ではどうぞ!
そこがどこか、それは彼も知らないし、興味もない。
分かるのは、日本ではなく、どこかの外国であるということ。そこは古い遺跡後だということだけだろう。そこは放置されてからかなりの時間が経っている場所のようだ。かつては荘厳な雰囲気を纏っていたのであろう内装は見る影もなくボロボロに朽ち果て、風化しており、内部のあちこちから木々が顔を出しており、植物の浸食を受けている。そんな遺跡の中央付近には祭壇のようなものが置いてあるが、それも例外なく植物に覆われている。
それを見つめながら彼ははあ、と深いため息をつきながら首を回す。
「ようやく見つけた……全く、どんだけ弱々しい力しか発しないんだ」
彼は全く、と文句を言いながら中央の祭壇に向かって歩いていく。彼の目的はただ一つ。ここにあるノイズと戦うために必要な武器を手に入れる事だ。
あのライブ会場から離れた後、彼はとりあえず、離れた場所の人間が使う港に顔を出したのだが、そこで彼は妙な人間達に出会った。変にこそこそとしており、黒を基調した服で身を包み、その手に銀色の鞄を持っている。
そいつらが気になった彼は海から上がると、後を付けた。そうしていくと、彼らは建物の中に入っていき、その中で別の人間達と出会い、そこで何かをし始める。
どうしても気になった彼はそいつらに声をかけ、なにをしているのか尋ねたのだが、その瞬間、奴らは突然言い争いを始めた。よく分からないが、話が違う、とかそのガキはなんだ、とか言ってたような気がする。
何をしているんだ?と彼が首をかしげていると、人間達はその手に武器を取り出し、彼に攻撃を仕掛けてきた。
彼はそれを回避すると即座に奴らを敵と認定、だがせっかく会えた人間、情報収集もしたかったので、全員を半殺しにして怯える奴らを脅して話を聞いた。
話を統合すると、奴らはヤクザという違法な手段で金を得ている集団らしい。そんで、その手段を見られたがゆえに自分を殺してなかったことにしようとしたようだ。だが返り討ちにしてやった。
それを聞いて、彼はこいつらをどうするか考えこむ。このまま排除するのは実に簡単だが、折角会えた人間達。しかも今は自分に怯えているせいで、割りということを聞いてくれる。
それを踏まえて考えた結果、彼はこいつ等のもとで情報収集をすることを決めた。
早速その場にいた奴らの1グループに住処まで案内させた。
辿り着き、中にいた人間達と出会うと、一拍後にまた攻撃されたがそれもまた軒並み叩き潰し、無事に情報収集源兼住処を確保することができた。
それから1ヶ月、彼はそこを拠点に様々な本を読み漁り、人間界の常識、この世界の情報を集め、吸収していった。
それによると、この世界にはかつての自分のような怪獣の類は存在しておらず、人間達が娯楽として生み出した映画やアニメといった物の中の存在でしかないらしい。
その代わりに存在しているのが、あのノイズという存在らしい。ノイズは場所も時間も関係なく突然現れる存在であり、奴らは人間にのみ襲い掛かる。奴らに触れると、奴らごと炭に変えられ死んでしまう。そしてどういう原理かは彼らは知らないようだが、ノイズには普通の攻撃は聞かず、すり抜けてしまうらしい。飽和攻撃なら通用するらしいのだが、周囲の被害も甚大なものになるようだ。また、ノイズがこちらに触れようとする瞬間も攻撃が通用するみたいだが、失敗すれば即死してしまう賭けをするつもりは彼にはない。
彼はあの少女たちが使っていた武器の事を聞いたのだが、彼らはそんなものは知らないらしい。そもそもこの時代に槍や剣で戦うなんてありえないとすら言われてしまった。恐らくだが、あの武器の事は一般には知られていないらしい。
その事実に彼は首を傾げた。どうしてだろうか。ノイズなんて恐ろしい存在がおり、それに対する対抗手段があるなら普通は大きく発表し、人を集め、もっと多く作ろうするのではないだろうか……
とにかく、それも含めて彼は一ヶ月学び続けた。時には直接街に出て、実際に行動もしてみた。その最中に何度か人間達は自分を殺そうとしたが、そのたびに返り討ちにしたが。そのおかげで、人間世界の常識は大体習得でき、街中でいきなり変な行動をして警察を呼ばれるとか言う事態にはならない程度には慣れた。
それぐらいになって、彼は次の行動に移る。それはもちろん、ノイズを倒すためのあの武器を手に入れる事だ。幸いというべきか、あの武器は独特の力を発しており、近くに寄れば気づくことができる。
彼はまず日本を探そうとヤクザたちから生活に必要な金を奪い、旅をし、気配を感じたらそちらに赴くといった感じで日本中を旅して回った。
そのおかげか、何個かそれらしきものを見つけることができたのだが、そのどれもこれもが壊れたものばかりだった。力を取り込む事はできるがその量は少なく、取り込み、増幅させても全力を出すには足りないのだ。
もっと多くの力を吸収できるものがあればいいのだが……
そう思いながら動き回って更に一ヶ月。ある日、彼は感じ取ったのだ。日本にはないどこかにある力の気配。力を取り込み続けていたおかげでそれに慣れたから気づけたのだ。それはこれまでの力と比べて弱々しいが、それと同時にかなりはっきりとしている。
これなら期待が持てるかもしれない。彼はさっそくその力の元に向かって移動した。最低限の荷物を持ち、それ以外を人が入り込まない廃墟に隠してから海を渡り、どこかの陸地に上がって歩いていき、鬱蒼とした森の中を突き抜け、ようやくたどり着いたのがこの遺跡だ。
中に入り、瓦礫やら壁やらを破壊しながら進んでいき、遂に辿り着いたのがこの祭壇だ。ここから気配を感じ取れる。
「ここに来るまでにさらに1週間ぐらい時間がかかっちゃった……頼むからちゃんとしたのであってよ……」
そう言うと、彼はそのまま中央の祭壇に近づくと、躊躇なく祭壇を殴りつける。それだけで祭壇は轟音と共に砕け散り、破片があちこちに吹き飛ぶ。それらを無視して彼は祭壇の残骸の中を覗き込む。そこにそれはあった。
一見すると剣のように見えるが、杖の様にも枝のようにも見える独特な形状の物体。
彼はそれを拾い上げると、ひっくり返したり、軽く叩いたりして観察し始める。
「ふうむ……これだね……こいつが目的の物か……大丈夫かな?なんというか……本当に力が希薄なんだけど……」
彼は疑いの目で物体を睨みつけるが、とりあえず見つけたのだ。まずは力を取り込んでみよう。
そう思い口を開いた瞬間、
「おい。お前……こんなところで何をやっている」
不意に後ろから声をかけられ、ん?と彼は首をかしげながら振り返ると、そこには一人の少女がいた。物に集中していて気付かなかった。
随分と幼い。まだ小学生ぐらいだろうか。短い髪に三角帽子をかぶっている。魔法使いのコスプレと言われたら信じてしまいそうだ。
「君は?」
「おい。最初に聞いたのはオレだ。お前はここで何をしている」
何とも荒っぽい言動の少女だなぁ、と頭の隅で考えながら彼は油断せず思考する。
能天気な感じで考えたが、一目で分かった。この少女は絶対にまともじゃない。まず、普通の少女がここに来れるわけがない。ここに来るまでに二日も鬱蒼とした森の中を歩いてきたのだ。見たまんまの少女にそんなことができるわけがない。次に少女からは何か老獪な雰囲気を感じ取れる。恐らくだが、見たままの分だけの時間を生きていないだろう。さらに言えば、何か、妙な力も感じ取れる。
彼はしばらく少女を見てどうするか考えていたが、小さく鼻から息を吐くと、
「見ての通りだよ。こいつを取りに来たの」
そう言いながら手にしている物体を肩に担ぎながらそう言う。恐らくだがこの少女には下手な誤魔化しが通用しないだろう。ならばさっさと素直に白状したほうがいいと判断したからだ。
そう言うと、少女はほう、と小さく眉を動かす。
「それは奇遇だな。オレもそれに用があったんだ」
「へえ、そうなんだ……でも悪いね。これは俺が先に見つけたんだ。君もこれが必要なんだろうけど、俺にも必要なんだ。だから渡すつもりなんてない。諦めて他のを探しなよ」
そう言うと、彼は少女に背を向けてその場を去ろうと歩き出す。
「ああ………そうだな」
それに対し、少女がそう呟いた瞬間、彼に向かって無数の炎が襲い掛かり、直撃、凄まじい轟音と爆発を起こす。
「全く、手間取らせやがって……さっさと聖遺物を回収するか」
そう呟き、少女は何の感慨もなさそうに歩き出したが、
「ふ~~ん。こいつ、聖遺物っていうんだ」
煙の向こうから聞こえてきた声に顔をしかめて足を止める。その煙の向こうから彼が聖遺物を担ぎながら現れる。
それを見て、少女は小さく唸りながら彼を睨みつける。
「確かに当たったはず……なのに無傷だと……?」
「直撃したのは祭壇だよ。俺は回避したの。にしても……ちょっとひどいんじゃない?いきなり攻撃とか」
「無傷で避けといて何を言ってる……」
「ま、はっきり言って殺気が隠れてなかったしね……で?まだやるつもりなの」
「何を……バカな事を!」
瞬間、少女は今度は水の塊を一斉に撃ちこんでくる。彼は素早くその場から退避して水の塊をよける。
「おとなしくそれを渡せ、小僧!」
「さっきの俺の話聞いてた!?」
少女は次々に攻撃を撃ちこんでくるが、彼は遺跡内を手当たり次第に跳び回り攻撃を回避していく。
だが、次第にこの調子では埒が明かないと判断したのか、彼は着地すると同時に近くにあった巨大な瓦礫を掴み上げるとそれを勢いよく少女に向かって投げつける。
少女は即座にエネルギー波で瓦礫を破壊すると、更に続けて攻撃を繰り出す。彼はすぐに回避するとまた別の瓦礫を掴み上げ、投げつけるが、それも破壊される。
「その身体能力……どう考えてもまともじゃないな……お前はいったい何者だ……?」
「さあ?自分で考えてみなよ!」
そう言いながら彼は地面を破壊しながら少女との距離を詰める。遠距離は完全にあちらの領域、ならば距離を詰めて一気に終わらせる。
一気に少女との距離を詰め、勢いよく拳を繰り出そうとするが、
「だったら、お前を捕らえてバラして調べてみるか!」
少女の言葉と同時に背筋を嫌な予感が駆け抜け、咄嗟に聖遺物を盾に後ろに跳ぶ。次の瞬間、エネルギー波が至近距離で直撃し、彼は吹き飛ばされる。
が、彼は吹き飛びながらも空中で体を捻って体制を整えると、そのまま着地する。
その際に右腕に痛みが走り、視線を向ければ右腕からは血が流れている。
それを見て彼は忌々し気に舌打ちをする。
このままでは少しまずい。少なくとも自分の血を人間に採取させるわけにはいかない。
「どうした?もう終わりかガキが!」
少女が再び攻撃してきて彼は舌打ちをしながらその場から飛び退く。このままじゃあじり貧である。ならば……
彼は聖遺物に視線を向けると、早速試してみるか、と考え、次の瞬間、彼は聖遺物に喰らい付く。
「は!?」
あまりにも予想外の行動だったからか少女は驚愕に目を見開き、動きが止まる。
その隙に彼は聖遺物にさらに深く歯を突き立て、内包されたエネルギーを吸収していく。そしてそれを十二分に吸収した瞬間、
「ガァッ!」
彼はそれを体内で増幅させ、両腕を叩きつけると同時に開放。青白い爆炎が一気に遺跡内部で炸裂し、周囲を蹂躙する。当然、少女も容赦なく呑み込む。だが、彼は少女が死んだとは思っていない。
だがチャンスでもある。彼は即座に反転すると、入り口に向かって走り出す。まだ聖遺物を取り込んでいないから、エネルギーは不十分。このままではこちらが不利だ。それによく考えたらもう目的は達成していてあの少女を殺す必要は全然ない。ならば無視してさっさと立ち去った方がずっと利口だ。
「逃がすか!」
瞬間、爆炎の向こうからエネルギー波が放たれるが、彼は回避しながら走り、入り口に飛び込むと、即座に天井に炎を叩きつけ、崩壊させて通路を塞ぐ。
そのまま走っていき、森の中をしばらく進んでところで彼はふう、と息を吐いて歩いていく。
血に関しては大丈夫だろう。さっき部屋一帯を焼き払った。自分の血も一滴残らず焼けた。その時に自分の腕の血も一緒に焼けているので、問題はない。少なくとも最悪は避けられた。
そのことに安堵しながら歩いていくと、不意に森が開け、目の前に凄まじい高さの崖が広がる。下を見れば、そこには荒れ狂う海が広がっている。
「さて……それじゃあ、さっさとするか」
そう言うと、彼は聖遺物をその剛腕で潰し始める。頑強なはずの聖遺物が見る見るうちにつぶれていき、最終的に、それは歪な握り拳大の塊になってしまった。
彼はそれを見て、まだ生きていることを確認すると、それを自分の左胸に押し当て、一気に押し込む。
痛みと共に聖遺物は皮膚を突き破り、体内に埋め込まれていく。彼は痛みに顔をしかめるも、そのまま押し込んでいき、完全に体内に入ったところで手を引き抜き、ふう、と小さく息を吐く。
それから即座に周囲に炎を放って自分の血を周囲ごと焼き払う。
「これで良し……あとは、体に馴染むのを待つとしますか」
そう言うと、彼は躊躇なく崖から飛び降り、そのまま海に飛び込む。そのまま彼はどこかに流されていく。
「くそ……逃がしたか……!」
彼が逃げだした直後、少女は忌々し気に吐き捨てると、苛立ったように遺跡の壁を吹き飛ばす。周辺の青い炎はすでに鎮火しており、周囲は焼け野原になっている。
少女はしばらく苛立ちに任せて顔を歪ませていたが、次第に落ち着きを取り戻すと、次第にあの彼の異常さに気付き始める。
「しかし……どういう事だ……?あの尋常ではない身体能力に青い炎……聖遺物に噛み付いた後に使っていたからまさか…………?くそ!訳が分からん……奴の細胞か何かだけでも手に入れたかったが……全部焼き払われたか……今度会ったら必ずバラし、正体を掴んでやる……!」
そう呟きながら、少女はその場から去っていく。その際に赤い染みがついた服が荒々しく翻り、彼女の心情を表していた。
あの子はこんな感じでOKですかね……?
感想、評価、遠慮なくどんどんお願いします。