戦姫絶唱シンフォギア 王を継ぎし者   作:夜叉竜

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 今年の見たい映画に実写版銀魂が追加されました。だってさ、実写で将軍かよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!ですよ?見るしかねえじゃん。

 後、今期アニメのはたらく細胞を見て思った。この擬人化をゴジラの細胞に置き換えたらどうなるんだろうか……とりあえず好中球系は間違いなくバーサーカーだと思う。あと、血小板はめちゃくちゃ仕事が早い達人だと思う。

 ではどうぞ!


1-10

 了子が戻ってきてから幾ばくか過ぎた頃、二課の施設内にある広い会議室にはこの組織に所属する職員のほとんどが集合していた。正面には巨大なモニターが設置され、その前には了子と弦十郎が立っている。響も席の最前列に座っている。 

 

 「私立リディアン音楽院高等科、つまり特異災害対策機動部二課本部を中心に頻発しているノイズ発生の事案から、狙いは本部最奥部、アビスに厳重保管されているサクリストD、デュランダルの強奪目的と政府は結論付けました」

 「デュランダル……」

 「EU連合が経済破綻した際、不良債権の一部肩代わりを条件に日本政府が管理、保管することになった数少ない完全聖遺物の一つ」

 「よって、デュランダルをここから移送することに決まった」

 「移送するって……どこにですか?ここ以上の防衛設備なんて!」

 

 藤尭が思わずと言うように声を上げると弦十郎が口を開く。

 

 「永田町最深部の特別電算室、通称記憶の遺跡。そこならばと言う事だ……どっちみち、俺たちが木っ端役人である以上、お上の意向には逆らえないさ」

 

 弦十郎が皮肉気に笑みを浮かべ言うが、すぐに切り替え、口を開く。

 

 「デュランダルの輸送日時は明朝0500。詳細はこのメモリーチップに記載されている」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 指令室のモニターを響はぽかんとした様子で見上げていた。

 そこにはどこかの保管庫の様子が映し出されていた。二本のアームが近づいていくのは中央部に鎮座している透明なケースに収められた古い両刃の剣のような物。

 

 「あれがデュランダル……で、あそこがアビスですか……」

 「東京スカイタワー本分、地下1800mはあるのよ!」

 「ほへぇ……」

 

 了子がモニターに二課全体の見取り図を出して見せるが、響はめちゃくちゃ深いという事ぐらいしかわからなかった。

 

 「はい、じゃあ予定時間まで休んでたら?あなたのお仕事はそこからよ」

 「はい!」

 

 響は指令室を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廊下の一角にテーブルとソファが設えられた場所があるのだが、そこに響は頭を抱えながら座り込んでいた。

 

 「はあ、休めと言われても……こんなもやもやした状態じゃ休めないし……」

 

 実を言うと了子から休めと言われた後、響は寮に戻ったのだが、帰りが遅いのを心配した未来に詰め寄られ、説明するわけにもいかずにその場から逃げ出してして今ここにいるのだ。

 

 「緑羅君に連絡ができればな……」

 

 思わずと言うように響は小さく呟く。

 そうすれば今回の件に関して協力を要請できたかもしれないし、それは無理でも雑談をして時間を潰せたり今回の事を相談出来たりできるのだが……

 そんな事をぼんやりと考えていると、響はテーブルに放られたスポーツ新聞を見つける。何気なくそれを手に取り、中を改めて見た瞬間、顔を真っ赤にして新聞を遠ざける。響が開いたページには下着姿の巨乳姿の女性が写っていたのだ。

 

 「うう……何でこんなの新聞に載ってるの……男の人ってこういうのが好きなの……?」

 

 響は顔を赤くしながら呻き、少しすると目を瞬かせ、新聞をテーブルに置き、自分の胸に視線を落とす。

 

 「……緑羅君も大きい胸とか好きなのかなぁ……」

 

 そう呟きながら響は自分の胸の二つのふくらみを見つめる。

 さっきの写真の女性ほどではないが、それなりにある方だと思う。

 

 「一応、未来よりは確実にあるよね……」

 

 そう呟いた瞬間、

 

 ゾッ!!!

 

 突如として背筋に氷塊をねじ込まれたかのような悪寒を感じ、響は顔を引きつらせ、慌てて周囲に素早くを視線を向ける。

 

 「ひ、響さん?どうしました?」

 

 不意にかけられた声に響はびくりと体を震わせ、恐る恐る顔を向ければそこには困惑した表情の緒川が立っていた。

 

 「なんだ……緒川さんでしたか……」

 「いや、急にどうしたんですか?いきなり何かに怯えるような挙動していましたが……」

 「い、いえ……なんかさっき、怒った緑羅君に匹敵しかねない何かを感じ取りまして……」

 

 響の言葉に緒川は意味は分からないが、一応と言うように小さく相槌を打つ。

 余談だがこの時、少女の身を心配している幼馴染が同年代の少女にあるまじき表情を一瞬浮かべたらしい。

 緒川はとりあえずと言うように響と同じようにソファに座るが、先の一件のせいか二人は会話を交わさず、妙な沈黙が場を支配した。

 少しすると響がこらえ切れなくなったように口を開く。

 

 「あ、えっと……そ、そういえば緒川さん。これ……」

 

 響はテーブルに置かれた新聞の表紙を指さしながら声をかける。そこにはステージ衣装の翼の写真が載っており、横には大きく風鳴翼、過労で入院と書かれていた。

 それを見た緒川はああ、と小さく声を上げる。

 

 「情報操作も僕の仕事でして……ああ、そうだ。翼さんですが、容体が安定してきました。もう大丈夫です」

 「本当ですか!?」

 「はい」

 「そっか……よかった……」

 

 響は安堵したように顔をほころばせる。

 

 「と言っても、まだしばらくは二課の医療施設で安静が必要ですね。月末のライブは……大事を取って中止でしょう……それで響さん」

 

 そこで緒川は少しだけ意地の悪い表情を浮かべると、

 

 「ファンの皆さんにどう謝るか、一緒に考えてくれませんか?」

 「ええ!?え、えっと……あ!全部緒川さんのせいにするとか!?マネージャーとして力不足でしたとか!」

 「それはちょっと勘弁してくれませんか……?」

 

 完全に藪蛇だった。緒川は顔を引きつらせながら呟く。それを見て響は小さく笑みを浮かべ、それを見た緒川は小さく笑みを浮かべる。

 

 「響さん、あまり気負わず、もう少し肩の力を抜いていいんですよ?大勢の人間が少しずつですがバックアップしてくれていますので」

 「……優しいんですね、緒川さんは」

 「怖がりなだけです。本当に優しい人は他にいますよ」

 「ありがとうございます。話してたらだいぶ楽になってきました。私、少し寝てきますね」

 

 そう言うと、響は立ち上がって去っていく。

 

 「……翼さんも響さんぐらいに素直になってくれたらなぁ」

 

 その後姿を眺めながら緒川は小さくそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は過ぎ、空が白みはじめた時間、二課の施設の前には黒塗りの車4台と了子の自家用車が並んでおり、その前には二課のエージェントたちと響が並んで立っており、その正面には弦十郎と了子がいた。

 

 「防衛大臣殺人犯を検挙するという名目で検問を配備、記憶の遺跡まで一気に駆け抜ける」

 「名付けて、天下の往来独り占め作戦!」

 「俺は上空のヘリに搭乗する。ではいくぞ!」

 

 その言葉を皮切りに彼らは車に乗り込み、一斉に発進する。

 デュランダルは了子の自家用車に乗せられており、響も助手席に乗り込んでいる。

 そのまま5台の車は市街地を走り、上空からは弦十郎が乗り込んだヘリが追従する。

 襲撃を警戒していた彼らだったが、意外にもそういう物はなく、比較的順調に記憶の遺跡に進めていた。

 だが、当然このままでいくはずがない。日が昇ったころ、響達は巨大な橋に差し掛かっていたが、突如として轟音と共に橋の一角が崩壊を起こす。

 

 「了子さん、橋が!」

 

 響が叫ぶと共に了子は素早くハンドルを切り、他の車も崩壊を避けるが一台避け切れず崩壊個所から落下して激突、爆発を起こす。

 

 「しっかり掴まっててね、私のドラテクは凶暴よ」

 「え?ど、どういうわきゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 響が言い終わる前に了子はアクセルをふかして加速する。

 

 『敵襲だ!まだ目視できていないがノイズだろう!』

 「この展開、想定したより早いかも!」

 

 弦十郎は上空から苦々しい面持ちで下を見ていた。ここからではいざと言う時に援護に向かうことができない。

 どうする、と考え込んでいると、不意に視界に妙なものが映る。

 橋の下は海になっているのだが、その一角で不自然に波が起こっているのだ。まるで水中を何かが移動しているかのように発生している波はそのまま一直線に了子たちの後を追うように進んでいく。

 

 「あれは……まさか……」

 

 一方響達は無事に橋を渡り終え、市街地に入り込んでいたのだが、それと同時にマンホールがすさまじい勢いで吹き上がる水で勢いよく空に打ち上げられる。

 

 「マンホールが!?」

 『下水道だ!ノイズは下水道を移動している!それと、緑羅君らしき影を補足した!そちらに向かっているぞ!」

 

 弦十郎の言葉に響と了子が気を取られた瞬間、前方を走っていた護衛車が吹き上がった水で勢い良く打ち上げられ、了子たちの車目掛けて落下してくる。

 了子は素早くハンドルを左に切って車を回避する。

 

 「弦十郎君、これはヤバいんじゃない?この先の薬品工場で爆発でも起きたらデュランダルは……」

 『分かっている。さっきから護衛車を的確に狙ってくるのはノイズがデュランダルを損壊させないよう制御されているからと見える!だが、それならやりようもある。ならばあえて危険な地域に滑り込めれば攻め手を封じられるかもしれん!』

 「勝算は?」

 『思い付きで数字が語れるか!』

 「しょうがないわね……合流した緑羅君が周囲を破壊しないことを祈るしかないわね」

 

 そう呟きながら了子はそのまま薬品工場に向かってハンドルを切る。

 了子の車と最後の護衛車は薬品工場のゲートを吹っ飛ばして敷地内に入る。

 それと同時に敷地内のマンホールが吹き飛び、ノイズが一斉に跳び出し、護衛車に取り付く。エージェントたちはすぐさま車を乗り捨てて脱出し車はそのまま薬品工場の施設に激突し爆発する。

 だが、ノイズたちはデュランダル破壊を恐れてか了子の車には襲い掛かろうとしない。

 

 「せ、成功です!これなら……きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 響が声を上げた瞬間、了子の車は勢いよく地面のパイプに乗り上げてバランスを崩すとそのまま横転し、勢いよく滑って行ってしまう。

 ようやく車が止まると、ドアが開けられ、そこから響と了子がはい出てくる。二人はケガらしいケガは負ってないようだ。だが、その周囲は完全にノイズに囲まれてしまっている。

 

 「了子さん!早く逃げましょう!」

 

 響はすぐに後部座席に置かれていたデュランダルのケースを引っ張り出す。

 それと同時に異変が起こる。ビシリ、と言う音とが響き、響と了子が思わず視線を動かすと、ノイズの群れの足元に亀裂ができており、そこから青白い陽炎のようなものが漏れ出る。その亀裂は一気にノイズがいる一帯に広がっていくと亀裂から青白い炎が溢れ出し、次の瞬間、轟音と共に地面を吹き飛ばしながら青白い炎の柱が吹き上がりノイズを焼き尽くす。

 

 -熔裂ー

 

 響達が呆気にとられたようにそれを見ていると、炎の中から緑羅が勢いよく飛び出し、そのまま響達のそばに着地する。

 

 「緑羅君!」

 

 名前を呼ばれて緑羅はちらりと視線を向けるが響の腕の中のケースを見て小さく眉を寄せる。

 

 「響、それは?」

 「あ、えっと……」

 「デュランダルっていう聖遺物よ。ノイズはそれを狙っているの」

 

 響が説明しようとした瞬間、了子が遮るように割り込んでくる。

 その声に緑羅は了子に視線を向けるが、それと同時に低い唸り声を漏らしながら剣呑に視線を細める。

 だがそれは一瞬で消し去り、緑羅は視線を近くのタンクに向ける。その上にはあのネフシュタンの少女が立っていた。

 

 「そう……だったら分担だ。響。君はここでそれを守ってて。俺はあいつを叩く」

 「え、あ……う、うん!」

 

 響が頷いたのを確認して緑羅はその場から飛び出す。

 響の唄声を聞きながら緑羅はタンクに向かって突き進み、それに気づいた少女は視線を鋭く緑羅を睨むと緑羅に、向かってとびかかり、鎖を勢いよく叩きつけてくる。

 緑羅はそれをガントレットで弾き飛ばし、逆に体を反転させて尾を振るう。

 少女は空中で体を捻って回避するとそのまま着地し、

 

 「今日こそは貰うぞ!」

 「出来るものならやってみろ!」

 

 少女は鎖を勢いよく薙ぎ払うが、緑羅は左手をかざしてその一撃を防ぐ。だが、鎖はそのまま緑羅の腕に巻き付いてしまい、それを見て少女はにやりと笑う。

 

 「捕まえ……うおわぁ!?」

 

 だが、緑羅はガントレットで鎖を掴み上げるとそのまま勢いよく振り回し始める。少女の体はあっさりと持ち上げられ、そのまま手当たり次第に振り回される。

 そして緑羅はその勢いを欠片も殺さずに勢いよく少女を地面に叩きつける。轟音と共に地面が砕け、少女がつぶれたカエルの様な声を漏らす。

 もう一撃、と緑羅は力を込めるが、横合いからノイズが体を槍状にして勢いよく突っ込んでくるのを見て鎖から手を放してその場から離れる。

 距離を取った緑羅は響の様子を確認するために視線を向ける。

 響は周囲をノイズに囲まれていたが、彼女は慌てていなかった。ノイズが襲い掛かるが、響は掌打を撃ち込みノイズを破壊。その後ろから別のノイズが襲い掛かるが、響は回し蹴りでそれを吹き飛ばし、別のノイズが触手を伸ばせばそれを回避すると同時に掴み上げ、先ほどの緑羅の様に勢いよく振り回して他のノイズに次々と叩きつけて包囲を粉砕する。

 それを見て緑羅は小さく口笛を吹く。緑羅の知る響はおおよそ戦いに関しては素人だった。だが、今の彼女はそんな評価が覆るほど堂々たる戦いぶりを見せている。

 この分なら大丈夫だろうと緑羅は視線を少女に向けるが、次の瞬間ん?と眉を寄せる。不意に周囲に妙な力を感じ取ったのだ。

 なんだ?と緑羅が視線を巡らした瞬間、響の後方、了子の後ろに置いてあるケースを突き破りデュランダルが飛び出してくる。

 

 「覚醒起動!?」

 

 それに気づいた緑羅は視線を金のオーラを纏うデュランダルに向け、低い唸り声を漏らす。本能が察したのだ。あれは人が手を出してはならない物。あれはあまりにも危険すぎるということに。

 

 「こいつがデュランダル!」

 

 その声に緑羅が慌てて視線を向けるといつの間にか復活したネフシュタンの少女がデュランダル目掛けて飛びだす。

 

 「な、おい!ちょっと待て!」

 

 その背に緑羅が慌てたように声をかけるが、少女はそれを無視してデュランダルに手を伸ばす。

 取れる、そう確信し少女が笑った瞬間、その少女の背に響がタックルを叩き込む。

 

 「がっ!?」

 「させない!」

 

 バランスを崩し落下する少女の代わりに響がデュランダルの柄を掴み上げる。

 瞬間、デュランダルから金色のオーラが放たれ、響が目を見開いた瞬間、

 

 「マズイ!」

 

 緑羅が叫んだ瞬間、デュランダルから巨大な光の柱が立ち上る。

 それと同時に石造りの剣だったデュランダルは金色の刀身に翡翠色のラインが走った美しい剣へと変わる。

 

 「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 だが、それを手にしている響の様子は異常だった。両目は真紅に染まり、口からは獣の様な咆哮が上がり、とうてい真面な状態ではなくなっている。

 

 「こいつ何しやがった!?」

 

 ネフシュタンの少女が思わず後ろに下がりながらふと後ろを見ると、了子が響を見て笑っていた。だがそれは普段の明るいものではなく、狂ったような笑みだった。それを見た少女は奥歯を食いしばり、

 

 「そんな力を見せびらかすなぁぁぁぁぁ!」

 

 腰の杖を取り出してノイズを召喚するが、それは響の注意を引き付けるだけだった。響は理性なき瞳を少女に向ける。

 

 「え?」

 

 少女が呆然と声を漏らした瞬間、響はデュランダルを少女に向けると大きく振りかぶり、

 

 「やめろ響!」

 

 その響の横合いから緑羅が飛び出すと響の体を後ろから抱きしめ、ガントレットでデュランダルを掴み上げる。

 瞬間、そこから凄まじい量のエネルギーが緑羅の中に流れ込んでくる。それと同時に頭の中に強烈な何かが流れ込んでくる。

 

 コワセコワセコワセコワセコワセコワセコワセ!スベテヲコワ「黙れ」

 

 だが、緑羅はそれをただ一言によってねじ伏せる。思考を、感情全てを呑み込む破壊衝動を彼はまるで赤子の手をひねるかのようにねじ伏せたのだ。

 緑羅は自分の腕の中でもがく響に視線を向けると、

 

 「そっちはダメだ、響。そっちは君がいるべき場所じゃない。帰ってきて……」

 

 まるで癇癪を起こす子供をあやすように優しく声をかけて左手で強く優しく抱きしめる。

 すると、次第に響の体から力は抜けていき、遂には緑羅にそっともたれ掛かるようにして気絶する。

 それを確認した緑羅は響の手からデュランダルを離すと、それを無造作に放り投げる。

 ガランと音を立てて地面に落ちるデュランダルに呆然としていたネフシュタンの少女は再起動を果たし、慌てたようにデュランダルを取りに行こうとするが、次の瞬間、全身を襲った尋常ではない悪寒に動きが止まる。

 まるで全身の血管の中を血液ではなく液体窒素が流れているかのようなおぞましさすら伴う悪寒。全身が意味もなく震え、それに反するように大量の冷や汗が全身を濡らす。

 少女が首を巡らすと、緑羅が響を抱き寄せながら砲門を向けていた。それはすでに全開まで開いており、そこに炎が蓄えられている。だが、それはいつも繰り出す青白い物ではなく、真っ赤に染まっており、そして砲門からは白い煙が立ち上っている。

 

 「…………避けろ。出ないと死ぬぞ」

 

 そう緑羅が呟いた瞬間、少女の大慌てでその場から逃げ出す。

 それと同時に顎の中の炎は更に勢いよくうねり出し、背びれは赤いスパークを発しながら激しく明滅し、

 

 -煉滅ー

 

 解き放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヘリで上空から状況を確認しようとしていた弦十郎はそれを見た。

 海上の彼方へと放たれた赤い一条の熱線を。瞬間、熱線の射線付近にあった建物、ノイズが熱線に触れていないにもかかわらず炎に呑み込まれ、工場が一瞬で業火に包まれる。

 プラントが次々と爆発し、その爆発がノイズたちを焼き尽くすのを見て弦十郎が息をのんだ瞬間、熱線が海上に着弾する。

 すると一瞬音が消え、次の瞬間、海面が鼓膜を引き裂かんばかりの轟音と共に尋常ではない大爆発を起こし、巨大な水柱が立ち上る。

 そして爆発の衝撃波は容赦なく弦十郎が載るヘリに襲い掛かり、その機体を激しく揺さぶる。

 

 「ぬぁ!?ば、ばかな!?」

 

 弦十郎は信じられない気持ちで叫んでいた。熱線の着弾地点は発射地点から彼の目算だが数キロは離れていたように見える。にもかかわらず衝撃波が届くほどのこの威力。異常すぎる。

 

 「つ、墜落します!衝撃に備えてください!」

 

 姿勢を維持できなくなったヘリはそのまま墜落していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 低い音と共に砲門のいたるところが開き、大量の煙が吐き出され、周囲を白く染め上げる。

 ふう、と小さく息を吐きながら緑羅は砲門を下げ、ガントレットに戻す。緑羅は周囲を包む炎を見て小さく鼻を鳴らして腕の中の響きに視線を向ける。

 発射の際に自分の体を盾にして熱や衝撃から守ったおかげで彼女には火傷一つない。

 その事に安堵するようにため息を吐くが、次の瞬間、彼は目を剣呑に細めて首を巡らす。

 その先には腕を頭上に突き上げた了子がいた。異様な事にその腕からは紫の何かが張られている。どうやらそれで熱線を防いだようだが、完全には防ぎきれなかったようだ。額からは血を流し、白衣は白衣は千切れ飛び、髪もほどけている。

 だが、彼女はそんなの気にも留めていない。代わりにその顔に興奮したような不気味な笑みが張り付いている。

 緑羅は低い唸り声を漏らしながら了子を睨みつけ、響を守るように抱きしめ直す。

 少しして、緑羅は何かに気付いたように首を巡らすと、響を抱えたままその場から移動する。

 炎に包まれた工場跡地を移動していくと、目の前にボロボロのヘリが見えてくる。どうやら不時着したようで、あちこち破壊されているが、幸いにも出火はしていないようだ。そして弦十郎がヘリの扉を破壊しながらパイロットの救出をしていた。

 

 「おい」

 

 そこに緑羅が声をかけると弦十郎が振り返る。

 

 「緑羅君………」

 

 弦十郎が名前を呼ぶも緑羅はをそれを無視して響を抱えたまま近づくと、弦十郎に響を差し出す。

 

 「ケガはしていないはずだけど、ちゃんと検査してあげて。それと、おたくの仲間の女があっちにいるよ」

 「了子君が?」

 

 緑羅は小さく目を細めるも、響を手渡すとすぐさま背を向け去ろうとする。

 

 「ま、待ってくれ!君も何かケガ「あの女から………絶対に目を離すなよ」え……?」

 

 振り返らずに告げられた言葉に弦十郎は困惑したように動きを止める。その隙に緑羅はそのまま炎の向こうに消えていく。




 感想、評価、どんどんお願いします。

 後、緑羅の技名ですが漢字二文字は絶対、できれば火に関する漢字を入れるように心がけています。

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