Fate/cross wind   作:ファルクラム

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第9話「其れは可憐なる華の如く」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、圧倒的な暴風と言ってよかった。

 

 巨獣の如き体躯を持つ大英雄は、手にした斧剣を振り翳して、一同を踏みつぶさんと襲い掛かってくる。

 

 迎え撃つのは、3騎のサーヴァント達。

 

 数の上では勝っている。

 

 しかし、こちらは既にセイバー戦で満身創痍の状態。

 

 3人の力を合わせたとしても、バーサーカー1人に対抗する事も出来ないだろう。

 

 だが、

 

 それでも、

 

 彼らの背後にはマスター達がいる。

 

 退くわけにはいかなかった。

 

「行きますッ!!」

「んッ」

 

 迫りくる巨大な影を前にして、マシュとアサシンが前へと出る。

 

 同時に、彼らの背後でクー・フーリンが空中にルーン文字を描き、魔術を発動させる。

 

 踊る爆炎。

 

 立ち上る巨大な炎は、迫りくるバーサーカーを覆いつくす。

 

 並の敵なら、これで片が付く。サーヴァント相手でも、威力としては十分すぎるほどだ。

 

 だが、

 

「チッ ダメかッ!?」

 

 自ら行った攻撃の結果を見て、舌打ちするクー・フーリン。

 

 彼の放った魔術は、全てバーサーカーの体表に弾かれ霧散してしまっていた。

 

 それどころか狂戦士は一切速度を緩めずに、こちらへ向かってきている。クー・フーリンの魔術は、バーサーカー相手には目晦ましにもなっていなかった。

 

 判ってはいたのだ。

 

 あのバーサーカーは規格外の強さを誇っている。並の攻撃ではかすり傷一つ負わせられないのだと言う事が。

 

 だが、サーヴァントであり続ける限り、諦める事は許されなかった。

 

 間合いに入ると同時に、斧剣を振り翳すバーサーカー。

 

 大気をも砕く強烈な一撃。

 

 その前に立つのは、この中で一番小柄なアサシンの少年だった。

 

「んッ!!」

 

 振り下ろされる岩の剣を前に、

 

 アサシンは軌道を的確に見極める。

 

 次の瞬間、宙返りをするようにして跳躍。バーサーカーの振り下ろした攻撃を回避する。

 

 飛び上がったアサシン。

 

 その眼前に、バーサーカーの凶相が迫る。

 

「これ、でッ!!」

 

 ねじ巻きのように体を絞ったアサシン。

 

 そのまま回転の力を上乗せして、手にした刀を振り抜く。

 

 鋭く奔った刃が、バーサーカーの顔面を捉えた。

 

 だが、

 

「ッ・・・・・・やっぱり」

 

 バーサーカーは無傷。怯んだ様子すら見られない。

 

 手のしびれを堪えながら、アサシンはバーサーカーの顔面を蹴って後方へ宙返り。そのまま距離を取る。

 

 元より、こちらは消耗激しい身。既に全力には程遠い。

 

 だが、それだけではない。

 

 あのバーサーカー、真名がアサシンの考えている通りなら、並の攻撃では毛ほどの傷をつける事も出来ないだろう。

 

 現状では、時間を稼ぐ事すら難しいかもしれない。

 

 迫るバーサーカー。

 

 斧剣が大きく振り上げられる。

 

「んッ!?」

 

 とっさに回避しようとするアサシン。

 

 しかし、

 

 僅かに反応が遅れる。

 

 ここまで無理を重ねてきたせいで、既に体内の魔力が限界に近いのだ。

 

 身体能力も低下し始めている。

 

 そこへ、バーサーカーは容赦なく襲い掛かった。

 

 振り下ろされる斧剣。

 

 避けようのない「死」が、少年に迫った。

 

 次の瞬間、

 

「させませんッ!!」

 

 割って入ったマシュが、盾を掲げてアサシンを守る。

 

 間一髪。どうにか、防ぐ事に成功する

 

 しかし、斬撃が及ぼす圧力はすさまじく、マシュは盾を構えたまま大きく後退を余儀なくされる。

 

「クッ 何て力・・・・・・・・・・・・」

 

 盾を掲げながら、うめき声を上げるマシュ。

 

 一瞬でも気を抜けば、腕が折れていたかもしれない。

 

 そこへ更に、バーサーカーは叩きつけるように斧剣を振るう。

 

 二撃、

 

 三撃、

 

 その度に、マシュは自分の腕が悲鳴を上げるのを感じる。

 

 このままでは保たない。

 

 押し切られるのは時間の問題だ。

 

 だが、

 

「ハァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 跳躍で飛び出したアサシンが、真っ向から刀を振り下ろす。

 

 更にクー・フーリンも矢継ぎ早に炎を飛ばしてバーサーカーに息をつかせない。

 

 絶望的な状況の中、この場にいるサーヴァント3騎。誰1人として、諦めている者はいなかった。

 

 

 

 

 

 一方、

 

 アサシン達がバーサーカーと対峙している内に、

 

 立香、凛果、そして美遊の3人は、動けないでいるセイバーを連れて、どうにか壁際まで移動する事に成功していた。

 

 セイバーはレフの不意打ちによって致命傷を受け、既に現界を保つ事すら難しくなってきている。

 

 しかし、

 

 今も心配顔でセイバーに寄り添っている美遊を思えば、置いてくる事は出来なかった。

 

「兄貴ッ みんなが!!」

「フォウッ!!」

 

 凛果の声に振り返る立香。

 

 そこでは、暴虐を振るうバーサーカーに、果敢に挑むアサシン達の姿があった。

 

 だが、

 

 圧倒的とも言えるバーサーカーを相手に善戦はしているものの、皆の攻撃は殆ど用を成していない。

 

 このままでは、全滅も時間の問題だった。

 

 堪らず、立香は通信機に向かって怒鳴る。

 

「ドクター、まだかッ!? このままじゃみんなが!!」

 

 カルデアにいるロマニたちがレイシフトの準備を負えれば、立香達はカルデアに帰還できる。

 

 そうすれば、この不毛な戦いも終える事ができるのだ。

 

 だが、現実は無情だった。

 

《すまないッ 特異点の崩壊が始まってしまい、霊力の磁場が安定しない。準備までもう少しかかるッ》

「もう少しって・・・・・・」

《とにかく、こっちも急ぐから、何とか持ちこたえてくれ!!》

 

 とは言え、こちらの状況は、もはや寸暇と言えど予断を許さなくなりつつある。

 

 その時、

 

 ついにアサシンとマシュの防衛線を突破したバーサーカーが、その後方にいたクー・フーリンへと襲い掛かった。

 

「■■■■■■■■■■■■!!」

 

 雄たけびを上げるバーサーカー。

 

 その斧剣が、真っ向から振り被られる。

 

 その様を見て、

 

「チッ・・・・・・・・・・・・」

 

 クー・フーリンは舌打ち交じりに苦笑した。

 

 次の瞬間、

 

 斧剣は容赦なく、振り下ろされた。

 

 飛び散る鮮血。

 

 抉られる身体。

 

 明らかなる致命傷。

 

「・・・・・・・・・・・・あーあ」

 

 そんな中、

 

 クー・フーリンは、肩を竦めながら振り返った。

 

「悪ィ マスター。どうやら俺は、ここまでみてえだ」

「クー・フーリン!!」

 

 叫ぶ立香。

 

 その顔は、今にも泣きだしそうなほど歪められている。

 

 この崩壊した街で出会い、友誼を結び、共に戦ってきた仲間。

 

 そのクー・フーリンが今、倒れようとしている。

 

 立香は、胸が締め付けられるような思いだった。

 

 だが、

 

「そんな顔すんな、マスター」

 

 立香に対し、クー・フーリンは不敵な笑みを向けて見せる。

 

「クー・フーリン・・・・・・・・・・・・」

「俺達サーヴァントってのは、所詮は一時の仮初。用が終わればいなくなる幻みたいなもんさ」

 

 言っている内に、クー・フーリンの姿は湧き出る金色の粒子に包まれていく。

 

「だが、お前らは違う。今のお前らは漂流者に過ぎないかもしれない。けど、だからこそ、先に進むことができる」

 

 その姿は、既に霞み始めている。

 

 だが、

 

 最後に、クー・フーリンは力強く言い放った。

 

「光を見つけたら、迷わずそこへ進め。それが必ず、お前たちの運命(Fate)になる」

 

 その言葉を最後に、

 

 クー・フーリンの姿は、完全に消え去った。

 

 本来の槍兵ではなく。魔術師として召喚されたが故に、実力を発揮できなかったクー・フーリン。

 

 しかし最後まで諦める事無く、立香達に戦ってくれた男は、最後までその在り方を損なう事無く帰って行ったのだ。

 

 だが、

 

 クー・フーリンが倒れた事で、こちらの戦況は更に悪化している。

 

「んッ!!」

 

 尚も暴れまわるバーサーカーに、一瞬にして距離を詰めたアサシンが刃を胴薙ぎに繰り出す。

 

 だが、結果は同じ。

 

 少年の剣は、鋼鉄の如き肉体を前に弾かれ、毛ほどの傷すら付ける事が出来ない。

 

 マシュも同様だ。

 

 彼女の場合、武器が重量のある大盾なので、一撃の打撃力はアサシンを上回っている。

 

 だがそれでも、バーサーカーの肉体にダメージを負わせられるほどではない。

 

 対して、バーサーカーは手にした斧剣を縦横に振るい、自身に纏わり付く2騎のサーヴァントを振り払っている。

 

「まずいな、このままじゃ・・・・・・」

 

 険しい表情で、戦況を見詰める立香が呻く。

 

 戦線の維持は不可能。

 

 レイシフトにも時間がかかる。

 

 完全に手詰まりだった。

 

 その時だった。

 

「カフッ・・・・・・・・・・・・」

「セイバーさん!!」

 

 血塊を吐き出すとともに、意識を取り戻したセイバーの手を、傍らで寄り添っていた美遊が取る。

 

 その感触が、セイバーの意識を覚醒させた。

 

「マスター・・・・・・いったい、何があった?」

 

 苦しそうに言いながら、視線を巡らせて状況を確認するセイバー。

 

 彼女が意識を失っている間に現れたバーサーカーと、それと対峙するアサシン、マシュの両騎。

 

 そして、姿の見えないクー・フーリン。

 

 それらを見据えながら、セイバーは嘆息した。

 

「・・・・・・・・・・・・成程な」

 

 死に掛けていても、幾多の戦いを乗り越えて伝説にまで語られた騎士王である。戦況がいかに絶望的であるかは瞬時に理解していた。

 

「このままではまずい、か」

「うん。マシュとアサシンが頑張ってくれているけど・・・・・・」

 

 凛果が力なく返事をする。

 

 クー・フーリンが脱落した事で、今は残った2人だけが頼みの綱となっている。

 

 とは言え、セイバーも既に瀕死の身。彼女が戦線に加わったところで、どうにもならないであろうことは明々白々だった。

 

 状況を理解したセイバーは、しばしの間思案してから、今度は美遊を見た。

 

「・・・・・・マスター」

「何ですか、セイバーさん?」

 

 呼ばれて、騎士王の手を取る美遊。

 

 そんな美遊の目を、真っすぐに見つめてセイバーは言った。

 

「この状況を覆せる手が、一つだけある」

「ッ 本当かッ!?」

 

 勢い込んで尋ねる立香に、セイバーは頷きを返す。

 

「私と・・・・・・マスターなら・・・・・・万に1つの可能性だが、あるいは・・・・・・・・・・・・」

 

 言葉を濁すセイバー。

 

 分の悪い賭けだ。

 

 セイバーはそう言いたいのだろう。

 

 故にこそ、そこに躊躇いが生じる。

 

 剣士の、静かな瞳の奥。

 

 そこにある、小さな光が揺らぐ。

 

 その正体に気付き、美遊は首を巡らせる。

 

 視線が、立香と合う。

 

 対して、

 

「君の、想う通りにして良いよ」

 

 立香は優しく、頷きを返す。

 

 正直、セイバーが何を考えているのか、立香には見当もつかない。

 

 だが、

 

 セイバーと美遊。

 

 2人の間には、他者には推し量る事が出来ない、深い絆が存在している事だけは理解できる。

 

 それは、黒化して尚、セイバーが美遊を守る為に戦い続けた事から考えても、間違いない事だった。

 

「兄貴の言う通り、かな」

 

 美遊の頭を優しく撫でながら、凛果も告げる。

 

「聖杯戦争とか、サーヴァントとか、私にはまだ殆どよく分かんないけどさ、セイバーさんが美遊ちゃんの事を大切に思っているのだけは判るよ。なら、あとは美遊ちゃん自身が、どうしたいか、じゃないかな?」

「立香さん・・・・・・凛果さん・・・・・・」

 

 なぜだろう?

 

 立香と凛果。

 

 そしてセイバー。

 

 この3人に囲まれて、美遊は今、とても温かい気持ちになっていた。

 

 自分を守るために戦い続けてくれたセイバー。

 

 そっと、背中を押してくれる立香。

 

 不安な自分に、寄り添ってくれる凛果。

 

 不思議な気持ちだった。

 

 セイバーはともかく、出会ったばかりの立香と凛果に、こんな気持ちになるなんて。

 

 それに、

 

 美遊は、今もバーサーカーと戦い続けているアサシンに目をやる。

 

 なぜだろう?

 

 彼とも初対面のはず。

 

 まともに言葉すら交わしてはいない。

 

 だが、

 

 あのアサシンの少年が自分に向けてきた瞳。

 

 どこか懐かしいような、温かいような、そんな気持ちにさせてくれた。

 

 そんな彼らを守りたい。

 

 今、少女の心に、純粋な想いが芽生えていた。

 

「・・・・・・私、やります」

 

 短い言葉。

 

 そこに、どれほど重い決意が込められているか。

 

 だが、少女は揺るがなかった。

 

 自分に、この人達の為にできる事があるなら・・・・・・

 

 その想いが、少女を前へと進ませた。

 

 そんな美遊の想いを受け、セイバーは深く息を吸い込むと、目を開いて少女を見た。

 

「判った・・・・・・マスター、手を」

 

 言われるまま、セイバーの手を取る美遊。

 

 同時に、互いの魔力が、同調するように高まるのを感じた。

 

「あるいは、その選択はマスター、貴女自身をも苦しめる事になるかもしれない」

「セイバーさん・・・・・・・・・・・・」

 

 言っている間に、セイバーの体は内から湧き立つ光の粒子によって覆われていく。

 

 その光の粒子は、やがて手を握る美遊をも包み始めた。

 

「だが、マスター・・・・・・私は、常に貴女と共にある。私の剣は、いつ如何なる時、たとえどこにいたとしても、貴女を守り続ける。それを、忘れないでくれ」

 

 そう告げると、

 

 最後にセイバーは、美遊に対して優しく微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 状況は、いよいよもって末期的になりつつある。

 

 バーサーカーの振るう猛威に対し、完全に防戦一方となるアサシンとマシュ。

 

 2人は尚も、暴虐を振るうバーサーカーに対し、果敢に挑みかかっている。

 

 しかし、その戦いは最早、「勝つ」事は放棄され、「1秒でもバーサーカーの進行を遅らせる」事のみに集約していた。

 

 とは言え、既にそれすら果たせていないのが現状である。

 

 2人にできる事は、少しでも長くバーサーカーの気を引く事のみ。

 

 もし、ほんの僅かでもバーサーカーが気を変え、立香達を標的に変更したら、もう防ぐことは敵わないだろう。

 

「このッ!!」

 

 渾身の力で、バーサーカーを斬りつけるアサシン。

 

 だが、

 

 無駄だった。

 

 鋼の如き、バーサーカーの肉体は、小揺るぎすらしない。

 

 動きを止めるアサシン。

 

 次の瞬間、バーサーカーが放つ強力な前蹴りが、アサシンに襲い掛かった。

 

「グゥッ!?」

 

 その一撃を、まともに食らい吹き飛ばされるアサシン。

 

 小さな体は宙を舞い、地面に叩きつけられる。

 

「アサシンさん!!」

 

 悲鳴に近い声を上げながら、前に出るマシュ。

 

 そのまま、振り下ろされる攻撃を掲げた大盾で受け止める。

 

 だが、

 

「クッ!?」

 

 マシュも既に限界が近い。

 

 バーサーカーの強烈な一撃を受け止め、その場で膝を折るマシュ。

 

「マ、マシュ・・・・・・・・・・・・」

 

 地面に転がったままのアサシンが、苦し気に声を掛けて来る。

 

「に、逃げ、て・・・・・・・・・・・・」

 

 刀を握りしめ、どうにか立ち上がろうとするアサシン。

 

 だが、もはやそれすらも叶わない。

 

 倒れ伏した2人に、斧剣を振り上げるバーサーカー。

 

「■■■■■■■■■■■■!!」

 

 雄たけびを上げるバーサーカー。

 

 それは勝利の雄叫びか?

 

 あるいは殺戮への歓喜か?

 

 いずれにせよ、もはや「狩るべき獲物」と化した2人のサーヴァントを見下ろす。

 

 その狂相が、歓喜に震えた。

 

 次の瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流星の如く駆けてきた一条の白い閃光が、バーサーカーを弾き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「なッ!?」」

 

 思わず、絶句するアサシンとマシュ。

 

 その目の前で、

 

 1人の少女が、巨大なバーサーカーと対峙していた。

 

 

 

 

 

 一方、

 

 地面に倒れたセイバーは、今まさに消滅の時を迎えようとしていた。

 

 だが、

 

 その視線は、巨大な敵を前に敢然と立ち続ける少女を、しっかりと見据えていた。

 

 やがて、

 

「・・・・・・・・・・・・フンッ」

 

 どこか安心したように、鼻を鳴らす。

 

「何だ、その姿は? 私に対する皮肉か?」

 

 憎まれ口をたたく騎士王たる少女。

 

 だが、

 

 その顔には、優しげな笑みが浮かべられている。

 

 それは、姉が妹を見送るような笑顔。

 

「さあ行け、マスター・・・・・・否・・・・・・セイバー、朔月美遊」

 

 その言葉を最後に、

 

 セイバーの姿は光の粒子に包まれ、消えていった。

 

 

 

 

 

 一方、

 

 バーサーカーの前に対峙する美遊の姿は、一変していた。

 

 白いブラウスに、白い末広がりのスカート。

 

 胸部と腰回り、両腕には銀色に輝く甲冑が身に付けられている。

 

 少し長めの髪は、白いリボンで結ばれている。

 

 そして、

 

 手には黄金に輝く、美しい剣が握られていた。

 

「これ以上は、やらせない」

 

 剣の切っ先を真っ向から向け、

 

「皆は、私が守る」

 

 新たなセイバーとなった少女は、凛とした声で言い放った。

 

 

 

 

 

第9話「其れは可憐なる華の如く」      終わり

 


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