とある総統閣下の追悼で作りました。 わかる方は語り合いましょう。 分からない方でも泣ける話にはなったと思われます。
球磨ちゃんが主役の短編です。
少し重いです。 覚悟を決めてから読んでください。

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球磨提督と球磨の話。

「……あいつがいないと、意外と寂しいクマ」

 

たくさんある鎮守府の中の、とある鎮守府。

軽巡『球磨』は執務室の椅子に座っていた。

つい前まで、駆逐艦娘がはしゃいでいたり、どこかのロリコンが騒いでいたり、爆破オチしてたり。

そんな執務室も、今ではしんと静まり返っている。

もう、戻ってこないような気がして。

 

「……いや、戻ってこないクマ。 あいつは──もういないクマ」

 

球磨の左手の薬指の指輪が光る。

 

「……大丈夫?」

 

「……翔鶴。 まだ帰ってないクマ?」

 

この鎮守府の提督は、いない。

亡くなったのだ。

提督が亡くなると艦娘はその任を終え、個々のやりたいことをする。

私は、ここにいたいからここに残っているだけだ。

 

「球磨はここにいたいからここにいるだけクマ。 翔鶴も早く瑞鶴の所行ってやるクマ。 待ちわびているクマよ」

 

「瑞鶴も私も、ここに残りますよ」

 

「そうクマか……」

 

「では、失礼しますね」

 

翔鶴の閉じた扉の音が、やけに長く響いたように感じた。

執務室の窓からは夕日が差し込む。 球磨の左手の薬指を優しく照らす。

 

「……?」

 

ふと、執務室の机を漁ってみると。

1冊の手帳が入っていた。

「なんクマ、これ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その手帳に挟まれていたのは。

たくさんの『球磨』の写真と、1枚の手紙。

『球磨へ』、と書かれていた。

 

「……読んでみるクマ」

 

 

 

 

 

 

 

拝啓、球磨殿。

こんなチキンな形でごめん。 許してヒヤシンス。

多分、俺は死ぬ。

お前がそれを見ている時、俺は多分幽霊として化けているだろう。

それはともかく。

 

球磨ちゃん、お前は多分、ここを離れてどこか別の鎮守府でやっているか農村で生活しているかだろう。 それか川沿い。

それでいいのだ。 でも、時々でいい、俺のことを思い出してくれないか。

俺のことを思い出して嘲笑する程度でいい。

忘れないで欲しい。 俺のことを。

ずっと傍にいて欲しかった。

でも、不可能だった。

仕方の無いことだ。

だから、俺は先に行って上からお前を見守っているよ。

お前と過ごした日々、悪くなかった。

ありがとう。 そして、さようなら。

 

提督

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだクマ。 変な文書きやがって」

 

そう言って取り出した手紙の下に、更に写真が。

手帳にも何か書いてある。

 

「今日は球磨ちゃんとデート」

 

「今日は球磨ちゃんとケッコン」

 

と、そんなものが一行くらいで書いてある。

 

写真を見ると、そこには球磨と提督の写真がたくさん、詰まっていた。

アイスを食べる球磨、一緒にマリカーを楽しむ提督と球磨、工廠で祈りを捧げる提督、うたた寝をする球磨。

 

「……!」

 

なんだ、提督。

驚かせるなよ。

なんでグラフィック変わったからって叫んでるんだよ。

そこにいたんじゃないか。

ずっと、目の前に。

 

「提督! 驚かせるなク……マ……」

 

誰も、いなかった。

誰も。

その時、色々な光景がフラッシュバックする。

執務室で叫ぶ提督。

工廠で祈りを捧げる提督。

作戦を練っている提督。

マリカーの練習をする提督。

真剣衰弱でメモを取る提督。

一緒にうたた寝をしていた提督。

指輪をくれた提督。

ずっと使い続けてくれた提督。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私を、抱きしめてくれた提督。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……ぅぅ……ぁぁぁ……!!」

 

気がつくと、私は泣いていた。

誰もいない執務室で。

提督の愛用していた机を涙と鼻水の混合物でめちゃくちゃにしながら。

 

「バカ……バカ……!! 提督は……人のことを考えない……自分勝手クマ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、球磨は泣いて泣いて泣きまくった。

提督の葬式の時も、火葬をされる時も、一切泣かなかった球磨が。

何かの枷が外れた結果であった。

それから、半年後。

 

 

 

 

 

 

 

「球磨! よくやった!」

 

「意外に優秀な球磨ちゃんってよく言われるクマ」

 

意外に優秀な球磨ちゃん。

あいつも同じこと言ってたな。

あれからあの鎮守府には新しい提督が着任した。

前の提督よりも資材の使い方がわかっている人だった。

 

「ところで、いつも左手の薬指に付けている指輪は誰の?」

 

「あぁ、これクマか?」

 

彼女は微笑んで、こう言った。

 

「球磨の……守り神クマ」


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