戦姫絶唱シンフォギア 王を継ぎし者   作:夜叉竜

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 投稿しますね。

 ではどうぞ!


1-21

 響と未来と翼が一緒に遊んだ日から数日が経過したころ、リディアン音楽院の屋上で、翼は二人にあるものを渡していた。

 

 「これって、チケット?」

 「翼さん、これって……?」

 

 二人は戸惑いながらもライブのチケットを受け取り、首を傾げる。

 

 「そのライブのチケットは芸能活動を再開させてからの私の初めてのステージのチケットなの」

 「えっ!?それって復帰ステージってことですか!?」

 「えぇ。10日ごにあるアーティストフェスに急遽ねじ込んでもらったの」

 「なるほど!」

 「倒れて中止になったライブの代わりという訳ね」

 

 響は早速と言わんばかりにチケットの裏の会場の場所や開始時間などを確認し始めるが、その瞬間、響は場所を確認して目を見開く。

 

 「翼さん……この会場って……」

 

 そこは2年前、ツヴァイウィング最後のライブが行われた場所、響にとって、今の全てが始まった場所であった。

 

 「立花にとって、つらい思い出のある場所ね」

 

 翼は小さく目を伏せながらそう言う。それは翼とて同じだからだ。あの日、彼女は全てを失なった場所だから。

 

 「……ありがとうございます、翼さん」

 「え?」

 

 だからこそ、響のその言葉に翼は驚いたように目を見開き、顔を向ける。

 

 「確かに、ここは全ての始まりと言っていい場所です。いやな記憶もあります。ですが、それと同じぐらいに大切な場所です。ここで奏さんと翼さん……そして緑羅君に出会えたんですから」

 「立花……」

 

 その言葉に翼と未来は優し気に微笑みを浮かべ、響はいつも通りの笑みを浮かべる。

 

 「そうだわ。出会えたらだけど、五条緑羅にも渡してもらえないかしら?」

 

 そう言って翼はもう一枚チケットを差し出してくる。

 

 「緑羅君にですか?」

 「ええ。そろそろいい加減に話の件を聞きたいし、その場も設けたいのよ」

 「……はい、わかりました!」

 

 響は大きく頷きながらそのチケットを受け取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして迎えたライブ当日。刻一刻と迫るライブ開園の時間の中、響は会場ではなく街中にあった。理由は言わずもがな、遅刻である。

 

 「はぁ、はぁ……せっかくチケット貰ったのにこのままじゃ開演に間に合わないよ……本当に私って呪われてるかも」

 

 そう言いながらも足は止めずに走る響だったが、ポケットの端末が鳴り響き、響はすぐさまそれを手に取る。

 

 「はい、こちら響!」

 『ノイズの出現パターンを検知した。緑羅君とクリス君もパターンも検知した。翼にもこれから連絡を……」

 「待ってください師匠!」

 『どうした?』

 「現場には私だけが行きます。今日は翼さんには大勢の人の前で歌って欲しいんです。最後まで歌わせてあげたいんです」

 『……できるのか?」

 「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 工場地帯にて緑羅とクリスがノイズたちを相手に戦っている。

 クリスがガトリング砲を乱射してノイズを撃ち抜き、緑羅が崩炎でノイズを焼き払い、吹き飛ばす。

 だが、その数は一向減る様子がない。なぜなら……

 

 「ちっ!面倒な奴だな……」

 

 クリスが睨みつける先にいるのはノイズの中でもひときわ巨大な城のような形状のノイズがいる。各所に砲門のようなものがあるのも面倒だが、それ以上に厄介なのは蛇口のような部位から大量のノイズを吐き出しているのだ。

 緑羅は火球を形成するとそれを打ち上げ、炸裂させる。

 

 ー惨火ー

 

 降り注ぐ炎の雨がノイズを次々と焼き払うが、背後の城塞型ノイズが次々とノイズを吐き出す。

 

 「どけ、ビースト!」

 

 クリスの声に緑羅はためらわずその場から飛びのく。クリスはガトリング砲を向けるとそれを一気に解き放つ。

 

 ーBILLION MAIDENー

 

 おびただしい量の弾が弾幕となって城塞型ノイズに襲い掛かるが、どうやら相当頑丈なようで、弾を弾き返してしまう。

 

 「だったらこれはどうだ!」

 

 クリスは腰のパーツを変形させると、

 

 ーMEGA DETH PARTYー

 

 一斉に小型ミサイルを城塞型ノイズに向けて発射する。ミサイルは全弾城塞型ノイズに直撃するが、それでも城塞型ノイズはびくともしない。

 城塞型ノイズはその砲門をクリスに向けるとそこから鳥型ノイズを砲弾として撃ち出す。

 クリスは慌ててそれを回避するが、城塞型ノイズは続けてノイズを撃ち出す。が、緑羅が腕を振るうと炎の壁が出現してクリスに撃ち出されたノイズを焼き払う。

 それと同時に緑羅はガントレットを顎に変形させて熱線を放つ。熱線は城塞型に直撃、爆発を起こすが、直撃個所にはすすけた後があるだけで目立った傷はない。

 緑羅は軽く口笛を吹きながらクリスのそばに着地する。

 

 「どうすんだよ。このままじゃジリ貧だぞ」

 「そうだね……ま、やりようなんていくらでもあるさ」

 

 そう言うと緑羅は軽い調子で顎を振るう。

 

 「周辺のノイズをお願い。俺がデカ物を一気に叩く」

 「ど、どうやって……「いいから頼むよ」お、おい!」

 

 クリスの制止も聞かずに緑羅は一直線に城塞型に向かって飛び出す。ああ、もう!とクリスは悪態をつくとガトリング砲をノイズの一団に向け、弾幕を放つ。

 獰猛な咆哮にも似た銃声と共に無数の弾幕が放たれ、ノイズたちを次々と貫いていく。その中を緑羅は恐れることなく真っ直ぐに走っていき、城塞型ノイズとの距離を詰める。

 城塞型ノイズは砲門を緑羅に向けて砲撃を行うが、緑羅はガントレットで弾き返し、さらに続けての砲撃は弾の鳥型ノイズをかみ砕いて無力化し、背びれを光らせる。

 そして目の前にたどり着いた瞬間、緑羅は跳躍して城塞型ノイズにとりつき、ノイズを吐き出している蛇口の口を顎で咥え込む。

 

 「こういうのは中からって決まってる」

 

 そう言って熱線を放つ。いかに強固であろうと内部はその限りではない。解き放たれた莫大な炎と熱エネルギーはそのまま蛇口を通って城塞型ノイズの内部に到達すると手当たり次第に暴れまわり、その暴威を振るう。

 暴れまわる破壊が外部に出ようと城塞型ノイズの至る所から炎として吹き出し、そしてそれが限界にまで達した瞬間、城塞型ノイズは内部から吹き飛ばされる。

 圧迫された炎とエネルギーがそのまま衝撃波として周囲のノイズに襲い掛かり、焼き払っていく。

 その衝撃にクリスは思わず顔を庇うが、少しすると顔を上げて周囲を見渡す。

 そこには城塞型ノイズはおろか通常のノイズすらその姿はなく、ただぽつんと緑羅が立ってコキコキと首を鳴らしていた。

 

 「よし、終わったね」

 「あ、ああ……お前、本当にとんでもないな……」

 

 あの大型をあっさりと倒してのけた緑羅にクリスはもう戦慄が止まらない。自分はこんな奴と戦っていたのかと考えるとよく死ななかったなと思う。

 

 「さて、後処理は連中に任せるとして、俺たちはとっとと……」

 

 そこで緑羅は言葉を切って視線をどこかに向ける。クリスが訝しげに首を傾げると、緑羅は小さく鼻を鳴らす。

 

 「響が来るか………あの件の事もいい加減話すか………雪音クリス。俺はこれから響と合流する。君はどうする?」

 「え?どうするって……帰るさ。廃墟で待ってる」

 「そっか。それじゃあ………「緑羅くーーん、クリスちゃーーん!」来たか……」

 

 緑羅の視線の先に響が着地して駆け寄ってくる。

 

 「二人とも、ノイズが出たって……あれ?」

 

 響は周囲を見渡してノイズが一匹もおらず、煤が散らばるだけの状況を見て首を傾げる。

 

 「えっと………もしかして………終わっちゃった?」

 「うん、終わった」

 「お前がちんたらしてるうちにな」

 

 二人の言葉に響はそ、そっか………と気まずげな苦笑を浮かべる。

 

 「それじゃあ……今から急げば間に合うかな……」

 「間に合うって……何が?」

 「あ、うん。実は今日、翼さんのライブがあって……」

 

 響の言葉に緑羅はなるほど、と小さく頷き、

 

 「それじゃあ早く戻ったほうがいいんじゃない?もしかしたら間に合うかもしれないし」

 「うん……そうだ!緑羅君とクリスちゃんも一緒に来たら?」

 「は!?なんであたしがそんな事……!」

 「無理でしょ、いくら何でも。招待されてないんだから「あ、緑羅君のチケットならあるよ?」マジかよ……」

 

 思わず緑羅が目頭をもみ、クリスはどこか呆れたような表情を浮かべる。

 

 「クリスちゃんの分はないけど、緒川さんに言えばもしかしたら通してくれるかもしれないし……」

 「ふざけんな!なんでお前らとなれ合いをしなきゃなんねえんだ!アタシたちは敵なんだぞ!」

 「で、でも……緑羅君と一緒にいるし……って、あれ?そう言えばなんで二人は一緒にいるの?ここに来た時も一緒だったみたいだし……」

 

 そう響は問いかけるが、気のせいだろうか。若干声のトーンが下がった気配がする。

 

 「ああ、今こいつは俺と行動を一緒にしてるんだ。こいつの情報が欲しいから……って響?」

 

 緑羅がそう言った瞬間、響の表情が明らかに変わった。じろりとした視線で緑羅を睨みつけ、明らかに不機嫌になっている。突然の感情の変化に緑羅は想わず狼狽えてしまう。

 

 「え、あれ?ちょ、ひ、響?」

 「……緑羅君。今日のライブ、一緒に来て」

 「は、はい?」

 「今日のライブは私と一緒に見る。決定ね」

 「い、いや、ちょっと待ってよ。そんないきなり「別にいいでしょ。予定ないなら来てよ。未来だっているんだし」いや、そうは言っても……!?」

 

 いつになく強固な姿勢の響の緑羅は困惑しきった表情を浮かべる。

 どうしたのか。そんなの響にも分からない。だが、緑羅がクリスと一緒に行動していると聞いた瞬間、響の胸中をもやもやとして、凄く嫌な感覚が襲ったのだ。どうしてかクリスと一緒にいることが許せなくて、そこではなく自分のそばにいてほしくて、気がつけば無理やりにでも緑羅をライブ会場に連れて行こうとしていた。

 

 「ちょ、ちょっと雪音クリス、何か言って……「なんであたしがそんなことしなくちゃならないんだよ。勝手に言ってくればいいだろ。話すこともあるみたいだし」あ、あれ?」

 

 とっさに緑羅はクリスに助けを求めるが、その彼女は明らかに不機嫌と言った表情で吐き捨てるように告げ、緑羅はんん?とますます困惑を強くして首を傾げる。

 とはいえ、今の自分の状況がまずいことに変わりはない。ここはやはり、一番危険の少ない方法を取るべきだ。

 

 「あ、あのさ……その……俺も行ってみたいけど……やっぱあの連中のお膝元に移動するのは抵抗があるというか……」

 「そんなことしないし、私がさせない」

 「それでもやっぱり……それにあまりに急だし……」

 「………」

 「本当にごめん。誘ってくれた嬉しいけど、その、今日は遠慮したいんだけど、いいかな?」

 「………どうしても?」

 「そうだね。ごめん。あとでなんか埋め合わせするからさ。今日のところは………」

 

 響は泣き出しそうな表情で唇を引き結び、じっと緑羅を見つめていたが、

 

 「……分かった。緑羅君を困らせたくないし……今日はいいよ」

 

 見るからに落胆した様子でそう言うと、もう帰ると断って響はその場から勢いよく飛び出して夜空の彼方に消えていく。

 

 「はぁ………何とかなったか……でも、なんでいきなりあんな不機嫌になったんだ?雪音クリス、何か知ってる?」

 「知らねえよ。おら、やることがないならさっさと帰るぞ」

 「お、おう?」

 

 何やらさっきから不機嫌な様子のクリスに緑羅は困惑したように首を傾げて一応帰路に就く。

 その後ろをクリスは不機嫌ですと言った様子で、だが、無意識なのか口元は緩んでいた。頬はほんのりとだが赤みを帯びている。

 知っている。彼と彼女が個人的に友人同士なのは。ならばああやって一緒に遊びに行こうって誘われてもおかしくはないし距離が近いのも普通だ。普通の事だ。普通の事なのだ。

 だが、それを目の前で見た瞬間、心がざわついた。意味もなく不機嫌になり、親しげに話すのを見てイライラして、心がかき乱される。

 だが、最終的に彼が誘いを断った瞬間、何だか嬉しくなった。自分を選んでくれたように感じて、嬉しかった。表に出したらなんか言われそうだし、なんだかすごく悔しいので隠そうとして不機嫌な言動になってしまったが。

 

 (なんなんだ……これ………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人飛び出した響はライブ会場に行くでもなく、ビルの屋上にギアの姿で膝を抱えていた。

 どうしてか、今日はもうライブに行く気になれなかった。それだけでなく、誰かに会いたくもなかった。もしも今のまま誰かにあったら、すごく嫌な事してしまいそうだから。だから今はここにいる。この胸の中の嫌なものが少しでも軽くなるまで。

 だが……先ほどの緑羅の言葉を思い出すとそれは晴れることはなく、むしろ更に濃度を増してくる。

 クリスと話をしたいのは本当だ。友達になりたいと思っているのも本当だ。だが、緑羅と一緒にいるとわかった瞬間、どうしようもなくクリスが妬ましくなって……

 

 「どうしちゃったんだろう、私……」

 

 そう呟いて響は膝を抱え込んで額を押し付けた。




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