戦姫絶唱シンフォギア 王を継ぎし者   作:夜叉竜

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 今回、ついに……ついに緑羅が覚醒します。

 詳しい説明は後程。

 ではどうぞ!


古の旋律、奏でし時、王は目覚めん

 太陽が昇り始め、周囲の闇を照らし始めた。もうじき夜が明ける。その中で緑羅は荒い息を吐きながら膝をつくが、ガントレットを地面に叩きつけて倒れるのを防ぐ。

 

 「緑羅君……もういい……もういいから……!」

 

 涙ながらに響は懇願する。あれからずっと、緑羅は二人を庇いながら戦い続けていた。攻撃のほとんどは防御するか相殺するが、仕切れないものは容赦なく緑羅の体を傷つけていく。緑羅の姿はもはや満身創痍だ。全身血濡れとなり、もはやガントレットを修復する余力もないのかブレードはほとんど折れ、激しく火花を散らしている。再生力で傷は幾らか塞がっているが、どう考えても戦える状態ではない。

 

 「五条緑羅……早く逃げなさい。このままでは本当に死んでしまうわよ!」

 

 翼も悔しさを滲ませながら言うが、

 

 「うるせぇ………俺はまだ生きて、立ってる……俺はまだやれる………!」

 

 そう言いながら緑羅は立ち上がるが、その足はふらついている。一方、フィーネはもはや緑羅を脅威と見ていないのか、唐突に自分の過去を語り始める。

 

 「もうずっと遠い昔、あのお方に仕える巫女であった私は、何時しかあのお方を、創造主を愛するようになっていた。だが、この胸の内を告げることは出来なかった。その前に、私から、人類から言葉が奪われた……! バラルの呪詛によって、唯一創造主と語り合える統一言語が奪われたのだ……! 私は数千年に渡り、たった1人バラルの呪詛を解き放つ為、抗ってきた……。何時の日か統一言語にて、胸の内の想いを届ける為に……」

 

 その言葉を聞いた瞬間、響はなぜか、彼女の言葉に深い共感を覚えた。それはまるで、自分の心の中にある思いを代弁したような……

 

 「知るかよそんなもの………てめぇの過去なんざどうでもいい……興味もない。お前は俺の敵だ。だから、全部ぶっ潰す……その想いってやつも……踏みにじってやるよ……お前がそうしてきたようにな……!」

 「やれるものならやってみろ……恋心などと程遠い獣が!」

 

 フィーネがデュランダルからエネルギーの刃を放つ。緑羅は爪を光らせ、斬葬を放つが、それは最初に比べるとかなり弱弱しい。

 事実刃と激突すると、威力を減衰させるも吹き飛ばされ、そのまま刃は緑羅を直撃し、血が飛び散る。

 

 「ぐっ……ぬぅ……!」

 

 緑羅の体はふらつくが、どうにか倒れる事は防ぎ、荒い息を吐きながらフィーネを睨みつける。

 

 「シンフォギアシステムの最大の問題は、絶唱使用時のバックファイア……融合体である立花響、そしてあの細胞を持つお前がが絶唱を放った場合、何処まで負荷を抑えられるのか、研究者として興味深いところではあるが…… 」

 「貴様………!」

 

 フィーネの言葉に緑羅は怒りに顔を歪めながらフィーネを睨みつける。だが、フィーネはふん、と鼻を鳴らして嘲笑う。

 

 「安心しろ。もうお前たちを使って実験しようとは思わん。この身もお前らと同じ融合体だからな。神霊長は私1人がいればいい。私に並ぶものは、全て絶やしてくれる……!」

 

 そう言ってフィーネはデュランダルを掲げる。そこから膨大なエネルギーが放たれ、緑羅は舌打ちと共に構えるが、その背に響が縋りつく。これ以上彼が傷つくのを見たくない。彼を失いたくない。その衝動に突き動かされる。

 

 「緑羅君!もういい!もういいから!今度あれを喰らった本当に死んじゃう!緑羅君だけでも逃げて!」

 「そうよ!あなたまで死ぬことはない!早く逃げなさい!」

 

 翼も叫ぶが、緑羅は振り返らずにはっ、と口元を歪める。

 

 「なんだよ。そんな簡単にあきらめて情けない……天川奏……だっけ?彼女も言ってたでしょ。生きるのを諦めるなってさ」

 

 その言葉に二人は目を見開き、緑羅はガントレットを修復し、構える。

 

 「俺はまだ戦える。死ぬまで戦い続ける。それが俺だ……この程度で諦めてたまるか!」

 「愚かな……ならばそのまま果てるがいい!」

 

 そう言ってフィーネがデュランダルを振り下ろそうとした瞬間、突如として周囲に歌声が響き渡る。

 

 「ん? チッ! 耳障りな! 何が聞こえている?」

 「こいつは……?」

 

 フィーネは鬱陶しそうに顔を歪め、緑羅は訝し気に周囲に視線を向ける。響と翼も気付いたようで目を見開いて周囲を見渡す。

 その歌はリディアン音楽院のスピーカーの残骸。そこから聞こえてくる。

 その歌声の主はシェルター内の未来たちリディアン音楽院の生徒たちだった。

 未来たちは協力して地下シェルターの電気をリディアンと連結、スピーカーを復活。そして今、こうしてみんな歌声を響たちに届けているのだ。

 

 (響……緑羅君……私達は無事だよ……! 二人が帰って来るのを待っている……! だから……負けないで……!)

 「あ、ああ……」

 

 その歌声に響は声を震わせ、翼もまた小さく安堵の笑みを浮かべ、緑羅は小さく口角を上げる。

 

 「全く……人間のしぶとさはこういう時にだけ発揮してほしいものだね」

 「チッ! 何処から聞こえてくる……この不快な……歌……! 歌、だと…!?」

 

 山の頂点から太陽が顔を出し、周囲を照らし出す。

 

 「聞こえる?立花……」

 「はい……皆の声が……良かった……私が護りたかったもの……緑羅君が護ってくれたもの……護れたんだ……皆が歌ってる……だから、まだ歌えるッ!!頑張れるッ!!戦えるッ!!」

 「ええ……!」

 

 緑羅の背後で響と翼は立ち上がり、彼と共に並び立つ。

 

 「まだ戦えるだと……!? 何故まだ立ちあがれる……? 拳を握る力も残ってなかった筈だ……? 鳴り渡る不快な歌の仕業か? お前が纏っているものは何だ?もうそいつ以外戦えないはず……何を纏っている!? それは私が造ったモノか!?お前が纏うそれは一体何だっ!? 何なのだ……っ!?」

 

 狼狽するフィーネをよそに響と翼は声高らかに叫ぶ。

 

 「「シンフォギアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」」

 

 瞬間、響からオレンジの光が、翼から青い光が、そして森の中から赤い光が天に向かって立ち上る。

 そして光が収まった時、空にいたのは、脚部から2対の青い翼を広げた白を基調にしたシンフォギアを纏った翼と、腰部の装甲から赤い翼を広げ、同じように白が基調のシンフォギアを纏ったクリス、そして、背中からオレンジの翼を広げた白が基調のシンフォギアを纏った響だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地下シェルターにて響たちに歌を届けた未来たちはモニターに映し出された響たちを見て顔を綻ばせた。

 

 「お姉ちゃんたちカッコいーー!」

 「やっぱあたしらがついてないとダメだなぁ!」

 「助け助けられてこそ、ナイスです」

 「私達が一緒に戦ってるんだ!」

 「……うん」

 

 未来は静かに頷きながらモニターを見ていたが、不意に顔をしかめる。

 

 「あの……すいません。緑羅君は……?」

 

 その言葉に全員がえ?と顔を見合わせて慌ててモニターを見やる。だが、そこには緑羅の姿はない。

 ではどこに?とあわてて藤尭がモニターを操作して地上を映す。それを見て未来が、いや、多くの者たちが愕然と目を見開く。

 

 「どうして………どうして緑羅君だけ………!?」

 

 そこには先ほどと変わらず、傷だらけ、血だらけの緑羅が荒い息を吐きながら立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いったん空に舞い上がった響たちだったが、緑羅が未だ傷ついた状態で地上にいることに気づくと慌ててそばに降り立つ。

 

 「緑羅君!」

 「緑羅!大丈夫か!?」

 「どうして……なんであなただけ……シンフォギアを持っていないから?」

 「さあ……知らない……だが、これで役者がそろった………やるぞ………!」

 

 そう言いながら緑羅はふらつきながら前に出る。

 

 「限定解除されたギアを纏って、すっかりその気か!思い上がるな!」

 

 フィーネはデュランダルの代わりにソロモンの杖を取り出すと、光を放ち、ノイズを召喚する。

 

 「いい加減芸が乏しいんだよっ!」

 「世界に尽きぬノイズは、全て貴様の仕業なの!?」

 「ノイズとは、バラルの呪詛にて相互理解を失った人類が同じ人類のみを殺戮する為に作り上げた自律兵器……」

 「人が、人を殺すために……!?」

 「え?それって驚くこと?今もお前らはそう言うのを作りまくってるじゃん」

 

 何を言ってるんだと言うように呟く緑羅に響たちが目を見開くが、フィーネはくつくつと笑みを浮かべる。

 

 「分かってるじゃないか、五条緑羅……バビロニアの宝物庫は、扉が開け放たれたままでな。そこから10年に1度ノイズはまろび出る。その偶然を、私は必然と変え、純粋に力として使役しているだけのこと……」

 「つまり……ノイズの巣はお前を倒しても存在したままか……いや、それさえあれば直接叩けるか?」

 「何を勝った後の事を考えている!」

 

 ノイズが一斉に響たちに襲い掛かる。3人は翼を使って飛翔しようとするが、すぐにやめるとクリスが前に出て、

 

 「吹っ飛びなぁ!」

 ーBILLION MAIDENー

 

 両腕にガトリングを生み出し、乱射してノイズを全て撃ち落とす。

 

 「共に飲まれろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 だが、その隙にフィーネがソロモンの杖から上空に向かって光を放つ。それは響たちを取り囲むように拡散、地上に着弾し、

 

 「なっ!?」

 「くっ……」

 「そう来たか……」

 

 もはや数える事すらバカらしくなってくるほど大量のノイズが響たちを包囲しており、その一群は街にまであふれかえっている。

 

 「上等だ!まとめてぶち抜いてやる!」

 「……ああ……そうだな……」

 

 クリスが不敵な笑みと共に言うと緑羅も同意し、前に出ようとするとその前に響が立ちふさがる様に立つ。

 

 「響……?」

 「緑羅君。あとは私たちに任せて、緑羅君は休んでて」

 「なっ!?ふざけるな!勝手に人を戦力外にするな!俺はまだ戦え……!?」

 

 響の言葉に緑羅が吠えながら前に出ようとするが、不意にがくんと体が崩れ落ちる。その体をクリスが慌てて支える。

 

 「ぐっ………」

 「ほら……もう限界なんでしょ?これ以上無理したら本当に死んじゃう……」

 「そうね………貴方は十分に戦ったわ。あとは私たちに任せなさい。しっかり借りは返すから」

 「だから……!」

 「緑羅……悪かったな。あたしがへましたから無理させちまって……でもさ、もう大丈夫だから。遅れた分はしっかり取り返す。だからさ、あたしたちを信じて休んでろよ」

 

 そう言ってクリスはそっと緑羅の体を横にする。

 

 「この……!」

 

 緑羅は立ち上がろうとするが、体はロクに動かず、身じろぎしかできない。どうやら本当に限界のようだ。

 

 「大丈夫。今度は私たちが緑羅君を守るから!」

 「お前には指一本触らせねえよ!」

 「そこで見てなさい。防人の本当の力を!」

 

 3人は緑羅を守る様に展開するとノイズが一斉に4人を飲み込もうと襲い掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巨大な人型ノイズが響を叩き潰そうとするが、響は右腕の籠手のパイルが引き絞られ、ノイズ目掛けて勢い良く叩きこむ。

 その一撃はノイズを一発で吹き飛ばし、更に解放されたパイルから放たれた衝撃波が後方のノイズもまとめて粉砕する。

 

 「すごい……これが限定解除されたシンフォギア……!」

 「言ってないでさっさとぶっ飛ばせ!」

 

 クリスは腰の装甲を飛行型ユニットに変え、飛翔すると

 

 ーMEGA DETH PARTYー

 

 無数のレーザーを放ち、上空の鳥型ノイズ、更に地上のノイズを次々と撃ち抜いていく。

 

 「すごい!乱れ撃ちだね!」

 「あほか!全部狙ってんだ!」

 「そっか……だったら私が乱れ撃ち!」

 

 すると、響は腰を落とし、次の瞬間、猛スピードで飛び出し、手当たり次第にノイズを吹き飛ばしていく。だが、そうすれば当然穴ができる。そこを狙ってノイズが緑羅に襲い掛かる。

 緑羅は迎撃しようとガントレットを向けるが、その前に翼が大剣を振るい、ノイズを切り裂く。

 

 (二人とも、私たちには守る人がいるのよ。あまり前に出すぎないで)

 

 翼が限定解除されたシンフォギアの能力の一つ、念話で告げると二人は小さく呻きながらすぐさま緑羅の元に戻る。

 翼は小さく苦笑をしながら大剣を振り上げる。その刀身を青い雷が覆い、

 

 ー蒼ノ一閃ー

 

 振り下ろすと同時に巨大な斬撃が上空に放たれ、飛行機型ノイズを両断、更にその奥の同型も吹き飛ばす。

 さらに翼は横薙ぎに大剣を振るい、もう一発蒼ノ一閃を放ち、ノイズを薙ぎ払う。

 まさに鎧袖一触。3人の猛攻であれだけいたノイズは成すすべなく駆逐されていく。

 と、再び光が放たれ、ノイズが出現する。

 

 「今更ノイズをどれほど出そうと!」

 

 だが、翼は大きく目を見開く。その視線につられて3人が目を向ければ、その先にはソロモンの杖を自分の腹部に向けているフィーネがいた。

 フィーネはにたりと笑みを浮かべると、そのままソロモンの杖を自分に突き刺し、貫通する。

 それと同時にフィーネの体の一部がソロモンの杖にとりつく。更に、周囲のノイズが一斉にフィーネの元に殺到するとそのままフィーネを飲み込み、更にそのまま融合していく。

 ノイズたちは次々と集まり、赤黒い肉塊になり、肥大化していく。

 

 「ノイズに……食われてる……?」

 「いや、違う!あいつがノイズを喰ってるんだ!」

 

 4人の目の前でその巨大な肉塊はその形を変貌させていく。まるで樹木のように天に向かって伸びていき、その姿を変えていく。

 そして現れたのは見上げるほどに巨大な赤い異形。見ようによっては竜のようにも見えるシルエット、背中にいくつもの触手の翼をはやした存在。

 その竜の頭部に当たる部位が光り輝くと、そこからレーザーが放たれ、街を直撃、轟音と共に街の一角を丸々吹き飛ばす。

 

 「街がっ!?」

 「逆鱗に触れたのだ……」

 

 フィーネの言葉に4人が顔を向ければ、竜の胸部付近が開き、フィーネが現れる。ネフシュタンの鎧は更にその形状を変えて赤いドレスのような形状に、そしてその手にはデュランダルが握られている。

 

 「相応の覚悟はできているだろうな?」

 

 固まっていては不味いと判断した響たちは、

 

 「緑羅君、ごめん!」

 「ちょっ!?」

 

 響が緑羅を抱え込み、一斉に翼を使って飛翔する。

 その響たちを落とそうと竜が砲撃を放つ。3人は即座に飛翔して回避するが、響は緑羅を抱えているからかバランスを崩し、衝撃波に吹き飛ばされる。だが、それでも響は緑羅を放すまいと血に濡れるも構わず抱きしめる。

 

 「響、俺を下ろせ!このままじゃいい的だ!」

 「っ……うん!」

 

 響は即座に下降すると緑羅を地面に下し、自分は即座に飛翔する。緑羅を狙わせるわけにはいかない。フィーネの注意を自分たちにひきつけなければ……

 

 「このっ!」

 

 クリスが即座に無数のレーザーをフィーネに放つが、そのフィーネを取り囲むように壁が展開して防がれてしまう。

 竜は反撃に翼からレーザーを放つ。口から放ったものに比べれば格段に威力は落ちているが、回避するクリスを追尾し、直撃して吹き飛ばす。

 

 「はぁっ!」

 

 翼が大剣を振るって蒼ノ一閃を放ち、直撃するが、それによってできた傷は一瞬で塞がってしまう。

 

 「幾ら限定解除されたシンフォギアであっても、所詮は聖遺物の欠片から作られた玩具……3つの完全聖遺物に対抗出来るなどと思うな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 膝をついた状態の緑羅は小さく舌打ちをする。相手にあんな隠し玉があったというのは驚きだ。このままではんは押し切られる。やはり自分が……

 だが、冷静に今の自分にアイツを殺しきれるか思考し……緑羅は舌打ちをした。答えは否だ。

 あれほどでは下手したら十全の時でも殺しきれないかもしれない。火力が……火力が足りないのだ。

 

 (くそ!どうする……無理やりにでも使うか?いや、使えたとしても今の火力じゃ足りない。もっと……もっと力を引き出せれば……くそ!歌で力を引き出すとか意味が分からんしそんな気配も……)

 

 そこまで考えて緑羅ははた、と何かに気づいたように目を見開く。歌……そう、歌。

 もしかして、と考えると同時に彼は立ち上がる。ふらつきながらも何とか立った彼は一度目を閉じて小さく息を吐く。まさか、こんな日が来るとは長い怪獣の生の中であっても想像できなかった。

 そう思いながら彼は小さく息を吸って………

 

 静かに歌いだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 圧倒的な力を振るうフィーネに対し、3人はとある作戦を決行しようとしたのだが、ふいに響き渡った歌声に響たちは小さく目を瞬かせて周囲を見渡し、地上を見やる。視線の先には両足でしっかりと立ち、歌を口にする緑羅がいた。

 

 「緑羅君?」

 「これは……歌………?」

 

 思わず翼が首を傾げたのも仕方ない。なぜならそれは歌と言うよりも旋律を口ずさんでいるだけだったからだ。だが、その旋律は妙に耳に残る。儚げでありながら、力強さも感じさせる優しい旋律。

 

 「これって……あの時の……」

 

 クリスはその歌があの時、緑羅が口ずさんでいたものであると言う事に気づく。

 

 「何を……今更歌を奏でたところで!」

 

 フィーネも歌に気づくと緑羅目掛けてレーザーを放つ。

 

 「させるか!」

 

 即座にクリスが動き、レーザーを撃ち落とす。

 それを見て、響と翼も動き出す。どうして緑羅が歌いだしたのか分からないが、それでも彼を攻撃させるわけにはいかない。

 殺到するレーザーを響たちが迎撃する中、それに気づいていないかのように緑羅は静かに歌い続ける。

 歌え、唄え、詠え。最古の歌を。ずっと自分と共にあった旋律を。自分と家族を繋ぐ歌を……!

 そして、ついに歌は佳境に入り、緑羅は高らかに歌い上げ、終わりは静かに幕を引く。

 歌が終わったことに響がちらりと視線を向けた瞬間、

 

 ドグンッ!

 

 巨大な鼓動が響き渡る。そして緑羅から巨大な黒い光と青白い炎がまじりあった光柱が立ち昇り、周囲に衝撃波が放たれる。

 その衝撃破を響たちはとっさに腕で顔を庇って防ぎ、目の前の光景にフィーネは目を見開く。

 そして、光柱の中心地で緑羅に変化が起きる。まず、全身の傷が凄まじい勢いで再生していく。千切れかけていた左腕は瞬く間に繋がり、抉り取られた胸部の傷は一瞬で塞がり、肉が盛り上がって完全に塞がる。

 そしてあっという間に緑羅の傷は最初からなかったかのように完全に癒えてしまう。

 だが、変化はそれだけでは収まらなかった。緑羅の変異した姿がすぐに変異を解いた人間の姿に戻ったのだ。黒い髪はいつもの長さに戻る。だが、完全ではない。背びれと尾だけはそのまま残ったのだ。

 そして、その状態で緑羅の体を鎧が覆っていく。

 黒い長ズボンの上に黒い脚甲と膝あてが装着され、黒いロングコート、更にその上から腰回りに武者鎧のような装甲、胸当て、肩当を身にまとう。そして左腕を右腕と同じような鎧で覆うと、そこから無数のパーツが現れ、組み合わさり、生み出されたのは右腕と同じ形状のガントレット。

 変異が終わり、響たちが呆然とした様子で視線を向けていると、緑羅は静かに目を開け、そして自分の姿に視線を向け、両方のガントレットを動かし、

 

 グゥオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!

 

 天地を揺るがすような凄まじい咆哮を上げてゆっくりと視線をフィーネに向ける。

 目が合った瞬間、フィーネの全身から冷汗が噴き出し、顔が引きつり、本能が大音量で警鐘を鳴らす。

 その警鐘のままに緑羅目掛けてレーザーを放とうと竜が頭部を向ける。

 響たちは慌ててレーザーを迎撃しようと慌てて構えた瞬間、

 響たちの間を黒い影が駆け抜けた瞬間、凄まじい轟音と共に竜の頭部が抉りつぶされ、そのまま巨体が大きく傾ぎ、地響きと共に倒れ込む。

 その光景に響たちは唖然とした様子でその光景を見つめていた。竜は巨大で、更に言えば樹木のように地面から生えている。その巨体が倒れたのだ。

 3人が顔を上げると、緑羅が空に浮いた状態で竜を睨みつけていた。響たちのように翼で飛んでいるわけではなく、腰の鎧の各所からスラスターが飛び出し、そこから炎を噴き出し、その推進力で浮いているのだ。

 

 「な、なんなんだその力は……貴様から聖遺物は奪った……歌を使っても力は得られなかったのになぜ……なぜ完全聖遺物に匹敵する力を得ている。なんなのだ……お前はいったい何なのだ!?」

 

 竜の中からフィーネが狼狽しながら声を荒げると緑羅は鼻を鳴らしながら口を開く。

 

 「何なのか……か………そうだね。今の俺なら……あの名前を名乗れる気がする………」

 

 そして、彼は告げる。己の本当の名を。

 

 「俺の名前は……ゴジラ……怪獣王、ゴジラ……!それが俺が………受け継いだ名前だ!!」




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