Fate/cross wind   作:ファルクラム

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第6話「フランスの残滓」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 城壁の上に立ち、彼方から迫る翼竜の群れを見定める。

 

 砦全体を包む緊張感を感じながら、男は静かに佇んでいる。

 

 元フランス王国軍元帥ジル・ド・レイ。

 

 白銀の鎧に身を包んだこの騎士は、物静かな容貌とは裏腹に、フランス全軍を指揮する立場にある総司令官でもある。

 

 もっとも、国滅びた今となっては、肩書など如何程の価値も無いのだが。

 

 しかし国王亡き今、瓦解寸前のフランス軍残党が、それでも組織としての体を保っていられるのは、このジルの存在が大きいと言えよう。

 

 だが、

 

 同時にジルの心底には、ある種の負い目が存在していた。

 

 彼はかつて、救国の乙女ジャンヌ・ダルクの傍らにあり、彼女の盟友として共に戦ってきた。

 

 彼女の進軍を補佐し、共にオルレアン解放を行った。

 

 だが、

 

 結局ジルは、肝心な時に何もできなかったのだ。

 

 ジャンヌがイングランド軍に囚われた時も、

 

 そして処刑された時も。

 

 勿論、助けようとはした。

 

 この時代、捕虜は身代金さえ支払えば、取り戻す事ができる。

 

 ジャンヌ・ダルクともなれば、身代金の額も半端なものではなかったが、助ける事は決して不可能ではなかった。

 

 ジルはジャンヌを救うために身代金を集め、自らも資金を供出して王にジャンヌを救出するよう訴えたのだ。

 

 だが、

 

 ジルは肝心な部分で見誤ってしまった。

 

 そもそも王には、

 

 ジャンヌの活躍で王位に就き、本来なら最もジャンヌに感謝してしかるべき立場だったはずの国王シャルル7世には、

 

 ジャンヌを救う気などさらさら無かったのだ。

 

 集めた身代金は横取りされ、ジャンヌも処刑されてしまった。

 

 失意に落ちたジル。

 

 だが、

 

 状況は変わった。

 

 殺された国王。

 

 蹂躙される祖国フランス。

 

 そして、

 

 蘇った竜の魔女、ジャンヌ・ダルク。

 

 嘘だと思いたかった。

 

 誰よりも祖国の解放を望んでいた彼女が、このような残虐な行為に走るなど。

 

 だが、

 

 心の隅では、こうも思っていた。

 

 彼女ならあるいは、と。

 

 王に裏切られ、祖国に見捨てられたジャンヌが復讐に走ったとして、誰がそれを咎められようか?

 

 あるいは彼女の行いこそが正しいのかもしれない。

 

 つい、心の隅では、そう思ってしまう。

 

 あるいは、自分も進んで、彼女の旗の下に馳せ参じるべきではないか、と。

 

 だが、

 

 たとえ相手がジャンヌであり、彼女の行いこそが正しいのだとしても、

 

 祖国を蹂躙されるのを、黙って見ている事は出来なかった。

 

 と、

 

 ジルの思考を中断するように、兵士が足音も荒く駆け寄って来た。

 

「閣下。総員、配置に着きました。いつでも行動可能です」

「ご苦労。別命あるまで待機せよ」

「ハッ」

 

 再び駆け去って行く兵士の背中を見送りながら、ジルは再び視線を前に移す。

 

 この砦は、今や最前線である。

 

 敵の中枢がオルレアンにある事はジルも掴んでおり、その為に、この砦にフランス残党軍の主力が集結している。

 

 この砦からなら、オルレアンは目と鼻の先と言って良いだろう。

 

 だが、

 

 相手には強力な竜の群れがあり、更には「怪人」とでも言うべき、得体の知れない将達が軍勢を率いているという。

 

 正直、手持ちの兵士だけでは心もとない。

 

 だが、それでもやるしかなかった。

 

 と、

 

 そこでジルは、傍らにチラッと眼をやる。

 

「申し訳ない。また、貴殿に頼る事になりそうだ」

「気にしないでくれ。俺にはそれくらいしか能が無いからな。むしろ、俺と言う存在を存分に活用してもらえればありがたい」

 

 ジルの言葉に、傍らに立つ男は頷きながら答えた。

 

 精悍な男性である。

 

 長い髪の下から見える鋭い瞳には静かな光が宿り、屈強な肉体は鋼を連想させる。

 

 背に負った長大な大剣が、この上ない頼もしさを誇っていた。

 

 ジークフリート。

 

 古代、竜殺しをなした大英雄と同じ名乗りを上げた男は、ジルが率いるフランス残党軍にとって、頼もしい客将だった。

 

 それが本名かどうかは判らない。

 

 だが実際、ジークフリートはジルたちの目の前で何体ものワイバーンを屠って見せている。

 

 真贋などどうでも良い。今はその実力こそが、何よりもありがたかった。

 

「来るぞ」

 

 静かに言い放ちながら、ジークフリートは背中の大剣を抜く。

 

 見れば、視界の彼方でワイバーンの大群が動き出すのが見えた。

 

 ジルもまた、頷きを返すと腰の剣を抜き放つ。

 

 ここが正念場だ。

 

 この一戦に、フランスの運命全てが掛かっていると言っても過言ではない。

 

 剣を高々と振り翳すジル。

 

 そう言えば、

 

 ふと思い出す。

 

 かつて「彼女」もまた、全軍の先頭に立つときは、このようにしていた。

 

 それが今や、自分がかつての彼女の役を担う事になるとは。

 

 皮肉以外の何物でもなかった。

 

 やがて、迫りくる敵の大群。

 

 その軍勢を目の前にして、

 

 ジルは高らかに命じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フランス残党軍と、ワイバーンの大群がオルレアン付近で戦闘を開始する少し前、

 

 準備が整ったカルデア特殊班もまた、行動を開始しようとしていた。

 

 目的は、ある意味でシンプルだ。

 

 オルレアンに進撃し、竜の魔女ジャンヌ・オルタを撃破する。

 

 聖杯さえ奪取すれば、この特異点は解放され、そもそも竜の魔女によってフランスが蹂躙された事自体、「無かった」事になる。

 

 全てが元通りと言う訳だ。

 

 現在、特殊班がいるのは、オルレアンから見て東方。

 

 ジャンヌの故郷でもあるドンレミ村のやや西寄りの場所である。

 

 ここからオルレアンを目指すコースは2つ。

 

 1つは北回りに向かうコース。

 

 2つめは、南回りに海岸線に出て、それから北上するコース。

 

 最短なのは北回りコースである。

 

 しかし、そちらはフランス残党軍とジャンヌ・オルタ軍が対峙する最前線がある。当然、敵も最も警戒しているはずだ。

 

 敵に見つかるのは勿論まずいが、ジャンヌがいる以上、フランス軍に見つかるのも面倒事になりかねない。

 

 何しろ、ジャンヌはジャンヌ・オルタと同じ容姿をしている。知らない人間が見れば、ジャンヌ自信を見て「竜の魔女」だと勘違いしても仕方が無いだろう。

 

 一方、南回りコースは、前線から離れている事もあり、敵の警戒も薄いと思われる。無駄な戦闘を避けるなら、そちらのルートを使うべきだろう。

 

 だが、

 

 ここに来て、そうもいかない事情が発生していた。

 

「別動隊、だって?」

「ええ。ここに来るまでに集めた情報に、そのような物がありました」

 

 尋ねる立香に、ジャンヌは難しい表情で答えた。

 

 それによると、ジャンヌ・オルタ軍には、フランス南部地方を制圧する為に派遣された別動隊が存在しているのだとか。

 

 そちらもジャンヌ・オルタ本人が率いる本軍と変わらぬ規模を誇っており、無視できない被害をもたらしているという。

 

 このままオルレアンに進撃したら、敵の別動隊を見逃す事になってしまう。

 

《うーん・・・・・・・・・・・・》

 

 話を聞いていたロマニが、通信機の向こうで首を傾げた。

 

「どうしたの、ロマン君?」

《うん。僕としては、このまま直接、オルレアンに向かう事を提案したいかな。どのみち、聖杯を手に入れて人理が修復されれば、全てが元通りになる訳だし》

 

 要するにロマニが言うには、南部の解放に向かうのは時間の無駄でしかない、と言う事だ。

 

 確かに、ロマンの言う通り、ジャンヌ、エリザベート、清姫が加わったとはいえ、数的に劣っている特殊班が回り道をしている余裕はない。

 

 ここは回り道をせず、一気にオルレアンに進撃し、ジャンヌ・オルタと対決すべき所だろう。

 

 だが、

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 ジャンヌは伏し目がちに俯く。

 

 彼女の気持ちも分かる。

 

 目の前で苦しめられている祖国の人たちがいて、それを見捨てる事などできないのだろう。

 

 さて、どうするか?

 

 最短だけど、最前線を突っ切らなくてはならない北回りか?

 

 それとも、遠回りで敵の別動隊もいる南回りか?

 

 と、

 

「ならさ、私が南に行くよ」

 

 そう言って手を上げたのは凛果だった。

 

 その目は、自分のサーヴァント達に向けられる。

 

「響と美遊ちゃんを連れて行くよ。その間に兄貴とジャンヌ達は、北からオルレアンを目指して」

「いや、凛果、お前、簡単に言うけどな・・・・・・」

 

 妹を案じる立香。

 

 ただでさえ少ない戦力を、更に分けて南に行こうとする凛果の行動は、立香には危険なものに見えたのだ。

 

 だが、そんな兄に凛果は笑って見せる。

 

「大丈夫。南部地方を制圧したら、わたし達もオルレアンに向かうから。向こうで合流しよう」

「・・・・・・・・・・・・」

「それに、これ以外に方法なんて無いでしょ?」

 

 確かに。

 

 オルレアンには急ぎたいが、ジャンヌとしては南部地方の方も放っては置けない。

 

 ならば、マスターが2人いる事を利用して、2手に分かれるのが得策だった。

 

「ジャンヌも、それで良いよね?」

「それは、はい・・・・・・」

 

 自分がわがままを言っている事は、ジャンヌも理解しているのだろう。

 

 その上で、凛果が南部地方に行ってくれると言うのだから、ジャンヌとしては断る理由は無かった。

 

「・・・・・・お前は言い出したら聞かないからな」

 

 嘆息交じりに言う立香。

 

 割と頑固なところがある凛果は、一度こうと決めたらなかなか考えを曲げようとしない。

 

 そうなると、説得はほぼ不可能に近かった。

 

「気を付けろよ」

「うん、兄貴も」

 

 そう言って、笑顔を交わす藤丸兄妹。

 

 次いで立香は、通信機の向こうのロマニに声を掛けた。

 

「ドクター、悪いけど、そう言う訳だから。サポートの方、ちょっと負担をかける事になりそうだ」

《ああ、うん。まあ、仕方ないね。現場の事は立香君と凛果君に一任しているわけだし。基本的に、こちらではどうする事も出来ないから。あと、サポートの事は気にしないでくれ。レオナルドと分担すれば、どうとでもなるから》

 

 苦笑交じりに、ロマニが賛同してくれる。

 

 カルデアの現責任者としては効率を重視したい所なのだろうが、ジャンヌの想いも決して無視はできないのだろう。

 

 と、

 

「ふうん、面白そうね。なら、あたしも小ジカ達の方に行ってあげるわ」

 

 そう言いだしたのは、それまで話を聞いていたエリザベートだった。

 

 どうやら、彼女も凛果について南部方面に行くつもりのようだ。

 

 因みに「小ジカ」とは、凛果の事らしい。なぜそんな風に呼ぶのかは知らないが、彼女の趣味なのだろう。立香の方は「子イヌ」と呼ばれている。

 

 何にしても、出会って数分で愛称で呼び合うくらい打ち解けているのは良い事だった。

 

 まあ、それはそれとしても、エリザベートの申し出が唐突だったのは確かだった。

 

「ど、どうしたの急に?」

「だって、それならサーヴァントの数も3対3になってちょうど良いでしょ」

 

 言ってから、エリザベートはジャンヌと清姫を見る。

 

「ジャンヌは当然、オルレアンに行くべきでしょうし、それに・・・・・・」

 

 視線は清姫に移る。

 

「あんたも・・・・・・そっちに行くわよね?」

「当然です。安珍様のそばを離れる訳にはまいりませんので」

 

 いや、安珍じゃないし、とは全員が心の中で入れたツッコミだが、実際に口に出した者はいなかった。

 

 だって疲れるし。

 

 と言う訳で、メンバーは決まった。

 

 北回りでオルレアンを目指すのは、立香をリーダーにして、マシュ、ジャンヌ、清姫。

 

 南回りで敵の別動隊を制圧するのが、凛果をリーダーにして、響、美遊、エリザベート。

 

 となる。

 

 戦力的分散には不安があるが、今はこれがベストだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やはり、と言うべきか、

 

 フランス残党軍にとって、ジークフリートの存在は大きかった。

 

 流浪の剣士は、身の丈ほどもある大剣を軽々と振るい、迫りくるワイバーンの群れを容赦なく叩き斬っていく。

 

 逆に、ワイバーン共の攻撃は、ジークフリート相手にかすり傷すら負わせることができないでいる。

 

 ジークフリートは竜どもの攻撃をかわし、弾き、逆に斬り裂いていく。

 

 時々、攻撃を喰らう事もあるが、物ともする様子もない。

 

 まさに一騎当千。

 

 本当に、神話上の英雄が、このフランスに現れたかのような戦いぶりだ。

 

 勿論、フランス残党軍の兵士たちも、手をこまねいているわけではない。

 

 1匹のワイバーンに、10名前後の兵士たちが群がっているのが見える。

 

 1体1ではワイバーンには敵わなずとも、1匹に対し複数で当たれば倒せない相手ではない事は、これまでの戦訓からも分かっていた。

 

 弓隊の一斉射撃で上空にいるワイバーンを叩き落し、地面に叩きつけられたところを剣や槍を持つ兵士が一斉に群がってトドメを刺す。

 

 勿論、地面に落としたからと言って油断はできない。ワイバーンは、その巨体故に膂力もすさまじい。

 

 鉤爪や尻尾を振り回されれば、それだけで人間など肉片に成り果てるだろう。

 

 だが弱点もある。

 

 その巨体故に小回りが利かないのだ。

 

 その為、一度攻撃をやり過ごし、ワイバーンが動きを止めた直後、一斉に飛び掛かると言う戦術が最も有効だと判った。

 

 兵士達はジルの指揮に従い、一糸乱れぬ統率でワイバーンを着実に屠っていく。

 

 いかに力が強かろうと、ワイバーンは所詮獣に過ぎない。

 

 人は古来より英知を凝らし、策を積み重ね、自らよりはるかに巨大な敵を撃ち倒してきた。

 

 恐れずに戦えば、いかな巨大な存在であろうとも、倒せない筈が無いのだ。

 

 勿論、ジークフリートはその限りではない。

 

 彼に至っては1人で複数のワイバーンを相手取り、その全てを撃破しつくしていく。

 

 その横で自身も剣を振るいながら、ジルが話しかけてきた。

 

「今日は行けそうですな。兵達の意気も高い。全て、貴殿のおかげです」

「いや、兵達も皆、よくやってくれている。俺1人では、こうはいかなかっただろう」

 

 言いながら、無造作に振るった大剣の一閃が、ワイバーンの巨体を袈裟懸けに斬り飛ばす。

 

 実際のところ、戦況はフランス残党軍の有利に進んでいる。

 

 ワイバーンは次々と叩き落され、地に躯を晒している。

 

 このまま行けば勝てる。

 

 誰もが、そう思い始めた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アポロンとアルテミスの、二大神に願い奉る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦場に響く声。

 

 同時に、放たれた矢が、勢い乱れる事無く天まで駆け上がった。

 

 次の瞬間、

 

 無数の矢が、文字通り雨となってフランス残党軍の上空に降り注いだ。

 

「総員、退避ィィィィィィィィィィィィ!!」

 

 絶叫に近いジルの指示が、全軍に伝えられる。

 

 だが、殆どの兵達は間に合わない。

 

 折り重なるように響く悲鳴。

 

 血しぶきが戦場に舞い、天を朱に染め上げる。

 

 巻き込まれたのは十数名。一撃で、かなりの人数を失った事になる。

 

 流石にジークフリートやジルは無事だが、兵士たちは隊列を乱して後退を余儀なくされている。

 

「・・・・・・・・・・・・対軍宝具か」

 

 低い声で呟きながら、ジークフリートは彼方の丘に目をやる。

 

 その視線の遥か先。

 

 戦場の後方に、宝具を放った相手はいた。

 

 獣の耳に尻尾を持つ、見目麗しき狩人の女性だ。

 

 その出で立ちからして、間違いなく「アーチャー」である事が判る。

 

 厄介だな。

 

 ジークフリートは、心の中で呟く。

 

 ジルには話していないが、ジークフリートもまた、敵の将達と同じ「怪人」、サーヴァントである。

 

 クラスはセイバー。

 

 接近戦では部類の強さを発揮できるが、遠距離戦では分が悪い。

 

 あるいは、こちらも宝具を使えば、攻撃も届くかもしれないが。

 

 だが、

 

 そんなジークフリートの考えを見透かしたように、

 

 漆黒の影が舞い降りる。

 

「あなたですか。残党たちに希望を与えている存在は。それに、どうやら懐かしい顔もいるみたいですね」

 

 ワイバーンを違えたジャンヌ・オルタが、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

 

 その姿を見て、ジルが息を呑む。

 

「やはり・・・・・・ジャンヌッ」

 

 噂は本当だった。

 

 見間違えるはずはない。

 

 フランスを蹂躙する竜の魔女の正体は、ジルのかつての盟友、ジャンヌ・ダルクだったのだ。

 

 対して、ジャンヌ・オルタはその口元に微笑を浮かべる。

 

「お久しぶりですね、ジル。まさか、このような形で再開する事になるとは思っていませんでした」

「・・・・・・・・・・・・」

「しかし残念です。てっきり、あなたはこちらに来てくれると思っていましたのに」

「いえジャンヌッ 私はッ!!」

 

 言いかけるジル。

 

 しかし、その後の言葉が続かない。

 

 ジルにとってジャンヌは大切な存在だが、しかしそれでも、彼女の蛮行を見過ごす事も出来ないのだ。

 

 そんなジルを気遣うように、ジークフリートは前へと出て大剣を真っすぐに構える。

 

「下がっていてくれ、ジル殿」

「ジークフリート殿?」

 

 ジャンヌ・オルタと対峙するジークフリート。

 

 ジルはこの女とは戦えない。

 

 ジークフリートには、ジルの中にある葛藤が見えていた。

 

 たとえ敵同士となったとしても、かつての友を斬る事などできない。

 

 ならばこそ、自分がやらなくてはいけなかった。

 

「行くぞ、竜の魔女!!」

 

 言い放つと同時に、ジークフリートは大剣を振り翳して斬りかかる。

 

 対抗するように、ジャンヌ・オルタも炎を噴き上げて迎え撃った。

 

 

 

 

 

第6話「フランスの残滓」      終わり

 

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