戦姫絶唱シンフォギア 王を継ぎし者   作:夜叉竜

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 さてはて、ジュラシック・ワールド、炎の王国公開まであと一週間を切りましたね。実に楽しみだ。

 それだけではない。9月にはMAG。他にもザ・プレデター、リリカルなのは、ゴジラと今年はマジで面白い映画が目白押しですなぁ。

 ではどうぞ!


1-8

 「状況は想像してたよりもかなりいいです。絶唱を歌ったダメージはありますが、すぐさま命に係わるほどではありませんし、傷も殆ど塞がっています。ですが、それでも無視することはできないダメージですので、意識を取り戻してもしばらくは絶対安静ですね」

 

 先の戦闘後、絶唱を歌った翼は治療のためにリディアン音楽院に併設する形で保有している医療施設に運び込まれていた。そして今、処置が終わり、源十郎には執刀医から説明がなされていた。

 絶唱を使ったにしてはかなりマシな結果に弦十郎はほっと息を吐いていた。下手すれば翼は死んでいたかもしれないのに、すぐに命にかかることはないという。不幸中の幸いと言うべきか……

 

 (いや、違うな。緑羅君が翼に施したあの治療行為……あれが翼の命を繋ぎとめたんだ……)

 

 弦十郎の脳裏についさっき行われた不可思議な光景がよぎり、彼は小さく拳を握る。本来ならばこういう時に自分たちが動かなかければならないのに……己の無力を悔やむように弦十郎は拳を握るが、

 

 「翼の事、よろしくお願いします!」

 

 そう言い、頭を下げる。そして頭を上げると、後ろに控えている黒服の集団に指示を飛ばす。

 

 「俺たちは鎧の行方を追跡する!どんな些細な手がかりも見落とすな!」

 

 弦十郎が指示を出している一方、病院内の休憩スペースのソファに響が座り込んでいた。

 

 「翼さん……」

 「君が気に病む必要はありませんよ」

 

 自責の念に襲われていた響に声がかけられ、顔を上げれば傍に緒川が立っていた。

 

 「翼さんが自ら望んで歌ったのですから。それに、絶唱を歌ったにしてはかなりマシな状況ですし」

 

 そう言いながら緒川は休憩スペースの自販機で飲み物を二つ購入すると、一つを響に手渡し、そのまま自分もソファに座る。

 

 「御存知かもしれませんが、翼さんは以前はアーティストユニットを組んでいまして……」

 「ツヴァイウィング……ですよね?」

 

 その言葉に緒川は頷き、続きを話す。

 

 「その時にパートナーを組んでいたのが天羽奏さん。今は君の胸にあるガングニールの奏者でした。2年前のあのライブの日。奏さんはノイズの被害を最小限に抑えるために絶唱を使ったんです」

 「絶唱……あの鎧の子が言っていた、翼さんが歌った奴……ですよね?」

 「奏者への負荷をいとわずシンフォギアの力を限界以上に引き出す絶唱はノイズを一匹残らず駆逐しましたが、奏さんの命も燃やし尽くしました」

 「それは……私を救うために……?」

 「それもあるでしょう。ですがそこでイレギュラーが起きた。まだノイズは湧いて出てきたんです。そのノイズをショックで動けない翼さんの代わりに殲滅したのが緑羅君なんです」

 

 その言葉で、ようやく響は翼が緑羅を恨む理由を理解した。戦えたはずなのに、彼は奏が死んでから戦い始めたのだ。それは助けられたはずの命を目の前にして何もせず、むしろ奏を捨て駒にしたように見られてもおかしくはない。

 

 「奏さんの殉職、ツヴァイウィングの解散。一人になった翼さんは奏さんの抜けた穴を埋めるために我武者羅に戦ってきました。そしてその穴を緑羅君がある意味で埋めていました。彼がノイズと戦う分、翼さんの負担は減っていましたから。しかし、それを翼さんは良しとせず、ひたすらに己を鍛えてきました。いつの日か緑羅君と戦うために。そしてこれまで、同年代の女の子が知ってしかるべき遊びや恋愛を覚えず、自分を殺し、生きてきました。そして今日、剣としての使命を果たすために命をなげうって絶唱を歌いました……」

 

 そこまで言って、緒川は紙コップの中身を飲み干し、それをテーブルに置く。

 

 「不器用ですよね?でも、それが風鳴翼の生き方なんです」

 「そんなの……悲しすぎます……」

 

 響は涙を流しながら振り絞るようにそう呟く。

 

 「なのに私……何も知らないで翼さんと一緒に戦いたいって……奏さんの代わりになろうとして……」

 「……正直に言いますと、そう言う理由で戦うのは少しいただけませんね」

 「……緑羅君にも言われました……」

 「………響さん、緑羅君について話してもいいですか?」

 

 話題を変えるように呟かれた言葉に響は涙ぐみながらも顔を上げる。

 

 「今回、翼さんを助けたことによって僕は確信しました。2年前、緑羅君は奏さんを見捨てたくて見捨てたわけじゃない。恐らくですが彼はあの時、何らかの理由によってノイズと戦うことができなかったんだと思います。そして、どうしてか奏さんが亡くなった後に戦えるようになったのではないかと……」

 

 その言葉に響は大きく目を見開く、もしそうならあの時の緑羅の行動は意味合いが大きく変わってくる。だが、そうなると疑問が一つ出てくる。

 

 「もしそうだとしたら…………何で緑羅君は何も……」

 「恐らく……彼はその理由も含めて自分が背負うべき罪だと思ってるんでしょう。どんな理由があろうと自分が奏さんを助けられなかったことに変わりはない。言い訳なんてする意味もないと……翼さんに負けず劣らず不器用な子ですね……」

 

 緒川は小さく苦笑を浮かべながら言い、響は小さく拳を握る。

 

 「……ずっと緑羅君は、一人で背負ってきたんでしょうか……奏さんを死なせてしまったことを……」

 

 緒川は小さく頷き、それからしばしの間、二人は互いに口を開かなかった。

 

 「響さん……僕からいくつかお願いしてもいいですか?」

 「……?」

 「翼さんを嫌いにならないであげてください。翼さんを世界で一人ぼっちにしないであげてください。そして……あの二人を繋いで上げてください。あの不器用な二人を……あの二人は似た者同士です。今でこそ大きくすれ違っていますが、誤解が解ければきっと……」

 

 その言葉に響は涙をぬぐい、

 

 「……はい!もうこれ以上……翼さんも緑羅君も……一人にしません……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「手がかりは無し……か………」

 

 先の戦闘から数日が経過したある日、緑羅は海沿いの廃墟の中で、小さく息を吐きながら体を休めていた。

 翼の治療の後、緑羅はあの鎧の少女の痕跡を探したのだが、時間が経ってしまっていたからかめぼしいものは見つからず、何日かかけてもみたが結局収穫はゼロだった。

 

 「ま、最悪を避けただけでも良しとするか……それに、これで今後の方針も決まったしね……」

 

 あの少女は自分を狙っていた。ならば強欲な人間の事だ。必ずまた現れる。その時こそ彼女を捕らえ、彼女の目的、背後関係を吐かせる。自分の血を欲しいと言っていたが恐らくそれは彼女ではなく、別の誰かだろう。

 もしも彼女自身が自分の血を欲しているならば、その眼はもっとぎらついていてもおかしくはない。だが、彼女の眼にはそう言った光はなかった。だからこそ彼は彼女には何らかの後ろ盾があると判断していた。

 そしてその後は……その後ろ盾を叩き潰し、あの杖を破壊する。そうすればノイズの被害を大きく減らせるだろう。

 とりあえず食事を終えたらまた情報収集をしようと、緑羅は立ち上がると廃墟を出て街に向かって歩いていく。

 

 「確か………デカ盛りオムライス、制限時間内に完食したら無料の店があったな。今日はそこに行こう」

 

 余談だがここ最近、この近辺のデカ盛りグルメを完食しまくる猛者がいるという伝説が出回っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夕方、食事を終えた緑羅は街中を歩きながら周囲を注意深く見渡していた。

 街中はいつもと変わらない。人間達はいつもの通り穏やかに笑いながら過ごしている。つい先日にノイズが現れ、少なからず街が破壊されたにも関わらずだ。慣れているのか、それともあまり気にしていないのか、それは緑羅には判別がつかない。

 緑羅がふうむと小さく唸りながら歩いていると、

 

 「あ、緑羅君」

 

 後ろから声をかけられ、振り返れば未来が手を振りながら駆け寄ってくる。

 

 「おお、未来。久しぶり」

 「うん、久しぶり。まだ街にいたんだ」

 「まあね。ちょいと用事ができて、それが片付くまではここにいるよ」

 

 へ~、と未来は納得したように頷いた後、何かを思い出したようにあ、と声を漏らす。

 

 「そう言えば緑羅君、最近響と会ってる?」

 「ん?いや、数日前に会ったきりだけど……それが?」

 

 そっか……と未来は沈んだ表情でつぶやき、緑羅は首を傾げる。

 

 「どうしたの?響に何かあったの?」

 「うん……最近響の様子がおかしいというか……」

 「おかしいって……どういう風に?」

 「少し前までは何か悩んでいるようだったんだ。それはもう解決したみたいなんだけど……それだけじゃなくてここ最近はやけに帰るのが遅い時があるし、急に用事が入る時も多くて……それはまあ、いいんだよ?ちゃんと帰ってきてるし。だけど、その事を聞くとはぐらかされちゃって……あ、あとなんでか分からないんだけど、体を鍛えてるみたいで……理由も教えてくれなくて……」

 

 未来が沈んだ様子でそう言い、緑羅はふうむ、と顎に手を当てる。

 響の用事は間違いなく二課がらみだろう。あの組織はやはりシンフォギアの事を秘密にしたいらしい。そして、体を鍛えているのは間違いなく戦えるようになるためだろう。彼女の意識もだいぶ変わってきたようだ。

 言うべきか言わざるべきか、緑羅は難しい顔で唸り声をあげる。

 しばらく唸り声をあげると、

 

 「いや、俺も知らないな。普段通りに元気な様子だったけど……」

 「そっか……どうしちゃったんだろう……響……」

 

 未来には悪いが知らないふりをすることにした。もしも響の事を話せば必然的に自分の事も話さなければならなくなる。それはさすがにうまくない。彼女には悪いがここはこうするしかない。

 だが、落ち込んでいる様子の未来をほったらかしにするのも忍びない。緑羅は小さく頬を掻きながら口を開く。

 

 「まあ……響にも何か事情があるんでしょう。響の方から話してくれるのを待った方がいいよ。下手に突っついてこじれてもあれだしさ」

 「それは……そうかもしれないけど……でも、響には私に隠し事とかしてほしくなくて……親友だから……」

 「………親しいからこそ、言えない事だってあるんじゃない?」

 

 緑羅の言葉に未来は緑羅を見上げる。

 

 「親しいからこそ、隠したい事とか、言えない事っていうのはあると思う。本当は響自身も未来に打ち明けたいけど、何か事情があって言えないのかもしれない」

 

 だから、と緑羅は言葉をつづけようとして、う~~~むと小さく唸る。それから少し唸ってぼりぼりと頭を掻き、

 

 「俺が言いたいのは……あんまり卑屈にならないでさ、響の事を信じてあげなよ。まあ、どうしても気になるって言うならもう一度俺に言いなよ。その時は俺からも響に話を聞いておくからさ」

 「………うん、ありがとう」

 

 未来が小さく微笑みながら頷くのを見て、ふうと緑羅は安堵したように息を吐く。

 

 「あ、そうだ緑羅君。この前流星群があったの知ってる?」

 「流星群?いや、知らないけど……それっていつ?」

 「えっと……〇〇日だけど」

 「(あの鎧の少女と戦った時か……)いや、知らないな……そんなのあったんなら見とけばよかった……」

 「私、それを動画で撮ったんだ。明るさが足りなくてほぼ真っ暗だけど……見る?」

 「お、お願い」

 

 未来はすぐに携帯を取り出して操作し、はい、と緑羅に見せてくる。

 画面に映し出されているのはほぼ真っ暗な画面の動画だ。誰が見ても流星群なんて見えない。

 

 「響からもダメじゃんて言われちゃったんだけどね……」

 「………いや、いいじゃん。綺麗でさ。どんどん流れてくるな、全然気づかなかった……」

 

 緑羅の言葉に未来は驚いたように目を丸くする。

 

 「もしかして緑羅君……見えてるの?」

 「うん。見えてるよ。はっきりとは言えないけどね」

 

 だが、緑羅の本気の視力ならば、ある程度ならば見ることができる。

 

 「すごいね……私たちはほとんど見えないのに……」

 「目はいい方だからね」

 

 緑羅は自分の目元を軽くなでながら言う。

 

 「それ、目がいいですむ話なのかな……」

 「まあ、深く考えないでいいでしょ」

 「う~~ん……まあいいか。響も見えない状態でも何度も動画見ようとしてるし。それじゃあ、またね」

 「ん、また」

 

 未来は手を振りながら去っていき、緑羅をその背を見送ると、ふう、と小さく息を吐く。

 

 「さてはて………できれば、相手が未来に気付く前にカタを付けたいね……」

 

 そう呟くと緑羅はそのまま人ごみの中に消えていく。




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