Fate/cross wind   作:ファルクラム

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第9話「レッツ・ハンティング In オケアノス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 傷ついた黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)が、よろけるように、名も無い島にたどり着いたのは、戦闘終了から2時間以上経った後だった。

 

 ふらつく船は、そのまま海岸に押し上げられる形で擱座、着底する事で停止する。

 

 船底に大穴を開けられた黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)

 

 これ以上、沈まないようにするためには、浜辺に乗り上げるしかなかったのだ。

 

 幸いにして、女王アンの復讐号(クイーンアンズ・リベンジ)からの追撃は無い。どうやら向こうも、エイリーク・ブラッドアクスを失った事で、体勢の立て直しを迫られているらしい。

 

 そして、

 

 船が完全に停止するのを待って、飛び降りるように砂浜に駆け出したのは、小さな女神だった。

 

「アステリオス!!」

 

 叫びながら、船底へと急ぐエウリュアレ。

 

 果たして、

 

 海面をかき分けるように、船を支えて泳ぎ続けた殊勲者が、よろけるように砂浜に上がってくるのが見えた。

 

「えう・・・・・・りゅあれ・・・・・・ぶじ?」

「馬鹿ッ あんたはまったくもうッ!! 人の事心配している場合じゃないでしょ!!」

 

 慌てて駆け寄るエウリュアレ。

 

 少女の姿にホッとしたように、アステリオスがその場に座り込んだ。

 

 どうやら、体力も限界だったらしい。

 

 エイリークとの戦闘には勝ったとはいえ、アステリオス自身、無傷ではなかった。それ以前に、迷宮での戦闘で、響の餓狼一閃を受けた傷も残っている。

 

 そこに来て、小型とは言えガレオン船を抱えて2時間以上泳ぎ続けたのだ。いかにギリシャ神話に誇るミノタウロスと言えど、体力の限界だった。

 

「んッ アステリオス!!」

「もうッ 無茶しないでよ!!」

「フォウ、フォウ、フォウッ!!」

 

 次々と、黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)から飛び降りてくるカルデア特殊班のメンバーたち。

 

 アステリオスがいなかったら、今この場に全員いなかったかもしれない。

 

 それだけに、無理を押して自分たちを助けてくれた、この大きな英雄を心配して飛び出して来たのだ。

 

 その一方で、ドレイクは船の様子を確かめていた。

 

 アステリオスの事は無論心配だが、彼女は船の運行責任者として、先に立顰めなくてはいけない事があった。

 

「・・・・・・あちゃー」

 

 思わず頭を抱えるドレイク。

 

 船体にはアンの最後の攻撃によって大穴が空けられている。

 

 アステリオスのおかげで浸水は最小限に抑えられたが、これでは穴をふさぐまで航行できなかった。

 

「こいつは、参ったね・・・・・・」

 

 嘆息するドレイク。

 

 その傍らに、立香がやってきた。

 

「時間、かかりそうなのか?」

「ん、ああ。材料はあるから、修理自体は難しくないんだけどね・・・・・・」

 

 言い淀むドレイク。

 

 即断即決を身上とする彼女にしては、珍しく歯切れが悪い。

 

「元通りに修理しても、奴らには大砲が効かないからね。結局、撃ち合いになったら負けるのはこっちだ」

 

 最終的に移乗白兵戦になるとはいえ、その前段階で砲撃戦を行い、相手の戦力を削いでおかないと危険である。

 

 しかし先の戦いから判る通り、黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)の砲撃は、女王アンの復讐号(クイーンアンズ・リベンジ)の装甲に対し全くの無力だった。

 

 圧倒、とまでは行かずとも、せめて互角の砲撃戦を演じられなくては話にならなかった。

 

「せめて、向こうと同等の装甲があれば、話は違ってくるんだけどね」

「装甲か・・・・・・」

「鉄板を張るって訳にも、いかないしね・・・・・・」

 

 話を聞いていた凛果もまた、頭を抱える。

 

 この時代、既に鉄を加工する技術はある程度確立されているが、それを船に張って装甲にするところまでは進んでいない。仮にできたとしても、何の施設も無く鉄の加工など、できる筈も無かった。

 

《問題は多分、それだけじゃないね》

「どういう事だよ、ダ・ヴィンチちゃん?」

 

 通信機から聞こえてきたダ・ヴィンチの声に、立香が尋ねる。

 

 どうやら、先の戦闘における解析結果が出たらしい。

 

《大方の予想通りだとは思うけど、黒髭氏の宝具は、あの船で間違いない。こいつは予想だけど、もしかしたら、乗せるサーヴァントの量によって、船の性能が増減するんじゃないかね》

「フォウ・・・・・・」

「あ、そっか。だから、エウリュアレを欲しがったのかな」

 

 ダ・ヴィンチの説明を聞いて、凛果は合点がいったように手を叩く。

 

 確かに、それならティーチの、エウリュアレへの異常なまでの執着も頷ける。

 

《まあ、8割がた、彼自身の趣味だろうけどね》

「確かに」

「言えてる」

「すまないみんな、同じ海賊として本当にすまない」

「フォウ・・・・・・」

 

 げんなりと肩を落とすドレイクを、フォウが前肢でタシタシと叩いて慰めている。

 

 ドレイクとしても、あんなのと同業と思われるのは、ひじょうに不本意だった。

 

 とは言え、

 

 現実問題として、冗談ばかりも言っていられない。

 

 黒髭海賊団とは、必ずもう一度激突する事になるだろう。それも、そう遠くない将来、確実に。

 

 その前に、何とかして船の強化を済ませておかなくてはならなかった。

 

「どっかに、鉄みたいに硬くて、すぐに使えそうな物って落ちてないかな?」

「そんな都合の良い物が・・・・・・」

 

 愚痴る妹に、立香が苦笑を返そうとした。

 

 その時、

 

 島の中から、奇怪な鳴き声が響き渡った。

 

 驚いて振り返る一同。

 

 その視界の中で、

 

 巨大な羽を広げた飛竜が、唸りを上げて飛び上がる様子が見て取れた。

 

「あ、あれッ ワイバーンだよねッ フランスの時戦った!!」

「その通りです凛果先輩。それも、相当な数がいる様子です」

 

 興奮したように叫ぶ凛果に、マシュが頷きを返す。

 

 2人とも、ひどく落ち着いた様子である。

 

 ワイバーンなど、出てくるだけで普通は脅威なのだろうが、フランスであれだけ戦った相手である。今更、出てきたところで、特殊班にとっては物の数ではなかった。

 

 と、

 

「あッ」

 

 美遊が、何かを思いついたように声を上げた。

 

「立香さん、凛果さん、ちょっと良いですか?」

「うん、どうかしたのかい?」

 

 尋ねる立香に、美遊はマスターと翼竜、双方を見比べながら言った。

 

「私に1つ、考えがあります。うまくいけば、船を補強する資材が簡単に手に入るかもしれません」

 

 告げる少女の瞳。

 

 そこには、確信めいた光が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空中を蹴って疾走する響。

 

 手にした刀が、陽光に反射して鋭く光る。

 

 対抗するように、急降下するワイバーン。

 

 その手にある鉤爪が、迫る少年を狙う。

 

 次の瞬間、

 

「んッ!?」

 

 響は刀を空中で一閃。

 

 翼竜の前肢を切り落とす。

 

 苦悶の声を上げるワイバーン。

 

 響はすかさず、魔力で空中に足場を作ると、蹴り上げて更に上昇。

 

 振り上げた刃を、ワイバーンの顔面に叩きつける。

 

 断末魔の咆哮を上げて、落下していくワイバーン。

 

 そのまま地上に叩きつけられて絶命する。

 

 その地上でも、降り立ったワイバーン相手に、美遊やマシュが奮戦している。

 

 向かってくるワイバーン。

 

 振り翳される鉤爪を前に、美遊は迷う事無く飛び込む。

 

「ハァッ!!」

 

 正面から真っすぐに振り下ろされる剣閃。

 

 その一撃が、ワイバーンの顔面を斬り裂く。

 

 轟音と共に、倒れ伏す飛竜。

 

 美遊は更に跳躍すると、中高度から獲物を狙うように旋回を繰り返していたワイバーンに襲い掛かる。

 

 ワイバーンの方でも、地上から駆けあがってくる白百合の剣士に気が付いたのだろう。ただちに回避行動に移ろうとする。

 

 だが、遅い。

 

 駆けあがってきた美遊は、ワイバーンの腹部を容赦なく剣で斬り裂き撃ち落とす。

 

 そして、

 

「単調な動きだから、却ってつまらないわね。まあ、楽で良いんだけど」

 

 ぼやくように呟きながら、クロエが矢を撃ち放つ。

 

 正確な狙いは、頭上を飛んでいるワイバーンを次々に撃ち落としていく。

 

 対空戦闘なら、まさしくアーチャーの独壇場だった。

 

 こうして、ワイバーン狩りにいそしむ特殊班メンバーたち。

 

 その傍らでは、倒したワイバーンから、うろこを剥がす作業が、海賊たちの手で行われていた。

 

「成程ね、こいつは良い素材だ。これなら簡単に手に入るし、即席の貼り付けもできる。装甲代わりにはうってつけかもね」

 

 積み上げられたうろこを一枚持ち上げて拳で叩いて確かめながら、ドレイクが満足そうに頷く。

 

 きっかけは美遊の発案だった。

 

 手っ取り早く、黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)を補強する素材が欲しい一同。

 

 そんな中、美遊は空を飛ぶワイバーンに目を付けたのだ。

 

 ワイバーンとは、フランスの特異点で散々戦い、その防御力は身に染みて分かっている。そのうろこは鋼並みの硬さを誇っている。

 

 ワイバーンを倒し、うろこを剥がして、船の舷側に張り付ける。と言うのが美遊の考えだった。

 

 そんな訳でカルデア特殊班は現在、総出でワイバーン狩りに勤しんでいた。

 

 因みに、アステリオスは先の戦いで傷が開いたため、船でお留守番している。

 

 最大戦力の一角であるアステリオスの回復は、ドレイク海賊団にとっても急務である。今は無理はさせられなかった。

 

 同様に、エウリュアレも「面倒だから」とか言って、船で休んでいる。

 

 もっとも「面倒~」と言うのは単なる口実で、実際にはアステリオスの事を心配して船に残っているのは明白だった。

 

 既に剥がされたうろこは、ボンベ達海賊が船へと運び、張り付ける作業を始めている。

 

 同時に、船底に空けられた穴も塞ぐ作業も、並行して行われている。

 

 それらが終われば、再び外洋に出て、黒髭海賊団との決戦に入る予定だった。

 

「頭のいい子だね。どういう子なんだい、美遊ッてのはさ?」

 

 遠くで剣を振るう少女を見やりながら、ドレイクが尋ねる。

 

「どうも、普段から戦う戦士って感じじゃないし、戦い慣れている風でもない。それでいて、あれだけ強いんだからね」

「ちょっとね・・・・・・色々あったの」

 

 首を傾げるドレイクに、凛果が答える。

 

 かつて経験した戦い。

 

 美遊の故郷は炎に消え、両親も、何もかも失った。

 

 唯一、狂気に染まりながらも彼女を守る為に戦い続けていたアルトリアもまた、彼女に力を授けて消滅した。

 

 今の美遊は、本当に天涯孤独の身となっている。

 

 一見するとみんなと笑い合い、普通に過ごしているように見える美遊。

 

 しかし、小さな少女が、その心の中で寂しさを感じていないはずが無かった。

 

 せめて誰か、

 

 彼女の心の支えとなってくれる人が、そばにいてあげなければいけない。

 

 少女のマスターとして、凛果は内心でそのように思うのだった。

 

 

 

 

 

 サーヴァント4騎が奮戦した結果、ワイバーンのうろこの必要予定数は昼前には揃った。

 

 勿論、うろこだけではない。

 

 ワイバーンの肉は食べられる事が分かったため、干して保存食にし、詰めるだけ船に積まれる事になった。

 

 更に、爪や牙、更には使わなかったうろこも採集される。これらはいずれ、どこかの港に立ち寄った際に交易商に売りさばき、船の財源にするのだとか。

 

 転んでもただでは起きない。

 

 まさにしたたかな海賊ならではの発想だった。

 

 後は船にうろこを張り付ける作業が完了するだけである。

 

 その後は、黒髭海賊団との決戦である。

 

「まあ、何と言うか・・・・・・・・・・・・」

 

 先頭を歩いていた凛果が、嘆息交じりに呟きを漏らす。

 

「また『あれ』に会わなきゃいけないのは、ちょっと嫌だけどね」

「同感ね」

 

 凛果の言葉に、クロエも相槌を打つ。

 

 少女たちの脳裏に浮かぶのは、黒髭のだらしなく緩んだ顔だった。

 

 あのむさくるしい変態オヤジと、もう一度会わなくてはならないと言う事実が、少女たちにとって多大な精神ダメージと化していた。

 

「まあ、だからと言って逃げる訳にも行かないのが辛いところなんだけど」

「そうですね」

 

 美遊も嘆息する。

 

 こうなったら、次の戦いで何としても決着を着けなくてはなるまい。

 

 時間が掛かればかかるほど、精神的ダメージは蓄積されていく事になる。ある種の呪いみたいなものだった。

 

 と、その時だった。

 

《ちょっと良いかい、みんな?》

 

 突然、立香の通信機から、ロマニの声が聞こえてきた。

 

「どうかしたのか、ドクター?」

《いや、どうも微弱なんだけど、君達のすぐそばから魔力反応がしてるんだ。ちょっと、周りに何かいないかい?》

 

 言われて、周囲を見回す一同。

 

 しかし、周囲には木々があるだけで、何者かが潜んでいる気配も無い。

 

「何もないよ。間違いなんじゃないのロマン君?」

《いや、間違いじゃないよ。今も観測できているからね。ただ、本当に微弱な反応なんだ》

 

 言われて再度、周囲を見回す一同。

 

 そこでふと、響がある物に気が付く。

 

「ん、美遊、足下」

「え、足下?」

 

 言われて、美遊は自分の足下に目をやる。

 

 そこにあったのは、聊かこの場にそぐわないと思われる物だった。

 

「熊の、ぬいぐるみ?」

 

 一同は、不思議そうに、落ちているぬいぐるみを覗き込む。

 

 こんなぬいぐるみが、魔力を発するとは思えないのだが、

 

 しかし、他には何もない。

 

 ぬいぐるみはと言えば(当然だが)ピクリとも動く気配はない。

 

 一同の視線を受けながら、ジッと目をつぶっている。

 

 と、

 

「クロ?」

「シッ」

 

 声を掛けてきた弟を制し、クロエは右手に白剣を投影すると、それを逆手に持ち替える。

 

 そしてゆっくり近づき、

 

 ぬいぐるみ目がけて、勢いよく振り下ろした。

 

「のわァァァァァァァァァァァァ!?」

 

 次の瞬間、

 

 悲鳴と共に、クマのぬいぐるみは跳ね起き、その場から飛びのいたではないか。

 

 ぬぐるみはそのまま、くるくると回転すると、見事な着地を決めて見せた。

 

「おー危ない危ない。今日日の幼女はおっかねーなー。出オチでいきなり串刺しになる所だったよ」

 

 言いながら、やれやれと肩を竦めるぬいぐるみ。

 

 その様子を、特殊班の一同は唖然とした様子で見つめる。

 

「・・・・・・・・・・・・しゃべった」

「・・・・・・・・・・・・動いた」

 

 あまりと言えばあまりな事態に、思わず茫然とするしかない一同。

 

 そんな一同のリアクションが不満なのか、ぬいぐるみは腰に手を当ててプンプンと怒って見せる。

 

「何だよ、ぬいぐるみが動いちゃいけないってのかよッ 人権侵害だぞッ あ、いやクマだからクマ権心外か?」

 

 どうでも良い事をわめきたてるクマのぬいぐるみ。

 

 対して、

 

「そんなもん、どうでも良いでしょ」

 

 クロエは莫邪の投影を解除して肩を竦める。

 

「美遊のパンツ見たんだから、プラマイで行けば、完全にプラスよね」

「なッ!?」

 

 言われて、美遊は慌てて自分のスカートを押さえる。

 

 そう言えばさっき、このぬいぐるみが自分の足下にいた事を、今更ながら思い出したのだ。

 

「だいたいッ 下から覗こうっていう根性が気に食わないわッ 見たいなら堂々とスカートめくれば良いでしょ!!」

「勝手なこと言わないで!!」

「うちの弟なんか、本当は見たいくせにヘタレだから諦めてるってのに!!」

「何言ってるクロ、何言ってるッ!?」

 

 捲し立てるクロエに、顔を赤くしてツッコむ美遊と響。

 

 そんな2人を無視して、クロエはクマのぬいぐるみを持ち上げる。

 

「因みに色は?」

「白。良いよなー 純粋っぽくて」

「言わなくて良いからッ」

 

 何となく意気投合している、クロエとぬいぐるみ。当事者そっちのけで盛り上がっている。

 

「ん、白・・・・・・」

「想像しなくて良いから」

 

 不埒な事を考えている傍らの相棒に、くぎを刺す美遊。

 

 その時だった。

 

「あー ダーリン居たー!!」

 

 突如、

 

 森をかき分けるように現れた、1人の少女が、クロエの手の中にあるクマのぬいぐるみをズビシっと差すと、一気の突撃してきた。

 

 そのままクロエからぬいぐるみをむしり取ると、雑巾を絞るように締め上げた。

 

「あたしを置いて、どこに行っていたのよー!!」

「グオォォォ 千切れる千切れる、綿が出ちゃうー!!」

 

 冗談抜きにして引きちぎりそうな勢いでぬいぐるみを絞り続ける少女。

 

 何と言うか、入っていけない雰囲気だった。

 

 と言うか、関わってはいけない類の人間にも見える。

 

 だが、このまま放っておくわけにもいかない訳で、

 

「あの、ちょっと良いかな?」

「何ッ!? 今とっても忙しいんだけどッ!? このあとダーリンを思いっきりお仕置きしなくちゃいけないんだから!!」

「おまッ まだやる気かッ!? 少年、た、助けてくれー」

 

 声を掛けた立香に、少女はものすごい勢いで捲し立ててくる。

 

 その手の中で、ぬいぐるみが情けない声を上げ続けている。

 

「・・・・・・・・・・・・どうぞ、続けてください」

「おいィィィィィィ、少年んんんんんん!!」

「オッケー、じゃあ、許可も降りたところで」

 

 再び、ぬいぐるみ虐待を再開する少女。

 

 その後、何とも筆舌に尽くしがたい光景が、数分間に渡って繰り広げられるのだった。

 

 

 

 

 

「ふう、すっきりした」

「そ、そうか、そりゃ良かっ、た・・・・・・な」

 

 晴れ晴れとした様子の少女。その腕の中では、完全に襤褸雑巾と化したクマのぬいぐるみが、死にそうな声を上げている。

 

 まあ、あれだけ虐待されて、傷一つ付いていない辺り、ただのぬいぐるみではないのだろうが。

 

 と言うか、それ以前にしゃべって動いている時点で、「ただのぬいぐるみ」であるはずも無かった。

 

「それじゃあ、改めて名乗るね」

 

 少女は一同を見渡して言った。

 

「私はアルテミス。一応、アーチャーって事になるわね」

「そんで、俺がオリオン、よろしくな」

 

 その言葉に、一同は呆気に取られるしかなかった。

 

 

 

 

 

第9話「レッツ・ハンティング In オケアノス」      終わり

 


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