なかなか苦労したが、なんとかできました。
ではどうぞ!
「ここらへんでいいかな……」
少女の元から立ち去ってしばらく、彼は建物の一角に立っていた。建物の裏手に当たる部分で、入り口も何もなく、彼以外に人の気配がない。
彼は周囲を見渡してから改めて人がいないことを確認すると、よし、と小さく頷くと同時に勢いよく跳躍する。
凡そ、普通の人間でたどり着けるとは思えない高度に一瞬でたどり着くと、そのまま建物の壁に捕まる。
建物の壁に指が食い込み、体を固定すると、そのままするすると壁を登り始める。
途中で壁が大きく出っ張っていようと、彼はそれをあっさりと飛び越えて進んでいき、あっという間に建物の屋上にたどり着いてしまった。
「ふむ……この辺りには入れる箇所はないかな」
そう呟くと、彼は屋上を歩き回って調べ始める。屋上はドーム型になっており、床には無数の網目が刻まれているのだが、どう見ても中に入れる箇所があるようには見えない。
しばらくして彼もそれに気づいたのかふうむ、と唸り声をあげると、こんこん、と屋上の床を叩き始める。
「ここ壊して入る………っていうのはさすがにまずいか。見られたら厄介だし」
どうしようかな、と彼はむう、と唸り声をあげながらその場に腰を下ろす。
少しそうしていると彼はむ、と何かに気付いたように顔を上げ、そこから足元に視線を向ける。そこに屋上の床がしかないが、彼はしっかりと聞き取っていた。この下に人間が集まりだしており、その声が聞こえてくる。
「この下でライブってのをやるのかな……って、ここで声が聞こえるってことは、別にここでも大丈夫か」
うん、と納得したように彼は頷くと、その場で腰を下ろしたまま待機する。
そのまましばらくしていると、次第に下から聞こえてくる声が大きくなってくる。
もうそろそろかな?と彼が首をかしげていると、更に聞きなれない音が聞こえてくる。
そしてそれから少しして、独特のタイミングで声が聞こえてくる。なんとなくだが、あの子供達の歌に似ている気がする。ライブが始まったのだろう。
彼は目を閉じて音を聞くのに集中し始める。そうやって聞いていると、次第に彼の口元に笑みが浮かび、体は静かに揺れ始める。
(ふ~~ん……これがライブってやつか……結構いいね。歌を聴いているだけで楽しくなってくる)
彼はふんふんとその場で楽し気に揺れていたのだが、ふいに眉を顰め、足元に視線を落とす。何やら振動が伝わってきたのだ。
なんだ?と首をかしげていると、屋上が音を立てながら変形し始める。
「ちょ、ちょっと!?」
彼は慌てて立ち上がると急いでその場から走り出し、そのまま屋上の変形が行われていない箇所にたどり着き、ほっと息をつく。
いきなりなんなのさと愚痴りながら彼は振り返る。そうすると、今まで見えなかった中が見え、それを見て彼はおお、と小さく声を漏らす。
「またずいぶんと人間がいるな………」
円形のすり鉢状の舞台の中にはそれこそ無数の人間達がひしめいており、どれほどいるか彼にも分からない。
そしてその中に異様に目立つ少女が2人いて彼はん?と首をかしげる。
中心地にいるのだが、なんと彼女達の髪は青と赤なのだ。あんなのは長く生きてきた彼でも見たことがない。
「なんだろう……あの子たち……主にあの子たちが歌っているみたいだけど……」
彼は不思議そうに首をかしげる。これだけの人間の群れの中心で歌っているのだ。おそらく彼女たちがライブの中核なのだろう。もしかしたら、彼女たちがツヴァイウィングとか言うのだろうか。
まあ、別にいい、と思った瞬間、彼は訝し気に眉を顰める。その表情には明らかに不穏なものがにじんでいる。
(なんだ……?妙な気配がするんだけど………というか、気配が強くなっているような………どこから……)
彼は集中してその気配の出所を探るが、次の瞬間、大きく目を見開く。
なぜならその気配は下側からしていたからだ。しかもそれはだんだん強まっていき、それと同時に真っ直ぐにこちらに向かって登ってきている。
「逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
このままではあれがこの場で解き放たれる。それに気づいた瞬間、彼は思わず凄まじい大声を響かせ、それによってはじめて周囲の人間は彼に気付き、驚いたように彼がいた方向に視線を向ける。
それと同時にステージの中心地がすさまじい轟音とともに爆発を起こし、吹き飛ばされる。
突然のことに周囲の人間達は一瞬呆然としたが、次の瞬間には次々と悲鳴を上げる。
遅かったか、と彼が思わず顔をしかめるが、次の瞬間、煙の中から現れたものを見て、目を細める。
「あれは……なんだ……?」
それは長い時を生き、様々な怪獣と戦ってきた彼から見ても異様な存在だった。それが次々と煙の中から出てくる。
まず、全体がなんというか……半透明なのだ。様々な色合いの体はとてもじゃないが生物とは思えない。むしろ自分を殺すために人間達が作った兵器に近い感じがする。そして形も様々だ。人に近い形の物から四足歩行の獣のようなもの、丸っこいもの、更に気配を感じとり、顔を上げれば空にも鳥型の同様の存在がいつの間にか飛び回っている。
「ノイズだーーーーーーー!!」
瞬間、人間達は先ほどよりも絶望に満ちた叫びをあげて少しでもそれから離れようと手当たり次第に逃げ回り始める。もうすでに彼のことなど忘れ去っている。
それを横目に彼はノイズと呼ばれた存在を睨みつける。
「ノイズ……あんなの知らないぞ………どういう事だ?」
あんな異様な存在、自分は知らない。あんな異様な気配、いたのなら気づかないはずがない。いつの間にあんなものが生まれたのだろうか……
そうしているうちにノイズたちが動き出す。ノイズたちは次々と人間達に襲い掛かると、そのまま覆いかぶさっていく。
何を?と彼が首をかしげると同時に、覆いかぶさったノイズが見る見るうちに黒くなっていく。それと同時に覆いかぶされた人間も黒くなっていき、完全に両者が黒くなった瞬間、その体がボロボロに崩れていく。まるで灰のように。
「ちょ……嘘だろ……!?」
その光景を見て、彼は驚愕に目を見開く。
なんだあの攻撃は。生物を灰に変えるのが奴らの能力だとでもいうのか。もしもそうならあまりにも恐ろしい。いくら自分でも触れられるだけで灰に変えられてはどうしようもない。
彼が戦慄している間にノイズたちは次々と人間達に襲い掛かり、己ごと灰に変えていく。
「流石に………見過ごせないか……」
そう呟くと、彼は近くの変形した屋上に向かうと、変形箇所を掴み上げ、力を籠めるが、それと同時に顔をしかめる。
新たに二つ、謎の力の気配を感じ取ったのだ。しかもそれはノイズたちが暴れている場所から漂ってくる。
新手か、と彼は小さく舌打ちをすると、確認のためにそこに視線を向け、
「あれって………ライブの時に歌ってた子たち?」
そこにいたのは先ほどまで歌っていた赤い髪の少女と青い髪の少女がいた。だが、その姿は先ほどとは違っているが何よりも特徴的なのは、一目で武器とわかるものを有していることだろう。赤い髪は長い刃と長い持つ部分の武器、青い髪の少女は長い刃が足についており、手に同じように長い刃を持っている。
少女たちはそのままノイズたちに向かって行くと、それぞれ得物をノイズにたたきつける。
瞬間、ノイズは切り裂かれ、そのまま灰になって崩れ去っていく。
それを見て、彼はおお、と声を漏らす。どうやらあの少女たちは武器を持っているようだ。ならば任せても大丈夫か、と思ったが、彼はんん?と首をかしげる。なぜならあの二人の戦いの最中に妙なことをしているからだ。
「あの二人……何で戦いながら歌ってるんだ?」
そう、どういうわけか、あの二人は戦いながら歌っているのだ。意味が分からない。戦っているのだからそれに集中するべきではないだろうか。
彼は仕切りに首をかしげるが、次第に顔をしかめ始める。単純だ。ノイズの数が多すぎる。あのままではあの二人は物量で押し切られる。
やはり援護は必要だろう、と彼は判断し、彼は再び天井に手をかけ、力を籠める。そして次の瞬間、破砕音と共に天井が砕け、彼はその破片を担ぎ上げる。破片はもはや瓦礫と言っていい大きさでその重量も目算でだが数十キロは超えるだろう。それを彼は片手で持ち上げたのだ。
彼はそれを振りかぶると、勢いよくそれをノイズに向かって投げつける。
瞬間、瓦礫はゴッ!と言う音と共に瓦礫はすさまじい速度で突き進み、そのままノイズに直撃する……だが、瓦礫はそのままノイズの体をすり抜けてそのまま床に激突し、凄まじい轟音が轟く。
「は!?なんで!?」
自分の攻撃がすり抜けたことに彼は驚愕に目を見開く。おかしい。彼女たちの攻撃はちゃんとノイズに届いているのに、どういう事だろうか……
そういえば、あの少女達からは不思議な力が感じ取れる。もしかしてそれが関係しているのだろうか……
だが、そう悠長に考えていられなくなった。先ほどの攻撃に上空のノイズが気付いたのか体を細くすると勢いよく彼目掛けて突っ込んでくる。
彼は舌打ちをすると素早くその場から跳び退き、ノイズの突進を回避する。
はあ、と彼はため息を吐くと同時に周囲を見渡す。周囲にはもう人間の姿がない。逃げ切ったのか、それともノイズに殺されつくされたか。
とにかく、ここでは自分は役に立たないだろう。ならばここにいる意味はない。早く逃げたほうがいいだろう。
そう思って立ち上がり、何気なく視線を落とした瞬間、彼はぎょっ!と目を見開く。
なぜならそこには一人の少女が逃げるでもなく、ただ突っ立っていたからだ。
何やってるんだあいつは!と彼は苛立ったように歯ぎしりを起こすと、その場から跳び出し、少女のそばに着地する。
「おい!」
「ひゃい!?」
彼が叫ぶと少女は驚いたように肩を震わせて振り返る。
その少女を見て彼はむ、と唸る。この少女は知っている。建物の前でライブのことを教えてくれた少女だ。
「何やってんだ!さっさと逃げて……」
彼が少女にそういった瞬間、二人が立っていた部分にビシリッ!と罅がはしると同時に轟音と共に崩壊し、二人の体は宙に投げ出さる。
彼はくそっ!と呻くと少女を抱き寄せ、そのまま空中で体を捻って自分を下にする。
次の瞬間、彼はそのまま背中から地面に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
「だ、大丈夫ですか!?」
彼が衝撃に小さく呻き声をあげると少女は慌てたように声をかける。
「いいから……さっさと逃げ「お前ら大丈夫か!?」今度は何さ!?」
起き上がると同時に赤い髪の少女が慌てた様子でこちらにやってきた。
「ああ、あんたか……こっちは大丈夫……後ろ!」
起き上がりながら答えるも、赤い少女の後ろでノイズが何かを打ち出すような構えを取っているのに気いて声を上げる。それと同時に少女は慌てて振り返り、だがそれと一緒にノイズが何かを勢いよく吐き出す。
赤い少女は手に持っていた武器を勢いよく振り回してノイズの攻撃を防ぐ。
「急いで!」
赤い少女が切羽詰まった声を上げ、彼は即座に立ち上がると、少女の手を取る。
「早く、行こう!」
「う、うん……」
彼は少女を連れて急いでその場から離れようとした瞬間、
「ゴッ!?」」
何かが直撃した衝撃と共に彼は吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。
「な、なにが……」
彼は呻きながら胸元に視線を落とすと、そこには何かの破片が突き刺さっていた。だが、見た目よりも深くはない。
「くそっ!やってくれる……あの子は!?」
いつの間にか離れていた手を見て、彼は慌てて周囲を見渡すと、近くに少女が倒れこんでおり、その胸元からは自分よりも大量の血が流れている。
「お、おい!大丈夫か!?」
彼は慌てて少女に駆け寄り、生きているかどうかを確かめる。かなりか細くなっているが、息はしている。まだ生きているようだ。
その事に彼がほっと息を漏らしていると、
「おい、大丈夫か!?死ぬな……頼む、目を開けてくれ!生きることを諦めるなぁ!」
赤い髪の少女が悲痛な面持ちで叫び、彼はうるさそうに顔をしかめながらむう、と小さく唸り声をあげる。
「うるさいな……そんな大声で吠えなくても分かるよ……生きてるよ。大丈夫かどうかは分からないけどね」
彼がそう言うと、赤い少女はほっとしたように息を吐いた。
「そうか………よかった………」
「よかったって……全然よかないでしょう……まだ残ってるよ……」
彼が憎々し気に視線を後ろに向けると、そこには無数のノイズがまだ残っていた。青い髪の少女が戦っているが、そちらにも無数のノイズが残っており、こちらにはこれそうもない。
「どうすんのさ……まさかあの数を一人で潰しきる気……?」
「………ああ、その通りさ……一度さ、何も考えず、思いっきり歌いたかったんだ。しかも、こんなにあたしの歌を聞いてくれる奴がいる……これなら、思いっきりできるな」
そう言うと赤い少女は静かに立ち上がり、ノイズに向き直る。その背中を見て、彼は息をのむ。
その背中を彼は知ってる。うっすらとした意識の中で見えた最後の父の背中……それが彼女に重なった。
「……自爆する気?」
彼の言葉に赤い少女は驚いたように振り返る。
「どうして………」
「知ってるかなんてどうでもいい。自爆する気なんでしょ?ついさっき生きることを諦めるなとか言っていたくせに……」
「それを言われると痛いな……」
「あの青い子を待つわけにはいかないの?」
「いや……多分無理だな。今やるしかないんだ……」
そこまで聞き、彼はそう、と小さく呟き、己の無力を嘆くように拳を握るが、少しして拳を開く。
「分かったよ……戦えない俺にはあんたを止める資格はない……」
「悪いな……代わりにさ……その子の事、頼むよ。傷口を服とかで抑えて、助けを待っててくれ」
「分かった。この子は任せて」
彼がそう言うと、赤い少女はありがとう、と言うとノイズに向き直り、小さく息を吐いてそっと口を開き歌いだす。
先ほどとは違う歌。だが、どこか生命力に溢れた、力強くも、儚い歌。
それを歌い終わった瞬間、凄まじい力が周囲を蹂躙し、ノイズを残らず破壊しつくす。
それを彼は決して目を逸らさずに見ていた。その背を、目に焼き付けるように。
そして煤が舞い散る中、静かに赤い髪の彼女は崩れ落ちる。それを見届けた彼は静かに目を伏せる。そして目を開けると服の一部をびりびりと破き、それで血を流す少女の傷口を抑える。
ふと顔を向ければ、赤い髪の少女を青い髪の少女が抱きしめながら大声で泣きじゃくっている。
彼は小さく目を伏せ、その場を去ろうと立ち上がるが、低い唸り声をあげながら目を開け、中心点を睨みつける。
すると、そこから新しいノイズがぞろぞろと湧き出てくるではないか。青い少女は気づいていないように泣きじゃくっている。
彼は苛立ったように怒りがにじんだ唸り声を漏らすとゆっくりと歩きだす。
まだ来るか。お前たちはまだ来るのか……いいだろう。そっちがその気ならこちらとて容赦はしない。触れれば灰になる?それがどうした。そんなもの障害にはなりはしない。眼前に立ちふさがるものは全て敵だ。敵はすべて潰す。一片の灰も残さない。それが俺だ。
ごきり、と彼の右腕が音を鳴らした瞬間、
心臓が大きく脈打ち、
全身の細胞が胸元に突き刺さった破片から力を喰らい始め、だがそれでも足りぬと言わんばかりに周囲に漂う力も取り込み始め、それを全身に行き渡らせていく。
(起きるのが遅い………さっさと喰え……喰いまくれ……もっと……もっとだ……)
そうしていると、上半身の皮膚が急速に黒ずみ始め、それを確認した彼は胸元に突き刺さっている破片を抜き、放り捨てる。
(たっぷり食ったか……俺よ……それじゃあ……暴れようか………全てを………破壊しつくそう……この場に俺という存在を刻み込もう)
そして彼は静かに歩き出す。それと同時に変色は進み、腕がボコボコと蠢く。全身の細胞が取り込んだ力を喰らい、増幅し、
皮膚が見る見るうちに黒く変色していき、左腕は袖を引き裂き、まるで恐竜の腕のような異常な形状に変化していき、左手の指の爪が鋭くなり、口元が耳元まで裂けていき、歯は牙へと変化し、髪はずるずると伸びていき、ざんばらな長さに変貌する。
対照的に右腕は黒い鎧で覆われていき、更に過剰に出現した鎧が見る見るうちに合わさっていき、それを構成していく。
それは巨大なガントレット。恐竜の腕のような形状に4本のブレードが爪のように存在し、爪とは反対側に巨大なパイルが存在している。
そこで変化が終わり、彼はごはぁ、と息を吐くと、そのまま大きく息を吸い込み、
ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!
すさまじい咆哮を轟かせる。音の圧だけで空気中に漂う塵が吹き飛ばされ、空気がびりびりと震える。
ノイズたちはそれがきっかけになったように一斉に彼に襲い掛かる。
だが、彼は右腕を構えると、それを勢いよく薙ぎ払う。
それだけで4本のブレードは襲い掛かってきたノイズを切り裂き、炭に変え、拳圧で吹き飛ぶ。
ぐっ、と腰を落とすと、床を踏み砕きながら彼はノイズの群れに突進する。
そしてノイズとの距離がゼロになると勢いよくガントレットを振るってノイズを殴り飛ばす。その後ろからノイズがとびかかってくるが、彼は左腕でつかみ上げると、そのまま地面にたたきつけ、粉砕する。
彼がガントレットの爪を蠢かせる。すると、爪を青白い炎が包みこみ、彼が勢いよく右腕を振るえば、炎が解き放たれ、眼前のノイズ全てを飲み込み、焼き尽くす。
彼は素早く振り返ると、右腕を突き出してガントレットを構える。それと同時にブレードがパーの形に展開し、掌の中心からパイルの先端がのぞき、引き絞られると同時にバチバチと点滅を始める。
ノイズたちは一斉に彼にとびかかるが、
「消えろ」
幾分か低くなった声でそう彼は呟き、それと同時にパイルが勢いよく解き放たれる。
それは先頭のノイズをまとめて串刺しにするが、それは前座。本命はその後に解き放たれた青白い炎と衝撃波。砲撃のように打ち放たれた爆炎は後方のノイズを残らず蹂躙し、粉砕し、焼き尽くし、建物の壁に着弾し、抉る様に吹き飛ばす。
すべてのノイズを駆逐したことを確認した彼はふう、と息を吐くと、自分の右手に視線を落とす。
なぜもっと早くこの力に目覚めなかったのだろうか……そうすれば……
そこまで考えて彼は視線を感じ、顔を向ける。
そこには青い髪の少女が呆然とした様子でこちらを見ていた。
彼は静かに目を伏せると小さく口を動かす。
それから周囲を見渡すと、彼は小さな音を聞き取る。どうやら、騒ぎを聞きつけた人間達がやってきているようだ。ならば、あの少女は彼らに任せたほうがいいだろう。自分では傷の手当なんてできない。もうここに自分ができることはないのだ。
そう判断すると、彼はその場から勢いよく跳び上がり、一側で建物の縁にたどり着き、その上に立つ。そしてそこからさらに跳び出し、そのまま地面に地響きと共に床を粉砕し、着地する。そこから勢いよく走りだし、近くの海にたどり着くとそのまま飛び込み、勢いよく泳ぎだす。
(ここはなんか変だ………ノイズとか言う妙な存在……それにこの変な力……調べたほうがいいな……)
そして彼は、そのまま海の中に消えていく。
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今度はなのはを投稿します。