戦姫絶唱シンフォギア 王を継ぎし者   作:夜叉竜

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 ここだけの話。GODZILLA 決戦起動増殖都市でフツアがハルオたちをワタリガラスと呼んでいましたよね。俺、予告の時点でこのワタリガラスの事、ヴァルチャーの事だと思ってました。だってしょうがないじゃない。黒いし、飛ぶし、カラスっぽいし。

 ではどうぞ!


1-7

 「バカな……」

 

 二課の指令室のメインモニターを見ながら弦十郎は呆然とした様子でつぶやいていた。

 モニターには大きくNehushtanと言う文字が表示されていた。それは2年前に彼らの前から無くなったもの。それを緑羅と一緒にいる少女が身にまとっているのだ。

 

 「現場に急行する!何としても鎧を確保するんだ!」

 

 弦十郎の言葉に了子も険しい顔つきで頷く。

 

 

 

 

 

 「へえ、こいつの事を知ってたのか」

 

 少女は自分の鎧を小突きながら言い、緑羅はふん、と忌々し気に鼻を鳴らす。

 

 「その気配。間違えるはずがない。全く……あれから気配がしないと思ったら人の手に渡ってたとはな……しかも二課の連中とは関係ないと……ずさんだなぁ」

 

 緑羅は体を揺すりながら呆れたようにため息を吐く。もしも彼女が二課の関係者ならばこれまでの戦いで出てきてるはずなのだから。二課とは関係ないとみて間違いないだろう。

 

 「さて……で?お前は誰?何が目的だ?」

 「さあてね。最初のには答えられないが、後の奴には答えられる……お前だよ。ビースト」

 「………」

 

 少女の言葉に緑羅は剣呑に目を細め、低い唸り声を漏らす。

 

 「お前の……血が欲しいんだよ!」

 

 そう言うと同時に少女は緑羅目掛けて鎖を繰り出してくる。緑羅はそれをガントレットで無造作に弾き飛ばし、ガチガチと牙を鳴らして少女を睨む。

 

 「俺の血なんぞ取ってどうする」

 「いや、誰だって興味津々だと思うぞ?体は異形になるわ人間に戻るわ、更に歌わなくてもシンフォギアを纏えるし、あいつと同じ融合症例だろうしな……」

 

 少女が呆れたように言うと緑羅は眉を顰める。

 

 「融合症例って何?」

 「知らねえの?ってそうか……お前二課には所属してないのか……お前、聖遺物持ってないように見えるけど本当は……体の中にあるんだろう?」

 

 少女の言葉に緑羅は小さく眉を上げる。

 

 「へえ、よく気付いたね……確かに、俺の体の中には聖遺物があるけど?」

 「普通聖遺物は身に着けるものなんだよ。だけど、お前やお前の知り合いのバカっぽい奴みたいに体内に聖遺物の欠片があって、それを使ってシンフォギアを纏うような奴等をあたしらは融合症例って呼んでんだよ」

 「へえ、そんな呼び名があったのか……教えてくれてどうも」

 「どういたしまして。そんじゃあお礼に……おとなしく捕まってくれよ!」

 

 そう言うと同時に少女が鎖を叩きつけてくるが、

 

 「断る!」

 

 緑羅は前方に跳び出すことでその一撃を回避しすると同時に少女との距離を詰め、ガントレットを勢いよく叩きつける。

 少女は素早くその場から飛び退いて回避すると横薙ぎに鎖を繰り出してくる。

 緑羅はガントレットを勢いよく叩きつけることで逆に弾き飛ばし、即座に顎に変形させると熱線を放つ。

 だが、少女は鎖を使って熱線を弾き飛ばし、それを見た緑羅は忌々し気に顔を歪める。

 

 「なんとなく分かってたけど、それ、明らかに響達が使ってるのとは違うな」

 「完全聖遺物、ネフシュタンの鎧。あいつらが使ってるような欠片とは違うんだよ!」

 「完全聖遺物ってまた知らない単語が出てきたよ……まあ、どうでもいいか」

 

 そう言うと緑羅は再び地面を蹴って少女との距離を詰め、勢いよく顎を勢い叩きつけてくるが、少女は鎖を使ってそれを受け止めるが、轟音と共に少女の足が地面にめり込み、少女は全身を襲った衝撃にうめき声を漏らす。

 

 「おらぁ!」

 

 だが、少女は顎を受け止めたまま緑羅の腹に蹴りを叩き込む。無防備な腹に喰らって緑羅はうめき声を漏らしながらよろめき、後ろに後ずさる。

 更に少女はそのすきを狙って鎖を大上段から振り下ろし、叩きつけるが、緑羅はガントレットを盾にして鎖を防ぐと鎖を弾くと同時に思いっきり体を回転させ、その勢いのままに尾を振るう。

 少女はすぐに後ろに跳んで尾を回避するが、緑羅は向き直ると同時に少女に向けて顎を向け、熱線を放つ。

 少女はぎょっ!と目をむくと着地と同時に横に跳んで熱線を回避するが、緑羅は少女目掛けて熱線を薙ぎ払う。

 少女は舌打ちをすると鎖を使って熱線を弾き飛ばす。

 緑羅は低く唸ると顎をガントレットに戻し、ぎしぎしと動かす。

 

 「意外とやるじゃん」

 「お前こそ、欠片のくせに完全聖遺物とここまでやり合えるとは思わなかったぜ……だけど、あたしの天辺はまだまだこんなもんじゃねえぞ!」

 「だったら突き崩す!」

 

 両者は再び激突しようと互いに地面を蹴って距離を詰め、

 

 ー蒼ノ一閃ー

 

 突如としてその頭上から青い斬撃が二人を巻き込むように繰り出される。

 

 「っ!」

 「ちっ!」

 

 それに気づいた少女はすぐさまその場から飛び退き、緑羅はガントレットを盾にしてその一撃を防ぐ。

 が、それと同時に突如として緑羅の足元が轟音と共に崩壊を起こす。

 

 「うおっ!?」

 

 緑羅はそれに巻き込まれ、そのまま地下に落下していく。緑羅は慌てて態勢を整えると、そのまま落下していくが、着地すると同時に何かを踏み潰したような感触を感じる。

 なんだ?と緑羅が足元を見ると、そこには炭の塊があり、それは風でさらさらと飛ばされていた。どうやらこの穴を作ったノイズを踏み潰したらしい。

 緑羅はすぐに残骸から興味を無くすと顔を上げ、穴を見上げ、唸るように鼻を鳴らし、駆け上がろうと足に力を込め、

 

 「緑羅君!?」

 

 不意に名前を呼ばれて顔を向ければ、そこには驚いた顔の響きが駆け寄ってきていた。その身には当然シンフォギアを纏っている。

 

 「響?ここで何……ってノイズか」

 「う、うん……そうだけど……ってさっきまでいたノイズは!?」

 「ノイズ?」

 「うん!なんか……ブドウに体と手足が生えたみたいなやつ!」

 「また変なのがいるなぁ……それってもしかしてこいつ?」

 

 そう言いながら緑羅は己の足元の炭の塊を指さす。それに気づいた響はあ、と小さく声を漏らす。

 

 「もう倒してたんだ……」

 「いや、倒したのは偶然「ゴォォォォォォン!」っと、話してる場合じゃないか」

 

 穴の外から響いてきた轟音に緑羅は険しい顔で見上げ、響は突然響いた轟音に驚いたように首をすくめる。

 

 「な、なに!?」

 「ちょいと外で戦闘中。行くよ」

 

 そう言うと緑羅は響を荷物の様に担ぎ上げる。

 

 「ふぇ?りょ、緑羅君?」

 「喋らないほうがいいよ。舌噛むから」

 

 そう言った瞬間、緑羅は一瞬屈みこみ、そして力を爆発。勢いよく跳躍して穴を昇っていく。

 

 「まぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 担がれた状態の響の悲鳴と共に二人は穴の外に勢いよく飛び出し、着地と同時に緑羅は膝の屈伸を使って着地の衝撃を殺す。

 

 「緑羅君ひど……翼さん!?」

 

 響は思わず文句を言いそうになるが、何かがぶつかる音に思わず顔を向け、そこで翼が謎の少女と戦っていることに気付き、驚いたように声を上げる。

 緑羅は無言で響を下ろすとそのまま翼と少女の下に向かって跳び出していき、翼に鞭を繰り出そうとしていた少女に向かってガントレットを振るう。

 少女は舌打ちをしながら後ろに下がって攻撃を回避し、緑羅は即座に追撃しようとするが、

 

 「邪魔をするな!」

 

 その緑羅を押しのけるように翼が前に出る。

 

 「ちょ!?」

 

 緑羅がぎょっ!と目を見開くのを後目に翼は少女に向かって切りかかるが、少女はその斬撃を鎖で受け止め、がら空きの腹に蹴りを叩き込み、吹き飛ばす。

 

 「おいおいどうした、そんなものかよ。ビーストの方がはるかに手強かったぜ?」

 「そんじゃあ相手してやらあ!」

 「ま、待って緑羅君!どうして人間同士で争わないといけないの!?」

 

 緑羅が少女に向かって走り出そうとした瞬間、響が思わずと言ったようにそう口にするが、緑羅は真剣な目つきで響に視線を向け、

 

 「響。君が足を踏み入れたのはそう言う世界だよ。人間同士の殺し合いが合法となる世界。それが本当の戦場だ」

 「ビーストの言う通りだぜ甘ちゃんが!そんなに嫌ならこいつらの相手でもしてろ!」

 

 そう言うと少女が腰に下げていた杖のようなものを手に取るとその切っ先を緑羅と響に向ける。それと同時に先端が光ると同時にそこからダチョウのような姿のノイズが10匹以上も現れる。

 

 「ノイズ!?」

 「ノイズを自在に出せるのか!?」

 

 緑羅は響を抱き寄せると勢いよく体を回転させて尾を薙ぎ、ノイズを数体纏めて吹き飛ばす。

 そのまま体制を整えるように一回飛び退くと、響を下ろしてノイズを向き直る。

 

 「響、行ける?」

 「う、うん」

 「上等!」

 

 緑羅は地面と吹き飛ばしながらノイズとの距離を詰め、響もその後に続く。

 ノイズ達は口から粘液を一斉に吹きかけてくるが、緑羅は地面を砕きながら跳躍して回避する。

 

 「うわっ!?」

 

 響の悲鳴に緑羅が視線を向けると、ノイズの粘液を響はまともに喰らい、動きを封じ込められている。

 緑羅は小さく舌打ちをするとガントレットを顎に変えて下に向けると火球を連続で放ちノイズを次々と撃ち倒していく。

 緑羅はそのまま響を捉えているノイズに顎を向けるが、

 

 「おっと!お代わりもどうだ?おごってやるよ!」

 

 少女が翼を吹き飛ばし、その隙に緑羅に杖を向けると大量のノイズを生み出し、飛行型ノイズが一斉に緑羅に襲い掛かる。

 緑羅は舌打ちをすると顎を即座にノイズに向けて火球の弾幕を放ち、全て撃ち落とす。

 ずん、と着地するが、周囲は大量のノイズに囲まれてしまっている。

 くそ、と緑羅は呻くもすぐにノイズの一団に飛び込んでいく。

 

 「よし、後は……」

 「そいつにかまけて私を忘れたか!」

 

 吹き飛ばされた翼が少女目掛けて切り込んでいくが少女は鎖で受け止める。即座に翼は回し蹴りを繰り出して、足のブレードを叩きつけるが、少女はそれを右腕で受け止め、

 

 「お高く留まるな!」

 

 そのまま足を掴んで振り回すと勢いよく投げ飛ばす。翼は地面に叩きつけられ、吹き飛ぶが、いつの間にかその先に回り込んでいた少女が翼の頭を踏みつける。

 

 「のぼせ上がるな人気者!この場の主役を勘違いしているなら教えてやる。アタシの狙いはあの二人だ。いや、今は一人と一匹か?」

 

 そう言い、少女はノイズの大群を相手に戦っている緑羅といまだに身動きが取れない響に視線を向ける。

 

 「あいつはお前とあの化け物の中を仲裁しようとしている。いいお仲間をお持ちじゃねえか。でも、鎧も仲間も過ぎたものだろうよ」

 

 少女の言葉に翼はぎりっ、と奥歯を噛みしめると、

 

 「もう繰り返すまいと私は誓った!」

 

 そう叫ぶと翼は素早く手にした大剣を天にかざす。

 

 ー千ノ落涙ー

 

 瞬間、上空から無数の剣が降り注ぐが、少女は即座に跳んで回避する。翼は即座に立ち上がると少女に追撃を仕掛ける。

 それを横目に緑羅は低く唸りながらノイズを引き裂き、蹴り飛ばすと右腕を真上に掲げる。それと同時にガントレットの掌に巨大な火球が形成される。

 そしてそれを真上に打ち上げ、

 

 ー惨火ー

 

 次の瞬間、上空で火球が炸裂、それは炎の雨となって辺り一帯に降り注ぎ、ノイズを一気に焼き払う。

 ノイズを殲滅した緑羅は即座に翼と少女の戦闘に飛び込む。

 その戦闘を響は悔し気に顔を歪める。

 

 「どうしたら……どうすれば……そうだ!アームドギア!アームドギアを出せれば……!」

 

 アームドギア。それは弦十郎から聞いていたシンフォギアの武装。翼の刀や緑羅のガントレットのような戦うための力。それを出せれば……

 響は何とか拘束を振りほどこうとするが、拘束はびくともせず、またシンフォギアにも何の変化もない。

 

 「どうして!?どうして応えてくれないのガングニール!私が未熟だから!?私が奏さんじゃないから!?翼さんと緑羅君を助けたいのに!」

 

 響がそう叫んでもアームドギアらしきものは出ず、響は動けないままだ。

 そんな響をよそに翼と緑羅の少女の戦闘は激しさを増していく。

 緑羅がガントレットを勢いよく振るうが、少女は素早く後ろに下がって杖から光を放ってノイズをけしかける。

 ちっ、と舌打ちをしながら緑羅は襲い掛かってきたノイズを切り裂き、殴り飛ばし、火炎で焼き払う。

 少女はその隙に翼に向けて鞭を繰り出すが、翼は大剣でその一撃を弾き、切りかかるが、少女はそれも受け止める。

 そこにノイズを駆逐した緑羅がガントレットを勢いよく叩きつけてくる。

 

 「ちょっ!」

 

 少女は即座にそれを回避するが、そこに翼が3本の短刀を投げつける。

 少女は即座に鞭で短刀を弾き飛ばす。

 

 「仲が悪いわりに随分と連携できてんじゃねえか!」

 

 叫ぶと同時に少女は二つの鎖の両端にエネルギー球を形成し、

 

 ーNIRVANA GEDONー

 

 それぞれ緑羅と翼に投げつける。

 翼は即座に大剣を盾のように構え、緑羅はガントレットを前方にかざして防御の構えを取る。

 次の瞬間、二人それぞれにエネルギー球が直撃、轟音とともに爆発し、爆炎と衝撃によって二人は吹き飛ばされる。緑羅は地面に叩きつけられるが、即座に体制を整え、立ち上がるも、その周囲をノイズに囲まれて小さく舌打ちをする。

 一方翼はそのまま地面に倒れこみ、大剣は日本刀に戻ってしまう。

 

 「まるで出来損ないだな?」

 「………確かに、私は出来損ないだ」

 「あん?」

 「この身を一振りの剣として鍛えてきたはずなのにあの日、無様に生き残ってしまった。出来損ないの剣として、恥をさらしてきた……」

 

 翼は日本刀を杖にしてよろよろと立ち上がり、少女を睨みつける。

 

 「でも、それも今日で終わり。鎧を取り戻し、あの日の汚名を雪ぐ!」

 「出来るものならやって……何?」

 

 少女が翼に止めを刺そうとした瞬間、ぎし、とその動きが強制的に止められる。

 その事に少女は困惑し、周囲を見渡して原因を見つけ出す、月明かりで生まれた己の影に先ほど弾いた翼の短刀が突き刺さっているのだ。

 

 ー影縫いー

 

 「こんなもので私の動きを!?だがそれで……まさか……」

 「月が覗いているうちに決着をつけましょう」

 

 その言葉を聞くと同時に緑羅は小さく眉を顰めると、ノイズを尾で吹き飛ばしながら翼に目を向け、大きく目を見開く。それは当然だ。そこには翼の纏う雰囲気が、あの時の少女と全く同じだったのだから。

 

 「歌うのか、絶唱を……」

 「防人の生き様、覚悟を見せてあげる。しかとその胸に、その眼に焼き付けなさい!」

 

 Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl

 

 翼が日本刀を天に向けながら歌い出した瞬間、

 

 「やめろぉ!その歌を歌うなぁ!」

 

 緑羅は思わず叫び、翼を止めようと走り出すが、その前にノイズの群れが壁となって立ちはだかる。

 

 「邪魔だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 緑羅はガントレットに火球を形成すると、それを維持したまま勢い良くノイズに叩きつける。

 

 ー崩炎ー

 

 瞬間、爆炎が炸裂し、炎と衝撃波が一気に大量のノイズを呑み込み、殲滅するが、少女が翼を止めるためにか生み出したノイズがそのまま緑羅に襲い掛かってくる。

 

 「くそったれがぁ!!」

 

 緑羅はそのノイズを吹き飛ばし、視線を向けたときには翼はすでに少女の眼前に立ち、その肩に手を置いていた。

 

 Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl

 

 そして、歌が歌い終わる。

 

 「っ!!響ふせろぉ!!」

 

 緑羅がそう叫ぶと同時に翼を中心にすさまじい衝撃波が全方位に放たれる。

 

 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

 

 それを至近距離でまともに喰らった少女は絶叫を上げ、鎧に罅が入っていき、周囲のノイズは残らず吹き飛ばされ、緑羅は即座に腕をクロスさせて防御するが、距離が近いせいでかなりの衝撃が全身を襲うが、緑羅は両足、尾を使って踏ん張る。

 対し、翼は少女の肩から手を離す。それと同時に少女はすさまじい勢いで吹き飛ばされ、地面を抉り、木をなぎ倒しながら地面に叩きつけられる。

 

 「あ……あ……あ……」

 

 鎧はボロボロになり、彼女の様子から凄まじいダメージを追っていることが分かる。

 次の瞬間、鎧の破損個所が異音をたてながら自己修復していくが、それには彼女の肉体が巻き込まれていた。

 

 「がぁ!?ぐぁ!」

 

 その痛みに少女は身をよじると、苦痛に顔を歪ませながらそのままどこかに飛び去っていく。

 

 「翼さん!」

 「おい風鳴翼!大丈夫か!?」

 

 翼が立っている場所の地面はクレーター上になっており、そこに響と緑羅が駆け寄っていくと、そこに一台の車が合流する。

 そこから弦十郎と了子が降りてきて、同様に翼に駆け寄っていく。

 

 「無事か!?翼!」

 

 そこまで来て、緑羅は顔を引きつらせる。彼女の足元に赤い血だまりができており、更に鼻孔を直撃する鉄臭い匂い。

 まさか、と緑羅が息をのんだ瞬間、

 

 「私とて、人類守護の任を持つ防人」

 

 そう言い振り返った翼はあまりにもひど過ぎた。目、鼻、口、至る所から大量の血を流していたのだ。

 

 「この程度で折れる剣ではありません」

 

 そう言うと同時に翼はその場に崩れ落ちるように倒れ込むが、その体を緑羅が受け止める。

 緑羅の腕の中で翼はちらりと緑羅に視線を向けると、

 

 「どうだ……これでも……私は……戦場を舐めていると……言えるか……」

 

 そう言った瞬間、翼は意識を失う。それと同時に緑羅の顔が盛大に歪み、ガントレットが何かをこらえるように握りしめられる。

 

 「………せるか………これ以上……この歌で誰かを死なせるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 絶叫を上げた瞬間、緑羅は翼を地面に横たえると、顔を近づける。その状態で何かを絞り出すように体をよじる。

 

 (思い出せ!父さんがあの時俺にしてくれたこと!自分のエネルギーを相手に明け渡して命を繋げる!2年前はできなかった。だけど同じエネルギーを内包する今なら!)

 

 緑羅が口を開けた瞬間、そこから青白い光の帯が吐き出され、それが翼の体を包み込んでいく。

 

 「これは……」

 「緑羅君……」

 

 響達が驚いたように見つめている中、更に光の帯が吐き出され、翼の体を包むと、彼女の体が大きく輝く。

 それが収まった時、翼の流血は止まっていた。

 それを確認した緑羅はふう、と小さく息を吐きながらその場にどかりと座り込み、顔を呆然としている源十郎たちに向ける。

 

 「何ぼさっとしてんのさ!出血は止まったけどいまだ危ない状況なんだよ!とっとと救急車呼ぶなり病院連れていくなりしろ!」

 「あ、ああ!」

 「分かったわ!」

 

 緑羅に一喝されて正気に戻った弦十郎と了子は弾かれたように動き始める。

 

 「緑羅君……翼さんは……」

 「……とりあえず出血は止まったみたい。だけど、逆に言えばそれだけだ。ダメージはほとんど癒えてない」

 

 響の問いかけに緑羅は厳しい顔のまま答えると響はその隣にぺたん、とへたり込むと、そのまま顔を俯けてしまう。

 

 「響の方は大丈夫?どこかケガとかは……」

 「私……足手まといだ……」

 

 その言葉を否定せず、緑羅は無言で彼女を見つめる。

 

 「緑羅君や翼さんと一緒に戦いたいのに……何にもできなくて……ただただ見ている事しかできなくて……」

 

 ぽつぽつと言葉を紡ぐたびに響の視界がぼやけ、涙が零れ落ちていく。それをしばらく見ていた緑羅は小さく息を吐くとその場から立ち上がる。

 

 「響。君はさっきの戦いの最中、言ってたね。奏さんじゃないからアームドギアとやらが出ないのかって」

 「え?」

 「アームドギアとやらが何なのか俺には分からない。だけど、一つだけ言えることがある……その奏っている人のの代わりに戦おうとしているなら悪いことは言わない。シンフォギアを置いて、普通に暮らしな」

 「………」

 「君は君だ、響」

 

 その言葉に響は顔を上げて緑羅を見上げる。緑羅は響の顔を見つめ、口を開く。

 

 「君は誰かの代わりになることはできない。そして誰かが君の代わりになることもできない。君は君の戦う理由のために戦え。どんなにちっぽけでもいい。くだらなくてもいい。君だけの、君自身が抱く戦う理由のために」

 「………」

 「俺が言いたいのはそれだけ。後はそっちに任せるよ」

 

 そう言うと、緑羅はその場から歩き出し、去っていく。

 

 (ノイズを操る少女……間違いなく、ここ最近の襲撃の黒幕だな……あの杖を破壊すればノイズの発生を抑えられるか?何にしても……あの少女を捕まえる必要があるか……)

 




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