Fate/cross wind   作:ファルクラム

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第4話「戦女王」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 敵の数はそれほど多くは無い。恐らくは威力偵察の類なのだろう。

 

 しかし、ここで兵力を損なえば、次の決戦での勝利は厳しいだろう。

 

 元より、数的な劣勢は否めない。下手な兵力の消耗は避けなくてはならない。

 

 皇帝ネロ・クラウディスから直々に主力軍の指揮を任された以上、無様な戦いは出来なかった。

 

「ブーディカ将軍!!」

 

 斥候に出ていた兵士が、戻ってきて駆け寄ってくるのが見えた。

 

 どうやら、敵軍に動きがあった様子だ。

 

「敵部隊の一部が、こちらに向けて進軍を開始しました。数、およそ300!!」

「少ないね。やっぱり本格的な激突じゃなく、偵察が目的と見るべきかな」

 

 言いながら、ブーディカと呼ばれた女将軍は、頭の中で状況を整理する。

 

 現在、ブーディカに率いられた正統ローマ軍は、連合ローマ軍に占領されたガリアと言う街を奪還すべく進軍してきている。

 

 数の上では、正統ローマ軍の方が多い。

 

 しかし、正統ローマ軍は、この戦場に主力軍のほぼ全軍が集結しているのに対し、連合ローマ軍は、あくまでガリア方面を守る一個軍団に過ぎない。その後方には、本軍となる部隊がさらに控えているのだ。

 

 正統ローマ軍は、ここで無駄に兵力を損なってしまえば、後に控える本軍との決戦に勝利する事は難しくなる。

 

 故に、ブーディカは慎重にも慎重な対応が求められていた。

 

「尚・・・・・・・・・・・・」

 

 斥候兵の報告は続いていた。

 

「敵部隊を率いる将は、見慣れぬ風体の男だと言う事です」

「・・・・・・・・・・・・ふうん」

 

 話を聞いてブーディカは、状況を察して頷く。

 

 相手は恐らく、自分と同じ存在だ。

 

 ならば、一般の兵士ではなく、自分が迎え撃つ必要があった。

 

「1、3番隊は、あたしと一緒に来な。敵軍を迎え撃つよ。残りの隊はその場で待機。状況変化あるまで守りを固める事。尚、敵将はあたしが相手をするから手出しは無用にお願い」

 

 ブーディカの指示に、返事を返す兵士達。

 

 兵たちの士気は高い。その理由としては、ブーディカの存在が大きかった。

 

 劣勢の正統ローマ軍がここまで辛うじて互角に戦ってこれたのは、ネロのカリスマ性も無論大きいが、前線で指揮を執るブーディカの采配が的確であったことがあげられる。

 

 いかにネロが軍人としても名将でも、皇帝と言う立場にある以上、常に最前線に立つわけにもいかない。

 

 そのような折りに、前線指揮を任せられるブーディカのような名将の存在は大きかった。

 

「いいかい、間もなくネロ陛下が近衛軍を率いて援軍にやってくる。本格的な戦いはそれからになる。決して無理をしないように。良いね!!」

「ハッ!!」

 

 ブーディカの指示に、敬礼を返す正統ローマ軍の兵士達。

 

 同時に、敵軍が上げる鬨の声が、ブーディカの本陣にも聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 戦いは、一進一退の様相を呈していた。

 

 ブーディカの予想通り、連合ローマ軍は本気で戦うつもりではなく、あくまでこちらの出方を探る事が目的だったようだ。

 

 それを見越したブーディカは、全軍に守りを徹底させ、決して前には出ないように厳命しておいた。

 

 決戦前に、無駄に兵力を消耗させたくないと言うのは、両軍ともに共通する認識である。

 

 まずは一当てして、敵軍の様子を探る事こそが主目的である。

 

 だが、

 

 そんな中で、一際激しくぶつかり合う一角があった。

 

 敵将と対峙したブーディカは、迷う事無く斬りかかる。

 

 対抗するように、敵将もまた、ブーディカに向き直って対峙した。

 

 敵将は大柄な男だ。

 

 上半身裸で、頭部には鋭角的な印象のマスクを被っている。

 

 一切の無駄をそぎ落とし、研ぎ澄ますほどに鍛え上げたその肉体は、よく使いこまれた斧槍(ハルバード)のような印象を受ける。

 

 一目で、ブーディカは見抜く。

 

 相手は、強敵だと。

 

 ブーディカの手には長剣と円盾。

 

 敵将の手には手槍と大盾。

 

 奇しくも、似たようなバトルスタイルを持つ2人が、戦場で対峙していた。

 

「ハァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 突撃と同時に、手にした剣を振り下ろすブーディカ。

 

 対して、

 

「ぬんっ!!」

 

 敵将は手にした大盾でブーディカの斬撃をブロック。

 

 同時に僅かに角度を付けて横に逸らすと、自身が手にする手槍を繰り出す。

 

 鋭く突き込まれる槍の穂先。

 

 強烈な一閃は、

 

 しかし、ブーディカがとっさに掲げた円盾に弾かれる。

 

「ぬッ!?」

 

 自身の必殺の攻撃を回避され、一瞬驚いたような声を上げる敵将。

 

 その間に、ブーディカは反撃に転じる。

 

「こっちだよ!!」

 

 体の回転をそのまま斬撃に乗せ、飛び上がるようにして勢いを付けると、そのまま斬りかかる。

 

 迸る斬撃。

 

 強烈な一撃。

 

 だが、

 

「ㇺあだまだァァァァァァ!!」

 

 敵将は己の膂力を全開まで駆使して盾を持ち上げると、ブーディカの斬撃を防ぎにかかる。

 

 激突する、刃と盾。

 

 衝撃波が、周囲に撒き散らされる。

 

 次の瞬間、

 

 後退したのは敵将の方だった。

 

「グッ!?」

 

 地に膝を突く敵将。

 

 防ぐ事には成功したものの、ブーディカの斬撃は強力だった。

 

「今だッ!!」

 

 そこへすかさず斬りかかるブーディカ。

 

 ここで一気に、勝負を決める。

 

 その想いから斬りかかる。

 

 だが、

 

「まだだと、言いましたぞ!!」

 

 敵将も、ほぼ同時に槍を繰り出す。

 

 斬り下される剣と、突き出された槍。

 

 互いに中間点でぶつかり合う。

 

「ちッ!?」

「ぬぅッ!?」

 

 互いの攻撃は相殺され、共に舌打ちする両者。

 

 互いに間合いから離れ、再び構えを取る。

 

 戦場に、一瞬流れる沈黙。

 

 敵も味方も、全ての兵士たちが沈黙したまま、2人の戦いぶりを見詰めている。

 

「・・・・・・・・・・・・やりますな」

 

 ややあって、敵将の方から口を開いた。

 

「流石は、音に聞こえたブリタニアの戦闘女王。まさに噂に違わず、と言ったところですね」

「そっちこそ・・・・・・」

 

 ブーディカの方も、口元に笑みを浮かべて応じる。

 

「スパルタの大英雄に、こんな場所で出会えるとはね」

 

 互いの健闘を讃える2人。

 

 既に両者とも気付いていた。

 

 自分が相手にしているのは、サーヴァントだと。

 

 レオニダス1世

 

 古代アギス朝スパルタの王。

 

 ペルシア軍の侵攻に端を発するギリシア戦争において、常に最前線で戦った英雄。

 

 有名なテルモピュライの戦いでは、10万のペルシア軍に対し、僅か300のスパルタ軍を率いて立ち向かう。

 

 当時、最大国家だったペルシアに対し、スパルタをはじめとするギリシア国家は、連合軍を編成する事で辛うじて対抗していた。

 

 だが、会戦当時、折り悪くギリシア各国は援軍を出せる状態ではなく、レオニダスはスパルタ軍のみで、強大なペルシア軍を迎え撃たなくてはならなかった。

 

 ペルシアもまた、当時のスパルタは殆ど眼中に無く、レオニダスに対し降伏、恭順すればスパルタは安堵すると伝えてきた。

 

 しかし、ギリシア連合への信義を重んじたレオニダスは、この申し出を拒絶。自国の軍勢を率いて迎撃に向かった。

 

 意外な事に、戦いが始まってしばらくの間は、スパルタ軍優勢で推移した。

 

 隘路を利用した徹底的な防衛戦術で、一度はペルシアの大軍を押し返す健闘を見せたレオニダス。

 

 しかしやはり、多勢に無勢であった。

 

 最終的に迂回路を発見したペルシア軍によって追い詰められ軍は壊滅。レオニダスも戦死する事になった。

 

 しかし、彼らの死によってギリシア中の国々が奮い立ち、やがてペルシア帝国を打ち破る要因にもなった。

 

 その勇戦敢闘振りは、現代にまで語り継がれる伝説となっている。

 

 そして、

 

 ブリタニア女王ブーディカ

 

 元々はローマ帝国の同盟国イケニの王プラスタグスの妻として、家族と共に幸せに暮らしていた。

 

 しかし、その平和も、最愛の夫が事故死した事で終わりを告げる。

 

 プラスダグスが死んだ事を幸いとして、大国ローマが政治介入してきたのだ。

 

 派遣されてきた州長官はブーディカの王位継承を認めず、イケニの領土をそのまま属州とすると、一方的に宣言したのだ。

 

 当然、ブーディカは拒絶する。夫が死んだ以上、自分が女王として跡を継ぐのは当然だと、堂々と主張してのけたのだ。

 

 だが、

 

 それに対するローマ側の返答は、あまりにも悪辣だった。

 

 ブーディカと娘たちは、これあるを予期していたローマ兵達によってとらえられる。

 

 ブーディカは公衆の面前で鞭打ち、彼女の美しい娘たちは奴隷の如く扱われて凌辱されたのだ。

 

 怒り狂ったブーディカは、ローマに対し反旗を翻す決断をした。

 

 この反乱を全く予期していなかったローマ軍は、ろくな抵抗も出来ずに壊滅。更に彼らの都市もブーディカによって悉く焼き払われた。

 

 そのあまりの残虐振りに、ローマ中が震撼したほどである。

 

 最終的に、総督府の要請を受けて援軍にやって来たネロ・クラウディウス軍に敗れ、ブーディカも討ち死にする事になる。

 

 しかし、大国ローマ相手に一度は勝利を収めたブーディカの手腕は、今も人々の語り草に上るほどであった。

 

「さて・・・・・・・・・・・・」

 

 言いながら、剣と盾を構えなおすブーディカ。

 

 合わせるように、レオニダスも槍と盾を構える。

 

「時間が無い。そろそろ、決着と行こうか」

「ですな」

 

 頷く両者。

 

 次の瞬間、

 

 両者は同時に襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ローマを発ってから数日。

 

 途中で出没した魔物や連合兵士の残党を討伐しつつ、ネロ率いる近衛軍と、カルデア特殊班一同は、ガリア遠征軍に合流した。

 

 今この場所には、数万からなる正統ローマ軍の主力が集結している。

 

「思ったより数は多いんだな」

「当然であろう。余の配下の、ほぼ全軍が集結しているのだからな」

 

 そう言ってネロは、小柄な体にはやや不釣り合いに張り出した胸を反らせる。

 

 間もなく、連合ローマ軍との決戦が始まる事になる。

 

 その為、正統ローマ軍の士気は高かった。

 

「これも余の善政の賜物、と言いたい所なのだが・・・・・・」

 

 少し言い淀んでから、ネロは続けた。

 

「指揮を執る者が優秀でな。今や余が右腕とも恃んでおる。きっと、そなたらの力にもなってくれるであろうよ」

 

 そう告げるとネロは、本陣にしてある天幕をくぐった。

 

「ブーディカ、入るぞ」

 

 声を掛けるネロ。

 

 だが、

 

「なッ!?」

 

 目の前に飛び込んで来た光景を見て、ネロは思わず絶句した。

 

 目の前にいるブーディカ。

 

 だが、その体には明らかに負傷の跡と思われる傷が見られたのだ。

 

「よう、ネロじゃないか。何だい、もう少しゆっくり来ると思っていたのに」

 

 当のブーディカはと言えば、何事も無いかのように手を上げて挨拶してくる。

 

 だが、ネロはそんな彼女に慌てて駆け寄った。

 

「い、いったいどうしたのだッ? そなたほどの手練がこのような事になるとは・・・・・・」

「いやいや、大げさだって。こんなの大した事ないし」

 

 そう言って苦笑するブーディカ。

 

「実は昨夜、敵将と交戦してね。結局、勝負はお預けになったんだけど、このザマだよ。まあ、向こうにも手傷は負わせたから、何とか引き分けにはできたって感じかな」

「そ、そうだったのか」

 

 安堵したようにため息を吐くネロ。

 

 何にしても、決戦を前に大事に至らなくてよかった。

 

 そんなブーディカから視線を逸らしつつ、ネロは背を向ける。

 

「す、すまんが、余は聊か頭痛がするので休ませてもらう。後は頼むぞブーディカ。こやつらは余の新たな客将だ。面倒を見てやって欲しい」

 

 それだけ告げると、ネロは天幕を出て行く。

 

 後には、ブーディカとカルデア特殊班のメンバーだけが残された。

 

「やれやれ、相変わらずか」

 

 ネロの背を見送りながら苦笑交じりに嘆息すると、ブーディカは立香達に向き直った。

 

「改めてよろしく。あたしはブーディカ。ネロ陛下の命により、ここを任されている」

「あの、ブーディカってもしかして・・・・・・」

 

 何かを思い至ったらしい美遊が、恐る恐ると言った感じに尋ねる。

 

 対して、ブーディカも笑みを返した。

 

「お、よく知ってるね。ちゃんと勉強してるんだ、偉い偉い」

 

 言われて美遊は、ほんのり顔を赤くして俯く。

 

 ブーディカのような女性に褒められると、何だか母親に褒められているみたいでこそばゆい気持ちになってくる。

 

 とは言え、

 

 ブーディカがローマによって屈辱を受け、その末にネロ・クラウディウス率いる軍勢との戦いで敗死した事は有名な話である。

 

 そのブーディカが、よりにもよってネロ率いる軍勢の将軍として指揮を執っているなど、想像の埒外も良いところだった。

 

「まあ、言いたい事は判るよ」

 

 呆気に取られる一同に対し、ブーディカはさばさばとした調子で肩を竦める。

 

「ローマやネロを恨んでない訳じゃない。いや、今だって恨んでいる気持ちはある。けどね・・・・・・」

 

 ブーディカは語る。

 

 ネロとの「再会」を。

 

 サーヴァントとして、このローマに召喚された時、既に正統ローマ軍と連合ローマ軍の戦争は始まっていた。

 

 そんな中、1人で軍を指揮し、最前線に立ち続ける皇帝ネロ。

 

 その姿に、想うところが無かったわけではない。

 

 だが、憎しみ以上にブーディカを駆り立てたのは、ひとえに「庇護心」だった。

 

 最前線で軍を指揮し、剣を振るい、そして後方に戻れば執政官として政務に没頭する。

 

 ただでさえ皇帝はオーバーワークである。そこにきてネロは軍の指揮も取らなければならない。

 

 あのまま行っていれば、間違いなく彼女は倒れていただろう。

 

 皇帝で、類稀なる才能を秘めていても、ネロは一方であまりにも脆く、儚い1人の少女に過ぎなかった。

 

 せめて、誰かが重荷を一緒に背負ってやらなければ。

 

 そこで、ブーディカは名乗り出た。

 

 自分が軍の指揮を取る、と。

 

 勿論、最初はネロも訝った。

 

 そもそも死んだと思っていたブーディカが再び現れて、しかも味方してくれるなどと言われて、簡単に信じる事ができるはずなかった。

 

 だがブーディカは根気強く、誠意をもって説得。ついにはネロが折れて、彼女を国防軍の最高司令官に任じたのである。

 

 以来、ブーディカは期待に応え、劣勢の軍を率いて善戦。辛うじて戦線を維持する事に成功していた。

 

「成程、そんな事があったのか」

「まあね。だからまあ、あんたたちも、ここでは大船に乗ったつもりでいて良いよ」

 

 言いながら、

 

 ブーディカの手は、傍らの剣に伸びていた。

 

「まあ、それはそれとして、あたしの方でも一つだけ、試させてくれないかな?」

「え、それはどういう・・・・・・・・・・・・」

 

 問いかけに対し、立香が答えようとした。

 

 と、

 

 ブーディカは素早く鞘を払い、抜き放った剣で立香に向かって斬りかかった。

 

 目にもとまらぬ速さで斬りかかるブーディカ。

 

 対して、立香は未だに何が起きているのかすら理解していない。

 

 このままでは斬られる。

 

 誰もがそう思った。

 

 次の瞬間、

 

 ガキンッ

 

 間に割って入ったマシュが大盾を掲げ、立香を守りながらブーディカの剣を防いでいた。

 

「い、いきなり何をするんですか!?」

 

 ブーディカの剣を防ぎながら、抗議するマシュ。

 

 その手に構えた盾が、ブーディカの刃を真っ向から受け止めていた。

 

 対して、

 

「ふむ」

 

 どこか感心したように呟きながら、ブーディカは剣を引く。

 

「お嬢ちゃんの反応は大したものだね。さすがだよ」

「・・・・・・・・・・・・え?」

 

 笑顔交じりに告げるブーディカに、キョトンとするマシュ。

 

 既に殺気は無い。

 

 どうやら、今の攻撃はブーディカなりにマシュ達を試そうとした物らしかった。

 

「けど、もっと驚いたのはあんただ」

 

 言いながら、ブーディカの視線は立香へと向けられた。

 

「あんた、このお嬢ちゃんがあたしの剣を受け止めるまで、一瞬も目を逸らさなかった。単に、あたしの攻撃が早かったからってだけじゃないね」

「まあ・・・・・・ね」

 

 ブーディカに言われて、立香は少し照れくさそうに頬を掻いた。

 

 実際の所、先程の攻撃だが、立香には途中からブーディカの動きが見えていた。

 

 無論、見えているだけで、かわす事は不可能だっただろうが。

 

 だが、不思議と立香には、よけようと言うきが起きなかった。

 

 理由は2つ。

 

 1つは、どんな状況であっても、頼れる後輩が自分を守ってくれるだろう、と思った事。

 

 マシュが立香を慕うように、立香もまた、マシュに対して絶大な信頼を寄せている。

 

 どんな危険な状況であっても、彼女がいてくれたら大丈夫。

 

 立香はそんな風に思えるのだった。

 

 そして、

 

「何となく、ブーディカが本気で斬りかかってくるはずが無い、て思ってさ」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 あっけらかんとした感じに告げる立香。

 

 これには流石のブーディカも、思わず二の句を告げられずに沈黙する。

 

 次の瞬間、

 

 女将軍の口から、大爆笑が解き放たれた。

 

「いやいや、面白いね、あんた!! 最高だよ!!」

 

 そう言って立香の肩を叩くブーディカ。

 

 どうやら、彼女のテストは合格らしかった。

 

「さて、おふざけはこれくらいにしておかないとね。でないと、そっちのおチビちゃん達に怒られちまうし」

 

 そう言って、振り返るブーディカ。

 

 そこには、凛果を守るようにして剣を構える美遊がいる。

 

 響に至っては、いつのまにかブーディカの背後に回り込んでいた。抜き放たれた刀の切っ先は、真っすぐにブーディカへと向けられていた。

 

 あと一手、何か事が起これば、響は躊躇なくブーディカに斬りかかる事だろう。

 

 それだけ、一触即発の状態だった。

 

「その子たちも大したもんだよ。あたしが攻撃態勢に入った時には、もう動いてたんだからね」

「ん、ブーディカに、殺気が無かったからやめた」

 

 淡々とした口調で告げる響。

 

 つまり、ブーディカがちょっとでも殺気を出したら斬りかかっていた、と言う事だった。

 

 そんな物騒なセリフに対し、ブーディカは声を出して笑って見せた。

 

「いや、面白いねあんたたち。ああ、これなら安心して任せられそうだ」

 

 ブーディカとしても、頼れる味方は多いに越した事は無い。

 

 どうやら立香達は、彼女の眼鏡に叶ったようだった。

 

 と、

 

 そこで張り詰めた空気を払拭するように、ブーディカは手を叩いた。

 

「よし、じゃあ、テストも終わったところで親睦会と行こうか。あたしがとっておきのブリタニア料理を振舞ってやるよ。ほら、あんた達も来なって」

「わ、ちょ、ブーディカさんッ?」

 

 言いながら、マシュの手を強引に取って歩いていくブーディカ。

 

 何と言うか、

 

 戦士と言うより「肝っ玉母ちゃん」と言った風情である。

 

 そんなブーディカの様子に、完全に毒気を抜かれる特殊班の一同。

 

 苦笑しつつ、彼女の後を着いて行くのだった。

 

 

 

 

 

第4話「戦女王」      終わり

 




何だかブーディカ主役回になってしまった。
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