「はいっ!! 私も、大好きな司令官と共に、戦っていきます!! 頑張りましょう!!」

「あぁ!! 頑張ろう、朝潮!!」

 一緒の思いを抱いて、二人は愛し合っていく。

 こうして、朝潮と提督は戦い続けていくだろう。

 人類のため、そして……二人の愛のために。

 この鎮守府で、ずっと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝潮ルート 幼き恋慕の行方 おしまい。




ここまで読んで頂きありがとうございました。
これにて朝潮ルート、完結です。
次は漸く結ばれる女子高生、鈴谷ルートとなる予定です。
次回のルートも不定気になりますので、よろしくお願いいたします。
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