前回でフィーネがどこでG細胞を手に入れたか。答えはO章のライブの時です。あの時、緑羅にもガングニールの破片が刺さり、緑羅はそれを引き抜きましたがその際に付着した血肉をフィーネは回収しました。
ではどうぞ!
朝焼けの光に照らされ、響は小さくうめき声を上げながら目をこすって顔を起こす。
「はれ?ここは……」
響はぼんやりとした顔で周囲を見渡してあれ?と首を傾げる。自分が寝ている場所はどうやらリビングの机の上のようだが、なんでこんなところで寝てるんだろうか。
疑問に思いながら体を起こすと体にかけられていた毛布がずり落ちる。んん?と首を傾げながら周囲を見渡すと、同じように机に持たれて毛布が掛けられて同じように眠る未来がいた。そして窓は空いており、風でカーテンが揺らめいていた。
あれ?と思いながら机の上に紙切れが置いてある。拾い上げて中を見ると、
『それじゃあ、またね。俺の事に関しては後日改めて連絡する。緑羅』
「ああ……そっか……」
ようやくはっきりしとし始めた意識の中昨日何があったのか思い出す。
昨日、あの後、それこそ遅くまで緑羅と話し込んだのだ。離れてからのお互いの事を。緑羅の旅先でのこと、あの後自分たちがどんな風に過ごしたか。こんなことがあったとか、取り留めのない事を延々と話し続けていた。そしてどうやら未来と自分はいつの間にか寝落ちしてしまったらしい。緑羅はもう帰ったようだ。
響は紙をポケットにしまい、う~~ん、と体を伸ばしてから頬をはたいて気合を入れると、手元のスマートフォンを取り出して操作する。
表示されたのは夜の内に撮っておいた響と未来で緑羅を挟んで映っている写真だ。
それを見て響は嬉しそうに笑みを浮かべるが、次の瞬間、んん?とよくよく写真を見てみる。響と未来で緑羅を挟んでいるのはまあ、いいのだが、よく見れば二人とも緑羅の頬に自分の頬をくっつけている。それは確認して響きの頬がかぁ、と赤くなる。
あの時は深夜のテンションもあって全然恥ずかしくなかったのだが、今冷静になってみてみるとかなり恥ずかしい。では消すか、と考えるもそれはない。せっかく友達3人で撮った写真なのだ。消すなんてのはない。
と言うかこの写真の中の緑羅は割と平然とした、きょとんとした表情を浮かべている。女の子二人に挟まれてその反応はないと思うのだが……
はあ、とため息を吐きながら響はスマートフォンをしまうと未来の肩を揺する。
「ねえ、未来。起きて。起きてよ、未来」
少しすると未来もまたう~~ん、と声を漏らしながら起き上がる。
「あれ?響……私……」
「昨日緑羅君と話込んじゃってそのまま寝ちゃったんだよ。緑羅君はもう帰っちゃったみたいだけど」
未来はそっか、と小さく頷きながら起き上がる。布団がずり落ちる。
「もう帰っちゃったのか……」
「まあ、当然かもしれないけどね……誰かに見つかったら大騒ぎになっちゃうし……」
「うん……そうだね」
未来はう~~ん、と伸びをするとそのまま立ち上がり、
「おはよう、響」
「うん、おはよう、未来」
そう言い合い、二人は笑みを浮かべる。
日が大きく傾きだしたころ合い。平日であるからか人通りが少ない中、緑羅はのんびりとした歩調で歩きながら財布の中身を確認していた。
「……あと一万とちょっと………」
そう呟くと同時にはあ~~~、と深い深いため息を吐き出した。この街に来てはや一か月と少し、初日に現金や生活用品の大半を奪われて手元に残った数万円でどうにかやりくりしてきた緑羅だが、ここに来ていよいよ厳しくなってきた感じがする。
生活用品は人間が捨てたものを拾い集め、食事もできる限り海の生物を取って食べている。だが、数日に一回は銭湯に行かなければならないし、洗濯だって欠かせない。更に言えば海産物ばかりでは飽きてしまい、時々外食もしているのが響いている。それだってできる限りチャレンジメニュー(完食で無料系)で済ませてきたのだがすでにここら辺は食い尽くしてしまった。だが、それ以上に家計を圧迫しているものがある。
それが今、緑羅の腕に下げられている紙袋の正体……ハンバーガーだ。
きっかけは些細な事だった。少し前に街中を歩いていたら大手ハンバーガー店を見つけたのだ。これまでにも見てきたのだがその時はやることもあったので特に興味を持たなかった。
それがここ最近はこの辺を拠点にしていたので、心に少し余裕があり、前世の子供の時の大好物だった故に久しぶりに食べてみようかなと思ったのが運の尽き。
うまかった。めちゃくちゃうまかった。前世で食べた時よりも。それによってタガが外れ、その日は7個ほどペロリと平らげ、これはいかんと自省したのだが、どうしてもあの味が口から離れず、結果少なくとも一日に一個は食べるようになってしまった。おかげでお金の浪費は一気に加速した。
「どうしようかな……金は洗濯と銭湯にかけるようにして、食事は魚介を中心にして……時折ネズミや蛇を……ハンバーガーはしばらく我慢して……ああ、でも、一食ぐらいなら……」
そんな事をぶつぶつと呟きながら緑羅は歩いていく。ハンバーガーを諦めようとして諦めきれないあたりすっかり大好物になっているようだ。
そんな事をぶつぶつと呟きながら歩いていると、
「あ、緑羅君!」
ふいに名前を呼ばれて振り返ればそこにはこちらに向かって手を振る響と未来がいた。緑羅はおう、と軽く片手を上げるとそのまま二人の元に向かって歩いていくと二人も駆け寄ってくる。そしてそれにつられるように後ろから3人の女の子が慌てたように走ってくる。
「よ、響。学校帰り?」
「うん、そうなんだ。未来たちと一緒に近くにあるふらわーってお好み焼き屋に行くところなんだ。前、奢るって約束したから」
「そうか……」
「緑羅君は何してるの?」
「特に何も。街をぶらついてただけ」
未来の問いかけにそう答えるが、響は違うだろうな、と思っている。と、
「えっと……ビッキーにヒナ?この人は?」
と、響たちの後ろからついてきた女の子3人のうち、黒髪の少女が問いかけてくる。響たちと同じ制服を着ているのを見ると同じリディアン音楽院の生徒なのだろう。
「ああ、紹介するね。この人は五条緑羅君。私たちの友達なんだ」
「どうも、五条緑羅だ。響たちとは仲良くさせてもらってるよ」
そう言いながら緑羅は軽く手をひらひらと動かす。
すると、3人は軽く目を見開く。
「緑羅って……二人がよく話していたあの?」
「話には聞いていましたが……」
「確か……学校に通わずに旅してるんだっけ?そんなのアニメだけの話かと思ってたけど……」
3人は緑羅を観察するように見つめながら言い合うが、緑羅はどことなく居心地が悪そうに体を揺する。このような視線はどうにも幼少期のあの人間達を思い出していい気分ではない。
「あ、すいません。自己紹介もしないで。私は安藤創世って言います」
そう言ったのは黒髪の少女。
「私は寺島詩織と申します」
そう言ったのは長い金髪の少女。
「私は板場弓美よ」
そう言ったのはツインテールの少女。
「ん、よろしく。俺の事は二人から聞いてるの?」
「ええ。二人って結構頻繁に……えっと……」
「ああ、緑羅でいいよ。好きなように呼べばいい」
「それじゃあ……頻繁に緑羅君の事を話してるのよ」
弓美がそう言うと響と未来は、
「え、そ、そうかな……?」
「そんなつもりはないんだけど……」
恥ずかしそうに頬を掻きながらそう言う。
「言うほどじゃないかもしれませんが、、一週間に一回は話題に上がりますね」
詩織と弓美がうんうんと頷いていると、響たちはあう、と声を漏らして俯く。
と、何やらしきりに考えこんでいた創世が不意によし、と言いながら顔を上げる。
「すいません!突然ですけどあなたの事、ゴリョウ君って呼んでもいいですか?」
「ご、ゴリョウ?」
突然の発言に緑羅が戸惑った表情を浮かべると、詩織が、またか、と言う表情を浮かべる。
「すいません。創世は人にニックネームをつける癖がありまして……」
「そうなんか……まあ、別に構いはしないけどさ」
「それじゃあ、よろしくね、ゴリョウ君」
創世がよし、と頷いているのを見て緑羅はふうむ、と顎を撫でる。何とも変わった子である。
だが、と緑羅は少し目を細める。響と未来が復活して3人と言葉を交わし始めるが、それはずいぶんと自然体で、浮かべている笑顔も普段と変わらない。どうやら、彼女たちはあの連中とは違うようだ。
そう言う友達を持っていることに緑羅は安堵する。
「あ、そうだ!せっかくだし緑羅君も一緒にふらわーに行かない?」
「いいね、それ。ちゃんと紹介したいし」
「おお、ビッキーにしてはいい考え!3人の話を色々と聞きたいし」
「そうですね。特に3人の関係性を重点的に、詳しく!」
「か、関係って……」
「そ、そんな大したものじゃ……」
詩織が興奮したように言うと響はあう、と顔を赤くして、未来は少し恥ずかしそうな笑みを浮かべるが、緑羅はきょとん、とした表情を浮かべて首を傾げる。
「関係性って……俺と響と未来は友達だよ?さっきもそう言ったと思うけど……」
特に何か隠そうとするでもなく淡々と答えると響の赤みが一気に引っ込み、あ、そ、そう……と言わんばかりに意気消沈した表情を浮かべる。未来はだ、だよね。と言いながらもどこかショックを受けたような表情をする。
その様子に創世たちはうわぁ、と顔を引きつらせてそのまま非難がましい視線を緑羅に向ける。
「え……え?な、何さ……」
突然向けられた視線に緑羅は思わずたじろぐが、3人ははあ、と深いため息を吐くだけで特に何も言わない。
「で、結局どうするんですか?」
場を変えようと言わんばかりに弓美が緑羅に問いかけると、緑羅はそれに便乗するようにふうむ、と顎に手を当てて考え込み、
「………いや、今日は遠慮しておくよ。飯はもう買ったし、いろいろやることがあるしね」
その言葉に響は即座に表情が切り替わり、静かに緑羅に視線を向ける。
「そうですか……それじゃあ、また今度ご一緒しましょう。響と未来もそれでよろしいですか?」
「あ、うん。私は別に……」
「私もそれでいいよ」
「それじゃあ、また今度ね」
そう言うと緑羅は軽く手を振ってその場から歩き去って行き、それに向けて響たちも軽く手を振り返して見送る。
次の日。その日は朝から雨が降りしきっているのだが、まるで人気のない街の中を赤いシンフォギア、イチイバルを纏ったクリスは駆け抜けていた。狭い路地裏に入ったところで後ろからの音に振り返れば、そこには数匹のノイズがいた。クリスは即座にアームドギアを向けてエネルギー弾を放ち、ノイズを粉砕する。
そしてノイズが駆逐されたのを確認すると同時にクリスはそのままふらつくと壁にもたれかかると同時に倒れ込む。そしてイチイバルが解除され、赤いドレス姿になると同時にクリスは意識を失った。
それから少しして、ずん、と言う鈍い音と共に路地裏に黒い影が着地する。影はそのままクリスに近づいていき、彼女が完全に意識を失っているのを確認すると、耳元まで裂け、牙が並ぶ黒い口から低いうなり声を漏らす。
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