戦姫絶唱シンフォギア 王を継ぎし者   作:夜叉竜

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 投稿しますね。ではどうぞ!

 4/23 追記


1-24

 眼前のノイズをガントレットでつかみ上げ、そのまま力任せに引きちぎる。

 炭となって崩れていくノイズから視線を外して周囲を見渡す。

 

 「ノイズは……もういないか」

 

 ノイズの気配が消えたのを確認して、緑羅はふう、と小さく息を吐きながら肩の力を抜く。

 

 「しかし……結構やられたな」

 

 周囲の音楽院の建物はほとんど壊されており、無事なのは中央棟ぐらいだろう。だが、そこらへんは緑羅にはどうでもいい事だ。

 緑羅はとりあえず響たちと合流しようとこの場で待つことにしようとするが、次の瞬間、ピクリと眉を動かし、低く唸り声を上げる。そして、その場から走り出すと、中央棟に向かう。

 建物の中に入った緑羅はそのまま走って内部を進んでいく。

 そうしてたどり着いたのは中央棟の端のほうに柱だ。その柱のそばにはパネルのようなものがある。

 緑羅は小さく目を細めると、ガントレットを叩きつけて柱を破壊する。バキバキと強引に壁を引き剥がすと、柱内部に隠されていたエレベーターのようなものが露になる。

 緑羅はその場に首を突っ込んで下に視線を向ける。そこには奈落の底まで続いていると錯覚するような深いシャフトが口を開けていた。

 緑羅は小さく吠えるとその穴に躊躇なく飛び込み、そのまま落下していく。

 自由落下に任せた落下のためぐんぐんとその速度は上昇していく。そうしていると、不意にシャフトが終わり、代わりに妙な光景が広がる。

 非常に広い、かつて緑羅が巡った遺跡のような場所だ。しかも、横の広さもさることながら、深さも相当なものだ。その中をエレベーターのワイヤーが真っ直ぐに伸びている。

 ここは何なのだろうかと緑羅は首を傾げながらもそのまま落下していく。

 そして少しして、最下層が見えてくると、ワイヤーを左手でつかんでブレーキをかける。

 落下の勢いもあって左手から激しい火花が散るが、気にせずそのまま落下の勢いを殺していく。

 そしてエレベーターが見えてきたところで緑羅はワイヤーから手を放す。

 落下した緑羅はエレベーターの屋根に着地、そのままぶち破ってエレベーターを破壊して中に飛び込む。

 着地した緑羅は低いうなり声を上げながら起き上がり、そのままエレベーターのドアを引きちぎってそのまま進む。

 緑羅がたどり着いたのは施設の通路のような場所だ。

 ここが二課とかいう組織の拠点なのだろうかと緑羅が周囲に視線を向けていると、

 

 「やれやれ。ずいぶんと乱暴な訪問ではないか、ビースト……いや、五条緑羅」

 

 その声に緑羅が唸りながら体を震わせて視線を向ければ、そこにそいつがいた。

 金色の少し形状が違うネフシュタンの鎧をまとった薄い金髪の女。

 

 「フィーネ……ここがお前の目的の場所か……」

 「そうだ。まさかお前がこんなに早く来るとは思わなかったがな……」

 「あれが囮だって気付けたからね……響たちには悪い事をしたと思うけどね」

 「アイツらを囮への当てつけにしたか……食えない男だ」

 「それはこっちのセリフだ………俺の細胞をどこで手に入れた」

 

 緑羅が剣呑に目を細めながら問いかけるとフィーネはああ、と小さく目を細めながら笑みを浮かべる。

 

 「あれか。大したことではない。2年前、お前に刺さった天川奏のガングニールの破片。それに付着していた血を採取しただけだ」

 「あれか………!てっきり焼けたかと思ったけど……甘かったか」

 

 緑羅が忌々し気に顔をしかめると、フィーネは興奮したような口調で話し出す。

 

 「全く、あれはとんでもない細胞だ!凄まじい治癒力に細胞とは思えない生命力!さらに放射能を吸収し、己のエネルギーに変換するだけでなく、様々なエネルギーを己のものに変換してしまう異常な適応性!なるほど、お前がシンフォギアを使える理由も納得だ。細胞がフォニックゲインに適応し、それをエネルギーに変換する。その過程で細胞が変異しその姿になっているようだな」

 「そんな事はどうでもいい……あれをどこへやった……」

 「どこへ……とは?」

 

 とぼけた様子のフィーネに緑羅は殺気を滲ませながら唸り声を上げる。

 

 「とぼけるな。あそこには細胞のレポートはあったが細胞そのものはなかった。それぐらいは分かる……あれをどこへやった」

 「さてな……非常に興味深かったが、私の目的には必要のないものだったのでな。最高の暇つぶしだったが、目的の達成を目前とした私には余計なものだから、すでにどこかに売り払ったさ」

 「そうか……だったら、腸を引きずり出してでも吐かせてやるよ!」

 

 そう吠えると当時に緑羅はフィーネにとびかかり、ガントレットを振るう。フィーネは素早く鎖でその一撃を受け止めると、もう一本の鎖を剣のようにして突き出してくる。

 緑羅は左手でそれを掴んで止めると、蹴りを繰り出す。それは容赦なくフィーネの腹に突き刺さり、そのまま吹き飛ばす。

 フィーネは即座に体制を整えて着地すると、緑羅目掛けて鎖を繰り出す。廊下を削りながら振るわれる鎖を緑羅はガントレットで弾くと近くの壁に左手を突き刺す。

 そのまま力任せに引き抜き、壁の中のパイプを引きちぎる。

 緑羅はそれをフィーネ目掛けて勢いよく投げつける。

 フィーネは素早くそれを鎖で弾くが、その隙に緑羅はガントレットを向けると勢いよく拳を射出する。

 フィーネは天井を鎖で攻撃して崩落を起こす。瓦礫が拳に激突し、そのまま叩き落されてしまう。

 緑羅は舌打ちをしながら勢いよくワイヤーを巻き上げて瓦礫を吹き飛ばしながら拳を回収するが、フィーネはその隙に鎖を勢い良く伸ばす。鎖は瓦礫を貫くとそのまま緑羅に襲い掛かる。

 緑羅はその一撃を回避すると素早く掴みあげ、そのまま強引に引き寄せる。

 瓦礫を吹き飛ばしながら引き寄せられたフィーネを緑羅は容赦なく殴り飛ばし、さらに追撃と言わんばかりに飛び蹴りを放つ。

 だが、フィーネは鎖でその一撃を無理やりにでも受け止めると、逆に鎖を巻き付け、緑羅を廊下の向こう側に投げ飛ばす。

 緑羅は即座に体制を整えて着地して、フィーネを睨みつける。

 フィーネの身体にはそれなりのダメージが通っている。だが、それは異音と共に鎧の修復と共に治っていってしまう。

 

 「それがその聖遺物の本当の力か……!」

 「そうだ。お前の細胞の再生能力をも超える再生力。これこそが完全聖遺物の力だ。いかにお前の細胞が強大な力を秘めていようと、その元手が欠片では届くことはない……それよりもどうした。いつもよりもずいぶんと消極的じゃないか」

 

 フィーネの小ばかにしたような言葉に緑羅は忌々しげに顔を歪める。確かに、普段なら熱線に各種技を惜しみなく使うのだが、そう言うわけにはいかない。それはフィーネの背後の扉から漂ってくるデュランダルの気配だ。あの時、戦闘の余波でデュランダルは膨大なエネルギーを発した。もしもこんなところでそんなことが起こったら目も当てられない。それにこいつから細胞の情報を聞き出さないといけないから完全に殺すこともできない。

 そして何よりも、この辺に未来たちが避難しているシェルターがあるかもしれない。もしもこのあたり一帯を大規模に破壊してシェルターにまで被害がおよんだら………だから大規模な攻撃は使えない。その事をこいつも分かっている。

 

 「お前程度に本気を出すわけがないだろうが」

 「行ってくれるじゃないか、獣風情が」

 「黙って潰れてろ、人間風情が」

 

 次の瞬間、二つの人外が再び激突する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その揺れは地下の二課の指令室にも響いており、暗闇の中、鈍い振動が響き、中にいた二課のオペレーターたちは驚いたように目を見開く。

 

 「な、なんだ!?」

 「何が起こってるの!?」

 「む、ぐ……いったい何が起こっている……?」

 

 その振動で、ソファに横になっていた弦十郎がうめき声を上げながら体を起こすが、腹に走る痛みに顔をしかめる。鍛え抜かれた腹には包帯が巻かれ、血が滲んでいる。未来はその中で不安そうに周囲を見渡している。

 少し前、未来は緒川と共にここ二課の地下施設に避難したのだが、そこにフィーネが強襲。そこでフィーネが二課の仲間の桜井了子であったこと、そしてカ・ディンギルがこの二課のエレベーターであることが判明。そのまま二課にたどり着くが、そこで弦十郎とフィーネの戦闘が勃発。最初こそ弦十郎が押していたのだが、桜井了子の声で話しかけられたことで隙が生じ、そこを狙った一撃で弦十郎は負傷。そのまま彼らは撤退、ここ指令室に来たのだが、システムをフィーネに把握されて今に至る。

 

 「指令!」

 「状況は?」

 「本部機能のほとんどが制御を受け付けません。地上、および地下施設の様子も不明です。更に先ほどから謎の振動が起こって……」

 「そうか……ここにいても意味がない。避難しようと思ったが、この振動が何なのか分からなければ避難もできん……」

 「………そう言えば、緒川さん。緑羅君は?」

 

 未来の言葉に緒川はあ、と小さく声を漏らし、弦十郎が顔を向けてくる。

 

 「どういう事だ?」

 「実は緑羅君が救援に来てくれたんです。地上は問題ないと思いますが……」

 「まさか……地上の緑羅君がここに?」

 「そしてそこで了子さんと戦闘に………」

 

 その言葉に未来はその顔を更に不安で歪める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一気にフィーネとの距離を詰めると緑羅はそのまま体を回転させて蹴りを繰り出す。

 フィーネは即座に距離を取るが体の回転に追従して尾が続けて襲い掛かる。

 それは容赦なくフィーネの腹を捉えて吹き飛ばすが、フィーネは吹き飛ばされながらも鎖を槍のように突き出してくる。

 緑羅はしゃがんでその一撃を回避するが、フィーネはもう一本の鎖で勢いを殺し、更に緑羅目掛けて襲い掛かり、意趣返しと言わんばかりに緑羅に蹴りを繰り出す。

 対して緑羅はその蹴りに向けて頭突きを叩きこむ。

 頭突きと蹴りが激突し、二人は同時に弾かれる。

 緑羅はガントレットの拳を射出するが、フィーネは鎖で弾き飛ばし、そのままもう一本の鎖をワイヤーに巻き付ける。緑羅が目を剥くと同時にフィーネはそのまま強引にワイヤーを引っ張って緑羅の体制を崩させる。

 その隙にフィーネは一気に緑羅との距離を詰め、緑羅の心臓目掛けて鎖を突き出してくる。

 緑羅はとっさに左手をかざして防御しようとする。

 鎖はそのまま緑羅の左腕に突き刺さり、痛みに顔をしかめるが、緑羅はひるまない。そのまま左腕に鎖を絡ませると、フィーネを勢いよく振るい、壁に叩きつける。

 更にそのまま距離を詰めてフィーネの頭を掴み上げるとそのまま壁に押し付け、フィーネの頭で壁を破壊しながら突き進み、鎖をほどくとそのまま投げ飛ばし、壁に叩きつける。

 瓦礫にフィーネが埋まるがその瓦礫を吹き飛ばして鎖が二本同時に襲い掛かってくる。

 緑羅は素早く二本とも弾き飛ばすが、次の瞬間、さらに大量の瓦礫が吹き飛ばされ、それが一斉に緑羅に襲い掛かる。

 鎖を弾いたばかりで体制が崩れていた緑羅はそれをまともに喰らい、思わずとたたらを踏む。

 瞬間、フィーネがそこに勢いよく突っ込み、

 

 ドンッ!

 

 そんな鈍い音が響き、緑羅の身体を衝撃が襲う。

 緑羅がうめき声を上げてたたらを踏むが踏みとどまり、唸りながら下を見れば、懐にもぐりこんだフィーネが束ねた鎖を緑羅の心臓付近に突き刺していた。

 

 「この……っ!」

 

 緑羅が即座に振りほどこうとするが、

 

 「……これか。お前の聖遺物は」

 

 瞬間、フィーネは緑羅の腹に蹴りと同時にもう一本の鎖を渾身の力で叩きつける。その一撃で緑羅は吹き飛ばされ、それと同時に鎖が引き抜けるが、胸部付近の肉が一気にえぐり取られ、大量の血が噴き出す。

 

 「が……ぐぁ………!」

 

 どうにか態勢を整えて着地し、顔を上げれば引き抜かれた鎖の先端には肉に包まれた金属塊が刺さっている。

 

 「それは……!」

 「まさかこんな無造作に体内に埋め込んでいたとは……さすがに予想外だぞ。だが………これで終わりだ」

 「させるか!」

 

 緑羅は即座に突進するが、フィーネはそのまま鎖を叩きつけ緑羅を吹き飛ばす。

 緑羅は吹き飛びながらもガントレットから爆炎をフィーネ目掛けて放つが、フィーネはそれを鎖を高速回転させて防ぐ。そのまま緑羅は壁に叩きつけられるが、フィーネはそのまま鎖で緑羅の頭上の天井を破壊する。

 

 「しまっ……!」

 

 それを最後に緑羅の姿は無数の瓦礫に押しつぶされるように消えてしまう。

 それを見たフィーネはふむ、としばらく見て瓦礫が動かないのを確認する。

 

 「……ようやくか。全くてこずらせてくれる。まあ、こうして聖遺物は奪った。もう奴も戦えん。しかし……」

 

 周囲を見渡せば、見事に炎が広がっており、吹き出した血は蒸発してしまっている。

 

 「最後まで細胞を渡さんとしたか……何という執念だ……まあいい。どっちみち私にはもう必要のないものだ」

 

 そういうとフィーネは金属塊に鎖を叩きつけて破壊すると、残骸を炎の中に投げ捨て、そのまま地下施設を歩いていく。




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