本当に結ばれる、ただ一つの方法   作:らむだぜろ

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意識改革を始めよう

 

 

 ……大本営から、注意喚起のお達しがきた。

 先日、彼と似たようなことをしている提督が、艦娘に殺されてしまったらしい。

 後ろからいきなり、短刀で一撃された挙げ句に鎮守府のなかで内輪揉めが勃発。

 多数の艦娘も巻き込んで自滅してしまったのだと言う。

「……まさか、な」

 彼は背筋が凍った。不埒なことは一切していないのになぜ来た。

 ハーレム建設なんてしていない。至って健全、真っ当な理由なのに。

 自分も二の舞になるのだろうか。いや、彼女たちに限ってはあり得ない。

 部下を信じて彼は次に誰に渡すかを考えていた。

 この時点で、一部の艦娘が……既に気づき始めているのを知らないで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。秘書がくるまえに、彼は私室を出て制服に着替え、執務室に向かう途中。

 背後に誰かの気配を感じた。振り向こうとする前に、音を殺して、後ろを取られた。

「……動かないで。動いたら、撃ちますよ」

 同時に冷えた声。押し付けられる冷たい感触。これは……艤装か。

 提督は鳥肌がたった。喚起がきた途端にこれ。流石に何かを感じる。

「どういうつもりだ」

 冷静に努めながら、問い返す。内心はビクビクしていた。

 声からして、誰かは分かる。しかし……行動の理由は見えない。

 普段から何を考えているかよくわからない彼女が、過激な行動を起こすなんて驚愕だった。

「……あなたは、私達を裏切っていたのね。軽蔑したわ。尊敬……していたのに」

 彼女は失望したように提督に言う。ひどい言われように、彼は眉を潜めた。

「何の話だ」

「とぼけないで。よくも、よくも……私の可愛い後輩に手を出したわね。穢らわしい。あなたもやはり、ただの欲望まみれの男だったのね。あなたのような人間のクズは死ねばいいのよ。あの子達を守るためなら、私はあなたを連れて地獄に墜ちるわ。覚悟しなさい。最早、私はあなたを提督とは認めない。ただの害悪として、始末するわ」

 静かに、そして過激に彼女は激怒していた。

 身に覚えのない彼は、話が見えずに唖然とする。

 部下は、いったい何に怒っている? まさか、例の件か。

 徹底して口封じしていたのに……なぜ、知られた?

 いや、それはない。彼女たちが軽んじる理由はない。

 ならば、察したか。ここ最近、一緒に近海に任務に出ている際に、恐らく接触して観察して気づいたと。

 まずい。このままでは、共に死ぬ覚悟で殺される。誤解なのに。言っても彼女は無駄だろう。

 何せクールビューティーを被ったキレやすい若者だ。思い込むと、話を聞かない。

 ……でも。

 こんな状況なのに、彼は違うことを考える。

 やはり彼女は素晴らしい。己を省みず、後輩のために行動を起こす胆力。

 そこまでして尽くすよき先輩。なんと優しく、強い女性か。改めて思う。

 思わず笑ってしまった。機敏に彼女も気がついて怒る。

「何を笑っているの? 命乞いなら聞かないわ。その声、もう聞きたくもない」

「俺は、本当に良い部下を持った。後輩のために提督に歯向かうまでの心意気があるなんて、正直嬉しいんだ。……これなら、きっとお前は俺が死んでも……皆を引っ張っていけると思う。後を託せる部下がいることは、喜ばしい。そうだろ? 加賀」

「……あなたは、何をいっているの?」

 そう。提督を暗殺しようとしたのは、正規空母、加賀。

 この鎮守府では数少ない正規空母であり、実力は軒並み高水準。

 飛鷹の次に入ってきた経歴があり、後輩が多く頼りにされている。

 そんな彼女が、皆のために反逆を起こしてくれた。

 両手をあげて降参しつつ、切り出す。

 熱くなっているが、冷めれば彼女は沈着な思考に戻れるはずだ。

 誤解とはいえ……何と頼もしいことか。流石はかの一航戦の加賀。

 本当に己の恵まれた環境に感謝しても足りない。提督はある種の感動さえしていた。場違いにも。

「落ち着け、とはまでは言えないだろう。一応、弁明らしきものはさせてくれないか? 何ならこの一件、加賀にも詳しく話したいと思う。葛城に聞いてもだんまりだったんだろう?」

「……」

 殺しはしてほしくない。彼女は未来有望な空母。

 殺人で失うには尊すぎる。彼女は暫し黙り、軈て。

「…………。提督。もしかして私は、やらかしました?」

 と、我に返ったようで聞かれた。

 振り返ると、ひきつった顔で弓を持つ加賀が見上げていた。

「そうだな、やらかしたな。誤解だよ加賀。ケッコンカッコカリの話だろ? お前、心配しすぎだって。朝っぱらからデンジャラスなことしてくれて。ビックリしたぜ」

 本題を切り出すと、彼女は青ざめる。立派な謀反を起こしてしまったのだ。

 然し提督は己に非があるので不問として、彼女を引き連れ執務室に向かった。

 危うく誤解で死ぬところだった。本当に驚いたが、良かったとも思う。

 ……これからは、いっそう味方を増やしてフォローしてもらおうと判断した彼だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして。

「責任をとって、自沈致します。今までお世話になりました」

 呼び出された飛鷹と鈴谷、念のために葛城とイムヤまで呼び全員で説明。

 イムヤと葛城が任務に戻った途端に、自分のこめかみに矢を突き立てて死のうとした。

 珍しい、何だか泣きそうな表情で。

「待て、早まるな加賀!!」

 こっちも青くなる提督と、飛鷹と鈴谷が決死で止める。

 彼女は目から光が失せて、瞳孔が開いている。怖い。

「まさか、危うく己の尊敬する提督を亡き者にするところだったなんて……。一航戦の名折れです。死なせてください提督。あるいは解体を……。私は一体、何のために敬愛するあなたの下で戦ってきたのでしょうか……」

 精神がショックで折れた。意外にメンタルが弱いらしく、ぐったりソファーに座って放心している。

 余程暴走による勘違いが精神に響いたのか、加賀は土下座までして謝罪してくる。

「……少しは懲りた? 提督、修羅場って言うのはこう言うことよ」

 飛鷹の言葉が胸に痛い。呆れたような、諌めるような声で言う。

「加賀さん、ちょっと落ち着いて。ね?」

「大変申し訳ありません提督……。私に出来ることがあるならなんなりと命じてください」

 鈴谷が慰めるも、加賀は軽く錯乱しているようで、何時もならしない言動になっていた。

 仕方なく、フォローをお願いすると敬礼して承った。償いとしては軽いが、今回は勘違いだ。

 原因は提督の思慮不足。それでも止めないこのバカはどうしようもない。

 何せ悪いことと思っておらず、一概に悪いとも言えないのがたちが悪い。

 純粋に部下を思う行動が部下に伝わらず誤解を生む。一種の性別の差もある。

 女の子にとって、結婚とはそれほど重いものをシステムだからと軽んじる彼も彼。

 一番の原因は大本営のやり方だが。そういう被害があるのに一向に改善の見込みなし。

 救いようもない。

「わ、私にも……練度が最大になれば、指輪は頂けるのでしょうか?」

「それは勿論。加賀ほどの艦娘に渡さない理由はないからな」

 最後に恐る恐る聞いてきた彼女に即答する。

 あからさまに期待していた加賀はその返事に、

「……やりました」

 小さくガッツポーズをとる始末。同時に二つの殺気にも気がつく。

 提督の背後で猛禽類と女子高生が、提督を凄い目付きで睨んでいたのを加賀は見た。

(ああ、成る程。……あの二人は、本気なのね。ふふっ、頑張って)

 加賀は愛ではなく尊敬なので深い意味はない。でもあの二人は違うようで。

 コッソリと応援していると二人にウィンクして、部屋を出ていった。

 彼が思っている以上に、彼女は分かりにくいが茶目っ気のある女性。

 気付かれたと知るや赤面する二人に、安心している唐変木は気がつかない。

 今日も鎮守府は平和であった。……長続きはしなかったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今度は同僚から呼び出された。渋々応じて顔をみせに他の鎮守府に向かうや、

「生きてたか! 良かった、心配したぞ!」

 と出迎えて早々言われた。失礼な態度に彼も怒る。

 不純な動機ではないと何度も説明したはず。なのに周囲は誤解する。

「なぜだ。なぜ俺はこんな目に遭う!? 教えてくれ、飛鷹! 何故なんだ!?」

「……本気で聞いてるなら、一発ぶん殴っていいわよね」

「なぜぇ!?」

 飛鷹も絶対零度の目線で見下し、教えてくれない。

 部下たちは日々戦っている。問題があるのは開発した大本営であって彼ではない。

 そういう認識でいるから、この人はダメなのだ。

 飛鷹は仕方なく、打開するために提案する。

「もう少し、私達艦娘と触れあってみれば分かるわ。部下として、戦友としてじゃ理解が足りない。一人の女性として、みんなを見て。そうすれば、答えは見えてくるでしょう?」

「……難しいことを言うなぁ」

 彼は悶える。一つの組織を纏めるうえで、贔屓はやってはいけないと彼は思う。

 プライベートでは先ず飛鷹と以外に出掛けることはない。何故なら、そこまで彼女たちと接してないから。

 仲良くなりすぎると仕事に支障を出すと考えてるから。

 飛鷹は長年の付き合いで、互いに譲歩できるからそれはない。

 だが鈴谷ともそうだし、他の艦娘とも距離を縮めるのは抵抗感がある。

 しかもフレンドリーが苦手な彼は、喜んでいくような艦娘とは相性が悪すぎる。

 相手を選ばないといけないし、出来れば選びたくない。それが本音。

「…………。貴方、まさかホモ?」

「違う。断じて違う。よく言われるけどホモじゃない」

 ここまで来ると女性に興味がないようにも見える。

 事実飛鷹も親友としては見ているが多分女性扱いしていないと思う。

 つまり、根本から意識に問題あり。早急に何とかしないとまた、誤解を生む。

「……よし、決めた。貴方、艦娘と少しお出掛けしてみなさい。相手が仕事以外で何を知りたいか、きっと分かるから」

 とうとう、行動を飛鷹は起こす。自分のためと、みんなの為に。

 彼に部下と出掛けさせて、嫌でも女の気持ちを思い知らせる作戦を決行する。

「いや……皆も俺とじゃ嫌がるんじゃ」

「うるさい。ごちゃごちゃ言わないで、貴方のその罪深い行動を反省しなさい!」

 抵抗する唐変木。飛鷹は有無を言わせず、お出掛け大作戦をすぐに鎮守府の皆に知らせた。

 ここまで来れば最早猶予はない。ケッコンカッコカリはまだしも、フォローしきれない。

 意識改革のほうが余程充実している。

 彼はまだ嫌がっているが、女性を意識できないのならお話にならない。

 ここまで来たら、強引にでもいくしかあるまい。

 あの堅物の提督が遂に重い腰をあげて、部下の艦娘とプライベートで触れあうことを許可した。

 すると、皆戦意高揚が見られているではないか。 

 元々人気はあったが如何せんこの性格で、機会を知らなかっただけ。

 唖然とする彼に飛鷹と乗り気の鈴谷が扇動して、あれよあれよと話が進む。

 そして、気がつけば。彼は……鎮守府のある町の繁華街で、艦娘とデートするはめになっていたのだった……。

 彼の艦娘とふれ合う、彼にしてみれば苦行の時間が幕をあげる……。




今回よりリクエストを始めました。宜しければそちらもご参照下さい。
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