戦姫絶唱シンフォギア 王を継ぎし者   作:夜叉竜

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 すいません、最後にちょいと書き忘れた物がったので付けたし、投稿し直します。

 それよりも、ゴジラの予告編、ようやく来ましたね。ずっと待ってたよ……でも、あのゴジラ、いったい何なんだ……熱線が拡散……いや、それは防いで拡散したで納得できるが……その後に明らかに軌道が曲がってるよね………しかもその後に放った熱線、口を開いてすらいなかったよね?もう、あのゴジラ、最終的にどうなるんだろうか……


無印
1-1


 「ねえねえ知ってる?」

 「何を?」

 「ここ最近話題になってる都市伝説の事」

 「都市伝説?またそんな……どうせ噂なんだから真に受けないほうが……

 「それがね、この都市伝説、目撃者が大勢いるんだよ。しかも証言のほとんどが同じだし、実際に撮られた動画も上げられてて、かなり信憑性があるんだよ」

 「へぇ……ちなみにどんな内容なの?」

 「黒い魔獣って言うんだ」

 「黒い魔獣?」

 「何でも、ノイズが現れると、どこからともなく全身真っ黒の恐竜みたいな怪物が現れて、ノイズに襲い掛かってそのままノイズを食べちゃうんだってさ」

 「ノイズを食べちゃう?いくらなんでもそんなのありえないよ」

 「だけど、実際に見た人がいるんだって。魔獣がノイズに噛み付いて、食い千切る所を」

 「嘘でしょ……ノイズを食べちゃうなんて……そんな怖いのがいるなんて……」

 「だけどさ、何か人間を襲ったりはしてないみたいだよ?そんな噂聞いたことないし、むしろ人間からノイズを遠ざけようとした事もあったみたい」

 「そうなの?だけどさ……やっぱり怖いよね……そんな怪物がいるなんてさ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジュウジュウという耳に嬉しい音と共に周囲にはソースが焦げる香ばしいにおいが立ち込め、緑羅は目の前で焼かれていくお好み焼きを瞬きもせず凝視し続ける。

 

 「そんなふうに見なくてもお好み焼きは逃げないよ?」

 「そうは言ってもね……こういうのを目の前でやられてみるなって方が無理だよ」

 

 お好み焼きを焼いている店主のおばちゃんの言葉に緑羅は小さく鼻を鳴らしながら答え、それを聞いたおばちゃんは小さく苦笑を浮かべ、お好み焼きを焼いていく。そしてそれを緑羅は再び凝視していく。

 それから少しして、

 

 「はいよ。豚玉大盛、お待ち!」

 

 おばちゃんは焼き上がったお好み焼きを緑羅の前にドン!と置く。熱せられた石皿に乗せられたそれは熱々で鰹節なども加えられて香ばしいにおいをさらに強くさせ、緑羅はぺろりと唇を舌で湿らせると、いそいそと箸を手に取り、

 

 「いただきます」

 

 そしてお好み焼きを切り取り、そのまま口に放り込み、咀嚼していく。普通の人間なら間違いなく口の中を火傷するであろうが、緑羅はそんな様子もなく、熱を逃がしもせずにもぐもぐと咀嚼していく。

 

 「う~~~ん……うまいなぁ……生地はふわふわで表面はカリッとしていて、キャベツは甘い。豚肉も甘みがあって、ソースが香ばしくマヨネーズがちょうどいい。本当にうまいよ」

 「そうかい。そう言ってくれると嬉しいね」

 

 おいしそうに緑羅がお好み焼きを食べているのをおばちゃんは嬉しそうに見つめている。

 緑羅はそのままお好み焼きを瞬く間に完食すると、荷物から財布を取り出し、代金ぴったりのお金を取り出す。

 

 「ごちそうさん。また来るね」

 「はいよ」

 

 代金を払い終えた緑羅はそのままお好み焼き店、ふらわーから出ると、日が落ち始めた空を見上げ、むふーとソース臭い息を吐き出す。

 

 「いや~~~うまかった。全く……あいつらも俺の事なんて諦めて、ああいうのを追えばいいのに」

 

 緑羅はやれやれと言うようにため息を吐くと荷物をよいしょを背負い直す。

 あの後、下水道に逃げた緑羅はそのまま下水道の中を進んでいき、たぶんだが丸一日ぐらいだろう。それぐらい歩き続けてからようやくマンホールから外に出ると、そこは緑羅が拠点にしていた町とは違う町だった。いつの間にかこんなにも離れていたとは……

 とはいえ、次の緑羅の行動は決まっている。彼は即座にその町の銭湯に飛び込む。下水道の中を長い間移動していたのだ。臭くて臭くてたまらない。銭湯で体を奇麗にして、服は全て焼き払って新しいのにしてようやくすっきりした。

 その後、緑羅は数日この町に滞在して、あの男たちが来ないことを確認してからようやく振り切ったと安堵したものだ。

 だが、次の日にはあの連中が現れ、今度は長居せず、緑羅はさっさと町から電車に乗って別の場所に移動すると、そのまま彼は日本各地を旅した。

 目的は一つ。ノイズの調査だ。ノイズは時間も場所を選ばず現れるというが、緑羅はそうは思わなかった。あれほどの存在が無作為に現れるとは考えにくい。ノイズが現れる事には必ず何か理由があるはずだ。そう考えた緑羅は日本各地を旅し、ノイズを探し回ったのだ。

 結果、一年半の内に幾度となくノイズと遭遇できた。そして遭遇したときは容赦なくノイズを破壊しながらも、少しだけ残してノイズの動きを観察したり、ノイズがどこから現れるのか探ろうとしたのだが、その全てがうまくいかなかった。事前に聞いていた通り、ノイズは突如として現れ、人間に襲い掛かり、しばらくすればその体は勝手に崩壊していったのだ。これでは奴らの事を調べるなんてできない。しかも同じ地点に連続で現れることは稀だし、おまけにノイズと戦った後には必ずと言っていいほど連中が現れ、時には奴らが先手を打つこともあり、そういった時にはすぐに移動しなければならず、調査の進展は芳しくなかった。

 そうやって過ごしていたら、いつの間にか一年以上も経過してしまっていた。

 その一年の中で、色々なものが変わった。まずは緑羅の体だが、当然というべきか成長していた。身長は結構伸び、今は180cmに迫るほどだ。体つきもがっしりとしており、顔つきからは幼さは消えている。髪は背中まで伸びており、普段は首の後ろで無造作に三房に括っている。背中にはいつもの二つのバッグを背負っている。

 次に変わったのは響と未来との関係だろう。各地を旅する関係上彼女達とはあれ以来あってないのだが、こまめに電話して連絡の取り合いはしていた。

 それで、未来から聞いた話によると、あれの日以来、響へのいじめは完全に無くなったのだが、代わりに全員が彼女に腫れ物に触るような対応をし始めたのだという。どうやらあれで完全にいじめの主犯格たちは心が折れ、周りの連中も同じような目にあうことを恐れ、響との関わり合いを避けるようになったようだ。

 

 更に言えば、響の家族への仕打ちもかなり鳴りを潜めたようだが、その事を未来に聞かれた。どうやらその件も自分が何かしたと思われたようだがその件には緑羅には関わっていない。この事結局真相は分からずじまいだった。

 

 これは二人は知らないことだが、そうなったのはいじめの主犯格たちが原因だ。完全に心を折られた彼らは緑羅と言う存在を極度に恐れるようになり、すでに町にいないにもかかわらず、その存在に怯え、緑羅に目を付けられないようその原因を取り除いていたのだ。響の家の落書きを自分たちで消し、彼女達への中傷をやめるように訴え、結果今の状態になっていったのだ。皮肉かもしれないが、彼らの自己保身が結果的に響の状況改善に一役買ったと言えるだろう。とはいえ、それでも完全に元通りとはいかなかったようで、彼女の父親はどこかに消えてしまったようだ。

 また、最初こそ敬語だった二人だが、少ししてから敬語は消え、きやすい口調に変化していき、今では完全に友達と話すような口調になっている。緑羅としても堅苦しい口調と言うのはなんだかむずむずして嫌だったので全然問題はなかった。

 そんなこんなで1年以上電話でだが連絡を取り合い、交友を深めていた緑羅と響達だったが、少し前に彼女達から高校に進学し、寮住まいになったとの話を聞いていた。二人が通う学校はリディアン音楽院という音楽を勉強する場所らしい。

 それを聞いた緑羅は二人の新しい門出のお祝いにプレゼントでも送ろうとこうして音楽院の場所を調べ、やってきたのだ。プレゼント選びには苦労したなぁ、と緑羅は小さく苦笑を浮かべる。何せ生まれて初めての事だし、女の子の好みなんて一切分からない。そういうのを扱う店の中で延々と悩んだのも今はいい思い出としている。

 

 「さてと……さっさと行くか」

 

 時刻は夕方に差し掛かり、周囲はオレンジ色に染まってきている。つまりは下校時刻だ。となれば多くの生徒が帰宅しているはずだ。それを見つければ二人に出会うのはそう難しい事ではないだろう。今日会えなくても明日もあるのだ。のんびりとやっていこう。

 そう考えながら緑羅はのんびりとした歩調で町の中を歩いていたが少しして小さく眉を寄せ、次の瞬間、グルル、と忌々し気に唸り声をあげる。

 

 「全く……少しは空気を読め、ノイズ共……」

 

 そう吐き捨てると、緑羅はすぐに移動を開始する。それから少しして、空気中に煤が混じり始めていることに気付き、小さく唸る。

 そして視界の先にあの忌々しい雑音の姿を収めると、荷物を近くの民家の敷地に押し込むと、即座にその全身を変異させて勢いよく跳躍し、

 

 「邪魔なんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 咆哮と同時にガントレットを勢いよく落下の勢いも載せてノイズに叩きつけ、粉砕する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「指令!ノイズの反応の付近にビーストの反応が!」

 「!来たのか……」

 

 とある地下に存在する施設の中で、複雑な機械を操作するオペレーター達の言葉に赤いシャツを着た男は小さく呟いた。

 それと同時にその施設内に青い髪の少女が飛びこんでくる。

 

 「状況は?」

 「ノイズの近辺にビーストが出現、おそらく交戦しています。今は反応を絞り込み、位置の特定を急いでいます」

 「ビースト……」

 

 青い髪の少女はその名を呟くと同時に目を鋭く細める。

 ビースト。それは彼らが追っている存在のコードネームだった。まるで恐竜のような姿で、周囲への被害を顧みず暴れ、ノイズを粉砕するその姿は獣そのもの。故にビーストと名付けられていた。

 

 「それほど距離は離れていない………今度こそ接触するぞ」

 「「「はっ!」」」

 

 そうしてしばらくノイズの反応が映し出されているモニターを見ていた男は小さく眉を寄せる。

 

 「それにしてもこの動き……一部のノイズの反応が南下している……何かを追いかけているのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勢いよく振るわれたガントレットの爪がノイズを引き裂き、炭に変える。

 周囲を見渡して他にノイズの姿がないことを確認すると、緑羅は小さく唸り声をあげる。

 この辺り一帯のノイズは粉砕したが、他の場所にはまだいる。どうやら広い範囲に分散しているようなのだが、それにしては妙だ。これまでの連中は自分が暴れれば暴れるほどにどんどん自分の方に寄ってきていたのに、今はまるで離れるように移動している。

 緑羅は疑問に感じ小さく体を揺するがすぐに意識を切り替える。なんであれ、まだいるというのであれば叩き潰すだけだ。

 緑羅は即座にノイズがいる方向に向かって走り出す。一歩踏み出すたびにアスファルトにわずかに罅が入る。

 人気もなく、オレンジに染まった町中を走り続けていると、次第に周囲に景色が変わってくる。町から工場地帯に変わっていく。

 低く唸りながら走っていくとついにノイズの一団が見えてくるが、緑羅は盛大に舌打ちをする。その一団の前に人間がいたのだ。確認できるだけでも二人。一人は子供で、もう一人がおぶっている。どうやらノイズたちはあの人間達を追いかけていたようだ。

 緑羅はそれを見て一瞬小さく目を細めるも、すぐに加速し、彼女達との距離を詰める。

 少しして、彼女たちも自分に気付いたようで、二人して大きく目を見開き、顔を絶望に染め、子供の悲鳴が響き渡る。

 当然か、と緑羅は自分の姿を思い出して自嘲気味に口元を歪める。そうしていると、彼女は子供をかばうように抱きしめ、こちらに背中を向ける、おそらく、自分から子供だけでも守ろうとしているのだろう。

 ノイズがいるのに何をやっているんだ、と緑羅は呆れたようにため息を吐くと道路を砕きながら勢いよく跳躍するとそのまま彼女たちを飛び越えると、そのままノイズの一団にガントレットを勢いよく繰り出す。

 轟音と共にノイズが吹き飛び、さらに後続のノイズも巻き込んでそのまま煤に変える。それと同時にノイズの一団は緑羅を警戒するように動きを止める。

 その隙に緑羅はちらりと彼女……響と子供の様子を見るために彼女たちの方を振り返る。

 最後にあった時よりも大きくなった響は怯えるようにこちらを見つめているが、どうやら怪我はないようだ。子供の方も無事だ。

 その事に安堵した緑羅は視線をノイズに向け、殲滅しようとガントレットを動かし、一歩踏み出した瞬間、

 

 「緑羅……君……?」

 

 響がそう呟いた瞬間、緑羅は驚愕に目を見開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「緑羅……君……?」

 

 目の前に立つ異形を前にして響はそう呟いていた。

 今日は前から楽しみにしていたツヴァイウィングの新作CDの発売日だったから、放課後、親友の未来と別れて買いに行ったまではよかった。だが、その道中でノイズと遭遇、腕の中にいる迷子の女の子と一緒にノイズから逃げていたのだが、そうしているうちにノイズから逃れるためにシェルターから遠ざかってしまい、本当についていなかった。

 それでも諦めず、工場地帯を走っているときに、それは現れた。

 逃げる自分たちの正面からこちらに向かって走ってくる黒い生物。巨大な右腕に全身真っ黒のノイズとは違う化け物。

 それを見た瞬間、響は思わず絶望に顔を歪めた。あれが何なのかは分からないし、知らない。ノイズ以外にあんな化け物がいるなんて聞いたこともない。だが、一つだけ確かなことがある。あの化け物がノイズと一緒に襲い掛かってきたら、どうあっても助からない。

 ならばせめてこの子だけでも守ろうと、響は悲鳴を上げる女の子をぎゅっと抱きしめる。

 が、次の瞬間に響が感じたのは痛みでもなんでもなく、凄まじい力で何かが激突したような音だった。

 その音に恐る恐る顔を上げれば、そこには無数の背びれと長い尾を持ったあの黒い化け物の背中があった。化け物はまるでノイズから響達を守るように立っている。

 少しすると、化け物がちらりとこちらに顔を向けてくるが、その顔を見て、響は大きく息をのんだ。なぜなら。振り返った顔は半分が人間だったからだ。口周りは黒い皮膚に覆われ、口元からは鋭い牙が覗いている。だが、上半分は完全に人間だ。よく見れば、頭からも髪の毛のようなものも生えている。

 普通の化け物以上におぞましさすら覚える異形に響は怯えを隠せなかったが、それに気付いていないのか化け物は響と女の子を少し見つめると、まるで安堵するように目を細め、小さく頷く。

 その瞬間、響の中で、あの時の記憶が呼び起こされた。

 一年半前、まだ自分がライブの生き残りとして迫害を受けていた時、味方が未来しかいなかったとき、いきなり自分たちの前に現れ、助けてくれた少年。それ以来会ってはいないが、連絡だけは取り合っていた友人。

 その友人の顔と化け物の顔が重なって見えた。否、重なった瞬間、一年以上見ていない顔と化け物の人間の部分の顔が完全に重なり、確信した。

 ありえない。彼がこんな化け物であるはずがない。理性がそう訴えるも、それ以外の全てが確信したのだ。そしてそれに従うように響はそう呼んでいた。

 瞬間、化け物が驚くように肩を震わせ、こちらを振り返る。

 

 「な、なんで………」

 

 その口から洩れたのは聞いていた物よりも低く、しゃがれた声だったが、聞き間違えるはずがない。間違いなく、緑羅の声だ。

 

 「緑羅君……やっぱり緑羅君何だね!?」

 「な、なんで俺が緑羅だって分かった!?」

 「お姉ちゃん……?」

 

 化け物と知り合いの様に声を交わす響に女の子は不思議そう視線を二人に向けるが、緑羅を見ると怯えるように体を震わせる。

 

 「それは……」

 

 響が口を開こうとした瞬間、ノイズの咆哮が轟く。

 瞬間、緑羅は即座に前を向いて勢いよく右腕を薙ぎ、襲い掛かってきたノイズを吹き飛ばす。

 そのまま緑羅は右腕を前に突き出すと右腕から無数の機械のパーツのようなものが現れ、組み合わさり、巨大な恐竜の頭部のような形になる。

 

 「尻尾に捕まって!」

 

 その声に響は思わず女の子を抱えたまま緑羅の尻尾を抱き込むようにして捕まる。女の子も同じように尻尾に捕まると同時に右腕の頭部が口を開く。

 次の瞬間、背びれが発行すると同時に青白い熱線が放たれ、眼前のノイズ一気に焼き払い、吹き飛ばす。

 熱線の発射と同時に発射の衝撃が二人に襲い掛かるが、しっかりと尾に捕まることで二人はそれをやり過ごす。

 鈍い音と共に顎が閉じ、緑羅は小さく息をつく。衝撃に耐え抜いた響は顔を上げると恐る恐る前を見て息をのむ。先ほどまで大量にいたノイズの大半が焼き尽くされており、工場地帯の一角が大きく抉れてしまっている。

 だが、ほとんどのノイズが吹き飛ばされている。それを見た響は大きく目を見開くが、すぐに緑羅を見上げる。その眼には微かな希望があった。

 どうして緑羅がこんな姿になっているのか、どうしてノイズを倒せるのか分からないが、それでも分かることはある。このまま行けば自分たちは助かるかもしれないということだ。

 

 「まだ来るか………」

 

 だが、緑羅はまるで響の考えを否定するように忌々しげにつぶやき、それと同時に眼前に新たなノイズが現れる。

 響は小さく息をのみ、更に背後から聞こえてきた音に振り返れば、いつの間にか後ろにもノイズの一団が現れていた。

 

 「緑羅君……後ろ」

 「ああ、分かってる……」

 

 緑羅は忌々し気に顔を歪めながら右腕を構えるが、一瞬体を硬直させるとこちらを振り返り、自分の尻尾に視線を向ける。

 そこには怯えるように体を震わせながら尻尾を力強く抱きしめる女の子がいた。

 それを見た緑羅は小さく目を細めると、尻尾を動かして女の子を傍に持ってくると左手を伸ばし、その頭を優しくなでる。

 撫でられたことに気付き、女の子が恐る恐る顔を上げると、緑羅は小さく頷く。

 

 「大丈夫。君たちは絶対に守るから。ノイズになんか殺させない」

 

 普通、そんなこと化け物に言われても安心なんてしないだろう。だが、女の子はその言葉にまるで父親のような安心感を覚えていた。

 少女は小さく頷くと、恐る恐るとだが尻尾から手を放す。緑羅は自由になった尾を軽く動かすと顔を前に向ける。

 

 「二人とも、絶対に俺のそばから離れるな……絶対に助ける……!」

 

 そう言い、緑羅は構える。その背中からは自分たちを絶対に守るという意思が伝わってくる。

 その背中に響はこの上ない安心感を覚える。あの時と同じ、彼は自分を、自分たちを守ろうとしてくれている。その事実が響の諦めかけた心に灯をともす。

 

 「うん……信じるよ、緑羅君。私も諦めない……生きることを諦めない!」

 

 Balwisyall Nescell gungnir tron

 

 瞬間、戦場に歌が響き渡り、緑羅は小さく眉を動かす。それは後ろから聞こえてきたのだが、おまけにその歌声の主は響だ。

 緑羅は訝し気に眉を顰め、何をしてるんだと振り返った瞬間、響の胸から凄まじい光が放たれ、それは天に向かって高く伸びていった。

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