「そういえば、達也くん。一つ聞きたいことがあるのだけど。」
達也は、深雪の練習の為に九重寺を訪れていた。そんな中で急に、九重に問いかけられた達也は怪しんだ。
「…何ですか?」
「達也くんの周りに影のものがいるね。」
「もしかして、テツヤさんの事ですか?」
「深雪!」
「!?」
「そっかテツヤくんって言うんだ。」
達也は深雪に注意するが、時すでに遅し。達也からすれば、九重は武術の師匠ではあるが、潜在的には強力な敵にもなりえる。そんな人物に四葉の影の切り札といえるテツヤを知られるのは痛かった。そんな達也と裏腹に深雪の言葉を聞いた九重は心底愉快そうだ。
「…いや、僕でも存在しか掴めなかったんだよ。その子すごいね。隠形の才能は僕を超えているよ。」
そのうち僕超えるのかなと冗談めかしながらけれけれと笑う九重を前に、達也は重く口を開いた。
「何が聞きたいんですか?」
「…実はね、彼をここに連れてきてほしいんだよ。そして彼と話してみたいんだ。」
「!!」
九重の言葉に深雪は顔を青ざめた。
「要件をお聞きしてもよろしいですか?」
「達也くんにいう必要があるのかい?」
達也は深雪の様子を気にしながらも九重と静かに視線をぶつけた。しかし、やがて。
「…いえ、わかりました。彼に伝えておきます。」
「そうしてくれると助かるよ。確実に彼に伝えてね。」
達也は九重に敗北した。
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「そうですか。九重八雲先生が僕に会いたがっているか。」
「…本当に申し訳ありません、私の不注意で。」
テツヤの呟きに、深く謝罪した。
「いいえ、深雪さんのせいではありません。僕の存在を嗅ぎつけられた時点で僕の負けです。流石は九重先生です。隠形には結構自信があったのに。」
テツヤは悔しそうな顔を浮かべた。彼は決して深雪を責めたりはせず、未だ自分が勝てない人物を知って世界の広さをあらためて感じた。
「お詫びに私にできることはありませんか?」
「うーん、そうですね…。あっ、では一つだけ約束してもらってもかまいませんか?」
その内容はありふれたものであったため、深雪にとって無理難題というわけではない。むしろ、都合がいいかもしれない。
「そんなことでいいんですか?」
「はい、僕にとっては嬉しいことです。」
テツヤの表情は年相応に眩しく見えた。
「そういえば、達也くんが九校戦のエンジニアに選ばれたと聞きました。一年生ですごいですね。いえ、当たり前というべきですか。」
「はい、そうなんです。お兄様がサポートしてくださるので、安心して九校戦に臨めます。」
深雪は体全体から喜びが溢れているようだった。テツヤは微笑ましく思い、会話を続ける。
「良かったですね。確かに達也くんの技能ならば、鬼に金棒ですね。」
「まあ、それは私が鬼ということですか。」
深雪はテツヤの失言に冗談めかしく追及する。
「いつも深雪さんは妖精のように美しいですが、九校戦では鬼以上の存在になりそうですね。例えば、女神様のような。他校がかわいそうに思えてきました。」
「…さすがにそこまでは。」
とはいえ、深雪にテツヤを参ったとさせるのはまだ難しいようだ。
「ですが、九校戦は何があるかわかりません。気を引き締めていきましょう。」
「はい!」
そして、二人は九校戦に向け、準備を進めていった。
のんびり更新していきたいです。