戦姫絶唱シンフォギア 王を継ぎし者   作:夜叉竜

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 令和初投稿、行ってみよう!


1-25

 「嘘……でしょ……」

 

 真夜中。赤い満月が周囲を照らす中、崩壊したリディアンに響と翼とクリスの3人がたどり着いていたのだが、惨状を見て響は愕然とした様子で呟いていた。

 緑羅が移動した後、響たちは協力して飛行機型ノイズ、および通常のノイズを殲滅し、緑羅と合流しようとしたのだが、そこで未来からリディアンがノイズの襲撃にあっているという連絡を受け、急いでここまで来たのだが、結果は見ての通りだ。

 

 「未来!未来ーーーーー!」

 

 響は大声で未来の名前を呼ぶがその声に反応する者はなく、ただむなしく響くだけだ。

 

 「リディアンが……」

 

 翼は自分の母校の惨状に呆然としていたが、クリスは何かを探すように周囲に視線を向け、

 

 「おい、緑羅!いるのか!?いたら返事ぐらいしろ!」

 

 そのクリスの言葉に響と翼はえ?と目を見開きながら視線を向ける。

 

 「どういう事?雪音クリス」

 「お前らが知っているかどうかは知らないが、あいつはノイズの出現を予知できるんだ。直前にならないとだめらしいけどな。恐らく、タワーで途中から援護が無くなったのは襲撃されたからじゃなくてここの異変に気付いたからだ」

 「そ、それじゃあ……緑羅君が対処してくれたって事?」

 「分かんねえけど、まだ近くにいるかもしれない。あいつから話を「それはもう無理だ」っ!?」

 

 突如として響いた別の声に3人は慌ててそちらに顔を向ける。リディアンの本校舎の屋上に了子が立ち、こちらを見下ろしていたのだ。

 

 「桜井女史!」

 「フィーネ!お前の仕業か!」

 

 クリスの言葉に響は驚愕に目を見開いて了子に視線を向け、翼もまた一瞬瞠目するが、すぐに了子に視線を向ける。

 すると、了子は3人をあざ笑うかのように高笑いを上げる。

 

 「フッ、フフフフフフッ! ハハハハハハハッ!」

 「そうなのですか!? その笑いが答えなのですか、櫻井女史!?」

 「あいつこそ! 私が決着を付けなきゃいけないクソったれ、フィーネだっ!!」

 

 クリスが叫ぶと同時に了子は眼鏡と髪留めを外す。すると、その全身が光だし、その光が収まった時には了子、否、フィーネはその身にネフシュタンの鎧をまとっていた。

 

 「嘘……嘘ですよね?だって、了子さんはいつも私たちを助けてくれて……それに、緑羅君の事、どういうことですか?無理って……」

 「お前たちにはまだ利用価値があったからな。そして五条緑羅の件だが……これがその答えだ」

 

 そう言ってフィーネは何かを3人に向かって放り投げる。それはそのまま地面に落ちてカランと言う音を立てる。3人が見たのは何らかの金属片だ。

 

 「これは………?」

 「五条緑羅の体内にあった……聖遺物の残骸だ」

 「………え?」

 

 一瞬、響はフィーネが何を言ったのか理解できなかった。いや、もしかしたらそれは意味を理解したくなったのかもしれない。クリスもまた似たような様子で呆然としている。

 

 「残骸って……彼に何をしたの!」

 

 翼だけは素早くフィーネに言葉の意味を問いただそうとし、フィーネは面白そうに目を細める。

 

 「そこの二人は予想通りだったが……お前も存外熱くなっているな。奴にそこまで情が移ったか?」

 「……あいつにはまだ聞きたいことがある。それに、何であろうとあいつも共に戦う仲間だっただけよ」

 「……にをした……」

 

 そこに不意に低い声が割り込み、フィーネはその声の発せられた場所のクリスに視線を向ける。

 

 「なに?」

 「アイツに何をしやがった、フィーネ!!」

 

 瞬間、クリスは激情を宿した目でフィーネを睨みつけながら、今すぐにでもイチイバルを纏いそうな気迫で吠える。クリスにもよくわからなかった。だが、緑羅に何かあったと考えると、頭の中がぐちゃぐちゃになり、それに比例するように心の中はそれをしたフィーネへの怒りで満ちていく。その声で再起動したのか響がびくりと肩を震わせ、

 

 「りょ、緑羅君は!?緑羅君はいったい!?」

 「クリスはずいぶんと情が移ったようだ……教えてやろう。ついさきほどまで戦っていたが、最後に体内の聖遺物を引きずり出し、瓦礫に埋めてやった。死んだかどうかは定かではないが、もう聖遺物もないのだ。生きていたとしても戦う事は出来まい。そんな時間も惜しかったのでな」

 

 その言葉にクリスと響は愕然とした表情を浮かべるが、

 

 「死んだかどうかは定かではない……つまり、死亡確認はしていないと言う事ね……」

 

 その言葉にすぐにはっとなる。確かに瓦礫に埋もれたというが、以前緑羅は同じような状況からすぐに復帰していた。つまり、まだ生きている可能性は十分にある。その可能性が二人を冷静にさせる。

 

 「どうして……どうしてそんな事を……全部、嘘だったんですか?最初っから了子さんを演じていたんですか!?」

 「それは少し違うな。確かに演じてはいたが、最初からではない。桜井了子と言う人間は確かに存在していた。だが、その意識は12年前に私によって食いつぶされていたのだ」

 「どういう事だよ!」

 「超先史文明期の巫女、フィーネは、遺伝子に己が意識を刻印し、自身の血を引く者がアウフヴァッヘン波形に接触した際、その身にフィーネとしての記憶、能力が再起動する仕組みを施していたのだ。それが12年前、風鳴翼が引き起こした天羽々斬の覚醒。その時に実験に立ち会った櫻井了子の内に眠る私の意識を目覚めさせたのだ」

 

 その言葉に翼はぎりっ、奥歯を噛み締めながら拳を握る。

 

 「あなたが……本物の了子さんを消したってことですか……」」

 「まるで過去から蘇る亡霊………!」

 「フィーネとして覚醒したのは私1人ではない。歴史に記される偉人、英雄、世界中に散った私達は、パラダイムシフトと呼ばれる技術の大きな転換期に何時も立ち会ってきた」

 「シンフォギアシステムは!?」

 「そんなものは為政者たちからコストを捻出させるための副産物にすぎぬ」

 「あなたの戯れに奏は命を散らせたっていうの!?」

 「あたしを拾ったり、アメリカの連中とつるんでいたりしたのは何が目的だ!」

 「お前なら分かっていよう。全てはカ・ディンギルのため!」

 

 その言葉と共に地面が激しい振動が起こる。

 地面が砕け散り、地割れが起こるとそこから見上げるほどに巨大な塔のような建物……二課本部のエレベーターと偽って作り上げられていた塔、カ・ディンギルが屹立する。

 

 「これこそが地より屹立きつりつし、天にも届く一撃を放つ、荷電粒子砲カ・ディンギル!」

 「カ・ディンギル? こいつで、バラバラになった世界が1つになると?」

 「ああ、今宵、月を穿つことでな」

 「月を?」

 「穿つ!?」

 

 3人は思わず空に浮かぶ赤い月を見上げる。

 フィーネは何かを思い出すように目を細めながら口を開く。

 

 「私はただあのお方と並びたかった。その為に、あのお方へと届く塔をシナルの野に立てようとした。だがあのお方は、人の身が同じ高みに至ることを許しはしなかった。あのお方の怒りを買い、雷霆に塔が砕かれたばかりか、人類は交わす言葉まで砕かれる。果てしなき罰、バラルの呪詛をかけられてしまったのだ。月が何故古来から不和の象徴と伝えられてきたか。それは、月こそがバラルの呪詛の源だからだ!」

 

 フィーネは月を睨みつけながら叫ぶ。

 

 「人類の相互理解を妨げるこの呪いを、月を破壊することで解いてくれる! そして再び、世界を一つに束ねる!」

 

 そしてついにカ・ディンギルが起動を始める。内部の各装置から激しい雷撃が放たれる。

 

 「呪いを解く?それはお前が世界を支配するって事か?安い!安さが大爆発している!」

 「永遠を生きる私が余人に足を止められることなど有り得ない」

 

 そしてフィーネが笑みを浮かべると同時に3人は聖詠を歌い上げ、シンフォギアを纏う。これ以上はむだ。ここまで来たら力ずくで止めるしかないのだ。

 3人はシンフォギアを構え、フィーネもまた鎖をうごめかす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、未来たちはようやく揺れが収まったことで指令室から移動し、シェルター内を歩いていた。場所はリディアン音楽院のシェルターだ。あそこならばまだ大丈夫だろうと言う考えたのだが、それは当たっていたらしい。もっとも、シェルター内もそれなりに壊れているのだが。

 照明の消えた通路を藤尭と友里が懐中電灯で照らしながら先導し、負傷している弦十郎には緒方が肩を貸している。その後ろを未来はしきりに周囲を見渡しながら歩いている。彼女が誰を探しているかなど明白だが、一向にその姿は見えない。

 

 

 「!指令、ここは大丈夫みたいです!」

 

 と、先導していた藤尭が軽く壊れているが、使えそうな部屋を見つける。扉をこじ開けて中に入っていく。

 

 「小日向さん!」

 

 と、未来が入ってきたところで、呼びかけられ、未来が顔を向ければ、そこには安藤創世、寺島詩織、板場弓美の3人がいた。

 

 「皆!無事でよかった……」

 

 友人の無事を確認して未来はほっと息をつく。

 一方、藤尭と友里は室内のコンソールを操作できないかいじっており、

 

 「この区画の電力は生きているようです!」

 「では、僕は他の部屋も見てきます。緑羅君も探しましょう」

 

 そう言って緒川は部屋を出て行ってしまう。

 

 「ヒナ、この人たちは?それに緑羅君って……ゴリョウ君も来てるの?」

 「あ、うん。この人たちは………」

 「我々は特異災害対策機動部。一連の事態の終息に当たっている」

 「それって、政府の?」

 「モニター、繋がります!」

 

 そこで藤尭の声がかかり、それと同時に机の上の小さなモニターに地上の様子が映し出される。そこには今まさにフィーネと戦っている響たちの姿が映し出されていた。

 

 「響!それに翼さんに、もう一人は……」

 「「「え?」」」

 

 未来の言葉に創世達が目を丸くする。

 

 「緑羅君の姿は………確認できません。どうやら地上にはいないようです」

 「それじゃあ………」

 

 まさか……まだ本部のほうにいるのだろうか……未来がそんな悪い予想を思い浮かべてしまう。

 

 「どうなってるの……?こんなのまるでアニメじゃない!」

 「ヒナはビッキーの事、知ってたの?」

 「あ、えっと………うん。ごめん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふっとべぇ!」

 

 ーMEGA DETH PARTYー

 

 クリスの腰のパーツが展開、そこから無数のミサイルがフィーネ目掛けて放たれるが、フィーネは鼻で笑うと鎖を高速で回転させ、全弾破壊してしまう。

 だが、それでいい。爆発によって起こった煙はそのままフィーネの周囲を覆いつくし、目くらましになる。緑羅なら衝破なりなんなりで一瞬で吹き飛ばすだろうが、フィーネはそう言ったそぶりは見せない。

 そこを見逃す翼と響ではない。二人でほぼ同時に突っ込み、フィーネに襲い掛かる。

 響が先に到達し、噴き出す炎で加速した拳を振るう。フィーネは即座に鎖で弾き飛ばすが、響はそのまま距離を取る。そこに入れ替わるように翼が飛び込み、剣を振るうが、フィーネはそれを硬質化させた鎖で受け止め、そのままつばぜり合いに移行する。激しい火花が散るが、不意に鎖の硬質がとけて翼はつんのめる様にバランスを崩す。その隙にフィーネは鎖を剣に絡めてそのまま弾き飛ばすともう一本の鎖を振るう。

 

 「まだだ!」

 

 ー逆羅刹ー

 

 翼はその一撃を回避するとそのまま逆立ちして脚部のブレードを展開、そのまま回転してブレードを叩きつけるが、フィーネはそれさえも鎖で防いでしまう。余裕の表情を浮かべるフィーネだったが、不意にその表情が崩れる。

 上空には先ほど吹き飛ばした響がおり、腰のパーツから炎を噴き出し、それを推進力に変えて急降下、その勢いを乗せた渾身の拳をフィーネに叩きこむ。

 フィーネはとっさに左腕でそれを防ぐ。轟音と共に直撃したそれはネフシュタンの鎧を砕くことは叶わなかったが、その体を大きく吹き飛ばす。

 

 「そこだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 吹き飛ばされたフィーネが態勢を整えた瞬間、クリスが吠え、顔を向ければ、クリスの背中には彼女の身の丈を優に超える大型のミサイルが2つ搭載されていた。

 

 ーMEGA DETH FUGAー

 

 そのうちの一つがフィーネ目掛けて放たれる。フィーネはすぐさま飛行して回避するが、ミサイルは執拗にフィーネを追尾する。だが、フィーネは迎撃するでもなく揶揄うかのように回避し続ける。

 

 「だったら!」

 

 クリスはすぐさまもう一門のミサイルをカ・ディンギルに向ける。

 

 「ロックオンアクティブ! スナイプ! デストロイッ!」

 

 そしてミサイルが放たれた瞬間、始めてフィーネの顔が大きく歪み、

 

 「させるかぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 叫びながら鎖を射出する。凄まじい勢いで伸びていく鎖はそのままミサイルを貫き、破壊する。

 フィーネはすぐさま自分を狙っていたミサイルも迎撃しようとするが、おかしなことにそのミサイルは消えていた。

 どこに、と思った瞬間、破壊されたミサイルから発生した煙を突き破って大型ミサイルが上空に向かって飛び出す。さらに驚くことにそのミサイルにはクリスが乗り込んでいた。

 そのままミサイルはカ・ディンギルではなく、空目掛けて登っていく。

 

 「クリスちゃん!?」

 「一体何を!?」

 「何をしようと、所詮は玩具、カ・ディンギルを止めることなどできはしない!」

 

 そのままクリスははるか上空、カ・ディンギルの射線上に到達すると、ミサイルから飛び降り、

 

 「Gatrandis babel ziggurat edenal」

 

 その歌を歌う。それが何なのか気づいた響と翼は目を見開く。

 

 「まさか……絶唱!?」

 「ダメだよ!クリスちゃん!」

 

 響と翼が叫ぶが、クリスはそのまま歌を歌う。

 すると、クリスの腰部のパーツからおびただしい量の輝く結晶が放たれ、展開していく。それはさながら蛹から羽化した蝶が広げる翅のごとく。

 そして両腕のボウガンが長大なレールガンのような見た目の銃に変え、その銃口をカ・ディンギルに向け、エネルギーをチャージする。

 そしてついに、カ・ディンギルがそのため込んだエネルギーを月、その射線上にいるクリス目掛けて解き放つ。

 

 ーROSES OF DEATHー

 

 それと同時にクリスの銃からも膨大なエネルギーが解き放つ。その余波は結晶体にぶつかることで反射、そのまま集束してカ・ディンギルに向かっていく。

 両者が激突した瞬間、轟音が轟く。

 

 「一点集束!?押しとどめているだと!?」

 

 クリスのイチイバルは広域攻撃型だ。広範囲を攻撃してこそ真価を発揮する。では、一転攻撃は苦手か?いや、緑羅の熱線のようにエネルギーを一点に収束させればそんな事はない。むしろ凄まじい攻撃力を発揮するだろう。

 だが、それでもクリス一人とカ・ディンギルとではエネルギーの絶対量が違いすぎる。クリスの砲はひび割れ、クリス自身口から血を流す。だが、それでも止めない。

 

 (なあ、緑羅……前に言ってたな。お前は両親をどう思ってるのかって……あの時は言えなかったけど、今なら言える。アタシはパパとママが大好きなんだ)

 

 腰のアーマーが砕け始め、カ・ディンギルがクリスの砲撃を押しのけ始める。それでも、クリスの目は光を失わない。

 

 (だから、二人の夢をアタシが引き継ぐ。アタシの歌で、平和を掴んで見せる……これが、アタシの……雪音クリスの答えだ)

 

 その脳裏に幼いクリスと共にある両親の姿が思い浮かび、

 

 (どうだ……?これでアタシは……人間になれたか?これで………お前と、胸を張って一緒にいられる人間になれたか……?緑羅)

 

 それを最後に、クリスの姿はカ・ディンギルの砲撃の中に消える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カ・ディンギルが起動した結果、崩壊を起こした二課本部内。その中の瓦礫の一角からころんと欠片が零れ落ちる。そして一拍後、瓦礫の山が小さく、何度も胎動するように蠢いた次の瞬間、轟音と共に瓦礫が吹き飛ばされる。

 濛々と土煙が立ち込める中、ゆっくりとした動きで黒い影が立ち上がる。影はその場でブルリと体を震わせると、低いうなり声を発する。

 そしてゆっくりと顔を上げて頭上を睨み上げると、

 

 ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!

 

 地を揺るがさんばかりの咆哮が放たれる。

 吠え終わった影は苛立つように鼻を鳴らすとそのまま移動を開始する。

 今の彼の目的はただ一つ………そう、リベンジだ。




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