1
燃え盛る炎。
生命のある物、その全てが、地獄の業火によって包まれていく。
街が、
否、
世界の全てが、炎によって朽ち、呑み込まれていく。
話は、初めのレイシフト、特異点Fでの戦いまで遡る。
セイバーとの死闘、レフ・ライノールの裏切りと、オルガマリー・アニムスフィアの死、バーサーカーの襲撃からカルデアの撤退に至った。
そして今、
この戦場、
いや、この滅びた世界の中でただ2騎のみ、生き残った英霊達の戦いもまた、終わろうとしていた。
地鳴りのような足音を立て、迫りくる小山の如き
ギリシャが誇る大英雄ヘラクレス。
狂ってはいても、その圧倒的な存在感と戦闘力は健在。
対して、
膝を突き、崩れ落ちたのは
彼はカルデア一行を逃がす為、あえて殿に立ったのだ。
その彼の戦いも今、終わろうとしていた。
「・・・・・・・・・・・・ここまで、か」
アーチャーは自嘲気味に笑う。
こうなる事は、判っていた。
勝敗など、初めから度外視している。
そもそも崩れかけた霊基を引きずる弓兵と、宝具の影響で万全の状態を保っている狂戦士では、端から勝負になるはずも無かった。
それでも、アーチャーは善戦した。
自身の持つ戦力を最大限に使い、残り11個あったバーサーカーの魂を、3つまで削る事に成功していた。
バーサーカー自身、シャドウ・サーヴァント化の影響によって若干の弱体を余儀なくされているとはいえ、破格の大戦果には違いなかった。
だが、そこが限界だった。
力尽きたアーチャーは、もはや消滅を待つばかりの存在。
対して、バーサーカーは万全の状態で迫って来る。
既に勝敗は決していた。
「まあ良い・・・・・・時間は稼いだ」
そもそもアーチャーの目的はバーサーカーを倒す事ではなく、カルデア一行を逃がす事にある。
彼らが既に、この世界から退避した以上、もはや彼の役割は終わっていた。
眦を上げ、自らに迫る死を見据える。
斧剣を振り翳すヘラクレス。
あの巨大な塊が振り下ろされた瞬間、アーチャーの存在は無に帰すことになるだろう。
だが、それで良い。
もう、自分にできる事は何も無いのだから。
スッと、アーチャー目を閉じた。
本当に、それで良いのか?
それは、己の内から湧いてきた言葉。
馬鹿な。
未練などない。
何も。
そう考えたアーチャーの脳裏に、
2人の子供たちの顔が浮かぶ。
響、
そして美遊。
ここではない、別の場所で、彼にとって「弟」と「妹」だった子供達。
自分が今、ここで倒れたら、誰があの子たちを守ってやれる?
勿論、あの子たちは強い。自分たちの身は自分たちで守れるかもしれない。
だが、今はどうだ?
巣立ったばかりの雛鳥がしっかりと飛べるようになるまで、ほんの少しの間だけで良い。見守ってやる存在が必要ではないのか?
ならばッ
眦を上げる。
僅か、
ほんの僅かな間だけで良い。あの子たちを見守る時間が欲しい。
その後、たとえ闇の底へ落とされようとも後悔はしない。
迫るヘラクレス。
その巨大な斧剣を前にして、ただ一心に願う。
次の瞬間、
奇跡は起こった。
アーチャーの願いに呼応するように、その体が光り輝く。
思わず、大英雄もたじろく中、
弓兵の姿は一変する。
体つきは一回り小柄になり、顔つきには少年らしいあどけなさと精悍さが同居してる。
黒いボディーアーマーに赤い外套と言う姿こそアーチャーと同一だが、その外見は明らかに若返っていた。
何より、
漲る魔力が、それまでの死に体の印象を拭い去るように輝いていた。
見上げる眼差し。
次の瞬間、
「
手にした双剣の輝きが、大英雄を鋭く切り裂いた。
2
カルデアのコントロールルームでその光景を見ていたロマニ・アーキマンは、緊張した面持ちで嘆息する。
弟を、妹を、仲間達を守る為、
これまで頑なに隠し続けてきた正体を、ついに晒した彼。
しかし、
それは同時に、彼自身が持てる時間が、尽きようとしている事をも意味していた。
そう。
彼に残された時間は少ない。
砂時計の砂は、まもなく落ちる。
だが、
それでも彼は迷わなかった。
自分の大切な物を守る為、悪である事を選んだ彼は、最後の瞬間まで、彼自身の在り方を貫こうとしていた。
対して、
ある意味、彼の「共犯」とも言うべきロマニには、ただ祈る事しかできない。
せめて、
せめて彼が、自分に悔いの無い戦いを全うできる事を。
「頼んだぞ・・・・・・士郎君」
2
風が、吹いている。
否、
実際には吹いていないにも関わらず、その場にいた全員がそう錯覚した。
少年が1歩、歩くたびに、全てを覆いつくすように強く吹き付ける。
いったい、何が起きたのか?
その場にいた、殆どの人間が、理解できずにいる中、
少年は、自分の守るべき物を守る為、1人、戦場に立つ。
漆黒のボディアーマーに深紅の外套。
決して大柄と言う訳ではないにしろ、引き絞ったような印象のある四肢。
若く精悍な顔はしかし、左目を中心に褐色に染まっているのが見える。
しかし、
静謐な雰囲気。
場を圧倒するほどの存在感。
その様、
まさに威風堂々。
「士郎・・・・・・・・・・・・」
「ウソでしょ・・・・・・お兄ちゃん?」
反応したのは、衛宮姉弟だった。
衛宮家の長兄。すなわち、クロエや響の兄にあたる人物。
否、
より正確に言えば、「彼らの兄と同一の存在」と言うべきか。
呼ばれた士郎は、弟妹達に向かって頷きを返す。
「クロ、響・・・・・・・・・・・・」
言ってから、
士郎はもう1人、
彼等と共に立つ、白百合の剣士へと目を向けた。
「それに、美遊も・・・・・・・・・・・・」
「え?」
名前を呼ばれ、美遊は声を上げる。
目の前に立つ人物。
かつて、冬木市で出会った
彼がなぜ、自分の事を知っているのか?
戸惑う美遊に微笑みかけると、
「後は、任せろ。全部、俺が終わらせてやる」
士郎は前へと出る。
その背中。
どこか寂寥感を漂わせた士郎の背中を、美遊は黙したまま見つめ続ける
なぜ、あの男の人は、自分の事を知っているのだろう?
美遊は、士郎と会った事など無い。全くの初対面である。
だが、なぜだろう?
あの、どこか寂しそうな、それでいてある種の信念を宿したような背中には、見覚えがあるような気がした
足を進める士郎。
その冷ややかに闘志を秘めた視界の先には、
待ち受ける、アヴェンジャー、キャスター、アサシンの3騎。
そして、
聳え立つ魔神柱バルバトス。
先の士郎の奇襲によって大ダメージを受けた魔神柱は、今は沈黙している。
複数ある複眼も、今は荒い呼吸をするように明滅するのみだった。
彼の魔神の回復力を考えれば、沈黙は一時的な物に過ぎないだろうが、時間を稼ぐ事は出来た。
ならば、あとやるべき事は決まっている。
魔神柱を葬る。
邪魔する者も斬り捨てる。
単純明快、至極、判り易かった。
「聞いた事があります」
自身に向けて歩いてくる士郎に対し、アヴェンジャーが言葉を投げかける。
どこか嘲りを籠らせたような言葉は、明らかな悪意を含んで弓兵に叩きつけられる。
「人類の想念。破滅を回避する為に設定された無意識の集合体、抑止力『アラヤ』」
人間に意思があるように、星にも意志と言う物は存在している。
一つは、人類が持つ、無意識の集合体。破滅回避のための祈り。霊長の抑止力「アラヤ」。
今一つは、星自体が生命延長を目指す際に現れる星の抑止力「ガイア」。
この2つである。
「そのアラヤに囚われ、さながら奴隷の如く使い潰される、守護者と言う名の掃除屋がいると」
アラヤとガイアは本来、似て異なる物。
アラヤがあくまで人類を守る為に存在しているのに対し、ガイアは星に住まう生命を守る為に存在している。
要するに、ガイアが「人類は地球の生命維持にとって害悪である」と判断した場合、星自体が人類排除に動く可能性もある、と言う事である。
とは言え、人類は地球上における最多の生命であり、文明の頂点に立っている。これらの事を鑑みれば、人類の滅亡は、生命崩壊につながりかねない。よって、ガイアによる人類排除の可能性は、少なくとも現状においては低いと言える。
話を戻す。
人類にとって、破滅が迫ったと判断された場合、アラヤはしばしば「抑止力」と言う形で状況に介入する場合がある。
しかし大抵、抑止力は目に見えにくい形で発動される。
例えば、とある街の一角で人類の大半に被害を及ぼすような活動が行われていたとして、たまたま、近くに住んでいる住人が異変に気付き通報、企みは露見し、公的機関によって阻止される、と言った具合に。
抑止の介入とは本来、こうした「運命操作」的な面が大きい。そして抑止の遺志を受けて動いた人間(上記の例の場合、異変に気付いた住人)は、自分が世界を救った事にすら気付かず、元の日常に戻って行く事になる。
しかし、
それでも尚、運命操作程度では破滅回避が難しいと判断された時、
このままでは確実に人類が滅びると判断された時、
抑止力は「守護者」と呼ばれる存在を召喚する事になる。
あらゆる障害を排し、破滅を確実に回避する為に顕現する存在。抑止力が打つ最後の手段。それが守護者と言う訳である。
状況が最悪となる前に原因を排除し、全てを「無かった事にする」守護者は、時に「掃除屋」の蔑称で呼ばれる事もある。
「今更、あなたのような『掃除屋』如きが介入してどうしようと言うのです? あなたが来たところで、人類の滅びは止められませんよ」
嘲笑するアヴェンジャー。
確かに。
今更、士郎にできる事は少ないだろう。守護者とは言え、たかだか1人の英霊が出てきたところで今更、人理焼却の流れを覆せる物ではない。
士郎の存在は、既に無用の長物にも等しかった。
対して、
「・・・・・・・・・・・・ああ、そうだな」
士郎は静かに言いながら、
しかし、歩む足は止めない。
アヴェンジャーの言葉は正しい。
確かに、事がこの段階になった以上、自分にできる事は少ない。
何より、自分には時間がないと来た。
「けどな」
その手に、握られる剣。
白剣「莫邪」、黒剣「干将」。
「だからどうした?」
その切っ先を、真っすぐに向ける。
「お前等を斬るのに、何の支障もない」
冷ややかに、
しかし確固たる信念と共に告げられる士郎の言葉。
次の瞬間、
複数の剣が、空中に一斉に出現。その切っ先をアヴェンジャー達に向けた。
身構える3騎。
対抗するように、士郎もまた身を低く構えて、疾駆するタイミングを計る。
次の瞬間、
一斉掃射が開始された。
3
飛んで来る無数の剣。
その切っ先が迫った。
次の瞬間、
「まったく・・・・・・・・・・・・」
呪符を構えたキャスターが、前へと出る。
投擲された呪符が空中に展開。障壁を展開する事で、刃を防ぐ。
「次から次へと・・・・・・面倒。さっさと、消えて欲しい」
嘆息するキャスター。
呪符は風に舞うようにして空中に並ぶと、内部に充填された魔力を解放。不可視の障壁を創り出す。
そこへ、殺到してくる剣の嵐。
彼女の展開した障壁は、士郎の攻撃を完全に防ぎ止める。
かに見えた。
「え・・・・・・・・・・・・」
驚愕するキャスター。
その彼女が見ている前で、
障壁が一瞬にして歪みを見せる。
「馬鹿、なッ!?」
気だるげな態度が多い魔術師が、
この時、明確に焦りの声を発した。
次の瞬間、
キャスターが張り巡らせた障壁が、音を立てて突き破られた。
驚愕するキャスター。
「ッ!?」
迫る刃の切っ先が、キャスターに対し指呼の間に迫った。
とっさに、後方に跳躍して回避するキャスター。
同時に、新たな呪符を取り出して魔力を込める。
投擲する体勢を取るキャスター。
だが、
「なッ!?」
巫女服女の目が、大きく見開かれた。
その、
眼前へ迫る弓兵。
振るわれる、黒白の剣閃。
刃が交錯し、巫女服の魔術師を真っ向から切り裂いた。
「あ・・・・・・・・・・・・」
力を失い、崩れ落ちるキャスター。
「おのれ、よくもッ!!」
キャスターを撃破した士郎に対し、アヴェンジャーが刀を振り翳して迫る。
更に、
「フフッ 面白くなって来たじゃないのッ!!」
斬り込むアヴェンジャーを援護するように、手にした鞭を振るうアサシン。
対して、
士郎は倒れたキャスターから目を放して振り返る。
士郎は手にした干将と莫邪を、空中に向けて放り投げる。
そこへ、刀を振り翳したアヴェンジャーが斬りかかった。
対して、とっさにその場から飛びのいて回避する士郎。
同時に、新たな干将、莫邪を投影。
着地と同時に構えを取る士郎。
そこへ、アサシンが襲い掛かる。
「さあ、あなたの鳴き声を聞かせなさい!!」
変幻自在に襲い来る鞭。
だが、
次の瞬間、
アサシンは気付いた。
後方から自身に向かってくる風切り音に。
「なッ!?」
とっさに振り返った先で見た物は、
自身に向けて、回転しながら向かってくる、干将と莫邪。
黒白の刃を見て、仮面の下でアサシンの顔が引きつる。
干将と莫邪は二刀一対の夫婦剣。
一方を投擲しても、もう一方に引き寄せられて、必ず対になる性質がある。
士郎は、その性質を利用し、剣を投擲したと見せかけて、アサシンの動きを先読みし、背後から奇襲を掛けたのだ。
「クッ!?」
とっさに、鞭を振るい、干将と莫邪を払いのけるアサシン。
彼女の命を奪うはずだった刃は、虚しく地へと落ちる。
「フンッ この程度で・・・・・・・・・・・・」
嘲笑を吐きかけて、
アサシンは言葉を止めた。
目の前にいたはずの士郎が、
いない。
振り仰いだ先に、彼女が見た物。
それは、
自身に向けて鏃を構えた、弓兵の姿だった。
「
静かな呟きと共に、放たれる
着弾と同時に介抱された概念が炸裂し、周囲一帯を巻き込む大爆発が発生する。
巻き込まれたアサシンもろとも、踊り狂う爆炎。
だが、
吹き上がる炎を突き破り、
アヴェンジャーが刀を振り翳して迫る。
対抗するように、干将と莫邪を投影して応戦する士郎。
互いの剣閃が交錯し、火花は四方に飛び散る。
一撃の重みを剣閃に乗せて鋭い奇跡を放つアヴェンジャー。
対して士郎は手数に任せて、変幻自在な斬撃を繰り出す。
士郎とアヴェンジャー。
互いに一歩も譲らずに、応酬を繰り返す。
「フッ」
短い呼吸と共に、両手の剣を同時に繰り出す士郎。
対して、
アヴェンジャーは、真っ向から刃を振り下ろし、士郎へと斬りかかる。
とっさに、双剣を交錯させて防ぎにかかる士郎。
だが、
立ち上がりを制された士郎の体勢が崩れる。
「クッ!?」
腕に力を籠め、アヴェンジャーの剣を弾こうとするが、それよりも先にアヴェンジャーが斬り返してくる。
下段から、擦り上げるように迫る刀。
対して、
士郎は剣を繰り出して防ぐだけで精いっぱいだった。
士郎の両手から、黒白の双剣が弾き飛ばされた。
完全に無防備になる弓兵。
対して、
薄く笑う復讐者。
ここは完全に、剣の間合い。
そして、
アヴェンジャーは既に、剣を振り被っている。
「さあ、これで、今度こそ終わりですッ!!」
叫びながら、
士郎目がけて、刃を振り下ろした。
次の瞬間、
手を振り翳す士郎。
その両手に握られた物。
目を見開く、アヴェンジャー。
「銃、だとッ!?」
士郎の手に握られた物は、黒白の双剣ではなく、同色の銃。
大ぶりな銃身を持つその銃は、銃身下部に大型の刃が付属しており、剣としての使用も可能である事を示している。ちょうど片手で扱える銃剣のようだ。
火を噴く、二丁拳銃。
だが、アヴェンジャーもさる物。
とっさに超反応を示すと、士郎の銃弾を回避し、己に対して真っすぐ飛んできた弾丸を刀で斬り捌く。
至近距離からの銃撃だったにも関わらず、士郎の攻撃はアヴェンジャーに当たらなかった。
だが、
息をつくのは、まだ早い。
迫る士郎。
その手に握られているのは、「黒白の薙刀」。
銃同士の把手同士を噛ませ、連結剣にしたのだ。
この動きに、
「クッ!?」
さしもの、アヴェンジャーも対応が追い付かない。
薙刀を両手で回転させ、振り翳す士郎
次の瞬間、
アヴェンジャーの体は、斜めに切り裂かれた。
英霊エミヤ
その存在は衛宮士郎が理想を追い求めた末に到達した未来の姿であり、アヴェンジャーが言った通り、人類破滅の危機が迫った時アラヤによって召喚される「守護者」と呼ばれる存在の1騎である。
もっとも、今目の前にいる衛宮士郎は、厳密に言えば「エミヤ本人」ではなく、ある理由からその霊基と起源、更には魔術回路まで先取りして英霊化存在であるのだが。
また、英霊エミヤ自身もまた、1人ではない。
数多ある並行世界に存在する多くの衛宮士郎。
ある時は理想の果てを追い求め、
ある時は理想を捨てて失墜し、
またある時は、理想の実現が不可能になっても尚、足掻き続けた。
そうした数多の「エミヤ」の力と記憶を受け継いだ存在。
それこそが今、目の前に立ち続けている衛宮士郎に他ならなかった。
その士郎は、アヴェンジャーを斬り倒した後、舌打ちするように顔を歪めながら、胸に手を当てていた。
「・・・・・・・・・・・・まだ、行けるか」
自分に残された時間は時間は、あとどれくらいだ?
10秒か? 5秒か? それとも1秒か?
それでも良い。その1秒に、命すらかけて見せる。
決意も新たに、眦を上げる士郎。
だが、
「クッ・・・・・・クックックックックック・・・・・・」
突如、聞こえてくるくぐもったような声。
振り返れば、膝を突いたアヴェンジャーが、不敵な笑みを浮かべて士郎を見据えていた。
その肩口からは、士郎に斬られた傷口から鮮血が溢れているのが見える。
致命傷ではないようだが、かなりの深手なのは間違いなかった。
「・・・・・・何が可笑しい?」
「いや、これは失礼」
言いながらも、笑みをやめないアヴェンジャー。
その双眸に映る、士郎に対する侮蔑と、自身の勝利への確信。
「あなたのマヌケぶりが可笑しくて、つい、ね」
言いながら、
アヴェンジャーが指示した先。
そこには、
先の士郎の奇襲によって受けた傷が癒え、完全な姿を取り戻した、魔神柱バルバトスの姿が見えた。
「我々に時間を掛け過ぎましたねッ 魔神柱が復活した以上、もはやあなたに勝ち目などありませんよ!!」
アヴェンジャーが哄笑を上げる中、
魔神柱は再び複眼を開き、砲撃を再開する態勢に入る。
その様を見て、アヴェンジャーは更に笑い声を立てる。
「あなたの負けですッ 抑止の守護者!!」
勝ち誇るアヴェンジャー。
そして、
「これで終わりだって、誰が決めたんだ?」
次の瞬間、
士郎の内から、爆発的な魔力が放出された。
同時に、
ここに至るまで続けられてきた詠唱が、完成される。
「おのれッ・・・・・・ッ!?」
どうにか詠唱を阻止しようと、立ち上がりかけるアヴェンジャー。
だが、士郎によって付けられた傷から激痛が走り、その動きが止まる。
次の瞬間、
世界は、
一変した。
見渡す限り、覆いつくす吹雪の雪原。
その下で、無数の墓標の如く、地に突き立てられた剣の数々。
「固有・・・・・・結界?」
呻くアヴェンジャー。
個と世界、空想と現実、内と外を入れ替え、心の在り方で世界を塗り潰す魔術の最奥。
今までも、響やバベッジなど、一部のサーヴァント達が固有結界を使う事はあったが、それらは全て限定的な物であり、このように完璧な形で固有結界を使って見せた者はいなかった。
「い、いったい、何をする気だ!?」
狼狽しながらアヴェンジャーが叫ぶ中、
士郎は、地に突き立てられた剣の群れには一切目をくれず、
ただ一振り、己の求める剣に想いを向ける。
ただ一振り、
空中に突き出し、自らの手に握られた剣のみを掴み取る。
黄金の刀身を持つ剣。
星に危機が迫りし時、初めて振るう事が許される最強の聖剣。
そして、
士郎にとっては、かつて自らの運命を斬り拓いた一振り。
例え投影によって造られた複製品であったとしても、その存在には聊かの陰りも無い。
迸る莫大な魔力が、黄金の輝きを放つ。
猛禽の如き瞳が見据える先に、
そそり立つ、おぞましき魔神。
この世にある事は許されない。
自らの大切な物を守る為、
全ての元凶を排除する。
聖剣を振り被る士郎。
アヴェンジャーが阻止しようと立ち上がるが、
もう、遅い。
「
閃光が強烈な破壊を伴って迸る。
黄金の光は、
やがて魔神柱を捉え、
そして容赦なく呑み込んでいった。
第18話「兄」 終わり
インド了
今回はどうにか、ノーコンテで終わらせる事が出来ました。前回の秦が「朕」「グッちゃん」「腕4本の人」「老師」のせいでボロボロだったのとは偉い違いです。
えっちゃん、アナちゃん、北斎が活躍してくれました。