さぁ、本日もやってきました。
憲兵TVがお送りするメイン番組。
愚行提督の処刑のお時間です。
愚かなる提督の行動に激怒した艦娘たちの不平不満を爆発させ、提督に自覚させると言うこの番組。
言ってもどうせこの鈍い男は気付かないので、死なない程度と憲兵の見張りを条件に特別に許可されました。
加賀さんに対する突然のプロポーズ。その真意を聞く前に多くの乙女を裏切った男への不満をぶつけるのです。
憲兵さんたちに説得と言う許可を得て、今回は生放送でお送りいたします。
「いやだあああああああああ!!」
現在容疑者提督は、執務室の椅子に縄でぐるぐる巻きにされて捕まっております。
なんと言う情けない所業。これが鎮守府の長の姿だと言うのか!?
「誰だノリノリで司会している奴は!? 声までご丁寧に変えやがって!! 名乗り出ろォ!!」
出るわけないでしょ、甘いって提督。
その前に皆に謝らなくていいの?
「謝るって何を!?」
自覚なしかい。うわー……。
「なんか皆の殺気が増してて怖い! あいええええええ!?」
絶叫をしながら泣き叫び、相棒飛鷹に必死に助けを求めている模様。
「自分の行いを振り返るのね、提督。今回はお灸を据えるから助けてあげない」
肩を竦める猛禽類、あっさりと彼を見捨てた!!
これは辛い、提督は悲鳴をあげているー!
周囲を囲むは、彼に想いを寄せている艦娘たち。
皆、夜叉のような表情をしているー!!
手にはバレンタインが近いと言うことで、怒りと愛を乗せたチョコレートを持っている!!
これを武器に、果たして彼女たちの心は届くのか!?
というか、提督のハートが物理でブレイクされそうだが大丈夫か!?
実況はわたくし、オータムクラウドでお送りしておりまーす!!
おおっと、容疑者が私に気付いたぞ!? ……なに? 覚えていろ?
はい? なんの話でございますか提督。オータムクラウド先生は知らないよ?
さて、提督の行方や如何に!!
答えはCMの後で!
「CM入ってるのか!? 誰だそんな薄情なスポンサーは!?」
ご覧の小説は、……鎮守府、本日の秘書、飛鷹及び憲兵さん、オータムクラウドの提供でお送りいたします。
「飛鷹貴様ぁあああああああーーーーーー!!」
「言っておくぞ、他意はない!! 俺には他意など微塵もない!! 色々学習し、考えてやった結果だ! 方法を間違えた気もしない! 他にどうしろって言うんだ!? ちゃんと全部弁えたのに!!」
「全部間違ってるよ提督のバカ!! せめてフラれるなら、もっと優しい方法が良かった!!」
「フラれるってなんだ!! 俺はまだ何もしてない……」
「うわあああああああああああん……!!」
走って立ち去る足音が響く。
「す、鈴谷ああああああ!? 待って、俺何も返事すら言って……!!」
次。
「司令官……流石に、朝潮も頭が痛いです……」
「待って!? 朝潮さん、俺何を間違えたんですか!?」
「ええと、朝潮も言える範囲なら、基本的には問題はないです。基本的には」
「じゃあいいじゃん!! なにこの魔女審判みたいなの!!」
「基本的には、ですよ。ええ、問題があるなら……」
「……あるなら?」
「それ以前の話になります。良いですか、司令官はまず……」
「はいストップ。朝潮、彼に優しくしすぎ。教えちゃダメ」
「飛鷹貴様ァ!! まだ俺を追い詰めるのか!?」
「五月蝿い」
「あべしっ!?」
お札を顔に貼った。提督一回休み。
その間に朝潮、飛鷹によって強制退場。
「飛鷹!! なぜ俺を苦しめる!? 俺達は相棒のはずだ! 本当に裏切ったんですか!!」
「なにを言っているのか理解できないわ。私だって本当はキレているのよ?」
「嘘だそんなことぉ!!」
「嘘じゃない。何で貴方は女性の気持ちが分からないの? 鈍感? ラノベの鈍感主人公なの?」
「……い、一応その……修羅場系ストーリーの主人公やってます……」
「小声で目を反らしながら呼吸をするようなメタ発言止めなさい」
「……なんだ今の発言は!? 俺の意思じゃないぞ!?」
「天の声が舞い降りたか……。まあいいか。貴方に判決を下すわ。皆で加賀に代わって、お仕置きよ」
「美少女達が月のつく艦娘の代わりにお仕置き、だと……!? え、なにこれご褒美?」
「いけない、何だかヤバイのが乗り移ってる!? 皆、殺っちゃいなさい!! 私が許す!」
「え? 今俺何か言った? って……!?」
――ぎゃあああああああーーーーーーー!!
自分は知らぬ間に加賀にプロポーズしたらしい。そんな気はない。
皆様不満のお仕置き執行後、執務室で彼は過去最大に壊れた。
殴られ過ぎた。現在顔面がジャガイモになっている。
元々そんなに端正でもない顔が凸凹になっていた。
「俺は悪くねえ!! 悪くねえったらねえ!!」
「……頭殴りすぎてどこぞの王子が入ってる? もう一回殴ってみよ」
バキッ!
「痛!? ……わあい、目の前に大空の暴れん坊がいるぞー? 真っ黒だ、やばーい?」
「誰がガトリング持ってる鷹ですって?」
べしっ!!
「痛い!? …………あれ、大きな船がついたり消えたりしている。客船かな? いや、違うか。客船はもっとこう、パーって綺麗に光るもんなあ」
「ちょっ!? 精神崩壊のエンディング止めて!? 叩く角度間違えた!」
ゴスッ!!
「とぉぉぉぉおおおぅ!?」
「熊野!?」
「熊野と聞いて鈴谷再び推参!!」
何処からともなく泣きつかれているように見える鈴谷が現れ復帰した。
「ちょっと、泣いて走っていったのに戻ってきてどうするの!?」
「こうするっ!! 提督、鈴谷やっぱし諦めるの無理だった! 鈴谷愛人でいいから枠残して!」
「全力でダメな方向行かないの鈴谷!!」
鈴谷のデコピン炸裂。
「ファッ!? ……何だか逝ける気がする!」
「鈴谷ぁあああああ!? 彼が最短最弱の魔王になってるじゃない!?」
「えっ、加減したのに!?」
今度は仮面つけたタイムキングになっている提督。
キャラがどんどんおかしくなる。最早発狂再びに近い。
その時、此度の処刑に関わってない数少ない新人、皆の救世主、瑞鶴・リバイブ現る。
ここに新たな歴史を作るのだ瑞鶴!
「……なんか変な声聞こえるんだけど、なにこれ?」
「気にしないで瑞鶴。……加賀は?」
壊れた彼を殴って戻す飛鷹が問うと。
「熱出して寝てる。寝言でなんか提督とデートしている夢でも見てるのか、食い放題ははしたないから嫌だとか、フリフリのスカートとか可愛い系の服装は鈴谷に着せた方がいいとか魘されてる」
プロポーズされて、加賀は撃沈。
海ではなく、悪夢に沈んでいった。
まあ、その悪夢も、
「……加賀。俺は気づいた。俺の隣には、お前が必要なんだ。この指輪を受け取っておくれ」
「そんな、提督……! あなたには、飛鷹や鈴谷、イムヤや葛城に、朝潮がいるのに……!!」
「皆は部下。飛鷹は相棒、鈴谷は……ちゃんと、素直に自分の気持ちを言うよ。俺は、加賀。君を愛していると」
「い、いけません!! 私は艦娘です! そのような感情を抱いては、あなたの恐れる結果に……!!」
「平気さ。今の俺は、愛に燃えているッ!! 負ける気がしない! 誰であろうとも!」
「て、提督……」
「加賀。当方は、赤く萌えている。君の美しさに……萌えているんだ」
「そんな、私なんて……」
などという拳で全てを通じあう世界で、キザ補正されたイケメンとなった彼にプロポーズされる乙女チックな夢見てた。
最後には……。
「俺は……俺は、君を愛しているううううううう!! 加賀、君が、欲しいいいいいいいい!!」
謎の巨大深海棲艦を二人のラブラブ艦載機で撃破して、世界中に愛を叫びながら大告白していた。
因みに加賀は戸惑っていたが、了承。
無事結婚してエンディング……の前に、エンドレスで最初に戻る。
恥ずかしいという意味で、悪夢だった。今も真っ赤になって、呻いていた。
凄まじい動揺を見せており、乙女な部分を刺激されて暴走している。
ただ、戸惑いはあっても一切の拒否はない。その辺、言葉が少ないが加賀の本音であろう。
現実は。
「ああ、瑞鶴が瑞鶴して瑞鶴瑞鶴……略してズイズイ」
「落ち着いて!? ズイズイってなに!? 変な動きしないで怖いよ!!」
変な躍りを縛られたままジャガイモが椅子ごと踊っていた。
なんだか混乱しそうな躍りであるが、我を保つ瑞鶴には効かない。
「瑞鶴は左で投げて」
「何を!?」
完全に彼はキャラ崩壊という錯乱に陥っていた。
皆のお仕置きによりハートをブレイクされて、自分を失っていた。
お目目はぐるぐる渦巻きで、歪んで笑って虚空にあはあは乾いた笑い声をあげている。怖い。
「あはは、飛鷹にタイガーと飛蝗を足すんだ。そうするとキックに失敗するんだぜ。知ってた?」
「な、なんのこと言ってるのかしら……?」
あまりの崩壊っぷりに、流石の飛鷹も戸惑っている。
戸惑っていないのは、彼女だった。この逆境すら、チャンスに変える。
「提督……いい? お嫁さんは鈴谷なんだよ? ここは鈴谷ルートなんだよ? 分かる?」
「あはは、鈴谷ルート? 確かもうハッピーエンドで終わってなかった? 俺も鈴谷も死んでるけど」
「死んでるの別世界の鈴谷!?」
五円硬貨に紐を通して、催眠術をかけようとしていた。
で、知りたくもなかった別世界の話を明かされる。
「こら!! メタ発言加速させないで!!」
瑞鶴が直ぐ様それを引ったくる。
鈴谷が慌てて奪い返す間に。
「あはは、飛鷹さん知ってます? お嫁さんになった君はお子さんいるんですよ?」
「……本当? その話、詳しく聞かせて」
「飛鷹さんはお嫁さんになると次のお子さんが欲しいんだって。旦那さんに求めてたよ」
「相手は?」
「別のルートの俺だよ。夢を叶えて幸せだって笑ってたんだ。ヤンデレのままだけど」
「そう……。私は幸せになれる世界もあったのね。ありがとう、教えてくれて」
「あはは、お安いご用さ。今の俺に聞きたいことあるなら、早めに聞いてね?」
飛鷹は隙を見て、パラレルの情報を入手していた。
瑞鶴急げ、猛禽類がルートを強引に書き換えようとしている!
世界を破壊するために、十番目の飛鷹が現れてしまうぞ!!
「おのれディ……じゃない、飛鷹さんッ!! なにしてんの!! メタ行為を止めろォ!!」
鈴谷を必殺瑞鶴シュートで倒し、飛鷹を襲撃する瑞鶴。弓を構えて、背中に向かって放つ。
闇色の瞳で彼を洗脳して取り込もうとするメインヒロイン(ヤンデレ)を倒した。
「……これでいいの。提督……止まるんじゃないわよ……」
バッタリ倒れて、気を失う飛鷹。見たことあるポーズだった。
「はぁ……はぁ……」
荒い呼吸で、ヒロイン達をなぎ倒す瑞鶴。流石は瑞鶴・リバイブ。
今ここに、未来の救世主が完結した古きヒロインを倒した!
祝え、新たなるヒロインの誕生である!!
「上も喧しい!! 誰がヒロインだって!? お生憎様、私は悪友ポジとライバルポジで攻略不可能よ!!」
なんだと!?
そんなバカな、この物語にはそんな記述はない!!
「あはは、瑞鶴。残念だけど君はこの世界にしか居ないんだ」
何かを溢す提督の言葉。
「あはは、ここはね。加賀の世界。加賀が満たされる世界。瑞鶴の世界は存在しない」
なに!? 世界は知らず知らずに破壊されていたのか!?
おのれ提督ッ!! 貴様のせいで救世主の物語は破壊されてしまった!!
「……なんか、まだ上で聞こえるし提督さんもまだ言っている……。どうするのこの流れは……」
瑞鶴は考える。謎の声。謎の提督の発言の数々。その正体は果たしていったい誰なのか。
……思い出せ瑞鶴。冒頭で、語っていた語り部は誰だったか。
「いや、私は居なかったから分かんないわよ」
ならば聞けばいい。真の黒幕をそこの彼は知っている。
問え。真実への道を。彼はそこへの道に導くだろう。
救世主、瑞鶴・リバイブ。この話を救ってくれ。
黒幕は……まだ近くに……。
「あ、声止んだ。誰だったんだろあれ?」
天を見上げる瑞鶴。兎も角、聞いた。
本当の敵はどこにいると。
「あはは、それはね。薄い本の達人さ。……さあ、ネタバレの時間だ。ねえ、オータムクラウド先生?」
……何時から見落としていた。
オータムクラウドが、解説をやっていると忘れていた?
そう、つまりは。
「謎の声も提督の声も、全部このオータムクラウド先生の仕業だったんです! 瑞鶴さん、お疲れ様でした!!」
「って、よく見たら提督さん少し前から気絶してるじゃん!? ……秋雲ぉぉぉぉぉおおおおお!!」
よく見たら彼は殴られまくって気絶していた。
そもそも笑ったようなジャガイモのまま気絶しているのだ。気付かないのも無理もない。
小さなマイクが見えないように設置されていた。
変声の機械で好き勝手していたのはオータムクラウド。
真犯人は彼女だった。瑞鶴は、秋雲を捕まえるべく、執務室を飛び出した。
彼女はその日は逃げ切って面白がって遊んでいたが、後日完結しているヒロインたちに、袋叩きにされたそうだ。
……合掌。