戦姫絶唱シンフォギア 王を継ぎし者   作:夜叉竜

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 お久しぶりです。今後はこちらも投稿していきますね。多分前までと同じ感じになるかと。

 ではどうぞ!


1-14

 目の前で突如として戦闘態勢に移った緑羅を見て響はぽかんとしてしまい、翼は視線を険しくして油断なく剣を構える。

 少しして正気に戻った響は慌てたように緑羅に詰め寄る。

 

 「ちょ、ちょっと待って緑羅君!なんでいきなりそんなことになるの!?私たちはただ2年前の事が聞きたいだけで……!」

 「だから言ったでしょ?その事を知りたかったら俺に傷をつける……もっと具体的に言えば俺から血を流させれば、ちゃんと話すって」

 

 緑羅はそう改めて説明するが、それでも納得できないのか響はなおも緑羅に詰め寄る。

 

 「だからなんでそんな話になるの!どうしてお話をするのに戦う必要があるのさ!」

 

 緑羅はむう、と小さく唸り声をあげてから頬を掻き、口を開く。

 

 「そうだね……理由を上げるとすれば……君らにあの日の真実を知る資格がるかどうかを確かめるためさ」

 「資格って……なんでそんな上から目線なのよ。その資格が私たちにはないっていうの?」

 

 翼が険しい表情で問いかけると、緑羅は困ったようにガントレットで顎を掻いて唸り声をあげ、疲れたようにため息を吐く。

 

 「ごめん。君たちにあの日の事を知る権利はあると思ってる。俺が言っているのは………俺の秘密についてだよ」

 「え……?どういう事?」

 

 響と翼が戸惑うように首を傾げる。どうして2年前の事を話すのに緑羅の事が出てくるのか。

 

 「あの日の真実を話そうとすると必然的に……俺の秘密の事も話さなきゃならなくなるんだよ。どうして俺が聖遺物を使えるのか、どうして俺が戦えるのか………どうして俺が、聖遺物を使う時にあんな風に変異するのか……ね」

 

 その言葉に響と翼は目を見開く。何か事情があると思っていたがずっと追い続けていた緑羅の秘密がこんな所で関わってくるとは思いもよらなかったのだ。

 

 「でもね……俺はこのことを誰かに話すつもりはない。誰かに背負ってもらうつもりもない。これは俺が一人でずっと抱え込んだまま墓場まで持っていかなきゃいけない物なんだよ。誰にも打ち明けずに、俺の中で封印し続けなきゃいけないことなんだよ。それを知ろうっていうんだ……まさかとは思うけど、なんの資格もなしに人の絶対の秘密を知ろうなんて都合のいいこと考えてないよね?」

 

 その問いに響は小さくうめき声を上げ、翼は静かに緑羅を見つめる。

 

 「何かをなしたいなら力を……資格を示せ。俺に君たちなら俺の秘密を打ち明けてもいいと思わせろ。俺に……君たちにならこの秘密を託せると思わせろてみせろ」

 

 そう言いながら緑羅は静かにガントレットを構える。

 で、でも……と響がなおも納得ができないと言うように言いつのろうとするが、その肩に翼が手を置く。

 

 「立花、諦めなさい。これはもう何を言っても無駄よ」

 「翼さん……でも……」

 「アイツにはいまだに思う所はある……だけど、あいつが自分の秘密を誰にも言うつもりがなく、それを一人で背負い続ける覚悟をしていることだけは分かる。その覚悟を曲げてまでチャンスを与えてくれた。それぐらいは分かるわ」

 「だ、だけど……」

 

 翼はそう言うと静かに前に出て剣を構える。響はそれを見てるだけしかできなかった。何か別の方法があるのではないか、こんなことする必要はないのではないのか、そんな事ばかり考えて体が動かない。その響に翼は振り返らずに語りかける。

 

 「アイツの過去、そして秘密。それらはきっと軽々しく話していいものじゃないのでしょう。全てを一人で背負いこもうとするほどにアイツの決意は固かった。それなのに私たちに知るチャンスを与えてくれた。ならば私は全力でそのチャンスをものにするわ」

 「………」

 「あなたはこのままでいいの?」

 

 翼の問いかけに響は拳を震わせる。

 一緒に戦っていく仲間と……緑羅と戦うなんて納得できないし……絶対に嫌だ。だが……もしもここで戦わなかったらあの日の事も、彼の秘密も全てが分からないままだ。それはつまり……また彼一人に全てを背負わせるという事だ。また彼を………一人で放り出してしまうという事だ。これはそれを防ぐための最初で最後のチャンスなのかもしれない………ならば……

 響は静かに顔を上げると拳を構えて翼の隣に立つ。

 それは…………戦うよりも嫌だ。助けてくれた大切な人の力になれないままなんて………絶対に嫌だ。

 響は静かに顔を上げ、拳を構える。

 

 「立花……」

 「……まだ緑羅君と戦うなんて嫌ですけど……このまま緑羅君を一人ぼっちで放り出すなんてもっと嫌です……」

 「別に一人は慣れてるんだけどね……まあいい。二人ともやる気のようだね。それじゃあルールは俺に血を流させたら君らの勝ち、君たち二人の聖遺物が解除されたら俺の勝ちね………底力見せてみな、人間よ」

 

 そう言った瞬間、緑羅はガントレットを響と翼に向ける。

 瞬間、手首が炎が噴き出しながら勢いよく射出、ワイヤーを伴って二人に襲い掛かる。

 二人は素早く散会して拳を回避すると、そのまま緑羅との距離を詰める。

 

 「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 そのまま翼は剣を、響は拳を構えて緑羅に襲い掛かるが、

 

 「甘いよ」

 

 そう呟くと同時に緑羅は勢いよく跳び上がって二人の攻撃を回避するとそのまま拳を回収せず、勢いよく振り下ろす。ワイヤーでつながった拳はさながらチェーンハンマーのようにうなりを上げながら翼に襲い掛かる。

 翼は素早く剣で拳を弾くが、

 

 「っ!重い!」

 

 ぶつかった瞬間、鈍い音と共に剣を握る手に凄まじい衝撃が走り、思わず剣を取りこぼしそうになるがそれは防ぐ。

 拳は今度こそガントレットに回収され、そのまま緑羅は着地するが、そこに響が飛び込んで拳を振るう。が、緑羅は慌てず左手でその一撃をあっさりと受け止めると、そのまま片手で響の体を持ち上げると思いっきり放り投げる。

 そこに翼が素早く距離を詰め、上段から剣を振るうが緑羅はガントレットであっさりと防ぐとそのまま力任せに薙ぎ払い翼を弾き飛ばす。

 緑羅はそのまま追撃せずに近くの木に向かって回し蹴りを叩きこむ。

 すると木が爆散し、大小さまざまな破片が散弾となって翼に襲い掛かる。着地した翼は剣を振るって小さな破片は回避し、大きなものは撃ち落とすが、そこを逃す緑ではなく、勢いよく跳躍するとそのまま上空から翼目掛けてガントレットを振りかぶって襲い掛かる。

 

 「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 だが、そこに復帰した響が飛び込む勢いのまま緑羅に飛び蹴りを繰り出してくる。

 それに気づいた緑羅は即座にガントレットをかざして防御する。だが、流石に空中では踏ん張りがきかず鈍い音と共に吹き飛ばされる。

 

 「立花、下がりなさい!」

 

 翼の声に目を向ければ翼の剣が大型化し、その刀身が青白い光を帯びている。

 響が素早く下がると同時に翼が剣を振り下ろす。

 

 ー蒼ノ一閃ー

 

 そこから巨大な斬撃破が放たれ、吹き飛ばされた緑羅に襲い掛かるが、緑羅は慌てずガントレットを振り上げて爪を明滅させ、

 

 ー斬葬ー

 

 振り下ろすと同時に青白い4つの斬撃破が放たれ、蒼ノ一閃と激突、轟音とともに相殺される。

 煙が立ち込め、一瞬響きたちが緑羅を見失った瞬間、不意に周囲が青白く照らされる。

 慌てて二人が顔を上げれば木よりも上の位置に巨大な火球が打ち上げられ、

 

 -惨火ー

 

 その火球が炸裂、炎の雨となって辺り一帯を飲み込まんばかりに降り注ぐ。

 響は慌てて後ろに下がって回避するが、翼は逆に勢いよく前に飛び出し、炎の雨を回避しながら緑羅との距離を詰める。煙を突き破って緑羅の姿を確認すると翼は素早く剣を繰り出す。

 それに気づいた緑羅は即座にガントレットでその一撃を弾くが、翼は弾かれた勢いのまま体勢を変え、逆立ちのような体勢になると脚部のブレードを展開し、

 

 ー逆羅刹ー

 

 そのままコマのように回転してブレードを繰り出す。緑羅は素早く体をのけ反らせて逆羅刹を回避するが、そこに響が煙を突き破って現れ、雄たけびを上げながら拳を繰り出す。

 だが緑羅は勢い良く体を回転させてその勢いを乗せて尾を振るう。鞭のようにしなった尾はそのまま響を打ち据えて吹き飛ばす。そのまま緑羅はガントレットを顎に切り替えて翼に向けると熱線を放つ。

 翼は素早くそれを回避してそのまま距離を取ると響のそばに着地する。

 

 「大丈夫?立花」

 「はい……何とか……でも……緑羅君……こんなに強かったなんて……」

 

 その言葉には翼も同意せざるを得ない。あの時は頭に血が上っていてまともに思考ができなかったが、こうして冷静になって戦ってみるとその強さが明確になってくる。

 基礎スペックは言わずもがな。自分達よりも上だ。技に関しても実にバリエーションに富んでいるが、それ以上に脅威なのはその戦闘センスだ。自分の状況、相手の状況を一瞬で理解し、そしてその状況に応じた適切な判断を素早く、ためらいなく下して、実行する。そしてそれを成し得るだけの能力も持ち合わせている。翼とてかなりの修羅場を潜り抜けてきたが、こいつは間違いなくそれ以上の修羅場を潜り抜けてきている。

 間違いなくこいつは自分よりも強い。下手したら奏と組んでいたとしてもこいつには勝てないかもしれない。

 だが、もしもそうだとしても……

 

 (ここで引くわけにはいかない……!)

 

 翼はきっとこちらを待ち構えている緑羅を睨みつけ、

 

 「立花。奴の注意をひいて。私に考えがある」

 「翼さん………はい!」

 

 響は大きく頷くと地を蹴って緑羅との距離を詰める。

 緑羅は唸り声を漏らすと響との距離を詰めてガントレットを振るう。

 響は素早くそれを回避すると緑羅目掛けて蹴りを撃ち込む。

 それは見事に緑羅の腹部に突き刺さるが、帰ってきた感触は鉄でも蹴りつけたような感触でまるで手ごたえがなく、事実緑羅は揺らいでいない。そのことに響きは一瞬目を見開くがそれをすぐに消す。

 緑羅は素早く左手で殴りかかってくるが響はあっさりと踵を返して距離を取る。

 緑羅はすぐに響との距離を詰めようとするが、その頭上に影が差し、顔を上げれば頭上に翼が飛び上がっており、その手に持っていた短刀を緑羅目掛けて投げつける。

 だがその正体を知っている緑羅は安易に弾いたりはしない。ガントレットを顎に切り替えて撃ち落とそうとするが、

 

 「そこ!」

 

 そこに響が飛び込んで顎を思いっきり殴りつける。鈍い音と共に顎が明後日の方向に弾かれ、それにつられて体勢が大きく揺らぐ。

 

 「ぬ!?」

 

 緑羅が目を見開きながらも反射的に左拳で響を殴り飛ばそうとするが、すでに響は後ろに下がっている。緑羅は慌てて顎を引き戻そうとするが、その動きが強制的に止められ、首を影に向ければ短刀が影に突き刺さっているのが見える。

 

 ー影縫いー

 

 千載一遇のチャンス。翼は再び大きく跳躍すると上空から緑羅目掛けて刀を投げつける。

 

 (やりすぎかもしれないけど……こいつにはやりすぎなければ届かない!)

 

 刀は両刃の超巨大剣に変貌、翼がその柄を蹴りつけると剣と翼の脚部のスラスターが起動して爆発的な加速を生み出し、超巨大剣が轟然と緑羅に襲い掛かる。

 

 -天ノ逆鱗ー

 

 が、緑羅はその場で突如として咆哮を上げる。それと同時に全身から光が漏れ出ると一瞬の後に全方位に衝撃波が放たれる。

 

 -衝破ー

 

 その衝撃波は周囲の木々をなぎ倒すだけでなく地面に突き刺さっていた短刀までも吹き飛ばす。

 翼がぎょっと、目を見開く中自由になった緑羅はその場から素早く退避する。

 目標を失った天ノ逆鱗はそのまま誰もいない地面に轟音と共に直撃する。

 翼はすぐに天ノ逆鱗を解除しようとするがぞわりとした悪寒を感じるとその場から飛びのく。その場所を緑羅のガントレットが薙ぎ払っていく。

 地面に着地した翼の元に響が駆け寄ってくる。

 

 「翼さん!」

 「立花……失敗したわ。すぐに切り替えて……」

 

 翼が剣に目を向けた瞬間訝しげに目を細め、響もそれにつられるように視線を剣の柄のほうに向ける。

 そこには緑羅が立っているのだが、緑羅はガントレットと左手を使って柄を掴むと

 

 「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 雄たけびを上げながら全身を使ってのけ反るような姿勢を取る。黒い皮膚越しに筋肉が激しく脈動しているのが見て取れ、力が籠められるたびに剣が震える。

 そして緑羅がひときわ大きく力を込めた瞬間、地面に突き刺さった状態の天ノ逆鱗が轟音と共に地面から引き抜かれる。

 その光景を二人はあんぐりと顎が外れんばかりに口を開けた何とも間抜けな表情で見ていた。

 だが、緑羅が天ノ逆鱗を大上段に振り上げる光景を見てようやく正気に戻り、

 

 「逃げなさい!」

 

 そう言いながら翼はその場から大きく飛びのき、響も慌ててその場から走り出す。

 そして大上段に振りかぶられた天ノ逆鱗が大気を切り裂きながら振り下ろされる。

 瞬間、公園の一角が爆撃にでもあったかのような轟音と共に抉られる。

 木が地面ごと吹き飛ばされ、大地に小さな断層が生まれる。

 緑羅はそのまま剣から手を放して距離を取るように跳躍して地面に着地し、疲れたように大きく息をつく。

 響は茫然自失と言った様子でそれを見ていた。

 何だあれは。何をした?いや、そんなの分かってる。分かり切っている。天ノ逆鱗を振り下ろしたのだ。あれを?あの大質量の剣を?ありえない、ありえない、ありえない!

 響は盛大に顔を引きつらせているが、翼は素早く大剣を剣に戻して手にすると握って素早く構える。緑羅はブルりと体を震わせる。

 

 「立花、しっかりしなさい!まだ終わってないわよ!」

 「え、あ、は、はい!」

 「あの程度で驚かない。言っとくけど叔父様だったら生身で同じことができてもおかしくないわよ」

 「は……はい?」

 「なんだそいつ……」

 

 翼の言葉に響はぽかん、と口を半開きにし、緑羅は頬を引きつらせる。

 そんな中でも中翼は思考を巡らせていた。状況は最悪に近い。こちらの攻撃は悉く無力化されている。影縫いですらあっさりと対処されてしまい、こちらの手札はもうほとんど残っていない。おまけに時間もない。元々翼は無理を押してここに来たのだ。このまま長引けばもうじきシンフォギアを維持できなくなる。そうなる前に……

 翼は地面を蹴って緑羅に切りかかるが、緑羅はガントレットで弾き返し、逆に拳を繰り出してくる。

 それを回避しながら翼はそのまま連続で剣を振るうが、緑羅はガントレットと拳で強引に弾き返して連撃を無理やり途切れさせて攻撃を割り込ませてくる。

 その様を見ていた響だが、唇をかむと気合を入れるように頬を叩く。

 

 (呑まれちゃだめだ!翼さんはまだ諦めていない!だったら私もまだ諦めるな!私にだってできることがある!考えて、考えるんだ!)

 

 思考巡らす響は自分の両手のパイルに目が行く。自分はさっき、これでネフシュタンの鎧を貫いた。これならばもしかしたら………

 響は両手をかざし、エネルギーを集めていく。彼女の両手にオレンジの光が集まっていき、パイルが引き絞られる。

 だが、それに気づかない緑羅ではない。目ざとくそれに気づくとさせないと言わんばかりに翼を弾き飛ばすとガントレットを顎に切り変えて口を開くが、

 

 「させない!」

 

 翼が短刀を素早く投げつけてくるが、緑羅は軽く尾を振るって弾き返す。

 だが、その隙に同時に翼は手にした剣をまるで槍のように振りかぶり、勢いよく投げつける。

 緑羅がぎょっ!?と目を見開くと同時に剣の切っ先が顎の口腔に突き刺さる。

 

 「なっ!?」

 

 この状態で撃とうものならエネルギーが暴発しかねない。緑羅は熱線のチャージをやめて急いで剣を抜き去る。

 それが決め手になった。限界まで引き絞られたパイルを構えた響は腰のパーツから炎を噴き出して一気に加速して緑羅に向かって飛び出す。

 だが、緑羅もさるもの。即座に顎をガントレットに切り替えながら左手で殴りかかる。

 響が拳を避けるか防御すればガントレットでの迎撃態勢が整い、響を返り討ちにすることなどたやすい。

 が、次の瞬間、響の腰の炎がさらに勢いを増すと響の体がさらに加速してそのまま緑羅の拳に真っ向から突っ込む。

 何を、と思った瞬間、拳が響の顔面を直撃する……が、響はのけぞらず、そのまま真っ直ぐに緑羅を睨みつけ、緑羅は驚愕に目を見開く。

 

 (こいつ……!?わざと距離を詰めてあえて額で受けた!?)

 (っう……すごく……痛い……だけど、へいき、へっちゃら!!)

 

 次の瞬間、響はそのまま緑羅の腰にタックルをかますと、同時に腰のスラスターが轟音と共に爆炎を噴き出し、それによって緑羅と響は勢いよく飛び出す。その勢いのまま響は緑羅ごと公園の中の高台に向かっていき、緑羅をそこに叩きつける。

 背中から思いっきり叩きつけられ、さしもの緑羅もがはっ!?と肺の中の空気を強制的に吐き出される。

 その隙に響は右こぶしを振りかぶり、噴き出す炎の勢いを乗せて渾身の力で振り下ろす。

 が、緑羅は咳き込みながらも素早くガントレットをかざす。瞬間、拳がガントレットに激突し、それと同時に引き絞られたパイルがガントレットに撃ち込まれる。

 轟音と共に周囲に衝撃波がまき散らされ、高台の一角が砕け散る。

 

 「立花!」

 

 翼が声を上げると同時に、

 

 「……残念」

 

 緑羅が唸りながら声を上げる。響の一撃は見事にガントレットに突き刺さり、そこを起点にひび割れを起こしていた。だが、逆に言えばそれだけだ。その一撃は防がれ、緑羅に届いていなかった。

 

 「これで終わり……」

 

 緑羅が響に目を向けて息を吸い込んで、

 そのまま硬直する。

 響はすでに右拳を抜いており、代わりに左拳を振りかぶっていた。そこのパイルもまた、限界まで引き絞られ、噴き出す炎が枷を破ろうとするように暴れている。

 

 「まさか……!?」

 「これで……届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 雄たけびと共に響は全てを開放する。暴れ狂う炎を推力に引き絞られた左拳が本物のパイルバンカーのようにガントレットに、より正確には先ほどできたひび割れに叩きつけられ、そして引き絞られたパイルが開放され、ひび割れに突き刺さる。

 大気を震わせるような轟音が響くと同時にガントレット全体に罅が入ると次の瞬間、真っ二つに砕け散り、その下の緑羅の右腕を捉える。

 瞬間、凄まじい爆発と衝撃が襲い、高台が崩壊する。




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