そしてお知らせです。この作品ですが、G編で完結にしようと思っています。このままグダグダと続けても終わりが見えないんで、だったら短くても終わりにしよう思いまして。
では、完結目指して頑張ります。
夜が明け、地平線から顔を出した太陽が周囲を明るく照らす中、緑羅は低く唸りながら橋の残骸から海を睨みつける。
眼下の海面には浮上した二課の仮説拠点の潜水艦、そして海面に叩きつけられた翼が顔を出している。どうやら無事らしい。そして二人の視線の先には、槍状のガングニールの柄の上に立つマリアがおり、彼らを睨み返している。
「嘘……でしょ……?だって、あの時、了子さんは……」
ウェルを抑えている響が愕然とした様子で呟く。脳裏には彼女の最後……砂となり、ボロボロに崩れていった姿がよぎっていた。
「確かあいつ、転生がなんとか言ってたが………」
「リンカーネイション」
緑羅が記憶を探る様に頭を掻くと、ウェルがポツリと呟く。
「リンカーネイション?」
「遺伝子にフィーネの刻印を持つ者を魂の器とし、永遠の刹那に存在し続ける輪廻転生システムの事だ……!」
「なら、アーティストだった本当のマリアさんは……!?」
「さて? それは自分も知りたいところですね……」
捕まってなお余裕の態度を崩さないウェルを横目でにらみながら、緑羅は唸る。
この男の話を信じるなら、マリアはフィーネの転生体と言う事になる。だが、こうして知らされたうえで相対しても…………
「………試してみるか」
そう呟くと、緑羅は行動を開始する。
(ネフィリムを死守出来たのは僥倖。だけどこの盤面、次の一手は決めあぐねるわね……)
一方、そのマリアは目の前の状況にどう動くか思考を巡らせている。
ネフィリムは彼女たちにとってなくてはならない存在だ。元々彼女がここに来たのもネフィリムの回収が目的だ。それができた時点で彼女の目的は達成できたと言っていい。
だが、ソロモンの杖とウェルが相手に確保されているのも上手くない。欲を言えば、どうにかしてG細胞も手に入れたいところだが……
そんなマリアに向けて翼が海面をホバー走行で滑りながら距離を詰め、斬撃を繰り出す。
マリアはとっさに身をひるがえしてその一撃を回避するが、翼はそのまま背後に飛び出すと、大剣を展開し、
「甘く見ないでもらえるかしら!」
ー蒼ノ一閃ー
振り抜いて斬撃を放つが、それをマリアはマントで自身を包み込むことで防いでしまう。
「甘くなど見ていない!」
翼は続けて急降下の一撃を繰り出すが、マリアはそれも受け流し、逆にマントを利用しての一撃を撃ち込み、翼を吹き飛ばす。吹き飛ばされた翼はそのまま二課の仮説本部の上に着地し、大剣を刀に戻す。
その間にマリアはネフィリムの入ったケージを突如として自らの頭上に投げ上げる。宙に浮いたケージだが、次の瞬間、溶け込むようにその姿を消す。
そしてマリアは自らも二課の仮説本部目掛けて跳躍し、着地。彼女が手をかざせば、その手にガングニールの槍が収まり、構える。、
「だからこうして、私は全力で戦っているッ!」
そしてマリアは翼目掛けて駆け出すが、その瞬間、翼の背後から水柱が立ち昇り、それを突き破りながら緑羅が現れ、ガントレットを薙ぎ払う。
マリアはとっさにガングニールでその一撃を防ぐが、衝撃は殺しきれず、甲高い音と共に吹き飛ばされるが、どうにか着地し、海面に落ちる事だけは防ぐ。
「風鳴、交代だ。こいつは俺がやる」
そう言って緑羅は翼の前に立ち、ガントレットを動かす。翼はその背中を不機嫌そうに睨みつけ、
「貴方ね……またそうやって……」
「そう言うんじゃない……ちょっと確認したいことがあるんだよ。フィーネ関係でね」
振り返らずに小声で告げられた言葉に翼は軽く目を見開き、緑羅越しにマリアを見つめる。マリアはこちらの出方を伺っているのか、ガングニールを構えたままこちらを睨みつけている。
「……確認したい事って?」
「単純に、あいつが本当にフィーネの転生体かどうかって事。あの男がそんな事を言ってたから」
翼は小さく息を呑み、マリアをじっと見つめる。それから少し考えこむと、
「……分かったわ。ここは貴方に任せる。私は立花たちと合流する」
「気をつけろ。こいつだけなわけがない。必ずどこかにほかの連中がいる」
その言葉に翼は頷くと、本部の上から飛び降り、海面をホバー走行で駆け抜けていく。
「……彼女を帰してよかったの?私は二人がかりでもよかったのだけど」
「ほざけ。前は完全聖遺物有でも、人質を取らないと俺に勝てなかった奴が、偉そうなことを抜かすな」
「………あの時の私と思わない事ね」
一瞬、マリアは小さく眉を顰めるが、すぐにガングニールを構えながら告げる。その言葉に緑羅は小さく唸り声をあげて拳を握り、
「そうかい。どうやらフィーネの転生者って言うのは本当の事みたいだな………だったら、右腕の借り、返させてもらう!」
「やれるものなら!」
緑羅が吠えると同時に飛び出し、ガントレットを薙ぎ払う。マリアはそれを槍で受け止め、マントによる一撃を緑羅の腹に打ち込む。が、緑羅は微動だにせず、逆に左拳をで殴りかかる。
即座に後退することでその一撃を回避したマリアは逆に槍とマントによる連撃を繰り出す。
緑羅はその全てをさばいていくが、攻撃の余波で、仮説本部の甲板が傷ついていく。
埒が明かない、と緑羅は忌々しげに顔を歪めると、槍の一撃をガントレットでつかみ上げる。マリアは即座にマントを操り、緑羅を振り払おうとするが、そのマントを緑羅は噛みつくことで動きを無理やり止める。
マリアが目を見開くと同時に緑羅はそのまま彼女の体を持ち上げ、甲板に叩きつける。
甲板の一部が歪むほどの衝撃にマリアは息を詰まらせ、浮き上がった体に緑羅の回し蹴りが叩きこまれ、吹き飛ばされる。
吹き飛ばされながらも、マリアは甲板に槍を突き立てることで勢いを殺し、即座に顔を上げるが、その眼前にはすでに緑羅が飛び込んでおり、ガントレットを顎に切り替え、喰らい付こうとする。
それに対し、マリアは逆に距離を詰めると、顎の奥の砲門目掛けて槍を突き出す。槍は砲門に耳障りな音と火花と共に深々突き刺さり、その光景に緑羅は一瞬目を細める。
これで熱線は封じた、とマリアがマントによる追撃を放とうとした瞬間、緑羅の背びれが発光。そして彼自身の口が開き、その奥が青白く光る。
「ちょっ!?」
それがどういう意味を持つかマリアは瞬時に察し、余裕も何もなく大慌てでマントを前面に集中させる。
次の瞬間、緑羅自身の口から熱線が放たれ、至近距離でマリアを直撃。轟音と共に爆炎が炸裂し、マリアを吹き飛ばす。
何度も甲板をバウンドし、歪ませながらも、マリアはどうにか態勢を整える。マントは一部が焼けこげ、体中に痛みが走る。何よりも、その顔には驚愕と恐怖の表情が浮かんでいた。
「まさか……口からも熱線を放てるの……!?」
「何言ってんだよ。炎を吐くなんざ、化け物の定番だろ?」
緑羅は皮肉気な笑みと共に肩をすくめ、マリアは表情を引きつらせる。
緑戦況は間違いなく緑羅優勢だ。だが、戦闘場所が仮設本部の上であるため、高威力の技が使えず、どうにも攻め切れない。その事に緑羅は若干の苛立ちを感じていた。
『緑羅君!マリアを本部から引き離してくれ!このままでは本部が持たない!』
さらにそこに弦十郎からの通信が入り、緑羅はめんどくさそうに顔をしかめる。
「まったく。やっぱり戦うなら足場がしっかりしてないとな………ま、知りたいことは知ることができたし………そろそろ終わらせようか」
「ずいぶんと余裕ね……まだ勝負はついてないわよ」
「いいや、最初から勝敗は決まってたんだよ……ここを戦場にした時点でね」
戦意をみなぎらせるマリアにそう告げると、緑羅はその場から走り出すが、なぜか行き先は仮設本部の縁で、マリアから離れていく。
何を、とマリアが訝しげな表情を浮かべた瞬間、緑羅はそのまま縁から跳躍し、海に飛び込んでしまう。
「なっ、逃げた!?」
その行動にマリアは思わず逃走した、と思った。それは、人間として当然の思考だ。この状況下で海に飛び込むなんて、この場からの離脱以外に考えられない。だがこの時、マリアは見落としていた。五条緑羅の本質を。彼が言った、化け物と言う言葉の意味を。
マリアが思わず縁に駆け寄り、海を覗き込んだ瞬間、海面を突き破って巨大な拳が迫りくる。
マリアは驚愕に目を見開きながらも思いっきり体を逸らし、何とか直撃は避けるが、掠めた拳によって大きく弾き飛ばされる。
「ぐっ!卑怯な真似を……!」
何とか立ち上がりながらマリアは忌々しげに吐き捨てるが、その背後で再び水柱が上がる。
マリアは今度は素早く向き直り、槍を構えるが、水柱はそのまま消え、何も起きない。
マリアが訝しげな表情を浮かべた瞬間、別の方向から水柱が上がり、今度は緑羅が飛び出し、マリアとの距離を一気に詰め、ガントレットの爪を振るう。
だが、爪が届く寸前でマリアは槍でその一撃を弾き飛ばす。
すると、緑羅は深追いせず、そのままマリアから離れ、再び海に飛び込む。
「ちょこざいな!」
マリアは緑羅が飛び込んだ先に槍の切っ先を向けると、刃が二股に分かれ、砲身を形成。そこに紫電が纏わりつき、
ーHORIZON†SPEARー
砲撃が放たれ、海面を直撃、巨大な水しぶきが上がる。
土砂降りのように降り注ぐ海水を鬱陶しそうに払いながらマリアは荒れる海面を睨みつけるが、その背後の海面から再び緑羅が飛び出し、マリアに襲い掛かる。
そえに気づけたマリアは慌てて振り返りながら槍でその一撃を防ぐ。
が、緑羅はそれを待ってたと言わんばかりにそのままガントレットの指でマリアの槍を掴み上げると、力を籠め、後ろに下がろうとする。
マリアはどうにか振り払おうとするが、その圧倒的なパワーの差に、振り払う事はできず、なんとかその場で踏ん張ることで抗う。緑羅は唸り声をあげると、さらに力を籠め、マリアをじわじわと引き摺って行こうとする。
「何を………!」
緑羅の目的が見えてこず、マリアは困惑するが、ちらりと緑羅が目指す場所、揺れる海面を見て、彼の目的を察する。
先ほどまでの動きから見て、緑羅は水中でも高い機動力を保てる。しかも、恐らくだが、水中でも問題なく戦える。
対し、マリアは、いや、シンフォギア装者は違う。彼女たちは基本、シンフォギアを使う時は歌う必要がある。普通にしゃべることもできるが、基本は歌い続けなければならない。だが、それ故に水中はシンフォギア装者にとっては致命的な場所だ。歌うことなんてできるわけもなく、ギアを維持できたとしても、すぐさま待機状態に戻ってしまうだろう。
彼がそこまで計算しているかは分からないが、緑羅がマリアを水中に引きずり込もうとしていることは分かる。
マリアは慌てて緑羅を振り払おうとマントによる一撃を繰り出すが、緑羅は左手で受け止め、更に腕を振るってマントに左手を巻き込んでしっかりつかみ上げる。
「この………!」
「さて……お前等装者は海の中でどれだけ戦える?」
そう言って、緑羅はさらに力を籠め、マリアを引きずるが、
「させ!」
「ないデス!」
上空からの声と気配に緑羅が顔を上げれば、こちらに向かって切歌と調の二人がシンフォギアを纏って勢いよく迫ってくる。
切歌が勢いよく鎌を振るうが、緑羅は即座にマリアから手を離すと、ガントレットでその一撃を防ぐ。
だが、その隙に調がアームから丸鋸を射出してくる。
緑羅は舌打ちすると同時に切歌を振り払い、丸鋸目掛けて口から熱線を放ち、全てを撃墜する。
そうしている間にマリアは緑羅から距離を取り、その隣に切歌と調が着地する。
「口からも熱線を放てるなんて……」
「本当に化け物………」
二人が先ほどの光景に戦慄していると、緑羅は苛立つように唸り声を上げながら彼女たちを睨みつけ、ガントレットを構え、臨戦態勢を整える。
それに対し、マリアと切歌もシンフォギアを構えるが、調はじっと緑羅を正面から見つめる。
「………なんだよ」
「………どうしても、細胞を分けてくれないの?」
調の言葉にマリアたちは小さく息を呑み、緑羅は忌々しそうに顔を歪める。
「本当に懲りないな……何度も言わせるな。意味ないんだよ。俺は誰も、救えないんだよ」
「そんな事ない。ちゃんと救われた人がいる………分かるでしょう?」
「……セレナ……か」
その言葉に調は頷く。
「そう……セレナは数年前、事故で植物状態になってしまった。そして少し前、遂に延命の甲斐もなく亡くなった………だけど、その時、貴方の細胞を移植したら、セレナは息を吹き返した。死者が蘇るという奇跡が、目の前で実現したの。貴方の細胞には、それだけの力があるの。壊すだけじゃない……人を癒す力が」
調は必死に、僅かな可能性に縋る様に緑羅に言葉を投げかける。
ああ、なるほど。確かに、目の前でそんな事が起これば、奇跡を信じたくもなるだろう。だが、だが………
「………まだ細胞が眠っているだけだ」
その言葉にマリアたちは訝しげな表情を浮かべる。
「時期に細胞が目を覚ます。そうなれば、即座に細胞はセレナを蝕む。そうなればあいつは……」
「それって、拒絶反応の事?それなら大丈夫。それを抑える薬があって、それを投与しているから……」
「くどい!」
語気を強めて緑羅が吠え、マリアたちは息を呑む。
「いい加減に目を覚ませ。お前たちが見ているのは
そして緑羅はガントレットを構え、マリアたちを睨みつける。マリアたちもこれ以上は交渉の余地なしと判断したのか、シンフォギアを構える。
両者が睨み合った時、不意に緑羅はん?と訝しげに眉を顰め、調を見つめる。
不意に見つめられ、調もまた訝しげな表情を浮かべる。
緑羅が不機嫌そうに唸り声をあげていると不意に彼は目を見開き、バッと振り返り、視線は響とクリスが残っている橋の残骸に向けられる。
「くそ………やられた……!」
視線の先の橋では、青白い炎が立ち昇っていた。
という訳です。この作品のセレナは死んだのではなく、植物状態で暫く生きていたという設定です。G編直前に死亡し、G細胞を投与されたという感じですね。