さて、今日はジュラシック・ワールド見てきました。面白かったですね。ですが明らかに続編があるっていう終わりでした……あそこから一体どうつながっていくのか……
ではどうぞ!
暗く暗い闇の中、そこに翼は文字通り浮かんでいた。ふわふわと、まるで水の中で脱力しているかのように。だが、その体が沈むことはない。その状態で翼はぼんやりと思考する。
「私は……生きてる……?」
死を覚悟して放った絶唱。その負荷で肉体はボロボロになり、その状態の自分を憎きあいつが支えた。それが癪だったから、意識を失う前に奴に一言言ってやった。そこまでは覚えているが……自分はどうなったのか、いまいち判別がつかない。
だが、こうして意識があるということは生きているのだろうか。
「いや、死に損なっただけか……」
死を覚悟して放った一撃だったが、どうやら自分はみじめにも命を繋いだらしい。
「所詮私は……出来損ないか………」
そう翼が呟いた瞬間、
「相変わらず真面目が過ぎるな。だけど、その発言はいただけないな」
不意に真後ろから声をかけられ、その言葉で翼の意識は一気に覚醒し、慌てて後ろを振り返る。
「そんな認識じゃあいつも報われないしな」
そう言いながら苦笑を浮かべているのは腰まで伸びた赤い髪をした少女。
「奏!?」
「よ、相変わらずガチガチだなぁ。そんなんじゃいつの日か本当にぽっきりいっちまうぞ?今回はあいつがぎりぎりで補強してくれたけどさ」
死んだはずの相棒の姿に翼は思わず駆け寄ろうとしたが、彼女の口からこぼれた言葉に疑問を覚えたのか歩みを止める。
「補強?あいつが……?」
「もしかして気付いてなかったのか?絶唱を歌った翼に……緑羅だっけか?あいつが自分のエネルギーを明け渡して傷を塞いだんだよ。すごいよなぁ、そんなことができるなんて」
奏は感心したように頷いているが、翼の体は完全に固まっていた。
助けた?エネルギーを明け渡して傷を塞いだ?まさかあいつは絶唱のダメージを癒したという事か?
その瞬間、頭が沸騰するような怒りが沸き上がってくる。
「なぜだ………」
「ん?」
「……そんな事が出来るなら………何で奏にしてあげなかったんだ!!!」
吐き出された言葉に奏は小さく目を細める。それに気づかず、翼は更に言葉を続ける。それはまるで、今までせき止めていた流れが解き放たれるかのようだ。
「どうしてあの時奏を見捨てた!?どうして奏を助けなかった!?もっと奏と一緒にいたかったのに!もっと奏と歌っていたかったのに!奏が傍にいないと私はダメなのに!それなのに……なのに奏を見捨てたのになんで私を助けた!?弱い私を!なんで!なんで私なんかを……」
「はい、そこまで。それ以上は本当にだめだぞ?」
そっと奏は翼を抱きしめ、あやすようにポンポンと背中を叩く。
「奏……どうして……?あいつは……奏を見捨てたのに……」
「本当か?あいつは本当に……あたしを見捨てたのか?」
そう奏が言った瞬間、周囲の景色が一変する。破壊しつくされたライブ会場、宙を舞う煤。空は夕日と分厚い雲で彩られている。そこは……
「あの会場……」
翼が驚いたように周囲を見渡していると、ある一角で視線が止まる。そこにはあの時と同じで緑羅がこちらを見ながら立っていた。
翼が思わず視線を鋭くした瞬間、緑羅は視線を伏せて口を開く。
「すまなかった………守ってやれなくて………」
そう言うと同時に彼が目を開けた瞬間、翼は息を呑む。
緑羅の目は悲しみと罪悪感を帯びていた。そこに同情的なものは一切なく、本当に悲しみ、悔やんでいることが分かる。そしてその顔はまるで自分が味わった物を味合わせてしまったことを詫びるように、知っているからこそその悲しみが分かるというように歪んでいた。
どうして?どうしてそんな目をする。そんな顔をする。お前は見捨てたのに。あの子を騙しているのに……なんで……
「なあ、翼。戦いの向こうとか裏側。そこにはまた違ったものがあるんじゃないか?そしてそこに、真実はあるんじゃないか?」
翼の隣で緑羅を見つめていた奏はそう呟く。
「真実……?」
「真実は置いておいて……少なくともあたしはそう考えてきたし、それを見てきた」
「それは……何……?」
「それは翼自身が見つけないといけないことだ。向こうの景色も……あの時の真実も」
「………やっぱり奏は意地悪だ」
こぼれ出た言葉に奏はカラカラと笑顔を浮かべる。
「そいつは結構じゃないか……さて、そろそろおはようの時間だな」
そう言うと、奏はその場から歩き去ろうとする。それと同時に翼の体がほのかに光はじめ、それに気づいた翼が慌てて奏に向かって声を張り上げる。
「待って、待って奏!私は……私は奏に傍にいてほしいのに……!」
奏はその言葉に振り返ると小さく微笑みながら口を開く。
「あたしが傍にいるかどうかを決めるのは翼次第さ」
「私……次第……?」
その言葉と共に翼の意識は急速にどこかに引き上げられていく。
「あ~~~、疲れたぁ……朝からハードモードすぎますよぉ……」
とある日の二課の指令室。そこで響はソファの上に身体を投げ出していた。ここ数日、響は己を鍛えるために弦十郎の下でトレーニングを積んでいたのだ。
頼んだ理由は彼が強いと思ったからだ。以前緑羅と翼が戦闘をした際、翼が繰り出した天ノ逆鱗を彼は緑羅の代わりに迎撃しようとした。それは彼があれを迎撃できると確信していたからではないかと響は思っている。そう思ったからこそ、響は弦十郎の下でトレーニングを積んでいた。その生で未来との約束を破ってしまうことがあるが、罪悪感は押し殺す。
「はい、ご苦労様」
「あ、ありがとうございます」
その響に友理がスポーツドリンクを差し出すと、響はお礼を言いながら受け取る。
「ふひぃ……あ、そう言えば師匠。一つ聞きたいことがあるんですけど」
「ん?いいぞ。俺で答えられることなら何でも聞いてくれ」
近くで同じようにスポーツドリンクを飲んでいた弦十郎が顔を向けてくる。
ちなみに響は弦十郎の下でトレーニングを行うようになってから彼の事を師匠と呼ぶようになっていた。
「よく考えたら私みたいなうら若き女子高生やうら若き女子高生兼トップアーティストの翼さんにまで戦いを頼む必要があるんですか?ほかにもノイズと戦うための武器はないんですか?この前緑羅君もぼやいてたんですが……」
「公式には無いな。日本だってシンフォギアは最重要機密事項として完全非公開だ」
「マジですか……私、結構派手に動き回っているんですけど……と言うか、緑羅君はそこらへん考慮してるんですか?」
響が思わず問いかけると、友理たちは疲れたようにため息をつく。
「情報封鎖も二課の仕事とはいえ、結構苦労してるよ。彼もまあ目立つのはマズいと分かってるから比較的慎重に動いてるけど、周囲の被害も顧みず家屋を破壊したり、時には平然と人前に飛び出したりもしてるんだよね」
「まあ、そのおかげで助かった人命もあるけど……」
「で、そう言った情報を隠すために時折無理を通すから今や我々の事をよく思っていない閣僚や官庁だらけだ。特異災害対策機動部二課を縮めてとっきぶつと揶揄されている」
「情報の秘匿は政府上層部からの指示だったのにね。やりきれない」
藤尭が再び深いため息を吐き弦十郎は険しい表情を浮かべる。
「いずれシンフォギアを有利な外交カードにしようと目論んでいるんだろう」
「EUや米国はいつだって回天の機会をうかがっているはず。シンフォギアの開発は既知の系統とは全く異なる所か突然発生した理論と技術によって成り立っているわ。日本以外の国では到底まねできないから尚更欲しいのでしょうね」
「結局のところ、いつもの大人の面倒ごとってことですか……」
そこまで言って響は小さくため息を吐くが、それと同時にガバリと顔を上げる。
「って、ちょっと待ってください。それじゃあ緑羅君は……」
「ああ……正直に言えば緑羅君の立場は非常に重大なものだ」
「なんといっても二課に属していないシンフォギア奏者。体は異形に変化しているとはいえ、組織の恩恵も受けずにシンフォギアを振るっている。しかも彼は響君と同じ融合症例の可能性が高い……彼は奏者の中でもとりわけ特別な存在。こう言っては何だけど、彼の体を調べればシンフォギアの開発は一気に加速するでしょうね」
「つまり外国からすれば彼は金の卵を産むガチョウ。喉から手が出るほど欲しいでしょうね」
「その点も踏まえて彼を保護したいのだが………いまだ説得はならずか」
弦十郎の言葉に響は申し訳なさそうに肩を落とす。
「すいません……どうしてもその話をするとすぐに帰っていっちゃって……」
「ああ、いや。響君のせいじゃない。もしかしたら、彼は過去にそれがらみで何かあったのかもしれない。それで我々二課も同列として警戒しているんじゃないだろうか……」
「過去と言いますと……あの空白の13年ですか?」
それは二課の中で緑羅の経歴が一切存在しない2年前よりも過去の事を示している。
「ああ。ここが分かれば彼の警戒を解く何かが見つかるかもしれないのだが……」
「しかし、それにしては緑羅君には何らかの接触はないんですよね……?」
「あ、そうかもしれません。緑羅君は特に何も言っていませんでしたし……」
「いまだ気づいていないのか……それとも……」
そこで指令室のメンバーは言葉を区切り、場を沈黙が支配する。
「……あ、そう言えば了子さんはどこに行ったんですか?」
今この場にはたいていの場合言わせている女性がおらず、響は首を傾げる。
「永田町さ」
響の問いに弦十郎が答える。
「永田町って言うと……国会議事堂とか首相官邸とかがある場所ですか?」
「ああ、政府のお偉いさんに呼び出されてね」
「はあ……」
「本部の安全性、及び防衛システムについて、関係閣僚に対し説明義務を果たしに行っている。仕方のない事さ」
「また大人の面倒ごとですか……」
「ルールをややこしくするのは何時も責任を取らずに立ち回りたい連中なんだが。その点広木防衛大臣は」
そこまで言って弦十郎は腕時計を確認する。
本来ならもう戻ってきてもいい頃合いにもかかわらず、未だに彼女は戻ってきていない。その事に弦十郎は疑問を覚えるように首を傾げていた。
「大変長らくお待たせしましたー!」
その日の夕方。了子がいつもの様にハイテンションな様子で現れたが、指令室の中の空気はとても和やかとは言えない状態だった。
そんな中彼女の声を聴いた弦十郎と響は素早く振り返る。
「了子君!」
「何よ。そんなに寂しくさせちゃった?」
「広木防衛大臣が殺害された」
最初はおどけていた了子だったが、弦十郎の口から告げられた言葉に目を見開く。
「えぇ!?本当に!?」
「複数の革命グループから犯行声明が出されているが、詳しいことは把握できていない。
指令室のモニターには数台の破壊された車と撃ち殺された護衛らしき人物と政府の高官と思しき人物とその秘書の死体が映っている。
広木防衛大臣。周囲から疎ましく思われることの多い二課の良き理解者だった人物だ。
「目下全力で捜査中だ。
「了子さん、何度連絡しても出てくれないから、もしかして了子さんにも何かあったんじゃないかってみんな心配してたんですよ」
「え?」
了子はぽかんとした表情を浮かべると、白衣のから端末を取り出して操作すると、
「壊れてたみたいね!」
そう言いながら申し訳なさそうに苦笑を浮かべ、それを見た弦十郎は小さくため息をつくしかなかった。
「心配かけてごめんなさい。でも、政府から受領した機密資料も無事よ」
了子は手に持っていたアタッシュケースからチップを取り出して見せる。
「任務遂行こそ、広木防衛大臣への弔いだわ」
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