1
遠雷のような馬蹄の音が、響の少年の耳にも聞こえて来たのは、その時だった。
傷ついた少年を抱えながら、顔を上げる響。
その視線に、複数の騎馬が駆けて来るのが見えた。
遠目にも甲冑を着込み、手には槍や弓を携えているのが判る。
「・・・・・・・・・・・・敵?」
警戒を強めて目を細める響。
アメリカ兵ならば重たい甲冑を付けたりはしない。彼らは戦場に置いては、防御力よりも機動力を重視するからだ。無暗に硬さを求めて身を重くするよりも、素早く遮蔽物にでも隠れた方が生存性が高い事を知っているのだ。
向かってくる騎馬の兵士たちは、見間違えなくケルトの兵士達だ。
だが、
彼らの先頭に立ち、漆黒の騎馬を駆る人物は、明らかに違った。
やや褐色がかった肌に、東洋風の顔だち。
何より、
着ている物は和装の着物に軽装の甲冑と、明らかに和風、それも戦国時代かそれ以前の、「武士」の恰好だった。
しかし、ケルト軍には違いないのだろう。
一団は響達の手前までくると、そこで騎馬を止める。
部隊長と思われる先頭の男は、かなりの大柄だった。
戦い慣れたケルト人も大柄な部類に入るが、そのケルト人の中にあっても見劣りはしなかった。
何より、その総身より漲る戦気は、ケルト人すら圧倒しているのが響にも判った。
「これは、僥倖と言うべきか」
男は口元に笑みを浮かべる。
好戦的で野獣めいた笑み。
だが、どこか少年めいた楽しげな雰囲気も見て取れる。
「まさか、落人狩りをしていて、レジスタンスの拠点を見つけるとはな」
「クッ・・・・・・・・・・・・」
馬上の男の言葉に、響が抱いている少年はうめき声を上げる。
どうやら騎馬部隊は、少年に対する追撃部隊だったらしい。
「す、すまぬ・・・・・・余が迂闊だったばかりに、そなたらにまで累が及んでしまった」
「・・・・・・・・・・・・ん」
答える代わりに、少年をそっと地面に寝かせる響。
「お、おいッ」
「ちょっと、待ってて」
焦ったような少年の声を背に、前に出る響。
魔術回路を起動。手に愛刀を呼び出す。
その様を見ていた、ケルト人たちに緊張が走るのが判った。
「・・・・・・・・・・・・成程、サーヴァントか」
1人、頷いた先頭の騎馬武者は口の端に笑みを浮かべると、片手を上げて部下たちを制する。
「お前たちは下がっていろ。敵う相手ではない」
男の命令に、ケルト人たちは頷いて馬を後退させる。
これは、かなり特異な光景である。
荒くれ者で知られるケルト兵が「下がれ」と言われて、こうもあっさり従うとは。
それだけ、男の実力が高いと言う証拠だった。
男は馬を降りると、響の前に進み出る。
一方、
響もまた、いつでも刀を抜けるようにしながら、男と対峙する。
「グッ に、逃げよッ」
「ん、だいじょぶ」
背後に寝かした少年に答えつつ、響は男と対峙する。
相手が何者かは知らないが、簡単に後れを取るつもりは、響には無かった。
一方、
自身に立ちはだかる、小さな少年を見て薄く笑うと、腰の刀に手を掛けた。
「来るか」
「ん」
次の瞬間、
響が仕掛けた。
互いの間合いを一瞬にしてゼロにし、気が付けば、響の姿は男の目の前。
「「ッ!!」」
互いに、
同時に抜刀。
緩やかに湾曲した刃が至近距離でぶつかり合い、耳障りな金属音と共に火花を散らす。
次の瞬間、
膂力に劣る響が、大きく弾かれた。
「んッ!!」
空中を吹き飛ぶ響。
だが、少年は慌てず。
衝撃に逆らわず、空中で猫のように宙返りする。
着地。
同時に、
男が真っ向から斬り込んで来るのが見えた。
「オォォォォォォォォォォォォ!!」
強烈な踏み込みと同時に、大上段から振り下ろされる刀。
その刀身の長さに、思わず響は息を呑む。
これは「太刀」と呼ばれ、日本の南北朝時代や室町時代前期に馬上での戦闘を重視して設計、量産された刀である。騎馬戦重視の為、馬上からでも攻撃範囲が確保できるよう、刀身を長くすると同時に、重量もある為、攻撃力も高くなっている。
一方、響が使っている刀は、室町後期以降、主流となった「打刀」がモデルとなっており、刀身も明らかに短い。これは戦場に置ける戦術の主流が、騎馬戦主体から、足軽を中心とした歩兵戦に移行した為、より軽量で取り回し易い刀が求められたためと言われている。もっとも、打刀が主流となった室町後期から安土桃山時代、戦場に置ける白兵戦は槍が主力であり、刀は一般的に補助武装、あるいはトドメを刺す為の「首切り道具」でしかなかった。打刀が本当の意味で戦場の主力となったのは、それから200年以上後の幕末期になってからであると言われている。
攻撃力では明らかに、相手の方が勝っている。
轟風を撒いて打ち下ろされる刃。
その一閃を、響は上方に跳躍して回避。
同時に宙返りをしながら男の背後へと着地。
「んッ!!」
逆袈裟に繰り出される剣閃。
だが、
「させんッ!!」
男は振り向きながら太刀を一閃、響の斬撃を払いのける。
攻撃を防がれた響きも咄嗟に後退。一旦、間合いの外へと逃れる。
「・・・・・・・・・・・・フッ」
刀を構え直す響の様子を見て、男は笑みを浮かべる。
心の内から滾る想い。
死して英霊となり、久しく忘れていた感覚が蘇るようだった。
「実に良い、役者が違えど、あの折の戦に似ている」
1人で、納得したような事を告げる男。
訝る響に向き直り、
その獰猛とも言える笑みを一層強める。
脳裏に浮かぶ情景を思い出し、男は滾る。
「ならば良しッ 我が全力でもって射落とすのみよッ!!」
言い放った男。
その手に現れたのは、
「弓?」
警戒を強める響。
今の今まで、自分と剣撃の応酬を続けていた男。
その様から、てっきり相手はセイバーだと思っていた。あるいは、百歩譲ってライダーくらいではないかと考えていたのだ。
しかし、この局面で切ってくるカードは、間違いなく切り札の類であると推察できる。
つまり、目の前の男のクラスは、
「
「如何にもッ 弓こそが我が本分よッ!!」
言い放つと同時に、弓の弦を引き絞る男。
同時に、高鳴る魔力が響を見据える。
尋常な魔力量ではない。
「んッ」
対抗するには、自分も
そう考えて、魔術回路を起動しようとする響。
次の瞬間、
「そこまでだッ!!」
響き渡る叫び。
同時に、
周囲から一斉に気配が浮かぶのを感じた。
見上げる先。
左右を挟むように切り立った崖の上から、一斉に銃口を向ける兵士達。
皆、エジソンと袂を分かち、独自にジェロニモたちに協力する道を選んだレジスタンスの兵士達である。
無論、彼等だけではない。
ジェロニモ、ロビン、ビリー、ネロ、エリザベート、ナイチンゲール、マシュ、美遊、クロエ、イリヤ。
そして、藤丸立香、凛果の兄妹。
サーヴァントとマスターが勢ぞろいし、ケルト人部隊を包囲していた。
「撃てェ!!」
ジェロニモの号令一下、一斉射撃を開始するレジスタンス兵士。
勿論、アーチャーやキャスターと言ったサーヴァントの面々も、その攻撃に加わる。
隘路に敵を閉じ込めた上での制圧射撃。
戦術としては「理想」の一言に尽きる。
ジェロニモがこの村を拠点にしたのは、何も敵に発見され難い事だけが理由ではない。
村の入り口は、現在、兵士たちが布陣してある通り、左右が小高い崖となっている。
その為、万が一、敵が攻め込んで来たとしても、こうして村の入り口手前で、いちはやく包囲網を形成する事が出来る事が狙いだった。
たちまち、包囲されたケルト兵達が、銃弾を浴びて倒れて行く。
いかに狂気じみた実力を持つケルト兵士と言えど、銃弾を浴びれば倒れる事に変わりはない。
ましてか、レジスタンス兵士たちは、崖の上と言う圧倒的に有利な場所に布陣している。ケルト軍には手も足も出せなかった。
その中で1人、気を吐いているのはやはり、サーヴァントであるアーチャーの男だった。
飛んできた弾丸を刀で弾き、更には味方を援護しながら安全圏まで後退する。
「見事な戦術ッ だが、まだ温いな!!」
ロビンの放った矢を太刀で弾きながら、アーチャーが叫ぶ。
自身のみならず、味方のケルト兵を守りながらも、その様は小動すらしていなかった。
「『あの折り』の戦に比べれば、この程度の矢弾、小雨にも劣るわッ!!」
言いながら、アーチャーは悠然と自身の馬に飛び乗る。
「退くぞッ フェルグス殿の隊に合流する!!」
言い放つと同時に、馬首を翻すアーチャー。
その一瞬、
響と視線が合う。
「「・・・・・・・・・・・・」」
互いに無言。
しかし、
一瞬、
アーチャーは響に対して笑みを向けると、そのまま退却する味方を追いかけるようにして馬を走らせた。
一方、
ケルト兵を見送ったジェロニモは、苦い表情で嘆息した。
「・・・・・・これで、この村は拠点として使えなくなったな」
いかに難攻不落とは言え、ケルト軍とレジスタンスでは兵力に差がありすぎる。もし敵が総攻撃を仕掛けて来たなら、如何に天険の地に拠ったとしても勝てる物ではない。
あくまでゲリラ戦に徹し、敵の隙を突く。それがレジスタンスの基本戦術である以上、発見された拠点は速やかに放棄する以外に無い。
「ジェロニモ・・・・・・」
「なに、そう暗い顔をするな」
ばつが悪そうに声を掛ける立香に、インディアンの青年は、静かに笑って見せる。
「拠点は他にもまだある。そこに移れば、抵抗はまだまだ可能だ」
言ってから、
ジェロニモは、響の背後に寝かされた少年に向けられた。
「それより、こちらの方が重要だろう」
そう言うと、崖を滑り降り、少年の下へと駆け寄る。
慌てて追いかける立香。
やがて、
少年の様子を見た時、立香は思わずうめき声を漏らした。
「・・・・・・・・・・・・これは、酷いな」
思わず言葉を失う。
少年の全身は、少年自身が流した血によって、真っ赤に染め上げられている。
しかも、その傷は体の中央を真っ向から抉っているのが判る。
傷は骨を砕き、肉を引き裂き、その下にある心臓を抉り、少なくとも半分を潰している。
明らかに致命傷。
今この瞬間、少年が生きている事こそが最大の奇跡と言えた。
いったい、如何にすれば英霊の心臓をここまで破壊する事が出来るのだろうか?
その場にいた全員が、戦慄せざるを得なかった。
だが、
そんな中で1人、淡々と奮い立つ女傑の姿があった。
「私の出番ですね」
静かな口調で、ナイチンゲールは宣言した。
婦長はすぐさま、倒れている少年の下に屈み込むと、容体を確認していく。
だが、
「・・・・・・これは、ヒドイですね」
ナイチンゲールをして、息を呑まざるを得ないほど、少年の状況はひどかった。
一言で言えば、今すぐ死んでもおかしくはない。
「よく、こんな状態で歩いて来れましたね」
「頑丈さ・・・・・・だけが、取り柄・・・・・・だからな」
口元に皮肉気な笑みを浮かべる少年。
ともかく、時は一刻を争う。それだけは確かだった。
「安心してくなさい少年。私があなたを死なせません。たとえ地獄に落ちても引きずり出して見せます」
「クク、そいつは、安心できそうだ・・・・・・」
笑みを浮かべる少年。
だが、彼が余裕こいていられたのもそこまでだった。
ナイチンゲールは、まるでズタ袋か何かのように、少年の身体を肩に担ぎあげたのだ。
途端に、想像を絶する、およそこの世の物とも思えない激痛が少年を襲った。
「あ、イタタタタタタッ き、貴様、もうちょっと手加減できんのかッ!? 余は心臓を潰されているのだぞッ!?」
「心臓を潰されて喋っている、君の方が驚愕です」
そう言うと、問答無用でナイチンゲールは少年を運んでいくのだった。
2
少年の名はラーマ。
コサラの王にして、インドの叙事詩「ラーマーヤナ」に登場する大英雄。
圧倒的な力で神々をも隷属させ、猛威を振るう羅刹の魔王ラーヴァナ。
神の身であってはラーヴァナに対抗する事は不可能と判断した大神ヴィシュヌは、あえて何も知らない人間の子供として転生する道を選ぶ。
それこそがコサラの王子ラーマであった。
やがて成長し、己が使命に目覚めたラーマは、避け得ぬ運命に導かれてラーヴァナとの戦いに身を投じて行く事になる。
そのラーマが北米に召喚されていた事も驚きだったが、そのラーマがこうまで重傷を負った事には戦慄を覚えざるを得なかった。
「応急処置は済ませました。が、予断は許されない事に変わりありません」
ベッドに寝かされたラーマを見ながら、ナイチンゲールは悔しそうに嘆息する。
「残念ですが、私の技術をもってしても死への道を閉ざす事はできません。ただ、その道行きを遅らせるのがせいぜいです」
「いや、だいぶ楽になったぞ」
そう言うと、ラーマは荒い息を吐き出す。
驚嘆すべき事にラーマは、ナイチンゲールが行った治療の間、一瞬たりとも気を失う事が無かった。
大英雄の矜持か、あるいはもっと別の何かか。
いずれにしても、恐るべき執念だった。
「教えてくれラーマ」
治療が終わったラーマに、立香が語り掛けた。
「誰が、君に、ここまでの傷を負わせたんだ?」
「カルデアのマスターか・・・・・・すまぬな、このような身でなければ、余もそなたの尖兵として剣を振るいたかったのだが」
言ってから激痛に顔を顰めて、ラーマは言った。
「余をこのような目に遭わせた奴の名は、クー・フーリン。ケルト最強の戦士にして、今は奴らの王となった男だ」
「クー・フーリン、だって・・・・・・・・・・・・」
「ん、クーちゃん?」
驚愕と共に、その名を呼ぶ立香と響。
アイルランド最強の戦士にして「光の御子」の異名で呼ばれる大英雄。
そして何より、忘れるはずもない。
あの炎上した特異点Fで共に戦い、導いてくれた偉大なる友。
そのクー・フーリンが、今回は敵に回っていると言うのか?
ありえない話ではない。
サーヴァントは戦いが終わり、あるいは敗れて力尽き、「英霊の座」と呼ばれる場所に変えれば、一部の例外を除いて「サーヴァントとして召喚され、戦った記憶」は消去される。
よって今回、クー・フーリンが敵方として召喚されたとしても、何ら不思議は無かった。
クー・フーリンの持つ魔槍ゲイボルクは、放てば必ず標的の心臓を貫くと言われている。ラーマの心臓が潰されたのも、納得の理由だった。
「こちらの情報とも一致している。ケルト軍を率いているのは、クー・フーリンと見て間違いないだろう」
ジェロニモが硬い表情で告げる。
最強のケルト軍を、最強の王が率いている。
間違いなく、状況は最悪だった。
「一つ、よろしいでしょうか?」
挙手をして発言したのは、ナイチンゲールだった。
「この少年、ラーマに、私は私自身が持てる限りの技術と知識を持って処置を施しましたが、命を助ける事はできません。こうしている間にも、傷口は広がって来ています」
それは、およそ医術に関わる人間にとっては悪夢のような事態だった。
治したはずの傷口が、勝手に開いていくなど、正気の沙汰ではない。
今のラーマの霊基は、よく言って「穴の開いたバケツ」だった。
「ですが、言うまでも無く、私は彼の治療を諦めるつもりはありません。ですが、現状では打つ手が無いのも事実。ですので、どうすれば彼を治せるのか教えてください」
専門職に拘る気は無い。
患者を助ける為なら、いかなる手段も厭わないと言うナイチンゲールの姿勢が表れていた。
となると、事は医療技術だけではない。別の専門知識も必要となるだろう。
「ロマン君、何とかならない?」
「フォウッ ンキュ」
凛果が通信機に向かって声を掛ける。
ロマニはカルデア医療部門のトップであり、同時に魔術師でもある。その観点から、何か意見を期待できそうだった。
《そうだね、まずはラーマ君の傷についてだけど、それはただの傷じゃなく「呪い」によって付けられた傷だ。よって、多分だけど、通常の医療行為では絶対に治せないだろう》
あるいは名医を越えた存在、神医でも居れば話は別だが。
彼のアルゴナウタイにも参加した、医神アスクレピオスでも召喚されれば打つ手もあるかもしれない。が、現状、いない存在に期待する事はできなかった。
《呪いを解く方法は限られている。その最も有効な方法、つまり呪いを与えた存在を倒すか、あるいは呪いの元となったアイテムを破壊するか、だ》
つまり、クー・フーリンを倒すか、ゲイボルクを破壊するか、と言う話になる。
言うまでも無く、その2つはほぼ同義に等しかった。
《呪いの槍を受けてラーマ君が死んでいないところを見ると、恐らく彼自身、無意識に自分の運命を逆転させているからだと思われる。つまり、世界的に見れば現状、ラーマ君は死んでいる方が正しい、と言う事になる》
次の瞬間、
ナイチンゲールの放った弾丸が、ロマニの映像を貫いたのは言うまでもない事だった。
「訂正を、ドクター・ロマン。彼が生きているのが間違いだ、などとは言わせません。彼はこんなにも、必死に生きようとしているのですから」
《お願いだから見境なくぶっ放すのやめてッ あと、最後まで人の話を聞いて!!》
映像の向こうのカルデアで、焦った声を発するロマニ。
一方、
「自業自得」
「空気嫁」
「一遍死んでみる?」
「フォウッ」
《君達、僕に冷たくないッ!?》
チビッ子サーヴァント達の塩対応に悲鳴を上げるしかない。
とは言え、こうしてコントをやっていても話が進まないのは確かな訳で。
ロマニは咳ばらいをすると、先を続けた。
《もう一つ、可能性は低いけど、賭けてみる価値がある方法がある》
「それは?」
先を促す立香に頷き、ロマニは口を開く。
《生前のラーマ君を知るサーヴァントを探すんだ。生前の彼を知る者なら、彼の身体の「設計図」も知っているだろう。その人に会えれば、ナイチンゲール嬢の治療効率を上げる事が出来るかもしれない》
ロマニの出した、第3案は確かに魅力的だった。少なくとも、クー・フーリンを直接狙うよりは、成功率は高い。
だが、どうしても、そこに至るまでにはクリアしなくてはならない条件が1つ、存在している。
すなわち、前提条件である「ラーマを知る存在」を見つけなくてはならない。と言う事。
言うまでも無く、18世紀の北米大陸にラーマの知り合いが生きているはずもない。可能性があるとしたら、サーヴァントとして召喚されている事だ。
「それなら・・・・・・・・・・・・」
発言したのは、
誰あろう、渦中の人物、ラーマ本人だった。
ラーマは苦し気に息を吐きながら、一同を見やる。
「余に1人、心当たりがある」
「心当たり?」
尋ねる立香に頷くラーマ。
だが、すぐに少年王の顔は苦痛に歪む。
こうしている間にも、彼の身体は呪いによって蝕まれている。
今もナイチンゲールが追加の治療を施す事によって、辛うじて意識を保ている状態である。
「余の妻、シータだ」
「ラーマの、奥さん?」
「ああ。たとえ離れていても、余には判る。彼女がこの地に召喚されている事は間違いない。恐らく、どこかに囚われているはずだ。そもそも、余がクー・フーリンに挑んだのも、シータの居所を問い詰める為だったのだ」
それで返り討ちに遭ったのでは、ザマ無いがな。
そう言って、ラーマは自嘲気味に笑う。
ラーマと、その妻シータは、伝説にも語られるほど相思相愛の夫婦として知られる。
そして、ラーマはラーヴァナに囚われた彼女を救うために、運命の戦いへと踏み込んでいったのだ。
もし、本当にシータがいるなら、確かにこの上ないほどに好条件と言えた。
となれば、方針は決まった事になる。
まずはシータの捜索。そして救出となる。
ラーマを復活できれば、彼の力は大きな戦力となるのは間違いない。何しろインドの大英雄だ。あのカルナとぶつかっても、当たり負けする事は無いだろう。
《それはそれとして、僕はもう一つの作戦を提示したい》
方針が大方決まったところで、ロマニが発言してきた。
一同が視線を集める中、ロマニが言った。
《これは、これまでの戦闘のデータを解析した結果だが、もしかしたら、ケルト軍は際限なく召喚され続けているんじゃないのかな?》
ロマニが問いかけた相手は、ジェロニモだった。
《恐らく、このまま戦い続けても際限がない。違うかい?》
「・・・・・・・・・・・・ドクター・ロマンの通りだ」
ジェロニモは、重苦しく口を開いた。
「これは以前に得た情報で、まだ未確定なのだが、ケルト軍の中には『女王』と呼ばれる存在がいて、そいつがケルト兵達を生み出しているらしい」
「何か、女王蜂みたいだね?」
凛果は感じた感想を率直に告げる。
蜂の群れの中で、女王蜂が持つ役割とは、巣を作り、巣を育て、そして子孫を残す事にある。
もし、本当に「女王」と言う存在がケルト軍にいるなら、確かに「女王蜂」と言う表現は、良い得て妙だった。
《僕としては、
確かに。
時間が経てばケルト軍は際限なく増強される事になる。
それに対抗する為に、エジソンは支配地域の住民全てを機械歩兵の生産工場で強制労働させる事になる。
まさに悪循環。最悪のシナリオである。
だが、先にも言った通り、クー・フーリンを倒す事がいかに難しい事か。
圧倒的戦力と複数のサーヴァントを要するケルト軍。加えて、王であるクー・フーリン自身、ケルト最強と来ている。
正面戦闘で討ち取るのは困難と言わざるを得なかった。
「ん」
「響?」
話を聞いて、顔を上げる響に、美遊が訝りながら振り返る。
クー・フーリンと「女王」の排除は急務。
だが現状において、正面決戦は無謀。
ならば、残る手段は限られている。
「クーちゃんを、暗殺する」
アサシンの少年は、宣誓するように静かに言い放った。
第6話「コサラの王」 終わり
オリジナルサーヴァント
【性別】男
【クラス】アーチャー
【属性】混沌・悪
【隠し属性】人
【身長】192センチ
【体重】76キロ
【天敵】??????
【ステータス】
筋力:B 耐久:A 敏捷: 魔力: 幸運: 宝具:
【コマンド】:BBAAC
【保有スキル】
〇紅の誇り
自信に回避状態付与(1ターン)、クリティカル威力アップ(3ターン)
〇??????
〇??????
【クラス別スキル】
〇単独行動
【宝具】
〇??????
【備考】
ケルト軍に与する