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ネロとアレキサンダー。
互いの指揮官が下した合図と同時に、両軍は一斉に動き出す。
騎兵部隊が側面から先行し、歩兵部隊は中央を進撃。
後詰の弓部隊が続行して、射撃開始のタイミングをはかっている。
一斉に激突する正統ローマ軍と連合ローマ軍。
ここがまさに、このローマにおける戦いの天王山と言える。
この戦いに勝った方が、この戦争を制する。
その事を誰もが思い、互いに刃を交える。
数においては、正統ローマ軍の不利は否めない。
連合ローマ軍はこれまで温存してきた主力軍に加え、先のガリア会戦で敗れたカエサル軍も吸収している。
その数は正統ローマ軍の倍近くまで膨れ上がっていた。
だが、正統ローマ軍の兵士、誰もが絶望していない。
自分達にはネロがいる。
百戦無敗の皇帝陛下、ネロ・クラウディウスが付いている。
ならば、恐れるべき何物も存在しなかった。
それに、
そのネロが連れて来た、綺羅星の如き将星たち。
彼等と共にあり続ける限り、自分たちが負ける事などありえなかった。
奮い立つ正統ローマ軍兵士達。
そんな彼らの先陣を切って突撃していくのは、
やはり、この男たちだった。
「さあ、いざ行かん同胞たちよ!! あれに見えるのは圧制者の群れッ 我らが越えるべき頂ぞ!!」
「■■■■■■■■■■■■!!」
スパルタクスは笑顔を浮かべながら、呂布は雄たけびを上げながら、
2人のバーサーカーが先陣を切って突撃していく。
「おォォォォォォッ 将軍たちに続けェェェェェェ!!」
「我らがローマに勝利をォォォ!!」
「ネロ陛下よ、栄光あれェェェ!!」
スパルタクス、呂布の両バーサーカーに率いられた正統ローマ軍は、前線を食い破る勢いで突撃していく。
だが、
そんな彼等より先に、戦端を開いた者たちがいる。
誰あろう、
ネロとアレキサンダー。
両軍の指揮官たちだった。
「ハァッ!!」
気合と共に、
その視線の先では、
微笑を浮かべて佇む少年がいる。
皇帝少女の剣閃が、少年大王を捉えようとした。
まさに次の瞬間、
アレキサンダーは腰に佩いた短い剣を抜刀、逆袈裟に繰り出した刃がネロの剣戟を弾き飛ばした。
「やるね、けど、僕もこれくらいならッ!!」
言いながら、斬り込んでくるアレキサンダー。
スパタと呼ばれる短い剣は、ネロの
しかし、小さい事が悪い事ではない。
武器が小さければ、それだけ素早い攻撃が可能となる。
加えて、アレキサンダー自身、その体は成長しきっているとは言い難い。それ故に、武器は小さく、取り回しやすい方が有利と言う物だ。
「貰ったッ!!」
ネロの懐へと飛び込んでくるアレキサンダー。
手にしたスパタの刃が鋭く光る。
一閃される剣。
対して、
「甘いッ!!」
ネロはアレキサンダーの剣を弾きつつバックステップで後退。同時に、
「ハァッ!!」
気合と共に繰り出される、歪な刃。
炎を纏った刀身が、アレキサンダーに容赦なく襲い掛かる。
と、
「おっとッ!?」
アレキサンダーはスパタでネロの斬撃を受け止める。
互いに刃を合わせたまま、睨み合う両者。
「やるではないかッ 口先だけの男ではない、と言う事か?」
「そっちこそ、偉そうに語った覇道が偽りじゃない事を証明して見せて欲しいな」
「抜かせッ!!」
アレキサンダーの剣を弾くネロ。
その勢いに押され、アレキサンダーは数歩後退する。
「貰ったぞ!!」
隙を見せたアレキサンダーに、大剣を振り翳して斬りかかるネロ。
だが、
その体を、魔力を帯びた大気が直撃、大きく吹き飛ばした。
「うぬッ!?」
体勢を立て直し、着地するネロ。
顔を上げた視界の中で、
アレキサンダーを掲げるように、右手を翳したエルメロイ二世が、煙草をふかしながらネロを睨んでいた。
「これでも軍師なんでな。これくらいはやって見せねばな」
主君の危機に、割って入ったエルメロイ二世。
その間に、アレキサンダーは体勢を立て直す。
「ありがとう先生」
「フンッ」
アレキサンダーの謝辞に、鼻を鳴らすエルメロイ二世。
対してネロは、警戒したように剣を構え直す。
その傍らに立ったマシュが盾を構え、後方では立香が援護の準備を始めている。
「立香、マシュ、油断するでないぞ。こやつら、なかなかの使い手と見た」
「ああ、援護は任せてくれ」
言いながら礼装の術式を起動。身体能力強化の魔術を2人に掛ける立香。
「おおッ これはありがたい!!」
笑顔を浮かべるネロ。
先程と比べて、体が軽くなったような感覚がある。
「行くぞ!!」
底上げされたスペックを如何無く発揮し、ネロは再び斬り込んでいく。
その突撃たるや、
アレキサンダーもエルメロイ二世も、一瞬虚を突かれるほどに速い。
「ハァッ!!」
袈裟懸けに振り下ろされる剣閃。
その一撃を、
「クッ!?」
アレキサンダーは、とっさにスパタで受け止める。
しかし、
「まだだァッ!!」
膂力任せに押し切るネロ。
圧倒的な攻撃力を前に、思わず後退を余儀なくされるアレキサンダー。
正面からの激突ならば、分はネロの方にある。
着地と同時に、体勢を立て直そうとするアレキサンダー。
そこへ、ネロが更なる斬り込みをかけるべく、剣を振り被る。
だが、
すかさずエルメロイ二世が援護の為に魔術を解き放つべく陣を組む。
と、
「やらせません!!」
同じく、身体能力を強化したマシュが大盾を掲げて飛び込み、エルメロイ二世の攻撃を防ぐ。
「ふんッ 成程な」
魔術で落とした雷を、マシュの盾に防がれたのを見ながら、エルメロイ二世はどこか感心したように呟く。
「その盾ならば、たとえ宝具クラスの攻撃であっても防げるだろう。いきおい、私程度の魔術では傷もつけられんか」
「この盾の事を知っているのですか?」
攻撃を防ぎながら、勢い込んだように尋ねるマシュ。
自分の中にいる英霊の真名。
それが判らずに、マシュはまだ、全力発揮できる状態ではない。それ故に、何かを知っているかのようなエルメロイ二世の言葉に引かれたのだ。
「さて、往時であれば講義してやるのも吝かではない、が」
言いながら、魔力弾を放つエルメロイ二世。
その攻撃をマシュは、盾を掲げて弾く。
「生憎、ここは戦場。そして、君と私は敵同士だ。諦め給え」
「クッ!?」
悔しいがエルメロイ二世の発言は正しい。
残念だが、今ここで彼から情報を引き出すのは難しかった。
「マシュ、今は集中するんだ!!」
「はい、申し訳ありません先輩!!」
立香の叱咤に、再び気分を切り替えるマシュ。
そこへ、再びエルメロイ二世の攻撃が襲い掛かった。
そんなやり取りの様子を、離れた場所でアレキサンダーが苦笑気味に眺めていた。
「先生も歯痒いだろうね」
やれやれとばかりに、肩を竦めながら呟く。
「あれで結構、教育熱心らしいし。本音では教えてあげたいんじゃないかな?」
「随分、余裕ではないか」
言いながら、斬りかかるネロ。
横なぎにされた
アレキサンダーはスパタで防ぎつつ、後退して回避する。
「別に」
着地しながら、アレキサンダーはネロに向き直る。
「余裕ってほどじゃないよ。こう見えても結構、いっぱいいっぱいだし」
そう言っている割に、アレキサンダーは笑顔を崩そうとしない。
まだ、何か持っている。
ネロはそう確信しつつ剣を構え直す。
「だから・・・・・・・・・・・・」
アレキサンダーの魔力が高まる。
同時に、少年の背後の空間が開くのが見えた。
「僕も相棒を呼ぶことにするよ」
言い放った瞬間、
開いた空間から、何かが飛び出してくる。
それは、一頭の馬だった。
黒毛の美しい、ただそこにあるだけで人々を魅了しそうな、そんな雰囲気のある馬。
体躯も立派で、まるで戦車のような重厚さがある。
現れた馬の背に、ひらりと飛び乗るアレキサンダー。
小柄な少年が乗ると、まるで馬の付属品のようにしか見えない。
だが、
馬は、自らが認めた唯一の主を背にして、歓喜のようないななきを発する。
「待たせたね、ブケファラスッ!!」
馬の手綱を引きながら、アレキサンダーも高らかに言い放つ。
その視線は、剣を構えるネロを馬上から見据える。
「さあ、始めよう。僕達の蹂躙制覇を!!」
同時にブケファラスの腹を蹴るアレキサンダー。
主の力強い合図。
同時にブケファラスは、凄まじい勢いで突撃を開始した。
立香、ネロ、マシュがアレキサンダー、エルメロイ二世と交戦を開始した頃。
別ルートから進撃していた響、美遊、凛果も、因縁の相手と対峙していた。
進撃する3人の前に立ちはだかる2人の人物。
その姿を見て、響達は足を止める。
睨み合う両者。
次の瞬間、
「ん・・・・・・DEBU」
「やめい」
響の第一声にツッコミを入れるカエサル。
何と言うか、台無しだった。色々と。
とは言え、
ユリウス・カエサル。
そしてレオニダス。
ガリアで戦った大英雄2人が、再び立ちはだかっていた。
「また会いましたな、小さき剣士の少女。今日は、盾の少女はおられないのですか?」
「マシュさんは今、別のところで大事な戦いをしています。だから」
言いながら、
美遊は腰の鞘から黄金の剣を抜き放つ。
魔力を帯びた輝きを放つ剣。
少女の鋭い眼差しが、スパルタの大英雄を睨み返す。
「あなたの相手は、私がします」
「上々。こちらとしても願っても無い事です」
言いながら、レオニダスも槍と盾を構える。
睨み合う、少女と英雄。
その視線が、火花を散らして激突する。
一方
「さて、こちらも始めるとしようじゃないかね」
「ん」
頷きながら、互いに剣を抜き放つカエサルと響。
同時に、響は背後の凛果を振り返る。
「凛果、やる」
「オッケー 遠慮はいらないわ」
響の言葉に頷くと、凛果は右手の令呪を掲げて見せる。
目を閉じる響。
内なる魔術回路を起動させ、魔力を全身に循環させる。
光に包まれる少年の体。
眩いばかりの魔力の輝き。
やがて視界が晴れた時、
少年は黒装束の上から、浅葱色に白の段だら模様が入った羽織を羽織っていた。
その姿を見て、面白そうに口元を歪めて笑うカエサル。
「良いぞ。今日は初めから本気と言う訳か。そう来なくてはな」
言いながら、剣を真っすぐに構えるカエサル。
対抗するように、響も刀の切っ先をカエサルへと向ける。
睨み合う、両者。
次の瞬間、
互いに地を蹴って、斬りかかった。
2
その人物は、見るからに瀕死だった。
引きずるように前へと進む足。
一歩歩くごとに、崩れ落ちそうになる。
ただ、そこに存在しているだけで、命がすり減っていく。
だがそれでも、
「・・・・・・・・・・・・行か、なくては」
かすれた声で呟く。
たとえ、この命が失われても、自分には成さねばならない事がある。
その為ならば、あらゆる艱難辛苦を乗り越えていく覚悟だった。
「待って・・・・・・いてください・・・・・・必ず・・・・・・」
執念。
ただ、それだけを頼りに、前へと歩き続けていた。
激突する、響とカエサル。
以前戦った時は、カエサルの膂力の前に響は敵わず、押し負ける事が何度もあった。
だが、
今は正面からぶつかり、一歩も引かずに対峙している。
「フンッ」
鍔競り合いをしながら、カエサルは面白そうに笑う。
「先回よりは、楽しませてくれそうだな」
「ん、言ってろ」
カエサルの言葉に返した瞬間、
響は一瞬にして後退、間合いを取る。
追撃を仕掛けるべく、追いかけるカエサル。
だがそこへ、カウンター気味に響の刺突が迎え撃つ。
「ッ!?」
自身に向かってくる鋭い切っ先を、カエサルは辛うじて回避。
同時に手にした黄金の剣を、響に対して横なぎに繰り出す。
「んッ!?」
迫りくる剣閃。
その一撃を、
響はとっさに宙に跳び上がって回避。
同時に宙返りしながら、カエサルの背後へと降り立つ。
「ッ!!」
短い呼吸と共に、横なぎに繰り出す剣閃。
タイミングは完璧。
威力は十分。
大気を斬り裂いて迫る剣閃。
その一撃を、
カエサルは大きく跳躍して回避した。
虚しく空を駆ける響の刃。
だが、
「んッ!!」
響の双眸は、
一瞬の勝機を、見逃さない。
刀の切っ先をカエサルに向け、弓を引くようにして真っすぐに構える。
対して、
「ぬうッ!?」
呻くカエサル。
跳躍によってヒビキの攻撃を回避したカエサルは、未だに空中にあって、身動きが取れない状態にある。
次の瞬間、
「餓狼一閃!!」
駆ける響。
一歩、
加速する少年。
二歩、
音速を超える。
三歩、
威力が切っ先の一点に集中、
突き込まれる。
「しまったッ!?」
着地と同時に、防御の姿勢を取るカエサル。
だが、もう遅い。
盟約の羽織の効果により、身体能力が底上げされた響。そこから繰り出される餓狼一閃の威力は、通常時の比ではない。
飢えた狼の牙が、大英雄に突き立てられた。
次の瞬間、
割って入った美女が、カエサルに代わって狼の牙を受け止めた。
「なッ!?」
「何、だとッ!?」
驚いたのは、響も、そしてカエサルも同時だった。
口から鮮血を噴き出す女。
その胸には、響の刀が深々と突き刺さっている。
アサシンだ。
ネロの命を二度も狙い、そして響に阻止されて瀕死の重傷を負ったはずの女が今、カエサルを守るようにして、響の刃を受けていた。
今度こそ、致命傷である事は間違いない。
だが、
「ああ・・・・・・閣下・・・・・・」
自分の胸の刺さっている刀を抜き、ゆっくりと大英雄の胸にもたれかかるアサシン。
その顔には、恍惚とした笑みが浮かべられている。
「やっと、お会いできました・・・・・・カエサル様」
死を前にして、自らの愛する者と再会できたかのような、そんな歓喜が女の顔からはにじみ出ている。
一方で、
「お前は・・・・・・・・・・・・」
カエサルは、自分の腕の中で力なく倒れている女を、愕然として見つめている。
絡み合う視線。
ややあって、
「そうか・・・・・・・・・・・・」
カエサルが静かに、口を開いた。
どこか悲しむような、それでいて懐かしむような、あるいは納得したような声。
「ブルータス・・・・・・お前だったのか」
マルクス・ユニウス・ブルータス
共和制ローマ末期における、政治家にして軍人。
そして、
大英雄カエサルに対し、愛憎共に最も関わりの深い人物。
父親を早くに亡くしたブルータス。
そのブルータスの前に、母の愛人として現れたのが、他ならぬユリウス・カエサルであった。
カエサルはブルータスを大変気に入り、実の子供同然に可愛がったと伝えられている。
その絆は、決して断ち切れるものではないと思われていた。
紀元前49年に起こったローマ内戦において、ブルータスはカエサルと敵対するポンペイウスの側の将軍として参戦した。
その際カエサルは「戦場でブルータスを見つけたら、決して傷付けてはならない」と、異例の布告を発した。
その事もあって、ブルータスはカエサルに恭順。カエサルもまた、自身に降ったブルータスを厚遇したとされる。
そのまま行けば、間違いなく順風満帆だったであろう、2人の人生。
だが、そこに影が差すとは、本人たちですら考えていなかった。
急速に台頭するカエサルを苦々しく思っていた元老院議員たち。
当時、腐敗しきっていたローマ元老院にとって、自分たちの権益を脅かすカエサルは、目障りな存在でしかなかった。
やがて、彼らの目は、カエサル第一の側近とも言うべき、ブルータスへと向けられる。
元老院議員たちは、言葉巧みにブルータスを懐柔し、やがて運命の暗殺劇へと導いていく。
そしてその日、議会に参加すべくやって来たカエサルを、暗殺者たちが一斉に襲い掛かる。
とは言え、カエサルも軍人として長年慣らした大英雄。たとえ不意を衝かれたとはいえ、暗殺者如きに後れを取るはずが無い。
そう、
例えば、
「身内の中の敵」でもいない限りは。
突如、背中に走った痛みに、振り返るカエサル。
そこには、
自分が最も、信頼している人物が、自分の体にナイフを突き立てている光景があった。
『ブルータス・・・・・・お前もか』
それは余りにも有名な、カエサルの最後の言葉だった。
その後、元老院主導で行われた裁判において無罪となったブルータスだったが、やはり最も敬愛するカエサルを裏切ってしまった事への罪悪感は消えず、自らローマを離れる事になる。
やがて起こる、戦争。
オクタヴィアヌス、アントニウス等英雄達に率いられたローマ軍に敗れたブルータスは、やがて最後を悟り、自害して果てたと言う。
「申し訳ありません・・・・・・閣下」
カエサルの腕の中で、ブルータスは涙ながらに訴える。
「あんなに、尊敬していた・・・・・・愛していた・・・・・・なのに・・・・・・なのにッ」
「ブルータス・・・・・・」
「私は。あなたを裏切ったッ 元老院の俗物達に踊らされてッ あなたをッ 偉大なるカエサルをッ 愛した人をッ 私は!!」
「もう良いッ」
自罰するように叫び続けるブルータスを、
カエサルはきつく抱きしめる。
かつて、かわした温もり。
その優しさに触れ、
ブルータスは涙する。
知っている。
カエサルにはかのエジプトの女王クレオパトラをはじめ、多くの愛人がいた。
それでも良かった。
自分は、あの人と共にあるだけで幸せだった。
だが、そんな自分ですら、カエサルは愛してくれた。
だと言うのに・・・・・・・・・・・・
だからこそ、聖杯に願った。
今度こそ、カエサルが皇帝になる事を。
ブルータスの体から、金色の粒子が溢れ出す。
響との二度の戦いによって致命傷を受けた彼女は、既に存在を保てる状態ではなかったのだ。
「カエサル様・・・・・・・・・・・・」
「良い。もう気にするな。所詮は、過ぎた事だ」
消えゆくブルータスに、優しく語り掛けるカエサル。
その声が聞こえたのだろう。
最後に、柔らかく微笑むと、
ブルータスの姿は完全に消えていった。
「・・・・・・・・・・・・」
愛する者が消え去った腕を、ジッと見つめるカエサル。
その脳裏に、何が思い浮かべられているのかは分からない。
だが、
やがて剣を取ると、響に向き直った。
「・・・・・・待たせたな、小僧」
「・・・・・・・・・・・・」
対して、響は無言のまま対峙する。
存在感が、違う。
これまで戦ってきたカエサルよりも、明らかに魔力量が増している。
まるで、何かに目覚めたかのような存在感を発している。
「言っておくが・・・・・・・・・・・・」
剣を構えながら、カエサルは言った。
「ここからは、私も本気だ。腑抜けていれば、その瞬間終わると思え」
対して、
「ん・・・・・・・・・・・・」
響もまた浅葱色の羽織を靡かせて答える。
その幼くも鋭い双眸は、真っすぐに大英雄へと向けられる。
「なら、こっちも本気」
刀の切っ先を、カエサルに向ける響。
睨み合う両者。
一瞬の静寂。
次の瞬間、
両者は同時に仕掛けた。
第14話「罪の執念」 終わり
はい、と言う訳で、アサシンの真名解放です。
答えは「○○お前もか」のネタで有名な、ブルータスさんでした。
型月キャラ特有のTS化に挑戦してみました。
ちょっと、不思議な人ですよねブルータスと言う人物も。
ある意味、世界一有名なのに、本人が有名な訳じゃなく、単に主君が残した最後の言葉があったから有名になってしまった人物な訳ですし。
多分、ブルータスの名前は知っていても、どんな人かは知らない、と言う人結構いると思います。かくいう私も、大して詳しくなかったので、大急ぎで調べた、と言う事情があったりします(汗