バイオRE:2買ってやってますが……あれは……どうなんだろうか。メインクリアしたら裏片が続くんだろうか……ちなみに弾薬がカツカツできついです……
あ、前回の焚火のところを七輪にしました。よく考えたら焚火は危なすぎる……
月明かりが廃墟の窓から部屋の中に入り込んでくる。それを緑羅は窓際に座り込みながら静かに眺めている。
せっかく綺麗な月明かりだというのに地上の人工物の明かりはそれを曇らせている。その事実に緑羅ははあ、と深いため息を吐き出し、ちらりと部屋の中の一角に視線を向ける。そこでは布団にくるまってクリスが静かに寝息を立てている。
彼女と行動を共にするようになって数日が経過している。あの後、緑羅は早速情報を集めようと思ったのだが、どうにもクリスの容体は芳しくなかった。何やらフィーネのところにいた時にそれなりに痛めつけられていたようで、それらの疲れやら何やらが一気に噴き出したようだ。仕方なく一回彼女が回復するまで待つことにした。しっかりと飯を食い、しっかりと眠ったおかげかクリスはだいぶ回復した。明日辺りに情報を引き出して構わないだろう。
緑羅は静かに空を見上げながら目を細めていると、
「ん………」
小さく声が漏れ聞こえ、顔を向ければクリスが小さく身じろぎをしている。
それを横目で見て、緑羅は小さく息を吐きながら改めて外に目を向ける。
静かなものだ。だがこうも静かだと手持ち無沙汰になってしまう。だからだろう。なんとなく……
「~~~~♪……~~~~~~~~~♪」
静かに歌いだす。それは厳密には歌ではない。かつての世界で自分が聞いていた旋律。力を与えた旋律。頭の中に残っていたそれを静かに奏でる。
そうやって静かに奏で、旋律が盛り上がってきた瞬間、
ドクンっ!
「ん?」
緑羅は旋律を取りやめて思わずと言うように視線を自分の体に向ける。なぜだ。なぜか妙に体に力が満ちてくる。これは………まさか……
「歌で起動……か……」
そう呟きながら緑羅は月を眺める。
「ん……朝か……?」
次の日、今日はあいにくの雨模様で時間はいまいち分からず、外からは雨音が響いてくる。それを聞きながらクリスはむくりと起き上がり、周囲を見渡す。緑羅の姿はない。恐らくだが食料を調達に行ったのだろう。
今日も魚介類だろうなぁ、と考えながらクリスははあ、とため息を吐く。そのことに文句を言う筋合いはないのだが、やはりそろそろ肉系が食べたくなってくる。
この数日、緑羅はクリスを情報源として身近に置いていた。それはクリスに嫌でもあの時の事を思い出させるのだが、緑羅の対応はあの連中とは全く違った。クリスが体調不良を訴えれば無理に聞き出すような真似はせずに休ませてくれた。薬の類は……先立つものがないと言われたのでもらえなかったが普通に食事(魚介類系が多く、おまけに調理方法は七輪で焼くだけだったが)もくれて、寝床も普段使っていたであろう布団はクリスに譲り、自分は床で寝入る。捕虜生活に似ているが、その時とは比べ物にならないぐらいに快適だ。おまけに回復したら銭湯に行ってもいいと言われている。
今ここに緑羅はいない。今はもうすっかり回復している。逃げ出すなら今なのだが、クリスにはそうすることができなかった。仮にこの場から逃げ出したとしても自分にはいく場所がない。それにノイズの襲撃だってある。ここならば寝床、食料を確保できて、おまけに戦力も確保できる。ここは今のクリスにとって安全地帯と言える場所だ。
だが……もしも自分から情報を引き出したらあいつは自分をどうするか分からない。だからこそクリスは情報をできる限り出し渋るつもりだ。あちらがこちらを利用するならこちらもできる限り利用する。
だが……それと同時に約束は守るつもりだ。自分が人形ではなく、人間であることを証明するためにも。
「とりあえず、七輪の準備しておくか……」
そう呟きながらクリスは部屋の一角から七輪と炭を取り出し、いつでも飯の準備ができるようにしておく。
準備をしながらクリスはそう言えばと昨晩の事を思い出す。
「あれは……歌……だよな……」
昨晩、寝ていたら不意に旋律が聞こえてきて思わず目を開ければ、緑羅が月明かりの中静かに鼻歌を歌っていた。儚げでありながら力強い旋律。緑羅はすぐに歌うのをやめたが、妙に耳に残る歌。だが、関係ないとクリスは頭を振ってその事を忘れて準備を進めるが、それでも歌の事を考えたからだろうか。クリスは自然と鼻歌を歌っていた。
「その歌は?」
後ろから声をかけられ、クリスが慌てて振り返ると、部屋の入り口付近に緑羅が立っていた。手には今日の成果が入っているであろうバケツが下げられている。
「な、なんだよ!」
「別に。ただ歌が嫌いって言ってたわりにはそうやって歌うんだなって思っただけさ」
「……歌なんて大嫌いだ。特に、壊すことしかできないあたしの歌はな……」
そっぽを向きながらそう言うと緑羅はそう、とだけ呟いて部屋に入ると荷物のところからまな板と包丁を取り出し、今日の成果をさばいていく。
さばき終わったら七輪の上に敷かれた金網の上に置いて炭に火をつける。あとは焼けるの待つだけだ。
しばらく魚介類が焼かれているを黙って二人そろってみていると、
「……さて、顔色を見る限りではもう大丈夫だろう。そろそろ話してほしいんだけど……?」
その言葉にクリスは来たか、と唇をかみながら緑羅を見つめる。
「欲しい情報はフィーネの正体、目的、戦力、そして居場所だ。君の事は話さなくても大丈夫」
「…………」
「……まさかとは思うけど……ここに来て誤魔化す気はないよね?もしもそのつもりなら……俺もやり方を変える必要が出てくるけど……」
緑羅が静かに目を細めるとクリスはびくりと怯えるように体を震わせる。それをじろりと緑羅は睨み続ける。ぱちぱちと火が散る音が響き渡り、周囲に芳しい香りが広がってくる。
「………まずは飯にしようか」
そう言うと緑羅は火にかけられていたエビを手に取って殻ごと噛み付き、咀嚼していく。
「焼けてる。食いな」
呑み込んでからそう言うと緑羅は食べ進めていく。クリスは素直に魚を取って口に運ぶ。調味料の類はないが十分にうまい。
二人はそのまま無言で食べ進めていき、しばらくすると完全に食べ終わり、緑羅は七輪の炭を片付ける。
片づけを終えた緑羅はそのままクリスにじろりと視線を向け、クリスは何も言わずにその目を見つめ返す。
どれほどそうしただろうか。数十秒?それとも数分?それはクリスには分からない。先に動いたのは緑羅だった。ん?とピクリと眉を揺らして視線を部屋の入り口に向ける。
一瞬訝しげに首を傾げたクリスだがすぐに理由に気づく。部屋の外から誰かが歩いてくる気配がするのだ。
クリスはすぐさま立ち上がって壁に背を預け、緑羅はそのまま入り口を睨みつける。
そうしているとまず緑羅が小さく目を見開き、それに続いてクリスの眼前にビニール袋を持った手が突き出される。
「ほれ」
そう言いながら部屋に入ってきたの風鳴弦十郎だった。
「なっ!?お前は……」
「……どうしてここが分かった」
クリスが驚いたように目を見開き、緑羅が剣呑に目を細めると弦十郎はそのまま緑羅の向かいに腰を下ろす。
「俺たち二課はもともと情報主体だったからな。昔取った杵柄さ。ま、それでも緑羅君一人では足取りもつかめなかったが……」
「雪音クリスと行動を共にしたのがあだになったか……」
弦十郎の言葉に緑羅は憎々し気に唇をかみしめる。
クリスは弦十郎を睨みながらも自然と緑羅の後ろに移動し、
「何しにここに来やがった……」
クリスが訊ねると弦十郎はビニール袋からあんパンを取り出してクリスと緑羅に差し出す。
「ん?」
「差し入れだ。腹でも減ってるんじゃないかと思ったんだが……」
「……バカにしてんのか?ちゃんと飯なら食ってるし、食わせてる」
そう言いながら緑羅が部屋の隅を指さす。弦十郎が目を向ければ散乱した魚の骨や貝の殻が見える。なるほど、と頷きながらあんパンは自分で食べ始める。
「……緑羅君もそうだが君の事もずいぶんと探し回ったよ、雪音クリス君。バイオリン奏者の父親と音楽家の母親を持つ音楽界のサラブレッド」
弦十郎の言葉にクリスは大きく目を見開き、緑羅は静かに目を細める。
「二人ともNGO活動に参加し、世界各地を飛び回っていたが、8年前に戦火に巻き込まれ両親を失い、君自身も捕虜として捕まった」
「……はっ、よく調べてるじゃねえか。そう言う詮索反吐が出る」
同意、と言わんばかりに緑羅は頷く。それら気に留めず弦十郎は続ける。
「だが2年前、事態が動いた。国連軍の介入によって君は助けられた。当時の日本は適合者候補として音楽界のサラブレッドである君に注目していた。そして、身元引受人になろうとしていた。だが、君は帰国直前に行方不明になった」
ふいに緑羅の目線が剣呑さを増す。
「俺たちは大いに慌てたさ。それなりの人員を動員して捜査したが、そのほとんどが死亡、あるいは行方不明となり、残ったのは俺だけさ……」
「……何が言いたいんだよ」
「俺は君たちを救いたい」
その言葉に緑羅は剣呑そうに目を細め、クリスはぽかん、と口を半開きにする。
「君を救う事は俺や、犠牲になった者たちの望みだ。そして緑羅君の体も事もきちんと治療を施し、その秘密も口外しないと約束する」
「……」
「ふざけんな!何が望みだ!余計なこと以外はいつも何もしてくれない大人が偉そうに!そんな大人の付けを払うのはいつも弱い奴じゃないか!」
「引き受けた仕事やり遂げるのは大人の務めだ。もちろん緑羅君も」
「今度は大人の務めと来たか!綺麗ごとは「クックックックッ……」な、なんだよ?」
クリスが叫ぼうとした瞬間、緑羅は低い声で笑い声をあげ、クリスと弦十郎は緑羅に目を向ける。
「クックッ……犠牲になった者たちの望み?何さ。お前は死んだ奴らからそう聞いたのか?それとも死者の声でも聞こえるのか?そうじゃないなら勝手に死んでいった者たちの想いを語るな」
「……」
「そもそも救う?ずいぶんと上から目線じゃないか。そんなにも俺は哀れか?あの姿になったことを後悔しているように見えたか?苦しんでいるように見えたか?俺は一度でもお前らに助けてった言ったか?俺は一度も言った覚えはないが?」
「だが……君に何かあれば響君たちが……」
「響たちは今は関係ない。以前に俺は言ったよな?救いが救いとは限らない。望んでいないものを押し付けるのはいけないって。俺はお前たちの救いなんて求めていないし、俺には必要ない。俺の体は正常だ。何にもおかしいところはない」
「しかし……「そもそも……こいつも件も俺は気に食わない……お前の言い方だと、お前らはこいつが適合者候補だったから助け出そうとしたって聞こえるけど……じゃあなにか?こいつが適合者候補じゃなかったら助ける価値すらなかったってか?」そ、それは……」
緑羅の言葉に弦十郎は思わず言葉に詰まる。もちろん弦十郎にそんなつもりはない。だが、政府がそうか、と問われれば話は違ってくるだろう。恐らくだが、政府は捜索はしただろうが、死亡者が出た時点で中止を言い出したかもしれないし、そもそも人員も少なかった可能性もある。
「ふざけんなよ。結局はお前らにとって利用価値があるから救おうとしただけじゃないか……死んでった連中の望み?お前の、お前らの望みだろうが。こいつはお前らにとって都合のいい物じゃない……こいつは命ある者だ。あさましかろうと、卑しかろうと、自分の意思でどうするか決めることができる……人間だ」
緑羅の言葉にクリスは大きく目を見開きながらその背を見つめる。
「俺はな……響も未来も、ついでに言えば風鳴翼も信用している。だがな、お前らを、その後ろにいる奴らを信用していない。組織は無数の人間の集合体。お前はその人間の全ての趣味嗜好、思想を理解しているのか?俺の秘密を知って、変心しない者たちがいないと断言できるのか?」
「っ……」
「できないんだろう?そんな爆弾を抱えたような連中の世話になりたい奴がいるか………俺たちは救いなんて求めていない。必要もない。そもそも務めだのなんだのと義務感で救われたくないんだよ………失せな、小僧が」
「……分かった。今日は帰らせてもらうよ」
そう言うと弦十郎はビニール袋を手に取り、そのまま部屋を出ていく。
「……お前……」
クリスが緑羅を見つめていると、ふう、と小さく息を吐てクリスのほうを振り返ると、
「すぐに移動する……と言いたいが、その前にだ……折角だ。君がよければ話してくれないか?君に何があったのか。話したくないならそれでいい。すぐに移動するよ」
緑羅の言葉にクリスは小さく息を詰まらせると、しばし視線をさまよわせるが、少しして小さく息を吐く。
「もともとあたしに拒否権はないんだ……話すよ」
そう言うクリスからはほんの少しだけ険が取れていた。
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